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小規模零細企業への新規融資凍結 [ブータン]

CSI開発銀行、新規融資を凍結
National CSI Development Bank stops disbursing loans- Paro
Namgay Wangchuk記者(パロ)、BBS、2022年5月25日(水)
http://www.bbs.bt/news/?p=169770
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【抄訳】
パロにある全国小規模零細産業開発銀行(以下、CSI銀行)は新規融資の実行を一時的に凍結している。不良融資債権(NPL)比率が今年3月、総融資残高の11%を越えた。同行のNPL比率の上限は5%と定められており、王立通貨庁(RMA)は同行に対して、追って通知があるまで融資実行を止めるよう求めたという。NPLとは、返済予定日から91日以上返済が滞っている融資債権を指す。

CSI銀行のNPLの増加は、同行の財務持続性に関する懸念材料となっている。昨年12月末時点で、NPL比率は5.23%を記録し、3月末には11.04%に達した。同行は農業部門に6億3700万ニュルタムの融資を行い、同様に畜産部門には7億8000万にゅるたむ、製造業・生産部門には4億ニュルタムを貸し出した。このうち、製造業向け融資が最も高いNPL比率を示している。その比率は15%にも達する。同行の製造業・生産部門への融資は、1件当たり最大1000万ニュルタムまで。農業や畜産部門は上限50万ニュルタムとなっている。同行によれば、この製造業・生産部門向け融資枠がNPL比率の高さにつながっていると分析されている。

同行CEOによると、パンデミックが製造業・生産部門のパフォーマンスを悪化させ、融資返済を滞らせたという。しかし、パンデミックに伴う行動制限が緩和されるにつれ、延滞している返済は行われるものと見ている。新規融資実行の凍結は長引かないというのが同行の見通し。

同行は、返済の改善に向け国内各地に支店の開設を急いでいる。他行での借入金による返済も受け付けている。CSI銀行は2020年の発足以降、20億ニュルタムを越える融資を行ってきた。顧客数は6,200にも及ぶ。

この記事だけを拾うと、CSI銀行にだけ問題が生じているように思われがちだが、4月27日(金)にはクエンセルもこの件を報じており、RMAは、CSI銀行以外にも、ブータン開発銀行(BDBL)及び王立ブータン保険公社(RICBL)に対しても、新規融資の実行を凍結するよう求めている。いずれもNPL比率の高まりが理由として挙げられている(⇒こちら)。

インタビューを受けているCSI銀行の担当者が、債権回収に楽観的な見通しを示していることは少し気になる。こういう報道が出ると、「それじゃうちも」と言って返済を滞らせる債務者が続出するのではないかと。

そういえば、去年、「銀行から融資を受けられた」と言って小切手を見せてくれた僕の友人K君、先月ぐらいから極端にレスが悪くなったなぁと気になり始めた。メッセージ送っても返信も来ないし、何かあったのだろうか…。
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『生き抜くための12のルール』 [読書日記]

人生というカオスのための解毒剤 生き抜くための12のルール

人生というカオスのための解毒剤 生き抜くための12のルール

  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2020/07/07
  • メディア: Kindle版

内容紹介
トロント大学心理学研究者による、人生における12の処世術を著した大ベストセラー。ソクラテス、ニーチェなど偉大な哲学者、心理学者たちの言葉を引用しつつ、現実世界の残酷さに対処するための、人生のあるべきふるまいを具体的に、また手厳しく教示する。
【購入(キンドル)】
今週は、新党DTT(Druk Thuendrel Tshogpa)がブータン選挙管理委員会で政党登録申請書を提出したことが報じられていたが、その党首であるキンガ・ツェリンさんと首都のロックダウン中の滞在先ホテルでの食事中の会話の中で、愛読書として二度三度と話題に出た本の1つが、ジョーダン・ピーターソンの『12 Rules for Life』であった。最初に話題に上ったのは1月下旬だったと思うが、その頃にキンドルで日本語版をダウンロードして、それで読み始めた。

しかし、この本、570ページもあって手ごわい。また、各章とも、章のタイトルとなっている「ルール」と本文の記述の関係があまりはっきりせず、読み進めるうちに、自分が今どこにいるのかがわからなくなってしまうことが何度もあった。1つのルールについて、平均すると45ページぐらい割かれている計算だが、たいてい就寝前の時間を読書に充てているため、章を読み切る前に寝落ちしてしまう。そうすると、再開する際に今何の話だったっけと思い出すのが大変だ。

だらだら読んでいたら、自分自身の中での読書の優先度も下がり、何度も何度も後回しにする結果となった。自分としては頑張って読み進めたつもりでも、まだ30%かと思うとガックリくる。結果的に読みかけの状態で2カ月近くも放置したが、これじゃマズいと5月に入って読込みを再開した。

本書で著者が語っている「12のルール」とは、それぞれの章のタイトルをベタで列挙したらこんな感じだ。(比較が変だが、有名な「ウルトラ五つの誓い」より、数は多くて具体的でない(笑))

[Rule 01] 背筋を伸ばして、胸を張れ
[Rule 02] 「助けるべき他者」として自分自身を扱う
[Rule 03] あなたの最善を願う人と友達になりなさい
[Rule 04] 自分を今日の誰かではなく、昨日の自分と比べなさい
[Rule 05] 疎ましい行動はわが子にさせない
[Rule 06] 世界を批判する前に家のなかの秩序を正す
[Rule 07] その場しのぎの利益ではなく、意義深いことを追求する
[Rule 08] 真実を語ろう。少なくとも嘘はつかないことだ
[Rule 09] あなたが知らないことを相手は知っているかもしれないと考えて耳を傾ける
[Rule 10] 正直に、そして正確に話す
[Rule 11] スケートボードをしている子どもの邪魔をしてはいけない
[Rule 12] 道で猫に出会ったときは、撫でてやろう

ルール自体が比喩的で、その意味するところは何なのかが字面だけからは想像できないルールも多々ある。たぶん、解説がないとルールの表記自体が腑に落ちないケースもあるに違いない。1つのルールについて45ページ程度費やして著者も詳述を試みているわけだが、挿入される逸話や過去の哲学者、聖書などからの引用等、それがどうこのルールに結び付くのかがにわかに理解しづらかった。翻訳の質の問題ではない。訳文自体は読みやすかったとすら思う。

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プンツォリンの物価 [ブータン]

プンツォリンの物価は上がっているのか?
Is Phuentsholing becoming expensive?
Rajesh Rai記者(プンツォリン)、Kuensel、2022年5月27日(金)
https://kuenselonline.com/is-phuentsholing-becoming-expensive/
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【要約】
行動制限の緩和とともに、プンツォリンはゆっくりとパンデミック前の状態に戻りつつあるが、市民は物資の価格がティンプーよりも急騰していることを懸念している。例えば、タバコはティンプーだと1箱100ニュルタムだが、プンツォリンでは120~150ニュルタムする。

ソルチェンに運転手交代ポイントがあった頃は、ティンプーの方が物価は高かった。しかし、このチェックポイントが撤去された後、運送手数料が下がり、ティンプーの物価が安くなったのだという。ただ、本当の理由は、ティンプーの業者がプンツォリンよりも規模が大きく、製造業者から直接輸入しているからだと指摘されている。プンツォリンでは、製造業者から直接輸入している業者は多くない。

プンツォリンの事業主は、ほとんどがジャイガオンから仕入れている。ジャイガオンからの輸入には追加の運送料が日割りで加算され、さらに積替え手数料もかかる。

ティンプーの物価はまだ高いとの指摘もある。プンツォリンのお店なら80ニュルタムのものが、ティンプーだと150ニュルタムする。コンテナやカーゴを使って輸入する場合にこうした差が生じる。しかし、ティンプーやパロの方が品ぞろえが豊富だ。ハードウェアでもその傾向がある。これらはコロナ禍により人口が多い都市部に物資を供給する必要があったからだともいえる。

取材を受けた事業者は、関係機関はプンツォリン経済をパンデミック前の状態に戻していく方策を検討する必要があると指摘する。国境ゲートがオープンすると、プンツォリンはインド側のビジネスとも競争を強いられる。少なくとも40%の事業がインド側との取引に事業分散が行われると見られる。

プンツォリンの貿易事務所は今のところ物価や取引価格の問題について特段の苦情は受けていない。物価上昇が見込まれる中で、5月23日、貿易事務所は、自動車整備工場やサロン、パーラー、ホテル、レストラン、小売店、企業等を含む全事業者に、サービスチャージを明示するよう通達を出した。

プンツォリン貿易事務所のソナム・デンドゥップ所長代行によると、食用油の価格は、プンツォリンよりもティンプーの方が安いとのこと。ティンプーの物価の方が安いという点については、消費者保護局(OCP)が6月にレポートを発表したら、より明らかになるだろうと述べた。彼の事務所もOCPに対して市場価格情報(MPI)データを提出した。ソナム氏はさらに、COVID-19に伴うすべてのプロトコルが撤廃されたら、価格は下がるだろう。結局のところ、大きな違いは生じないと述べた。

プンツォリンに越してきてから当地でよく聞かれた指摘は、コロナの影響で、プンツォリンが中継地として機能しなくなったということだった。ジャイガオンから入って来る物資はいったんティンプーまで運ばれ、そこで仕分けされて一部がプンツォリンに流れてくる。輸送コストが2回かかるので、物価が上がったのだという。すべての物資がそうというわけじゃないかもしれないが、これは一理あるかも。

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わからん!『わかる!電子工作』 [仕事の小ネタ]

わかる!電子工作 (I/O BOOKS)

わかる!電子工作 (I/O BOOKS)

  • 出版社/メーカー: 工学社
  • 発売日: 2021/11/26
  • メディア: 単行本
内容紹介
かつて電子工作のイメージと言えば、専門的な知識と技術を必要とするものでした。しかし、「Raspberry Pi」や「M5Stack」など、ハンダなしでも動かせるマイコンボードが主流となり、そのハードルは下がりました。本書では、手軽になった「電子工作の現状」や「最低限必要なもの」や、意外とつまずきやすいプログラミングについての基本的な事項など、実例を交えて解説します。
【購入】
この手の本を内容も確認せずに購入検討する際、僕が参考にしているのは、メイテック社が運営しているネットメディア「fabcross」である。ここで新刊の案内を確認して、面白そうだとアマゾンで注文し、家族に食材を送ってもらう際に、段ボール箱のなかに紛れ込ませてもらう。本書もそんなプロセスを経て、今年1月に僕の手元に届いた。

電子工作は依然として僕にとってもブラックボックスだ。取り組むために最低限揃えておいた方がいいものが何なのかもわからない。難なく電子工作をこなしている人は「趣味の延長」ではじめたと仰るが、この年齢になってから新たに取り組むには最もつらい領域だと僕には思える。この手の本は新陳代謝が激しいので、同じテーマを扱うなら刊行が新しいものを選んだ方が得策だと考えたりする。開発環境が頻繁にアップデートされるので、数年経ると本の解説と実際の画面が全然違うということも日常茶飯事だ。

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社会への再統合への一歩となるか? [ブータン]

ハピネスセンター、14人に技能訓練を提供
Centre gives skills training to 14 clients
Rajesh Rai記者(プンツォリン)、Kuensel、2022年5月24日(火)
https://kuenselonline.com/centre-gives-skills-training-to-14-clients/
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【抄訳】
プンツォリンにおける薬物依存症回復支援ボランティアグループ「ハピネスセンター」の14人の回復者が、CSTで、エネルギー節約型建設、屋内電設、大工塗装、配管といった技能について研修を受けた。同センターが企画したもので、Nazhoen Lamtoen、CST、労働省、HELVETUSの支援を受けて、5日間の基礎技能研修として行われた。研修は5月20日に終了。HELVETUSが資金拠出したもの。

受講者の1人、ペマ・ドルジさん(21)は、屋内電設の研修を受けた。多くのことを学べたという。配線もできるし、家電製品に関係する電気関連の仕事だったらできるだろうと述べる。理論と実践を両方学べる、いい研修だったと振り返る。彼は2015年にクラス6を落第した。薬物依存が原因だった。彼はハピネスセンターの最初のクライアントの1人だ。

カルマ・ワンディさん(21)も薬物依存からの社会復帰を目指す1人。クラス10は修了。彼は配管の研修を受けた。「僕は家の配管工事ならたいていのことは修理できます。5日間の研修はとても実戦的で、忘れることはないでしょう。」彼はセンターに8カ月身を寄せている。

市内トールサとオムチュの合流地点にあるハピネスセンターは、再発予防のためのボランティアグループとして知られる。復帰途上にある全ての人々のニーズに応える取組みを行っている。現在、センターでは17人の回復者が暮らしている。

HELVETUSのタシ・ペム代表は、CSTでの修了式に出席し、ブータンの若者の失業者数は極めて深刻だと述べた。「小さな国なので、余計に深刻。若者に機会を提供することができなければ、社会として失敗します。」技能開発研修は、受講者に生きる目的と安定をもたらす。こうした研修はさらに推進され、若者はこうした機会をもっと活用していくことが必要。タシ代表はこう述べた。

ハピネスセンターの創設者の1人、バップ・ドジ・ゲレさんは、この研修はHELVETUSとの初めての共同プロジェクトだったと述べた。「HELVETUSはこうした作業に必要なツールもご提供下さいました。感謝しかありません。うちの若者たちの未来を形成していく長い道のりの、この研修は第一歩だと思っています。」

プンツォリンに引っ越してきて、僕はかなり早い時期にこの「ハピネスセンター」を訪問し、バップさんと面談した。記事の文面からはなかなか伝わらないが、このトールサとオムチュの合流地点というのは、アモチュ川の河原の一段目の段丘で、すぐそばにCOVID-19対策で作られた仮設住宅が立ち並ぶ一角がある。現在17人が暮らしているとあるが、3つほどの部屋しかなく、ベッドマットが床に敷かれ、その入居者はそういうところで寝泊まりしている。17人も暮らしているとしたら生活環境としてはかなり劣悪。HELVETUSのタシ代表も、修了式の後このセンターの共同生活の現場を視察して、絶句されていたと耳にした。

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だから言わんこっちゃない [ブータン]

障がい者のビジネス、軌道に乗るのに苦戦
Businesses of PwDs struggle to stay afloat
Yangyel Lhaden記者、Kuensel、2022年5月23日(月)
https://kuenselonline.com/businesses-of-pwds-struggle-to-stay-afloat/
【要約】
ブータン障がい者協会(DPO)がUNDPと韓国のKOICAの支援を得て障がい者による4件の起業を支援してから6カ月が経過するが、音楽学校のみが現在操業している状態。長引くロックダウンが事業に深刻な影響を与えている。

総勢45人の障がい者が、音楽や縫製、製パン・製菓、キャンディ製造の機材を供与され、グループでの起業を志した。パムツォでは、7人の障がい者が視覚障がい者によるクンフェルエンターテインメントという音楽学校を運営している。ロックダウン以前は、この音楽学校には30人程度の生徒がいた。現在の生徒数は3人に過ぎない。

この学校は音楽を教えるだけでなく、歌や音楽を録音し、作曲も手掛ける。メンバーの1人、サンゲイ・キンザンさんによると、自分や友人を独立させてくれた支援には感謝しているという。「私たちはいつも音楽を教えたいと思ってきました。でも、楽器を購入する資金がありませんでした。」

製菓店「ヘルシーオプション」は11月から営業開始したが、ロックダウン後は営業再開していない。製菓店を担当するブータン脳卒中財団は、事業計画の改定を条件に営業再開を決めたところだ。この製菓店は15人の障がい者によって運営される予定だった。しかし、12人だけが経営参加を決め、試行営業の期間中、わずか6人で経営せざるを得なかった。彼らはその収入を自分たちの間で分配した。

同財団の創設者であるダワ・ツェリン氏によると、メンバーをガイドできるメンターがいない状態で営業を行うのは、障がい者にとっては難問だという。「彼らはチームで働くことができませんでした。全員が何らかの異なる障がいを抱えているからです。資本不足と機材不足も問題です。」

ダワ氏は、メンバーに対し、月決めの報酬払いを提案し、ヘルシーオプションのブランドを、標準的なパッケージのブランドとして推進し、さらに製菓店で障がい者をガイドできるメンターを導入するよう、支援をドナーに対して働きかける計画だという。
《後半に続く》


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そこがバジョだから [ブータン]

バジョタン高等中等学校での水耕栽培実践
Hands-on hydroponic farming taught in Bajothang Higher Secondary School
Changa Dorji記者、BBS、2022年5月22日(日)
http://www.bbs.bt/news/?p=169659
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【抄訳】
学びのスタイルは皆が違うが、ほぼ全員が平等に学べるスタイルが1つある。実践的学習である。ワンデュポダンのバジョタン高等中等学校(HSS)の農業食料安全保障科目では、生徒は水耕栽培施設を通じて栽培の実践を学んでいる。

土壌を用いずに作物を育てるという水耕栽培がバジョタンHSSに導入されたのは先月のこと。今では、トマト、ニンニク、トウガラシ、レタスが、栄養素を溶かした水によって育てられている。この施設が設置されてから、学習環境はより面白さが増し、実践的になった。

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学校農業プログラムの部員を含む農業食料安全保障を学ぶ200人以上の生徒は、毎日この施設を訪れる。生徒は実践的栽培法を試すだけでなく、スマート農業の技術を学んでいる。

シャルミラ・ライさん(生徒)「2週間で作物を育てることができます。通常の栽培法だとほぼ1カ月はかかります。これなら誰でもできます。骨の折れる作業がないので、お年寄りでも自宅でできます。」

テショック・ワンポさん(生徒)「水耕栽培の実習クラスは役に立ちます。こういった知識があれば、職に就けなくても将来こういうビジネスを立ち上げて生計を立てることができると思います。」

学校関係者によると、水耕栽培は生徒たちにとって魅力的な学習センターの1つとなっているという。ドイツが支援する「農村開発」プロジェクトで、総額13万ニュルタムで施設が導入された。バジョタンHSSは、水耕栽培施設が設置された国内最初の学校である。

キンレイ・ドルジ副校長「生徒は非常に短期間で自分の育てた作物が実ることに興奮しています。生徒にとって水耕栽培は初めての体験。今まで見たこともない子もいたようです。」

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農村開発プロジェクトの事務所では、こうした事業を他の学校でも複製していくため、教育省と協議を続けている。加えて、生徒たちは、養魚、キノコ栽培、養鶏といった他のタイプの農業についても体験していく。

農業プログラムのバラエティの豊富さが評価され、バジョタンHSSは農業省から、2019年と2020年に最優秀学校農業賞を授与された。

昨年、2年ぶりにブータンに来てから、水耕栽培についてブータン人が言及しているのを耳にする機会がとみに増えた気がする。しかも、いろいろな立場の人がいろいろな視点から水耕栽培をポジティブに語っている。ある人は、「肢体に何らかの機能障害があっても自宅でできる」と仰っている。スペース確保の問題もあるので、水耕栽培の施設をモジュール化して、狭い場所でもできるようなモジュールが開発されれば、普及はそこそこ進むかもしれない。

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21世紀型スキルに必要なもの [ブータン]

成人にも21世紀型スキルを
ASE to equip adolescents with 21st century skills
Phurpa Lhamo記者、Kuensel、2022年5月21日(土)
https://kuenselonline.com/ase-to-equip-adolescents-with-21st-century-skills/
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【抄訳】
成人や若者に早い段階で21世紀型スキルを身に付けてもらうため、昨日、ブータン成人技能・就業可能性強化プロジェクト(Adolescents Skills and Employability (ASE) )がローンチされた。チミ・ヤンゾム・ワンチュク王女、ブータン青年開発基金(YDF)代表が、国連や政府機関、市民社会組織の体表者とともにこのプロジェクトの発足を祝った。このプロジェクトは、全国64の学校と10のユースセンターにおいて、10歳から24歳までの約1万人の子どもが関与して実施されるもの。

この1年間のプロジェクトでは、小規模なブートキャンプや全国レベルでのブートキャンプと表彰、ワークショップなどが開催され、生徒は自分のアイデアをピッチできる。実施機関である教育省は、マスタートレーナーによる担当者向け研修をスタートさせる。

ユニセフのブータン事務所長であるウィル・パークス博士によると、マスタートレーナーと各関係機関担当者が、ASEを次の2つのプラットフォームを使って展開していくのだという。1つはUPSHIFT(若者のソーシャルイノベーション・ソーシャルアントレプレナーシッププログラム)で、成人や若者を支援して、地域の課題を特定してソリューションをデザインする能力を高めてもらおうとするもの。もう1つはUNISOLVEというデジタルプラットフォームで、若者が必要とするスキルを開発できる。ASEとUPSHIFT、UNISOLVEの三者が、グローバルなマルチセクターパートナーシップである「世代無限大(Generation Unlimited)」プラットフォームを形成し、世界中で18億人の若者世代が生産的で社会構成員として成長していけるよう支援していくのだという。

64の学校は、初等学校から高等学校まで、全国から選ばれる。教育省関係者によると、私立学校も何校か選ばれるという。また、地理的にも農村・都市で20県すべてで平等に配分される。各校から最低50人がプロジェクトに参加するよう選ばれる。

教育事務次官代行のカルマ・ゲレ氏によると、ASEは現在進行中の教育セクター改革を補完するものだという。同省の改革には、学校教育改革のメインプラットフォームとして採用された「ブータン・バカレロア」も含まれる。21世紀型スキルを生徒に身に付けさせることを強調する改革である。

ウィル・パークス博士は、基礎的スキルやデジタルスキル、特定ジョブに応じたスキルに加えて、若者は学校や日常生活、仕事などで生かせる21世紀型スキルを必要とするのだと述べた。21世紀型スキルとは移転可能なスキルまたはライフスキルとしても知られ、若者がアジャイルな学習者、グローバル市民となっていくのを認め、個人の課題や社会の課題、アカデミックな課題、経済面での課題等への解決策を自ら見出していく力を高めるものだとする。(後略)

ASEはYDF、ローデン財団、ユニセフとのパートナーシップに基づき、教育省が実施機関として実施される。

この報道は、5月21日にクエンセルが報じただけでなく、20日夜にはBBSもテレビのニュースで報じていた(Preparing Bhutanese youth to be life long learners and contributing citizens)。相当長尺の報じられ方だったので、どちらの記事を使おうかと迷うところではあったが、ヘッドラインに「21世紀型スキル」を用いたクエンセルの記事の方を採用することにした。いずれにしても、それだけ重要度の高いニュースだということだ。

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廃棄物管理フラッグシッププログラムの概要 [ブータン]

ティンプー市、来年度に最終埋立地を建設
Thimphu thromde to construct sanitary landfill next fiscal year
Yangyel Lhaden記者、Kuensel、2022年5月21日(土)
https://kuenselonline.com/thimphu-thromde-to-construct-sanitary-landfill-next-fiscal-year/
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【要約】
ティンプー市は、来年度、メメラカの開放埋立地に変わる最終処分場を建設する。国の廃棄物管理フラッグシッププログラムに基づくもので、リサイクル工場、ストックヤード、コンポスト、バイオガスプラント、建設及び破壊工場、焼却場などから成る48.7エーカーの総合的廃棄物管理施設となる。

メメラカの埋立地は1993年に作られ、耐用年数は10年と言われていた。18年も前にその耐用年数を越えてしまっていた。市の関係者によると、メメラカがただ単に開放地に廃棄されるだけの構造だったのに対し、新たな衛生埋立地は工学的措置が施された施設となる。「埋立地の設計がようやく最終確定し、総費用を現在算出中です。」

この担当者のよると、新しい衛生埋立地の耐用年数は22~29年で、その年数は、廃棄物の分別とリサイクルの進展度合いによるという。ティンプーでは、埋立地で廃棄されるゴミは、2019年には1万4,824.8トン、2021年には1万9,717.5トンとなり、2年間で4,800トン増えたとされる。

衛生埋立地の浸出液タンクを備えた施設の完成には1年半がかかると見られている。

一方、フラッグシッププログラムでは、廃棄物分別、回収、運搬、処置、回復、処分等の一連の工程を、段階的に全国で実施する予定であり、その第一歩がティンプーでの実施となる。ティンプーは、市内に9つのドロップオフセンターを建設し、ティンプー県は5ゲオッグで合計25カ所の回収所を建設し、電動のゴミ収集車9台を受け取った。ドロップオフセンターはそれぞれの指定地域における回収施設で、住民はゴミ収集車による回収に間に合わなかった場合のゴミをここに持ちこむことが可能。

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このフラッグシッププログラムの支援のため、日本政府と日本国民は、28台のゴミ圧縮収集車と、3台のダンプカー、2台のバックホウローダー、掘削機1台、ブルドーザー1台、コンテナ24基を4つの市に供与するという、総額3億3千万ニュルタムの無償資金協力を行った。

このフラッグシッププログラムは、2030年までに廃棄物ゼロを実現することを目指している。これは、現在埋立地に運搬される廃棄物を、全体の80%から15%未満にまで削減することを意味する。

固形廃棄物管理の問題は、今年4月24日に描いた「ゴミ収集車に付加できるもの」という記事の中でもご紹介しているが、今回のクエンセルの記事は、廃棄物管理のフラッグシッププログラムについてかなり包括的にカバーされている記事で、改めて取り上げることにした。

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『エミール(まんがで読破)』 [仕事の小ネタ]

エミール (まんがで読破)

エミール (まんがで読破)

  • 出版社/メーカー: Teamバンミカス
  • 発売日: 2021/09/11
  • メディア: Kindle版
内容紹介
世界を変えた男の育成シミュレーション。 18世紀フランス。神は国王を使者として人々を支配するという「王権神授説」により階級社会が形成されていた。このような不平等が成立する社会を改革すべく、哲学者・ルソーは人間の教育に着目する。人間本来の善性によって教育のあり方の理想を追い求める、現代でも教育を志す者のバイブルとして読み継がれる思想書を漫画化。
【Kindle Unlimited】
首都ロックダウンで悶々と暮らしていた時期、刺激が欲しくて聴講したウェビナーの1つで、ルソーの『エミール』が参考文献として紹介されていた。

昨年は年初に「古典を読む」と目標に掲げ、アダム・スミス『道徳感情論』『国富論』等を購入して当地に持ってきたが、初期に読んだ『道徳感情論』が難解なうえに膨大で、ダラダラ読んで余計わからなくなり、数カ月かけて最終ページまでは辿り着いたけれど、何が書かれたのかがさっぱり表現できないという苦い経験をした。一方、今年に入ってから聴き始めたポッドキャストのCOTEN RADIOで、「フランス革命」のシリーズを聴いた際、その思想的基盤として紹介されたルソーについては興味が湧いていた。当然『社会契約論』なんかも読みたい古典リストの仲間入りとなるわけだけれど、過去の経緯があって、すぐにどうこうとはならなかった。でも、COTEN RADIOの「フランス革命」シリーズの後で聴講したウェビナーで再びルソーに言及されると、これは何かの思し召しかなと思えてきた。

ということで、『エミール』を読みたい本のリストに加えようとしたのだが、古典には依然として恐怖心があったし、そもそも原著の日本語訳がいっぱい出ていて、どれがいいのかもわからない。岩波文庫は三分冊ときた。全部読んでたら1年以上かかる気がしたので、先ずは手っ取り早く内容がわかればいいと割り切り、Kindle Unlimitedで読める「まんがで読破」シリーズを選ぶことにした。

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