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『エミール(まんがで読破)』 [仕事の小ネタ]

エミール (まんがで読破)

エミール (まんがで読破)

  • 出版社/メーカー: Teamバンミカス
  • 発売日: 2021/09/11
  • メディア: Kindle版
内容紹介
世界を変えた男の育成シミュレーション。 18世紀フランス。神は国王を使者として人々を支配するという「王権神授説」により階級社会が形成されていた。このような不平等が成立する社会を改革すべく、哲学者・ルソーは人間の教育に着目する。人間本来の善性によって教育のあり方の理想を追い求める、現代でも教育を志す者のバイブルとして読み継がれる思想書を漫画化。
【Kindle Unlimited】
首都ロックダウンで悶々と暮らしていた時期、刺激が欲しくて聴講したウェビナーの1つで、ルソーの『エミール』が参考文献として紹介されていた。

昨年は年初に「古典を読む」と目標に掲げ、アダム・スミス『道徳感情論』『国富論』等を購入して当地に持ってきたが、初期に読んだ『道徳感情論』が難解なうえに膨大で、ダラダラ読んで余計わからなくなり、数カ月かけて最終ページまでは辿り着いたけれど、何が書かれたのかがさっぱり表現できないという苦い経験をした。一方、今年に入ってから聴き始めたポッドキャストのCOTEN RADIOで、「フランス革命」のシリーズを聴いた際、その思想的基盤として紹介されたルソーについては興味が湧いていた。当然『社会契約論』なんかも読みたい古典リストの仲間入りとなるわけだけれど、過去の経緯があって、すぐにどうこうとはならなかった。でも、COTEN RADIOの「フランス革命」シリーズの後で聴講したウェビナーで再びルソーに言及されると、これは何かの思し召しかなと思えてきた。

ということで、『エミール』を読みたい本のリストに加えようとしたのだが、古典には依然として恐怖心があったし、そもそも原著の日本語訳がいっぱい出ていて、どれがいいのかもわからない。岩波文庫は三分冊ときた。全部読んでたら1年以上かかる気がしたので、先ずは手っ取り早く内容がわかればいいと割り切り、Kindle Unlimitedで読める「まんがで読破」シリーズを選ぶことにした。

鍵になるフレーズはいくつもあった。ただ、まんが本を選んで後悔したのは、マーカーで線を引っ張れない、あるいは付箋が貼れないといった、まんがの電子書籍ゆえの利便性の悪さであった。早く読了することはできるが、理解するのに二度読み返した。さすがに手書きでメモるというわけにもいかなかったので、このブログ記事をまとめるのに、Wikipediaを含め、『エミール』を解説しているウェブページを検索して、書き始めた。

僕が本書に興味を持ったきっかけは、STEM教育やPBLとの関連からなので、当然、本書においても、第2篇、第3編で描かれる少年時代のところにある。ルソーは、「読書」や「歴史教育」、「道徳教育」をこの時期に行うことを否定し、徹底して「好奇心」や「有用性」に基いた教育を提唱している。子どもは、自らの体験の中で初歩の道徳感覚や諸学問の有用性を学んでいくべきなのだという。お仕着せの知識ではなく、子どもが自らつかみとっていく生きた知識であるべきだという。他者に惑わされることなく、自分だけの力で推論、判断し行動していく自律した主体として育って行くことが期待されるのだという。
(このあたりは、NHK「100分de名著」シリーズのエミール回を参考にさせてもらいました。)

ただ、まんがではかなり単純化されているから余計にそう感じたのかもしれないが、ストーリー全体がなんだか計画的に機械的に人を育てていくような描きぶりで、そもそもそこを外した育て方をしてしまった場合、リカバリーの途はあるのかどうかが気になってしまった。

例えば、読書なんかは僕は母に勧められて小学生時代からやっていた習慣だが、それってダメなのと思ってしまった。自分の好奇心で勝手に始めた結果が読書だったらいいのか、それでも読書ってダメなのかとか、まんがだからかえってわかりにくいのかもしれない。原著を読めということか。

また、少年期にこれをやるとしたら、前提条件として幼少期にやっておかなければならないことがあるように思われる。ルソーは理性とそれによる文明や社会を悲観的にとらえていて、子どもの内発性を社会から守ることに主眼を置いて、少年期は家族からも切り離して自然に身を委ねる(ことで社会の影響から守る)とするが、そんな幼少期を実際に送っている子どもはそれほどいない。そして、そうした幼少期を過ごせていないと、少年期の過ごし方で探求型学習にふれることは難しいのか、あるいは探求型学習によって、少年期の過ごし方にあった至らない点はリカバーされるのか、そのあたりがよくわからなかった。

なんにせよ、まんがで描かれたダイジェストで、そこまで読み取れというのは難しい。次は原著を読めということになっていくのだろうが、すぐに入手できる術がないため、そこは日本に帰った時に考えようと思う。

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