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だから言わんこっちゃない [ブータン]

障がい者のビジネス、軌道に乗るのに苦戦
Businesses of PwDs struggle to stay afloat
Yangyel Lhaden記者、Kuensel、2022年5月23日(月)
https://kuenselonline.com/businesses-of-pwds-struggle-to-stay-afloat/
【要約】
ブータン障がい者協会(DPO)がUNDPと韓国のKOICAの支援を得て障がい者による4件の起業を支援してから6カ月が経過するが、音楽学校のみが現在操業している状態。長引くロックダウンが事業に深刻な影響を与えている。

総勢45人の障がい者が、音楽や縫製、製パン・製菓、キャンディ製造の機材を供与され、グループでの起業を志した。パムツォでは、7人の障がい者が視覚障がい者によるクンフェルエンターテインメントという音楽学校を運営している。ロックダウン以前は、この音楽学校には30人程度の生徒がいた。現在の生徒数は3人に過ぎない。

この学校は音楽を教えるだけでなく、歌や音楽を録音し、作曲も手掛ける。メンバーの1人、サンゲイ・キンザンさんによると、自分や友人を独立させてくれた支援には感謝しているという。「私たちはいつも音楽を教えたいと思ってきました。でも、楽器を購入する資金がありませんでした。」

製菓店「ヘルシーオプション」は11月から営業開始したが、ロックダウン後は営業再開していない。製菓店を担当するブータン脳卒中財団は、事業計画の改定を条件に営業再開を決めたところだ。この製菓店は15人の障がい者によって運営される予定だった。しかし、12人だけが経営参加を決め、試行営業の期間中、わずか6人で経営せざるを得なかった。彼らはその収入を自分たちの間で分配した。

同財団の創設者であるダワ・ツェリン氏によると、メンバーをガイドできるメンターがいない状態で営業を行うのは、障がい者にとっては難問だという。「彼らはチームで働くことができませんでした。全員が何らかの異なる障がいを抱えているからです。資本不足と機材不足も問題です。」

ダワ氏は、メンバーに対し、月決めの報酬払いを提案し、ヘルシーオプションのブランドを、標準的なパッケージのブランドとして推進し、さらに製菓店で障がい者をガイドできるメンターを導入するよう、支援をドナーに対して働きかける計画だという。
《後半に続く》


縫製業「ラゴー・テイラーリング」は5人の障がい者によって立ち上げられた。しかし、今残っているメンバーは2人だけだ。今も残るメンバーの1人、ドルジ・タマンさんによると、グループで働くのは簡単なことじゃなかった、メンバーに去られるのにはモチベーションが削がれたという。「収入には満足していて、ここで仕事を続けたいと思っています。私は自分の感謝の気持ちをドナーとDPOにはお返ししたい気持ちです。私たちのためにこの事業を立ち上げてくれて。」

キャンディ製造業「ブータン障がいセンター」は5人の障がい者によって始められた。しかし、ロックダウン後は続けられなくなった。労働集約的な仕事で、障がい者が従事するには課題も大きかったという。この事業は、ビルの3階で行われており、メンバーがそこまで辿り着くのが大変だった。「市場に参入することもできませんでした。」

DPOのソナム・ギャムツォ事務局長は、長引くロックダウンがグループビジネスの進捗を阻害したと述べる。DPO自身がそのビジネスのモニタリングをロックダウン中に行うことができなかったことや、ロックダウン中に問題が表面化したこともあったという。「一緒に暮らすことや一緒に働くといったソフトスキルを、障がい者に浸透させることができませんでした」と彼は認める。障がい者は一般的に社会との接触で課題に直面している。ほとんどの時間、彼らは孤立して過ごしているからだ。「彼らは3倍の支援を必要とし、彼らのビジネスを再生させる代替案を今探しているところです。ソフトスキルの修得機会の提供や、メンターの導入、そして、雇用の何パーセントかを障がい者に割り当てられるようなビジネスを運営してくれる人を探すことなどが考えられます。」

事務局長はまた、自分たちの夢は障がい者が起業家となり、自分たちのビジネスを責任を負って展開する姿を見ることだが、現状はまだ被用者でいることに慣れている状況だと述べる。

ダワ・ツェリン氏は、製菓研修を受けた15人の障がい者の中には、ダクツォの運営するビッグベーカリーで雇われている者もいるという。また、他の組織からの支援を受けて、自宅で製菓業を始めた者もいるのだと述べる。

縫製機材の供与を受けた障がい者の中には、自宅で縫製業を始めた者もいる。バクティ・マヤさんはチランの自宅で、またツェリン・ダワさんはハの自宅で縫製業を始めた。

「こんな記事が出てますよ」———そう在留邦人の知人から教えてもらった。

クエンセルが結構な紙面を割いて展開したこの記事のベースになった半年前の障がい者向け技能研修というのはは、去年10月に行われたものだ。当時僕が書いたブログの記事を読むと、(従来から行われてきた障がい者向け)研修のほとんどが習得した技能を実際に使うところまでには至っていないので、「こうしたことが起きないようにするため」に新しい技能研修が行われたとある。また、今回の記事では「市場に浸透できなかった」とあるキャンディ製造は、前回紹介した際のBBSの報道によると、「マーケティング戦略」も支援策に含まれていたことになっている。いったい、何を支援したのだろうか。

クエンセルが今回、かなりの紙面を使ってこんな報道をしたのは、ジャーナリズムのあるべき姿だと思う。前回の研修のことは同紙も報じていて、しかも今回の記事を書いたのは、前回と同じ記者だ(⇒こちら)。自分が報じた出来事がその後どうなっていったのかをフォローするのは、当然のこととはいえ評価できる。ただ、なんでもロックダウンのせいにすれば許されるかの如き報じ方については釈然とはしない。「今までの研修とは違う」と言われて鳴り物入りで行われた研修が、半年経ってみたらやっぱりいつもの研修と同じ結果でしたというのだから、クエンセルの記者には申し訳ないが、まだまだ突っ込みが足りないと言わざるを得ない。しかも、「支援がまだ足りない」とまで仰っている障がい者団体の代表者の声を、そのまま報じている。「それって、事前に予見できなかったんですか」と突っ込んで欲しかった。

障がい者ばかりを集めて、同じような属性の人たちでグループ形成してビジネスを始めさせようという建付けは、当初から僕にはどうにも違和感があった。いろいろな人が同じチームに入ることによって、相互補完が生まれ、その輪の中にいる障がい者の尊厳確立にも、周りの人々の障がいに対する理解促進にもつながるのではないのだろうか。そういうごちゃまぜの環境を作ることができれば、チームとしてのダイナミズムも生まれ、またメンバー個々の能力を踏まえた、生産工程の見直しやイノベーションも生まれてくるのではないだろうか。それなのに、なぜ同じような属性の人ばかりを集めてグループで起業させようなんてしたのだろうか。

ちょっと読んでいて情けない記事だった。来週、ここで登場した人と会う機会があるが、「支援してくれ」と要望されそうで怖い。

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