『コメンテーター』 [奥田英朗]
内容紹介【購入(キンドル)】
あのトンデモ精神科医・伊良部が17年ぶりに復活!直木賞受賞、累計290万部の「伊良部シリーズ」、17年ぶりの新刊です。低視聴率にあえぐワイドショーのスタッフの圭介は、母校のつてで美人精神科医をコメンテーターとしてスカウトしようとする。が、行き違いから伊良部とマユミが出演することに。案の定、ふたりは放送事故寸前のコメントを連発するが、それは暴言か、はたまた金言か!?
週末読書には最適の1冊。奥田さん、今回もありがとうございます!
お気づきの通り、6月は前半の読書ペースを維持することができず、後半急ブレーキがかかり、かつ他のニュースをネタに解説をつけることもままならず、SSブログの更新が急にできなくなった。
理由はいつのも超多忙ってやつ。同僚から仕事を無茶ぶりされ、常に作業期限に追われる生活に陥った。親切心から引き受けちゃったZoom会議のホストも立て込んだ。ひどかったのは6月30日(金)で、CSTの卒業式の前後で、Zoom会議を4つもやった。翌7月1日(土)は2つ、今日2日(日)は6時間ものオンライン講習会があった。加えて、今週は集中豪雨も収まったようで、ティンプーからの来訪者も相次ぎ、夜の会食もあった。今うちのファブラボではインターン10人を受け入れているが、その10人の戦力化のために研修も主催した。
これだけやっていたら、普通に時間がない。こんなに空き時間のなさを感じたのは久しぶりだ。お陰で睡眠時間を相当削った1週間でもあったが、幸いなことに7月1日(土)の午前中に予定されていたユースセンターへの協力プログラムを、ユニセフから他のプログラム実施を急に言われたユースセンターが来週に延期にしてくれたおかげで、土曜日中に大きな穴が開き、ちょっとだけ余裕ができた。ここは息抜きだと思い、睡眠を多めにとるとともに、気軽に読める小説を急遽ダウンロードすることにした。
それが「ドクター伊良部」シリーズ最新刊である。
『沈黙の町で』 [奥田英朗]
内容紹介【購入(キンドル)】
北関東のある県で、中学2年生の男子生徒が部室の屋上から転落し、死亡した。事故か? 自殺か? それとも―― やがて祐一が同級生からいじめを受けていたことが明らかになる。小さな町で起きた1人の中学生の死をめぐり、町にひろがる波紋を描く。被害者や加害者とされた子の家族、学校、警察などさまざまな視点から描き出される群像小説で、地方都市の精神風土に迫る。朝日新聞連載時より大きな反響を呼んだ大問題作。
『リバー』を読んだ後、もう少し奥田英朗作品を味わってみたくて、次に選んだのも『リバー』と同じく北関東(たぶん群馬県)を舞台にした犯罪ものだった。但し、今回の作品は同級生4人が容疑者として早くから特定されていたにも関わらず、真相究明までが長く、事故なのか自殺なのか、屋上から転落するような状況に誰と誰が追い込んでいったのか、多くの中学生、さらには教師や父兄まで絡んできて、後味のあまり良くないエンディングになっていた気がする。
事故の真相はそんなところかなとは思ったが、そこに至るまでの闇の深さは圧倒的だ。どの登場人物の立場であったとしても、その場に置かれればそういう言動や行動を取っていただろうと思うし、それらが組み合わさって誰もが望まない、救われない事件に発展してしまう。そして、そうした事件が起きてしまった後の対応でも、13歳か14歳かによって、同じ同級生でも逮捕となるか否かが異なったり、また母子家庭と両親のいる家庭では置かれた状況が異なったり、また両親がいる家庭でも母親と父親では対応ぶりが異なったりと、これでもかこれでもかと言わんばかりに登場人物が分断されていく。
被害者と加害者のいずれにも、街の有力者とつながっている親がいたりする。とにかく、読者が作品中の特定の登場人物に加担することを許さない展開なのである。奥田英朗って、登場人物の一人一人を極限状態にまで追い詰めたところから生まれる人間のどうしょうもない反応を描くのが本当に上手い。
ゆっくり味わうつもりでいたら、今回も一気に読み切ってしまった。というか、そういう時間も今週はあった。今だから言えるが、今週は週明けに吐き気から発熱、頭痛、肩こり、下痢とオンパレードで、一時はデング熱かもという事態に陥った。幸い、熱は早くに下がったが、火曜日は大事を取って1日仕事を休み、翌日以降もぼちぼちと仕事の負荷を増やしていくような過ごし方をした。
『リバー』 [奥田英朗]
内容紹介【購入(キンドル)】
同一犯か? 模倣犯か? 群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見! 十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか─── 人間の業と情を抉る無上の群像劇×緊迫感溢れる圧巻の犯罪小説!
年明けから、池井戸潤の短編単品ものを続けざまに読んでお茶を濁してきたが、遂に本格的な作品を紹介することになる。昨夏に発表された奥田英朗の新作を、満を持して読むことにした。新年のご祝儀だ。
656頁もある大作である。それだけにいろいろな人物を登場させ、連続殺人事件の捜査の進展とともにその人々が複雑に絡み合っていく。そして最後にはそれらがつながって、犯人逮捕へと進んでいく。容疑者の特定まではわりと早く進むが、そこからの展開が混迷を極め、ラスト100頁を切ってもまだ展開の予想がつかないという面白さ。
奥田英朗さん、こういう作品が本当に得意だなと改めて思う。
ただ、僕は作品の舞台となった渡良瀬川流域のうち、足利ぐらいしか土地勘がなく、太田や桐生には行ったことがない。このため、地点間移動がそれほど活発に行えるところなのか、また前橋や宇都宮から事件現場への移動はそうそう頻繁に行えるところなのか、そのあたりの感覚がよく理解できなかった。
多分土地勘があればもっと楽しめる作品だったに違いない。
『罪の轍』 [奥田英朗]
内容(「BOOK」データベースより)【購入(キンドル)】
昭和38年。北海道礼文島で暮らす漁師手伝いの青年、宇野寛治は、窃盗事件の捜査から逃れるために身ひとつで東京に向かう。東京に行きさえすれば、明るい未来が待っていると信じていたのだ。一方、警視庁捜査一課強行班係に所属する刑事・落合昌夫は、南千住で起きた強盗殺人事件の捜査中に、子供たちから「莫迦」と呼ばれていた北国訛りの青年の噂を聞きつける――。オリンピック開催に沸く世間に取り残された孤独な魂の彷徨を、緻密な心理描写と圧倒的なリアリティで描く傑作ミステリ。
2週間にわたる今回の一時帰国のフィナーレを飾る1冊。自宅を出る前にダウンロードしておき、実際に読み始めたのは羽田からバンコクまでの機中。トランジット先のバンコクでの滞在中、バンコクからパロまでの機中と読み進め、ティンプーでの滞在中にようやく読み切った。673頁という大作。一気に読まないと面白くない作品———というか、読みだしたら止まらない作品だった。
また、読み始めてみて、同じ奥田作品の1つである『オリンピックの身代金』と作品の舞台が似ていると感じた。ちょいと調べてみると、警視庁捜査1課第5係の顔ぶれはほとんど同じ。『オリンピックの身代金』の方が舞台としてはちょっと後になる。当時はまだ戦地帰りの刑事もいたようだが、一方で組織の縦割りや組織間の意地の張り合い等はすでにあって、捜査がうまく進まないという事態も度々起きていたようだ。
どちらも、1964年10月の東京五輪を背景に、大きく変貌を遂げつつある東京と、そこに労働力を輩出していた当時の地方(特に東北や北海道)の姿を描いている。時代背景を知るには面白い作品だし、当時世間を騒がせた実際の事件を絡めており(もちろん、作中で起きている事件は架空のものだが)、当時を知るにはいい作品だ。
奥田作品にはいろいろな「抽斗」があるが、「東京五輪」というのもその中の1つとして、確立された感がある。
再読『田舎でロックンロール』 [奥田英朗]
内容(「BOOK」データベースより)【再読(キンドル)】
英米ロックが百花繚乱の様相を呈していた70年代。世界地図の東端の、そのまた田舎の中学生・オクダ少年もその息吹を感じていた。それはインターネットが登場する遥か前。お年玉と貯金をはたいて手に入れたラジオから流れてきた音楽が少年の心をかき鳴らした。T・レックス、ビートルズ、クイーン…。キラ星のごときロック・スターたちが青春を彩り、エアチェックに明け暮れた黄金のラジオ・デイズ。なけなしの小遣いで買った傑作レコードに狂喜し、ハズれレコードを前に悲嘆に暮れる。念願のクイーンのコンサート初体験ではフレディ・マーキュリーのつば飛ぶステージに突進! ロックのゴールデン・エイジをオクダ少年はいかに駆け抜けたのか?
今月、ホント精神的余裕がなかったんだろうね。振り返ってみても、本書を含めても現時点で5冊しか読んでいない。最終週の週末にひと仕事を終えて、次の仕事との間にようやくつかの間の休息をつける1日半を迎えた。但し、土曜午後は停電。徐々に暗くなってくる屋内にこもりつつ、昼寝以外にできたことといったら、キンドルのバックライトを使って既読の本でももう一度読むことぐらいしかなかった。
《こ~んな感じ。あたりが暗くなると、心も暗くなる…》
そこで手に取ったのが奥田さんの自叙伝的エッセイ。その雰囲気は7年前に読んだ時に書いたブログ記事で、結構包括的に語っているのでそちらもご参照下さい。。奥田さんのエッセイは奥田さんが中1だった1972年から、高3になられた78年ぐらいまでをカバーしておられる。ご出身は各務原市立蘇原中学ですか?県内の何かの集まりで、蘇原中学の同学年の生徒と交流したことがあったが、なんかあか抜けてたという記憶があった。奥田さんにとってはド田舎なのかもしれないが、僕は郡部なので、4年のギャップはあったとしても、もっとド田舎です(笑)。
『ナオミとカナコ』 [奥田英朗]
内容(「BOOK」データベースより)【MKレストラン文庫棚から拝借】
ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の“共犯者”になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択…。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か―。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。比類なき“奥田ワールド”全開!
今月に入ってから紹介している本には、ティンプー市内のMKレストランの文庫棚から借りてきた本が多い。今月4冊借りてきているが(うち2冊は上下巻)、なぜかその中に奥田英朗作品が2作品含まれている。この棚に日本の書籍を寄贈された方の中に、奥田英朗ファンがいらっしゃるのは嬉しい。できればMKレストランでお目にかかって、ビールを飲みながら奥田英朗を語ってみたかった。
さて、以前ご紹介した『サウスバウンド』が上下巻で合わせて600頁超だったのに対して、今回読んだ『ナオミとカナコ』は1冊で600頁弱という分量だった。後者も直美が主人公の前半と、加奈子が主人公の後半とできれいに分かれているので、上下巻に分けるという手もあったのだろうが、出版社が違うとそのあたりの編集方針も異なるのだろうか。
1990年代のハリウッド映画『テルマ&ルイーズ』を思い出しながら読んだ。この映画の詳細はあまり覚えていないのだけれど、何かの拍子に人を殺めてしまった2人が、米国西部を逃避行して、最後はグランドキャニオンかどこかで、乗っていたオープンカーごと谷底へ向かってダイブするというシーンで終わっていた。
そういうエンディングに持って行ってしまうのかなと予想していたので、ハラハラしながらページをめくる手がなかなか止まらず、一気に最後まで読み切った。予想とは異なるエンディングだったけれど(どちらにも転びうる展開で、作者自身も最後の1頁に至るまでどちらにするか決めかねていたかもしれないような展開だったけれど)、余暇時間を過ごすために読む小説としてはかなり満足度のある終わり方だったと思う。
『サウスバウンド』 [奥田英朗]
内容(「BOOK」データベースより)【MKレストラン文庫棚から拝借】
父は国家権力が大嫌い。どうやらその筋では有名な元過激派で、学校なんて行くなと言ったり、担任の先生にからんだり、とにかくムチャクチャだ。そんな父が突然、沖縄・西表島に移住すると言い出し、その先でも大騒動に。父はやっぱり変人なのか?それとも勇者?家族の絆、仲間の絆を描いた傑作長編。
先週末、通いつけのレストランに置かれている文庫棚を物色して、面白そうな文庫本を借りてきた。ここのレストランに書棚ごと寄贈されている書籍のほとんどは、某JICA専門家が2018年秋に当地を離任される時に置いて行かれたものだ。へ~、こういうのも読んでおられたんだという驚きもあるが、それまでにこの国におられたJICA関係者の手から手に渡ってきたものも相当ある筈で、必ずしもご本人の趣味とは限らない。ただ、岐阜県出身の作家推しの僕としては、ここの蔵書の中に奥田英朗作品を発見した時には嬉しかった。『サウスバウンド』は読んでなかったし。
ここ1カ月ほど、あまり小説を読んでいなかった。その小説、というか読書自体をおろそかにしていた。遅れてきた「五月病」とでも言おうか、期間中、気分的に相当滅入っていたし、途中ひどい下痢で体調を崩したこともある。読書に集中する気にもなかなかなれず、悪循環に陥っていた。それが少し改善の気配を見せたのが先週末、家族からの愛情の詰まった国際EMS便が、なんと1ヶ月もかかってようやく手元に届いたあたりからだと思う。遠方にいても、家族の存在は大きい。
その荷物のおかげで、借りていた『サウスバウンド』はすぐには読み始められなかったのだけれど、今週末は時間の許す限りこの奥田作品を読み、読書への集中力の回復を図ることにした。
上下巻合計すると600頁を超える超大作だが、土曜日中は仕事をしていたにも関わらず、金曜夜からの読書開始で、日曜午前中までに上下巻読了を果たした。なかなかのスピード感だと思う。小説としての娯楽性と読みやすい文体、作品を楽しみつつ読書のスピードを取り戻したい時には、奥田作品は合っている。
再々読・『東京物語』 [奥田英朗]
当地にいると、週末はピクニックやトレッキングに行かないかと誘われることも時々あるが、今回の駐在において心臓に不安を抱えていた僕は、そうしたお誘いをやんわりお断りしている。本来の任地は海抜300m弱。僕もそれだったらというので今回の仕事の話は引き受けた。でも、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、その任地には入ることができず、海抜2300m強の首都で取りあえず活動をスタートさせることになった。これ自体、渡航にあたってはものすごい不安があった。幸い、今のところは無事だが、それでも怖いから、高低差を伴うウォーキングはなるべく避けている。その代わりに、もっぱら週末読書にいそしむのだ。
でも、今週末はあまり難しい本は読みたくない気分。で、前回の小説再読シリーズの流れで、また1冊読んだ。
性懲りもなく―――というには6年の間隔は空きすぎで、二度目の再読もお赦し下さい。ちなみに初読は2009年7月、前回の再読は2015年2月だった。いい感じで6年間隔を空けているが、どちらの時もそれなりに力のこもった感想をブログでも紹介しているので、そちらも是非ご笑覧下さい。
で、今回二度目の再読で、新たに付け加えられることは何かというのもちょっと考えてみた。
でも、今週末はあまり難しい本は読みたくない気分。で、前回の小説再読シリーズの流れで、また1冊読んだ。
性懲りもなく―――というには6年の間隔は空きすぎで、二度目の再読もお赦し下さい。ちなみに初読は2009年7月、前回の再読は2015年2月だった。いい感じで6年間隔を空けているが、どちらの時もそれなりに力のこもった感想をブログでも紹介しているので、そちらも是非ご笑覧下さい。
で、今回二度目の再読で、新たに付け加えられることは何かというのもちょっと考えてみた。
『我が家のヒミツ』 [奥田英朗]
内容紹介
笑って泣いて、人生が愛おしくなる家族小説。どこにでもいる平凡な家族のもとに訪れる、かけがえのない瞬間を描いた『家日和』、『我が家の問題』に続くシリーズ最新作。笑って泣いて、読後に心が晴れわたる家族小説、全6編を収録。
「虫歯とピアニスト」:結婚して数年。どうやら自分たち夫婦には子どもが出来そうにないことに気づいてしまった妻の葛藤。
「アンナの十二月」:16歳の誕生日を機に、自分の実の父親に会いに行こうと決意する女子高生。
「正雄の秋」:53歳で同期のライバルとの長年の昇進レースに敗れ、これからの人生に戸惑う会社員。
「手紙に乗せて」:母が急逝。憔悴した父のため実家暮らしを再開するが。
「妊婦と隣人」:産休中なのに、隣の謎めいた夫婦が気になって仕方がない。
「妻と選挙」:ロハスやマラソンにはまった過去を持つ妻が、今度は市議会議員選挙に立候補すると言い出した。
この本は昨年9月に新刊で出てから、いつか図書館で借りて読んでやろうと、近所のコミセン図書室に行くたびに新着図書コーナーを物色して、結果空振りに終わるというパターンを4ヵ月も繰り返してきた。こんな場でアナウンスするのも変だが、最近、僕が再び海外に赴任することが決まった。時期は4月だそうだ。こうして後ろが決まってしまうと、これまで読みたくても読んでなかった本はどんどん片付けてしまおうとの衝動が強まり、僕は遂に図書館で借りるという選択肢を放棄し、書店で購入する道を選んだ。
あとがつかえているのでさっさと読んだ。僕は奥田英朗の作品の中でも、「我が家」シリーズは特に好きなので、今回も楽しみにしていたのだが、期待感が膨らみ過ぎて、いざ読んでみたら「あれ?」と思える軽さが気になった。収録作品の1つ「妻と選挙」に出てくる夫は50代の元直木賞作家だが、最近は出版社の編集者からいてもいなくてもいいようなぬるい扱いを受け、自分が時代のニーズに合わなくなってきたのではないかと不安に陥るシーンが描かれている。これ、どうも著者本人のことを自虐的に描いているような気がしてならなかった。
再読・『東京物語』 [奥田英朗]
東京圏、転入超過11万人 一極集中が加速相変わらず、東京一極集中が続いているようだ。先週政府が発表した人口動態に関する統計によると、名古屋や大阪では転出超過になっている一方で、東京の転入超過は続いているらしい。報道では転入者の年齢層までは確認できないけれど、若者が多いのだろうということぐらいは想像がつく。間もなく北陸新幹線が金沢まで開通する。富山や金沢へはこれで東京から訪れやすくなることは間違いないけれど、観光のような一時的な移動は増えるだろうが、これがかえって北陸地方から東京圏への若者の流出を助長するのではないかと逆に心配にもなる。一時的な訪問者数が増えることで、地元に雇用が生まれ、それが北陸の若者の足を地元にとどめるような働きをすればいいんだろうけれど…。
《東京新聞 2015年2月6日 朝刊》
総務省が5日公表した2014年の人口移動報告によると、東京圏で転入者が転出者を上回る「転入超過」が10万9408人に達した。人数は3年連続の増加となり、東京一極集中が加速している実態が浮き彫りになった。名古屋圏と大阪圏は2年連続で転出が転入を上回り、都道府県別でも13年から2増の40道府県が転出超過となった。総務省は「景気回復とともに、企業の本社機能が集まる東京圏に広範囲から人口が流入している」と説明している。
政府は、昨年12月に閣議決定した人口減少対策の5カ年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」で、地方の人口流出に歯止めをかけ、20年までに東京圏の転出と転入を均衡させる目標を掲げているが、実現は容易ではなさそうだ。
東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)の転入超過は13年から計1万2884人増えた。名古屋圏(岐阜、愛知、三重)は、愛知が転入超過だったが、全体では803人の転出超過になった。大阪圏(京都、大阪、兵庫、奈良)は、大阪府が10年以来の転出超過に転じ、全体で転出が転入を1万1722人上回った。
都道府県別の転出超過の最多は北海道の8942人で、静岡の7240人、兵庫の7092人が続いた。転入超過は東京圏の4都県と宮城、愛知、福岡だった。
そんな折に、再読したのが奥田英朗の『東京物語』だった。名古屋の高校生だった主人公の久雄が、大学受験には失敗したものの、高校卒業して東京で浪人生活をスタートする18歳の春から、30歳の誕生日を迎えるまでの約11年間を、5つのエピソードでつづった短編集である。
内容(「MARC」データベースより)
名古屋から上京した久雄は、駆け出しのコピーライター。気難しいクライアント、生意気なデザイナー、そして恋人。様々な人々にもまれ成長する青年の姿を、80年代の東京を舞台に描く青春小説。