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『開発コンサルタントという仕事』 [仕事の小ネタ]
内容紹介【市立図書館】
途上国で政策提言や技術協力を担う専門家、それが開発コンサルタント。その仕事内容とキャリアパスを、具体的に詳しく紹介。
長年勤めていた法人を早期退職して、フリーランスでありながら、機会があれば年3カ月ほど海外に行ける仕事を作ることができるのが理想だと僕は考えている。たぶん今の開発コンサルタントの業界にいらっしゃる方とはそれほど競合しない領域でそれなりに経験と実績を積んできているので、ニーズがあれば手を挙げたいし、仕事を取れる自信もある。問題は、そういうニーズが顕在化するかどうかなのだけれど(苦笑)。なにせ、開発コンサルタントに仕事を外注する側の組織の人々に間で、「デジタルファブリケーション」や「3Dプリント」の潜在性をご理解いただけているとは思えないので…。
今から1年前、開発コンサルタントの卵とも言える若手の方々を対象とした研修会でお話をさせていただいたことがあるが、彼らからいただいたレスポンスは、「その潜在性は理解できるが、そういう要素を活動に取り込めという業務指示が発注者からなければコンサルタントとしては動きが取れない」とのことだった。残念ながら、それが現実だと思う。自分の寿命が来るのが先か、国際協力の業界で理解者が増えてくるのが先か、今のところはわからない。
そんな「開発コンサルタント」の仕事について、一緒に現場で働いたことがある経験上、相手のことを改めて知っておくのもいいかなと思い、今回は市立図書館で借りた本の中に、本書を含めることにした。こんな本が地方の公立図書館に所蔵されているのには正直驚いた。版元が働きかけたのか、著者の勤務先(アイシーネット)が働きかけたのか、それとも僕の知らないこの地域の方が、関心があって図書館での購入を依頼したのか、理由は何なのかはわからないが、所蔵に役割を果たされた方には感謝したい。
内容としては、大学や大学院で国際開発を勉強した人が、将来のキャリアパスとして「開発コンサルタント」を目指して欲しいという、著者の所属先の強い要望を反映させ、その面白さ、仕事の内容、そこに至るまでのキャリア形成のあり方などを述べた内容だ。特に、コンサルタントの仕事の内容については、そうした方々と現地で一緒にお仕事してきた人間としては、描かれていることにはいちいち首肯するところがあった。若い読者には、一読を期待する。
『友達0のコミュ障が「一人」で稼げるようになったぼっち仕事術』 [仕事の小ネタ]
「コミュ障」で「友達が0人」という、社会にうまく適応できない著者が、多くの挫折を経てたどり着いた、一人でも稼げるようになる技術「ぼっち仕事術」を指南する。コミュ障の人間関係を改善するコミュニケーションのとり方から、収支を安定させるお金の管理の仕方、病みがちな心を整えるメンタルケアまで、コミュ障ならずとも使える実践的テクニックが満載。不安定な現代を生き抜くあらゆる社会人必携のビジネス書です。【市立図書館】
自分が目指そうとしているものがこれに近いのではないかと思ったので、図書館で借りてみることにした。自分がコミュ障であるかどうかは自分ではわからないが、プレゼン本番にあまり強くないのは自分でも自覚があり、それを人並み以上の準備と直前リハーサルで補って、なんとか取り繕って会社員生活をやり過ごした。これから目指すのは「SE」はともかくフリーランスであることは著者と同じである。
それだけに、細々とでも安心できる固定収入を確保した上で、いくつかのアドホックの仕事を組み合わせてやっていけるのが理想だと思う。このあたりは、著者と同意見である。また、がつがつ営業目的で人と会わなくても、緩いつながりをキープしておく意味でたまには会うべきだというのも同感だ。僕はそこがあまりちゃんとできていないと思う。しかも、人的ネットワーク理論で言われるような1年に1回ではなく、著者は半年に1回を推奨している。これはもうちょっとちゃんとやらないといけないと痛感させられた点だった。
『はじめての木工家具づくり』 [仕事の小ネタ]
内容紹介【市立図書館】
木を使ったナチュラル家具づくりの基本&コツ
テーブル、机、イスなどの定番から、キッチンラック、踏み台、すき間収納まで、写真とイラストでビジュアル解説。
・基本の道具の紹介から、作品づくり、塗装の方法まで、誰もがつくれるように写真を多用してわかりやすく解説
・読者自身が自分の好みにあわせてカスタマイズできるよう、塗装の方法も複数紹介
7月下旬から8月上旬にかけてメキシコに出かけて、うち前半の1週間はチアパス州で先住民の女性グループと木工家具作りをしてきた。今振り返っても貴重な経験だったが、ああいった内容での活動になると事前にわかっていたら、今年2月に既にメキシコ行きにエントリーしていた経緯からすれば、本書のような作例集を参考にして、1つ2つ木工家具を作る経験を積んでから現地入りすれば、できたことの幅はもっと広まったのではないかと思う。
メキシコ行きは貴重な体験だったけれど、逆に今の自分に何が欠けているのかを見直す場でもあった。メキシコでできたことを喜ぶ気持ちがある一方で、できなかったことを今後どのようにできるようにしていくか、復習のための課題を突き付けられたような気がしてならない。
渡航準備の段階で、何もやっていなかったわけではない。実際のところ大型CNCを用いた家具作りは経験していた。ただ、大型CNCで切り出し、接着剤なしで組み立てるところまでは経験済みだったが、その後の仕上げで困った。どのように塗装すればいいか、その下準備で行っておくべきことは何か、何もわかっていない自分に気付かされた。
さらに言えば、大型CNCを使って正確なカットは確かにできるようになったが、そもそもカットするためのボードを買いにホームセンターに出向いた時、どのボードを使うか、すぐに決心がつかなかった。樹種による加工の難易度やクセ、留意点の違いなど、実際選択を迫られる場面に来て、どうすればいいのか途方に暮れる数分間を経験したのである。
そういうことも含めると、カットするためのデザインのところに気を取られ過ぎていて、他の工程についての予習が全然足りていなかった。そんな苦い経験が過去にはある。
『ハート形の雲』 [読書日記]
内容紹介【市立図書館】
「アノ家は貧乏だからよ。貧乏すぎるからよ」――順風満帆かと思われた東大卒官僚との縁談に対する、「鬼婆」と言われた母からの反対。箱入りで育てられた家を飛び出した恵美子の運命は。
昭和30年代、浅草。「株式会社菱川」の令嬢・恵美子は子どもの頃から何一つ不自由なく生活していた。「鬼婆」のように厳しかった母親は恵美子の尊敬する兄にいつも辛くあたっていた。そんな恵美子も年ごろになり兄の友人からプロポーズされるが、母に猛反対されてしまう。果たして恵美子の運命は!?そして、実家の会社から造反し独立した兄・貞夫を待つのは成功なのか、破滅なのか……。時代を駆け抜けた家族の息遣いを生々しく描く、芥川賞作家渾身の一作。
先週末市立図書館で新しく借りる本を物色していて、小説を1作品だけチョイ足ししようと思いながら、小説の棚を見て目にとまったのが高橋三千綱の棚であった。タイトルから内容は想像できないので、適当に手に取った。
高橋は2021年8月に鬼籍に入っている。2019年3月発刊の本作品は、かなり晩年の作品ということになる。また、この兄妹が築き、守り上げてきた「染めQ」という会社は実存するし、そこの代表取締役社長は菱木貞夫さんという方である。作品中で兄の貞夫が開発に取り組んだ「ミッチャクロン」や「パテ」は、現在、染めQテクノロジイ社の取扱い製品の中にそのままズバリで含まれている。「菱木」を「菱川」に変えるなどの加工はあったようだが、大半は実話なのではないかと思う。
作品誕生の背景までは知らないけれど、菱木社長の妹さんあたりに口述してもらった菱木家のライフヒストリーをもとに、高橋が小説化したのかなと思う。妹さんの口述を筆記したのだと思うと、最初から最後まで「世間知らず」と謙遜しつつ、対比的に兄や周囲の人々の凄さを際立たせる描き方になっているのも納得がいく。
『日本でいちばん大切にしたい会社』2 [読書日記]
内容紹介【市立図書館】
"日本中に感動の渦を呼んで2年、待望の続編が登場。これまでに訪問調査した6300社から、価値ある会社を改めて抽出。前作同様、働くことの意味、会社の使命に気づかされる、心を打つストーリーが満載。35万人が涙を流し、各メディアが絶賛した前作から2年。読者の熱いご要望にこたえて続編を発売いたしました。日本にはまだまだ素晴らしい会社がたくさんあるんです。7,000社のフィールドワークで見出した、「日本一」価値ある企業とは。
自分が長岡にいる間に、全巻読破してしまいたいシリーズ。市立図書館の「経営」の棚に行くと、「借りろ」と言わんばかりに全8巻が鎮座しておられるので。シリーズも8冊まで行くと、しかも同じ「経営」というジャンルで括ってこれだけ揃えられると、ちょっと迫力がある。
シリーズと言えば、昔働いていた会社で、10年ほど前からシリーズ物の書籍刊行が行われている。既に30冊に到達している。その最初の枠組みを作るのにかかわらせてもらったが、当時感じていた危惧は、これって各巻がそれぞれ「各国事情」の棚に行ってしまって、これらをひとまとめに括る図書分類がないことで、シリーズとしてのインパクトを出しにくいという点だった。今でも書店や図書館に行っても、このシリーズが数冊であっても書棚を占拠している光景は見たことがない。
当時一緒にこのシリーズ物のシリーズ化に携わった上司は、「20冊まとまったら、専用ボックスを作って、中学高校に寄贈したい」と夢を語っておられたが、すでに社を去っておられるし、当時のビジョンを直接耳にしていた僕も社を後にした。今も書籍刊行は続けられているが、こういう活用の仕方はされているのだろうか―――などと組織の記憶の伝達がうまく行われないことを嘆く前に、僕がこの専用ボックスをデザインして、とっとと前例を作っちゃえばいいんじゃんと思うに至った(笑)
話が大幅に脱線しました。申し訳ありません。
『母の待つ里』 [読書日記]
内容紹介【購入】
40年ぶりにふるさとに帰ると――。感動の傑作長編!
「きたが、きたが、けえってきたが」
40年ぶりに帰ってきたふるさとには、年老いた母が待っていた――。大手食品会社社長として孤独を感じている松永徹。退職と同時に妻から離婚された室田精一。親を看取ったばかりのベテラン女医・古賀夏生。還暦前後の悩みを抱えた3人が、懐かしい山里の家で不思議な一夜を過ごすと……。家族とは、そしてふるさととは?すべての人に贈る、感涙必至の傑作長編。ふるさとを想う人、ふるさとに帰れぬ人、ふるさとのない人。ふるさとをあなたに――。
8月末、右目の白内障手術を受けた。しばらくは車の運転はNGだと言われ、仕方ないので僕は通勤にはバスを利用している。職場は駅の西側、さらに信濃川を渡った川西にある。そして僕の宿舎は駅の東側、国道17号よりもさらに東側で、もう少し東に行くと盆地の外輪山に到達する。距離としては約7㎞。当然、この区間を1本でつなぐバス路線はない。駅でバスを乗り換えるが、乗り継ぎがうまくいかないと1時間以上かかってしまう。
そうなると、バスの車内だけでなく、バス停での待ち時間、乗り継ぎの時の待ち時間をどう過ごすかが大きな問題となる。ついでに言えば、術後の経過観察もあって眼科には毎週通わなければならないが、その待ち時間もある。
手持ち無沙汰になるので、何か小説でも読もうと考え、先週末、術後の検診で眼科に行った後、駅ビル内の書店を物色し、平積みになっている浅田次郎の新刊が目についたので買ってしまった。2年ほど前に単行本で出たらしいが、最近文庫化された。それに、8月のお盆の時期に、こんなタイトルの本を出されたら、どのようなストーリーであろうと手に取ってしまうだろう。
面白かったかと聴かれれば、面白かったことは間違いないのだが、なんか、思っていたのと違う展開だった。展開が今風なのだが、こういうビジネスが本当に存在しているのだとしたら、ちょっと悲しい気がしてしまう。あまり書くと著しくネタバレになってしまうので、これくらいにとどめておく。浅田次郎作品をそんなに読んでいるわけではないが、過去に読んだ作品とは著しく異なる。ひと言で言えば、繰り返しになるが「今風」であり、浅田次郎ってこういう作品も描くんだというのが新鮮だった。
『世界から感謝の手紙が届く会社』 [読書日記]
世界から感謝の手紙が届く会社―中村ブレイスの挑戦 (新潮文庫)
- 作者: 望, 千葉
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/11/29
- メディア: 文庫
内容紹介【N市立図書館】
世界遺産「石見銀山」の町、島根県大田市大森町。その製品を作る人も使う人も幸せにする会社、中村ブレイスは、この山中の町にある。義足や人工乳房などを作る同社が目指すのは、「欠けた体の一部を補うことで心の穴を埋め、お客様に生き直す力を得てもらう」こと。「志と技術力があれば世界に貢献できる」──それを実証する地方企業の感動的足跡。『よみがえるおっぱい』改題。
先日、坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』のレビューをご紹介したが、その中で取り上げられていた島根県の「中村ブレイス」という企業を特出しで紹介したルポが本書である。元々単行本で出たのは2000年のことで、改題して文庫版が刊行されたのも2010年といささか古く、今も本書で描かれたような体制で現存するのかどうかはちょっとわからない。
中村ブレイスのウェブサイトを見てみた。本書のヒューマンストーリーの主役として書かれている中村俊郎氏は、2018年に会長に退かれていて、息子さんが社長に就任されていた。
ヒューマンストーリーとしてはとても面白い。本書の挿入口絵を見ても、ウェブサイトを見ても、社員をとても大切にしておられる企業だというのは伝わって来る。今は従業員数も70名程度に増えているそうで、小さなこの町の雇用や税収、そして地域の活性化にも大きく貢献しておられるのだろう。
義肢装具の製作に関しては多少の予備知識もあるので、筆者が1990年代の取材をもとに2000年に書かれた記事というのは、やはり情報としての古さは感じた。3Dプリンターなどは当然出てこないし、インドのジャイプール・フットのようなBOPビジネスとの比較もなされない。ジャイプール・フットに限らず、一人一人のニーズに合った義肢装具を利用者の手元に迅速に届ける仕組みを考えた起業家はインドあたりには少なからずいる。潜在的需要は大きいが自社の肩幅でできることをというので少量カスタマイズ生産に振り切って長年操業を続けられている中村ブレイスのあり方も、経営戦略として当然ありだと思う。
そこで気になるのが、そういう時代背景の違いはあるにしても、著者はもうちょっと引いて中村ブレイスや中村俊郎氏を相対化して描くことができなかったのかという点である。「先端技術」と言われるが、その技術のどこがどのように先進的なのかは正直わかりにくかった。技術の説明や従業員の方々の実際の作業にもっと焦点を当てた描写があったらもっとt良かったとも思う。
『メキシコ料理大全』 [読書日記]
メキシコ料理大全: 家庭料理、伝統料理の調理技術から食材、食文化まで。本場のレシピ100
- 作者: 森山 光司
- 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
- 発売日: 2015/07/10
- メディア: ペーパーバック
2010年にユネスコ世界無形文化遺産に指定されたメキシコ料理を、作り方や食材まで、またその背景となる歴史や食文化についても詳しく紹介する本格本。【N市立図書館】
メキシコで広く愛される一般的な定番料理を、家庭料理から季節の特別料理、地方に伝わる伝統料理まで網羅しながら厳選し、日本で再現可能な100の特別レシピを掲載。監修は、東京・麻布のメキシコ料理レストラン「サルシータ」のオーナーシェフ。メキシコ直輸入の食材を使い、限りなく本場の味を再現し、日本に滞在するメキシコ人からも絶大な支持を集めながらも、メキシコ料理を初めて味わう日本人でも美味しく食べられる独自の絶賛レシピを考案。その調理技術やポイントも惜しみなく紹介する。 また、メキシコ人の普段の食生活から、メキシコの食にまつわる行事や祭り、活気あふれる市場や屋台など現地の食習慣、地方の食の特色などを鮮やかで美しい写真と共に紹介し、その背景となるメキシコの食文化や歴史も網羅。プロの料理人の方にも貴重な資料となる、現地の食材から飲み物、調理器具、食器の一覧など便利な図鑑付き。
順番が前後したが、先週読了していた本。メキシコ滞在中、特にチアパス州のジャングル滞在中は、地元の食材を使ったレシピを相当堪能したが、何がなんだかあまりちゃんと記憶できておらず、いったい自分は何を食べたのかをちゃんと把握しておこうと思い、図鑑を借りてざっと目を通してみようと考えた。
本書を読んだからといって、自分が食べた料理の名称がちゃんと把握できたわけではないが、一緒にチアパスに行った仲間が「ワカモーレ」(本書では正式名「グアカモレ」)がやっぱり僕の苦手なアボカドの入ったディップであったこととか、本書を読んで確認できた。また、プエブラではビールも飲んだが、本書はビールの銘柄とボトルの写真のリストも掲載されていて、僕がCorona、Tecate、XX以外で飲んだビールの銘柄の確認とかも本書でできる。
チリ(唐辛子)も相当な種類があるようだ。「辛いから気を付けろ」と現地の人に言われて、実際、一緒に行った仲間は皆「辛い」と叫んでいたけれど、唐辛子に関しては南アジア駐在でかなりの免疫ができているため、僕はあまり辛いと感じた料理はなかった。
トウモロコシをすりつぶして作った生地「マサ」を円盤状に伸ばして役と「トルティーヤ」、トルティーヤを揚げれば「トスターダス」、具を乗せれば「タコス」、サルサで煮ると「エンチラーダス」、蒸せば「タマ―レス」、縁を盛り上げて分厚く焼けば「ソペス」、具を入れて二つ折りにして焼く、揚げるなどすれば「ケサディーヤス」と呼ぶのだという。このルール覚えておけば、レストランでスペイン語のメニューを見てもそれが何か想像できるので助かる。
『日本でいちばん大切にしたい会社』 [読書日記]
内容紹介【市立図書館】
あなたの理想の会社はどのような会社ですか。会社は物が作るのではなく人がつくるもの。あなたがつくる理想の会社づくりの参考になればと思います。
週末を長岡で過ごす時、最近必須となっているのは図書館通いである。僕の長岡単身赴任生活の拠点となっているアパートは市立図書館から比較的近い場所にある。それがアパートを決める要因となったわけではないが(多少遠くても図書館通いはしていたと思うし)、アパートの近くに図書館があると知り、ラッキーだと思った。
メキシコから戻って来て、メキシコ渡航の準備のために読みたい本を決め打ち予約して借りることは少なくなり、今はその都度館内の蔵書を物色して、ピンときた本を無作為に借りるようにしている。
先週、そんな感じで館内を歩き回っていて、ちょっと疲れて館内のチェアに腰かけ休憩していた時、何気なくビジネス書の棚を眺めていて、このシリーズの背表紙が目に飛び込んできた。そういえば、2017年11月にブータンの首都ティンプーで開かれたGNH国際会議の初日、唯一オープニングシンポジウムに登壇した日本人のN氏が、やっつけ仕事のようなプレゼンをされたが、その時に彼女が引用したのがこのシリーズの第1巻と、そこで取り上げられていた伊那食品工業のお話だった。
それを見た僕は、それ以前に行った一時帰国期間中にたまたま見た日本テレビ『世界一受けたい授業』で紹介されていた日本理化学工業のお話を思い出し、番組でこの企業を紹介していた小松成美さんの著書『虹色のチョーク』を読み、ブログでもご紹介した。日本理化学工業も本書の著書・坂本光司氏がシリーズ第1巻で取り上げた5つの企業の中の1つであることも知っていた。
GNH国際会議の初日オープニングセッションで、N氏が本書の中から伊那食品工業を「GNH企業」の具体例として取り上げ、紹介したプレゼンを会場で見て、これでもいいのなら僕も日本理化学工業を「GNHファクトリー」として紹介するのもありかもと思い立ち、『虹色のチョーク』を参考にして、ブータンの全国紙クエンセルに投稿した。
『ワン・モア・ヌーク』 [読書日記]
内容紹介【N市立図書館】
「核の穴は、あなた方をもう一度、特別な存在にしてくれる」。原爆テロを予告する一本の動画が日本を大混乱に陥れた。爆発は3月11日午前零時。福島第一原発事故への繋がりを示唆するメッセージの、その真意を政府は見抜けない。だが科学者と刑事の執念は、互いを欺きながら“正義の瞬間”に向けて疾走するテロリスト二人の歪んだ理想を捉えていた――。戒厳令の東京、110時間のサスペンス。
今年のお盆休み用読書のうち、小説として取り上げた1冊。メキシコから返って来てすぐにお盆休み入りしたが、4日間で1,200㎞も走破する自動車移動をしたので疲れ果てて読書の時間を確保することがなかなかできず、台風7号関東地方接近で身動きがとれずに自宅待機していた7日(金)と翌8日(土)の早朝、家族が起き出す前の時間帯を利用して一気に読み切るのが精一杯だった。
話の展開のテンポが非常に良くて、一気に読み切るには格好のストーリーだった。巻末に文芸評論家による解説が付いており、そこまでのブックレビューなどすることはとても難しいが、一読するとすぐに光景がイメージしにくいことが多い藤井太洋のSF小説の中では、かなり場面のイメージがしやすく、読みやすい作品だと思う。
そして、ここでも3Dプリンタ―が頻繁に登場する。自分で3Dプリンタ―を操作したことがあるから、そのあたりの場面のイメージはさらにしやすかったと思う。ただ、それだけであったとしても、テロリスト但馬樹の設計はにわかにはイメージがしにくかった。また3Dプリンタ―の宿命として、出力にかかる時間が長いというのがあり、構造が複雑なものほど時間はさらにかかる筈である。そう考えると、公安やCIAの追跡を逃れるために一刻も早くホームメイド原爆のダミーを準備せねばならない状況で、出力に時間がかかる3Dプリンターに依存するのは結構ムリがあるんじゃないかという気もした。
但し、僕のこのコメントは、核爆発のメカニズムや原爆の構造、大きさなどをあまり理解していない中での無責任な発言だと、適当に読み流してもらってもいい。イラストでも挿入されていたら良かったのだけれど…。
繰り返しになるが、お盆休みの娯楽用読書の1冊としては、かなり向いている作品だと評価したい。
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