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『宮本常一』 [宮本常一]

今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書100)

今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる (講談社現代新書100)

  • 作者: 畑中章宏
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/05/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
『忘れられた日本人』で知られる民俗学者・宮本常一とは何者だったのか。その民俗学の底流にある「思想」とは?「大きな歴史」から零れ落ちる「庶民の歴史」。日本列島のすみずみまで歩き、聞き集めた小さな歴史の束から、世間や民主主義、多様な価値、さらには「日本」という国のかたちをも問いなおす。傍流として、主流が見落としてきた無名の人びとの「語りの力」を信じて――。
【購入(キンドル)】
こういう本が5月に出ていたことを今頃知り、読んでみることにした。著者はわかりやすい民俗学の現代的適用の著作をやたらと出しておられる民俗学者で、どこかで聞いた名前だなと思っていたら、実は過去に僕もその著作を2つほど読んでいた。

実はこの本、書籍版だと100頁にも満たない新書で、読んでいて感じたのは、宮本常一の膨大な著作を読む前に、ちょっとさわりだけでも大雑把に把握しておこうという場合の、一種の「まえがき」のような印象を受けた。元々の著作が膨大なだけに、「まえがき」が多少長くてもまあいいだろう。膨大な著作のどこに何が書かれているのか、何が論じられているのかが本書では描かれているので、これから宮本常一の著作を読もうとしている人なら先にまとめとして読んでおくのはありだと思う。

また、僕のようにある程度その著作を読んだことがある読者が、もう一度振り返ってみる時にはこういう本はきっと役に立つだろう。「そういわれてみればそうだ」と思えるような、宮本作品からの抽出がいくつもある。

例えば、確かに民具を詳述する著作が宮本には多いようには感じていたけれど、活字媒体が伝承の手段として使われていなかった時代には、その名残りを知る手立ては確かに民具や農法だったりしたのかもしれないなと思った。今は僕のような凡人でもこうして活字で記録を残したりできるようになってきた。それだけに、こういう手法は今を生きる僕らにとっても非常に新鮮な印象を受ける。

一時期やたらと読みまくった後で間が空いてしまった現状、そのギャップを埋めるにはちょうどいい本だった。

僕も還暦を迎え、半年後には今勤めている会社も辞めるつもりでいる。少し時間ができたら、『宮本常一著作集』や『日本残酷物語』全5巻など、シリーズとしてまとめて読んでみたいと思っていた。その景気づけにはなったと思う。

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『日本人のわすれもの』 [宮本常一]

日本人のわすれもの―宮本常一『忘れられた日本人』を読み直す (いま読む!名著)

日本人のわすれもの―宮本常一『忘れられた日本人』を読み直す (いま読む!名著)

  • 作者: 岩田 重則
  • 出版社/メーカー: 現代書館
  • 発売日: 2014/07/01
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
『忘れられた日本人』をそのままの事実として受けとってはならない。事実とフィクションの間を自由自在に渡り歩く宮本独自のハナシ集として読むことでみえてくる人生の肯定性。

2020年は、宮本常一の代表作『忘れられた日本人』刊行から60周年の節目の年である。前回の外国駐在時に、事務所のスタッフに、「昔の日本の市民のことを知りたければ、Tuneichi Miyamotoの『The Forgotten Japanese』を読んだらいい」と吹聴していたので、そのうちに『忘れられた日本人』は読み直してみなければと思っていたが、まだ実行していない。でも、少し前に井上義朗『「新しい働き方」の経済学』を読んだ際、この現代書館の「いま読む!名著」シリーズに『忘れられた日本人』を扱ったものが存在するのを知り、これがいいチャンスだと思って、「名著」を読む前にその読書ガイドを図書館で借りて見ることにした。

いわば、「宮本常一」研究者による『忘れられた日本人』の読み方のガイドブックである。

何冊か宮本の著作を読んでいて、時々気になっていたのが、明らかに聞き取りにもとづく史実の説明が淡々とされている作品の他に、宮本自身を主語にした見聞の記録や、相手の語りを相手自身を一人称の主語にしてそのまま書き留めた記録があったりすること。要すれば、「形」が定まっていないことだった。特に、『忘れられた日本人』の中でも最も有名な「土佐源氏」のような口述筆記が、テープレコーダーもなかった時代に、よくもまああれだけ事細かく記録でき、再現できたものだなと驚かされる。

本当に全部語りに基づいているのか、それをどうやって記録できたのか、いろいろ想像はできるが、これに関して収録された各作品の背景や裏取りを行い、宮本がフィールドノートなしで完全に記憶に頼り、かつ自身の視点に基づいて再構築された「ハナシ」なのだと結論付けた、それが本書である。

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再読『山に生きる人びと』 [宮本常一]

山に生きる人びと (河出文庫)

山に生きる人びと (河出文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2011/11/05
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
山には「塩の道」もあれば「カッタイ道」もあり、サンカ、木地屋、マタギ、杣人、焼畑農業者、鉱山師、炭焼き、修験者、落人の末裔…さまざまな漂泊民が生活していた。ていねいなフィールドワークと真摯な研究で、失われゆくもうひとつの(非)常民の姿を記録する。宮本民俗学の代表作の初めての文庫化。

本書は、2012年2月以来の再読。その6年後の今年2月、わけあって『海に生きる人びと』を読んだが、それ以来の宮本常一である。今さら読みたくなったのは、ちょっと前にタシヤンツェの木地工について取り上げる記事を書いたのがきっかけ。そういえば、今これだけの山岳国にいるのに、山の人々の暮らしを見るためのものさしがない。日本の「山の民」ってどんな暮らしをしていたのか、どこから来てそこに住み着いたのか、あるいは住み着かずに移動する民なのか、どんなものが山の民の道を辿って交易されたのか等、日本のことを改めて学び直しておこうと考えた次第。

それでいい復習になったかというと、ちょっとはなった。例えば、なんでブータンの農村の民家は点在しているのかという素朴な疑問。日本の平野部育ちの僕には、民家が集まって集落が形成され、その周辺に田畑が展開しているというのが一般的な姿だった。勿論ブータンの農村部にも集落もあることはあるが、一方で急斜面に張り付いて農地が開けているようなところでは、意外と民家は相互に離れて形成されている。山間地での集落形成のプロセスを考えてみる上で、日本の山間地はどうだったのかを知っておくのは重要なことだが、逆に日本がどうだったのかを先に知っておくと、山間地の住民生活をもう少し立体的に捉えられるようになれるかもしれない。今さらだけれど、ブータンを見る眼をリフレッシュするにはこういう本もたまに読むのはいい。

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『海に生きる人々』 [宮本常一]

海に生きる人びと (河出文庫)

海に生きる人びと (河出文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2015/07/04
  • メディア: 文庫
内容紹介
宮本常一の傑作『山に生きる人びと』と対をなす、日本人の祖先・海人たちの移動と定着の歴史と民俗。海の民の漁撈、航海、村作り、信仰の記録。

小さな山岳国に住んでいると、海岸沿いに暮らしてきた人々の暮らしに惹かれることが時々ある。今年に入って宮本常一の著作を読むのはこれが2冊目だけど、いずれも海にまつわるお話だった。お目当ての島は登場しなかったけど、本書の記述からの類推で、その島も元々は漁業で食べていて海人の往来が相当頻繁に行われていたのだろうなと想像はできた。

宮本の著作を読むたびに、地名というものの重要性を痛感させられる。今回も「あま」と付く地名は、それがたとえ海から離れた内陸にあっても、元々は海で漁労や航海業を生業にしていた人々が、豊臣秀吉以降の定住促進策の影響もあって定着した地だった可能性があるらしい。そういう歴史の暗号のようなものを、平成の市町村合併がぶち壊してしまった側面もある。宮本は単に村々を歩いてそこに暮らす人々と語り合い、古文書を読み込み、その時まで連綿と続く地域の歴史を掘り起こし、記録にとどめて行った。それらを「山」や「海」といった括りで整理し、アカデミックな成果も発表してきている。

歴史の勉強にもなる。学校の授業で習った通り一遍の日本史に、民衆の視点が加わり、授業で習うことが民衆の生活にどのように影響を与えたか(あるいは受けたか)に思いを至らせることができる。松浦党がなぜ特定の氏ではなく党なのかとか、南北朝の頃によく見かけた少弐氏はどこに行ってしまったのかとか、本書を読まなければ気付かなかったことは多い。

こういう、全国津々浦々を歩き尽くした民俗学者がまだ昭和の時代にはいたというのが、日本人にとっては幸せだった。今の我が子たちが学校での正規の教科書を覚えるのに必死になり、地域の歴史や家族の歴史というものを自ら調べる機会すらないように感じる。学校教育で教えられる歴史や地理をちゃんと覚えているかで評価されはするけれど、地域や人、家族というものへ思いや深い洞察というものは評価されない。うちの子どもたちは親の親戚がどこで何をしているのかには殆ど関心がない。ややもすれば、親のやっていることにも関心がない。

僕自身もいろいろな出会いがあり、自分で関心を持って文献読んだり実際にその地を歩いたりしてきたから、歴史や地域に対する造詣を多少なりとも深めて来れたのだと思う。そんな自分にできることは何だろうか―――本書を読み終えた今、改めて自分自身に問いかけているところである。

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『宮本常一 旅の手帖-愛しき島々』 [宮本常一]

宮本常一 旅の手帖―愛しき島々

宮本常一 旅の手帖―愛しき島々

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 八坂書房
  • 発売日: 2011/10/01
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
「旅の鉄人」が歩いて感じた日本の原風景。貴重な紀行文、調査記録を収載。

本書は発刊は2011年だが、1981年に73歳で逝去している民俗学研究者宮本が、生涯かかって訪ね歩いた日本各地の離島の人と暮らし、地域の歴史について、各所で行った寄稿や講演の内容が収録された1冊となっている。中心となっているのは1960年代だと思うが、塩飽諸島や小豆島の島々に関する記述は比較的新しく、本四架橋の計画の問題点を指摘する形でまとめられている。読んでいると本四架橋に反対の立場では必ずしもないと思えるが、これらの島の住民の要望を十分汲んだ架橋計画になっているのかという点は厳しく突いている。

僕がこれを読んだのは、隠岐の島々に関する記述があったからだ。昨年12月のブログ記事で、「ブータン人が見た日本の離島」というのを取り上げたが、その昔隠岐島前の海士町を訪ねたであろう宮本が、海士について何を書いているのかをこの際知っておきたいと思ったからである。その目的は一応達成されたが、隠岐諸島全体の記述の中ではほんのわずかで、海士については、古くから隠岐諸島内でも最も開けていた島だったという記述が目についたぐらいだった。

むしろ面白かったのは、知多半島の先にある佐久島に関する記述だった。島民がより良い生計機会を求めて島外に転出するというのは宮本が歩き回っていた頃には既に全国各地で見られた減少だったようだが、島外に出かけて行ってその地で出身者のコミュニティを作り、島に残った人々との太いネットワークを維持していると、宮本はポジティブに描いていた。文脈は相当違うけれど、ブータンにも同郷人会のようなものがティンプーにはあるらしいので、同郷人会が都市と村とをどうつないでいけるのかを考えてみるには日本の都市部にある離島出身者の同郷人会の取組みを知ってもらうのも参考になるかもしれないと思った。

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『日本残酷物語』を読む [宮本常一]

『日本残酷物語』を読む (平凡社新書)

『日本残酷物語』を読む (平凡社新書)

  • 作者: 畑中 章宏
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2015/05/18
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
高度成長の坂道を登りつつあった昭和30年代半ば、宮本常一、谷川健一らが中心となって平凡社から刊行された『日本残酷物語』。名もなき民衆の営みを「物語」として記録した、この叢書はその後の民衆史、生活史のみならず、記録文学などにも大きな影響を与えた。新たな民衆像を求めて描きだそうとしたのは、いかなる「日本」だったか。「最低辺に埋もれた」人びとの記録。

久しぶりに宮本常一絡みの本を読んでみようと思った。この新書は6月には既に購入し、息抜きがしたい時用に蔵書としてとっておいたものだが、今が読み頃かと思い、手に取った。1959年から61年にかけ、平凡社から全7巻が出版された『日本残酷物語』は、宮本常一、山本周五郎、楫西光速、山城巴の編著となっているが、実質的には宮本常一と平凡社編集長だった谷川健一の共同編集といってよい。

このシリーズが慣行に至った背景と、全7巻の概要を紹介したのが今回ご紹介する1冊である。『日本残酷物語』自体は各巻非常に分厚く、たとえその一部は宮本執筆で過去に僕が読んだ宮本の著作の中にも含まれていたものがあるとはいえ、全巻読破には相当時間がかかりそうだ。だから、実際に各巻を読み始める前に、全体像を把握しておくのはそれなりに時間の節約にもなる。逆にわかった気になってしまって実際に各巻を読もうという気持ちがなかなか起きなくなるのはリスクとは言えるだろう。

この本にはいろいろ読み方があると思う。僕の場合は、僕が生まれる以前に存在した、日本における最底辺の人々の姿を、一度コンパクトに学んでおきたいと思ったからである。

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『フィールドワークの戦後史』 [宮本常一]

フィールドワークの戦後史: 宮本常一と九学会連合

フィールドワークの戦後史: 宮本常一と九学会連合

  • 作者: 坂野 徹
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
戦後、人類学・民俗学・考古学などの学会が結成した“九学会連合”。宮本常一らの共同調査から、対馬をめぐる日韓の軋轢や、「日本人」の証明を求めた奄美の人びとの姿を辿り、フィールドワークを戦後史に位置づける。
僕は2009年6月から「読書メーター」というサイトで自分の読書を管理している。感想を詳述するにはブログに任せつつも、寸評は読書メーターにも残している。また、2009年6月以前に読んだ書籍についても、このブログで記録していた分はバックデートで読書メーターにも記録し、ブログをつけ始めた2005年2月からの通算で、何冊読んだかがわかるようにする取組みも始めた。その取組みがあと1年分ほどで完了というところまではきたところで、通算の読書数が930冊を超えていることが確認できた。そこからは、新規の読書で1000冊を目指すことにした。

―――そして迎えた通算1000冊目が、本日ご紹介する1冊である。

読んでみると博士論文のような印象だ。幾つかの章は単独でも1つの論文の体をなしているし、それを横串で刺して「戦後史」ということにはしているけれど、そのフォーカスは九学会連合による合同学術調査の中でも序盤の1950年代に行なわれた対馬、能登、奄美での調査の様子が詳述されていて、それ以後の学術調査については軽く触れられているのみである。おそらくそれの意味するところとは、日本の学術研究者が解明したいと思うような日本国内における「辺境」というのが、高度成長期を境にどんどん失われていったということではないだろうか。

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タグ:坂野徹 対馬
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『日本人のくらしと文化:炉辺夜話』 [宮本常一]

日本人のくらしと文化: 炉辺夜話 (河出文庫)

日本人のくらしと文化: 炉辺夜話 (河出文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
旅する民俗学者、フィールド調査の達人であった宮本常一は、聴きだす力・聴かせる力の達人でもあったが、その唯一の講演集。山の中、離島、そして町なか、すべてのくらしの中に、歴史と伝統に培われた、失われた日本人の懐しい文化が脈々と息づいていた。民俗学の新しい可能性を拓く手法を語り遺した一冊。
購入したのはもう半年以上前になるが、文庫本ということで気軽に出張に持って行き、帰りの機中でなんとか読了した。読み始めるまでにこんなに時間がかかってしまったのは、文庫版とはいえ、宮本民俗学の本はそれなりの集中力をもって読まなければならないからだ。

本書は離島振興について重点を置いて書かれている。離島に住む人々が自らオーナーシップを持って島の未来づくりに取り組まないと折角の法整備がモラルハザード、依存心、たかり体質を引き起こすと危惧されている。宮本常一の著作は結構読んできたが、離島住民を叱りつけたという体験談に関する記述は意外な感じがする。あまりそこに住む人に「それではダメだ」と言う宮本さんというのは聞いたことがなかったから。

離島振興法は宮本が特に力を入れて法制化に貢献したものだが、法律が必ずしも期待したような運用をされないケースが目立ってきたのだろう。
 水産は各地で成功しています。たとえば五島の漁業生産額は340億にのぼっている。これはたいへんすばらしいことだと思うのですが、そういう成功の基にあるものは、個人的経営ではなくて、たいてい集団的経営、法人的な経営をもっている。(中略)漁業の場合はそういうように集団操業が比較的容易に成り立っておりますが、農業の方にどうしてそれが移ってこないのか、不思議な感じがします。
 これは、それなりの理由があるのだということをわれわれも考えざるを得ないのですが、それはどこから来ているかというと、団野さんはここに鋭い指摘をしています。
「開発関係を担当するある役場の幹部職員が財政難を訴えて、国がもっと金を出すべきだと強調した。そこで、その金をどんなことに使いたいのかと問い返してみると答えがはっきりしない。これにはいささか驚いた。自主性というものがない。計画性もない。よく話し合ってみると、結論として国や県からの金が出ることが決まらなければ、具体的に町からとるべき施策を決めることができないという」。本来はその逆でなければならないでしょう。そして、その中間に立つ農協自体が指導性を失ってしまっていることに大きな問題がありはしないかと思うのです。(pp.134-135)

本書で重点的に出てくるのは、東北・山形、隠岐島、大阪・吹田周辺です。 ただ、講演録なので、話があちらに飛んだりこちらに飛んだりする。そういう意味では、地名だけでもいいので索引を作っておいてくれると嬉しかった。勿論、宮本常一の著作全般に言えることなのだけれども。
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『女の民俗誌』 [宮本常一]

女の民俗誌 (岩波現代文庫―社会)

女の民俗誌 (岩波現代文庫―社会)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/09/14
  • メディア: 文庫
内容紹介
庶民の歴史のなかで,もっとも明らかにされていないのが女性の歴史である.民俗探訪の旅の目的は,男たちの陰に女たちの息遣いを発見してゆくことでもあった.本書は宮本常一の膨大な著作のなかから,単行本・著作集に未収録の論考を中心に構成され,貧困と闘い困難な生活を生抜いてきた日本の女性たちの素顔を浮彫りにした.
今週もお疲れ様でした、ということで。本題に入る前にこんなことを書くのも変だが、この1週間は、僕の会社人生でも最大の試練ともいえる出来事があって、とても疲れたので、何らか記録でも残しておこうと思ってひと言述べさせていただいた。年明けから順風満帆だった僕の仕事の歯車が狂ったのは先週金曜日の昼前のこと。それからはあまりのショックでなかなか他の仕事に集中できず、三連休の間もどこをどうすればよかったのかと逡巡してため息ばかりが出た。時が癒してくれるところは多少はあったが、1週間が経過した今も、やり切れなさはかなり尾を引いている。他にも仕事関係では思わぬ人の思わぬ行動で振り回されて地団太を踏んだことも二度三度。そういう時期もあるのだろう。

そういう1週間を過ごしたので、本を読んでいる時もなかなか集中できなかった。この時期に読んでいたのが宮本常一の『女の民俗誌』だったのは、この本が年末年始に読もうと予定していた数冊のうち、最後に残っていた1冊だったからだ。朝風呂、通勤電車、そして就寝前の日課として、1章ずつコツコツと読み進めた。ただ、宮本の著作を読んでいてよく感じるのは、自分自身と縁もゆかりもない地方の歴史や風俗、伝承などに関する記述は読むのになかなか身が入らない。面白いエピソードでもあるとぐぐっと引きこまれて数ページ苦もなく読めてしまう、そんな箇所もいくつかあるが、物事になかなか集中するのが難儀な時分には、知らない地方の知らない民俗のお話は、読み飛ばしたことも告白しておかなければならない。

そういう意味では、自分が知りたい地方の風俗習慣、地理歴史などへの言及箇所を探すために、索引があると便利だ。宮本作品は特に、この索引が必要だという思いが強い。残念ながら本書には索引がない。

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『生きていく民俗』 [宮本常一]

生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)

生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)

  • 作者: 宮本 常一
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/07/05
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
海の民、山の民、川の民、村の民、町の民。それぞれの職業との関わりとその変遷、またお互いの交流・交易のありようとその移り変わりの実態を、文献渉猟、徹底したフィールド調査、そして刻明な記憶をまじえながら解明していく、生業の民俗学の決定版。差別・被差別の民俗学とも深く結び着いてゆく。
10日間にも及ぶ長期出張には、それまで長く積読にしてあった文庫本を携行してきている。今回も南インドの農村を訪問する機会があったので、その前に明治から昭和初期にかけての日本の農村はどうだったのかを確認しておきたいと思い、河出文庫が最近続けざまに出している宮本常一の著作の復刻版の最新刊を読み始めた。

残念ながら、日程が思いのほかタイトで、50頁ほどしか読み進められないうちに農村訪問を迎えてしまい、それはそれでちゃんと聞き取り調査をやったけれども、本書を参考にして質問を組み立てるところまでは至らなかった。残る200頁ほどは、バンガロールからの移動日にまとめて読み切り、僕が農村で見てきたことと日本の昔を対比してみるという読み方をした。

そういう視点から興味深かったのは、序章の第1節に書かれている「きらわれる農業」である。「いくら働いても将来土地をふやしていくこともむずかしいし、収入を倍加することも容易ではない。しかも労働は決して楽にならない。そういう仕事に対して力いっぱい取組んでみようとする若者はたいへん少なくなってきた」(p.10)とあるが、それに近い現象を、バンガロールから90㎞ほど離れた農村でも見出すことができた。

インドは均等相続なので、何世代にもわたって兄弟何人もいる世帯では、農地がどんどん細分化されてきている。「小さくなりすぎて、あまり儲からないから、子供たちには農業を継がせるつもりはない」という農家が大半だった。子供の数は1~2人で、大学にも行かせられるようにはなってきている。でも、そうして所得が増えてきたからこそ、次のステップへの移行は、第1次産業での就業ではなく、第3次産業での就業が中心となってくるのだろう。

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