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『アレの名前を言えますか?』 [読書日記]

アレの名前を言えますか?: 日本人が知らない《呼び名》400! (KAWADE夢文庫)

アレの名前を言えますか?: 日本人が知らない《呼び名》400! (KAWADE夢文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/02/11
  • メディア: 文庫
内容紹介
レジでお金を置く「トレー」の正式名称は? 上野の西郷さんが連れている犬の名前は? パブロ・ピカソの本名は……? 知ってそうでじつは意外と知らない名前と、その驚きのルーツに迫る!
【MT市立図書館】
「アレ(ARE)」が去年のバズワードになったので、便乗商法かと思ったがさにあらず。本書は刊行が2021年2月で、「アレ」が流行りだすより前だった。

本書も他の本を借りるのに市立図書館に行った際、予約してあった本を借りるのの「チョイ足し」で借りた文庫本だった。図書館の蔵書はたいていの場合は背表紙に貼られたラベルで検索するか、あるいはそこにある本のタイトルと著者を見て借りることになるのだが、本書はなぜだか表紙を前面にして、少し後ろ倒しにして立てかけてあった。(こうした蔵書展示の仕方にも何か決まった名称があるのだろうか。それこそ「アレ」だ。)

文庫本なのに、1頁二段組みになっていて、1つの項目には一段と1/3、つまり見開き2頁で3つの名称が紹介されている。しかも、五十音順には列挙されていないため、事典の索引として利用することは難しい。あくまでも読み物で、記憶力の落ちたオジサンにとっては、読むしなからどんどん抜け落ちて行く、ざるで水をすくっているような感覚にとらわれた。

読み物としては面白かったが、こういう本をどう紹介したらいいのかちょっと悩ましい。現在自分が置かれた状況を考えると、いちばん身につまされた言葉は「獲得的セルフ・ハンディキャッピング」だろう。「大事な用事があるとき、つい別のことをやっちゃう」ことを指す。これ、メチャメチャわかる。やらねばならないことははっきりしているのに、ダラダラと着手するのを先延ばしにして、他のしょうもないことを先に片付けようとしてしまうのである。別の言い方をすると、「現実逃避」とも言える。

そんな、ふだん僕らがよく見かけるけれども正式名称がわからないという名前のオンパレードだが、本書はそれだけで構成されているわけではなく、第4章以降は、有名人のこぼれ話とか、俗語・慣用句の由来とか、逆に僕らがよく知っているイベントや商品名、食品名、料理名等の由来とか、社名の由来とかになっていく。もはや本のタイトルからは大きく逸脱しているが、まあそれはご愛敬ということで。

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『フォン・ノイマンの生涯』 [読書日記]

フォン・ノイマンの生涯 (ちくま学芸文庫)

フォン・ノイマンの生涯 (ちくま学芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2021/04/12
  • メディア: 文庫
内容(「MARC」データベースより)
量子論、ゲームの理論、原水爆、コンピュータ、数値気象学…を立ち上げ、20世紀後半の科学と社会を基礎付けたユダヤ人天才科学者の足跡を追った伝記。
【MT市立図書館】
現在受講中のグローバルディプロマコースの冒頭で紹介されたのがフォン・ノイマンも関わった黎明期のコンピュータの話だったので、この際だから一度フォン・ノイマンの電気でも読んでおこうかと思って手に取った。毎度のことながら、そのセレクションは衝動的なもので、他の蔵書を借りるために市立図書館に出向いた際、何かもう一品付け加えようと思い、文庫・新書の棚を物色し、パッと目に止まったというのが実態に過ぎない。

500頁以上ある分厚い文庫。しかも、3月末でそれまで勤めていた会社を辞めたため、通勤もしなくなった。読書に充てられる通勤時間がなくなったことで、集中して読書ができるのはディプロマコースのローカルセッションに通う毎週土曜日ぐらいしかない。幸い、ここ2週間は土曜日以外にも横浜に出向いた日があったため、なんとか読み進め、4週間かけてなんとか読み切った。

とんでもなく多産な人で、多くの、今なら相互に関連性がなさそうな領域で大きな功績を残された20世紀の偉人である。今なら、アカデミー賞を最近受賞した『オッペンハイマー』でロスアラモス研究所が出てくるので、その時代背景を知る上でも参考にできる評伝だと思う。但し、僕は『オッペンハイマー』を観ていないのでわからないのだが、Wikipediaの記述を見ると、作品の登場人物リストにフォン・ノイマンの名前はないため、映画には登場していない可能性もある。その辺は、作品編成上の事情や思惑もあるのだろう。映画の方で原爆開発者の苦悩が描かれているようだが、フォン・ノイマンは「必要悪」の立場から開発には積極的に関わっていたようだから。

原水爆のことも、コンピュータのことも、ゲーム理論のことも、それぞれある程度理解していればもっと味わえる評伝だと思う。僕は断片的かつ中途半端な理解の上に立って本書を読み、このブログも書いているので、稚拙な記述があると思うがどうかお許しいただきたい。

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『八本目の槍』 [読書日記]

八本目の槍(新潮文庫)

八本目の槍(新潮文庫)

  • 作者: 今村翔吾
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/04/26
  • メディア: Kindle版
内容紹介
石田三成は、何を考えていたのか? そこに「戦国」の答えがある! 秀吉の配下となった八人の若者。七人は「賤ケ岳の七本槍」とよばれ、別々の道を進む。出世だけを願う者、「愛」だけを欲する者、「裏切り」だけを求められる者――。残る一人は、関ケ原ですべてを失った。この小説を読み終えたとき、その男、石田三成のことを、あなたは好きになるだろう。歴史小説最注目作家、期待の上をいく飛翔作。
【コミセン図書室】
上の本は新潮文庫版であるが、実際にコミセン図書室で借りたのは2019年7月に出た単行本の方である。なぜかこの単行本が駅前の啓文堂書店の店員お薦め本として表紙が目立つよう展示されていたので、コミセン図書室で見かけた時には四の五の言わずに手を伸ばしてしまった。書店で最初に見かけたぐらいだから新刊なのかと思っていたら、既に文庫版まで出ているとは…。

賤ケ岳の戦いにおいて羽柴秀吉の小姓として活躍した若い将校は後に「賤ケ岳七本槍」という。加藤清正、福島正則、加藤嘉明、平野長泰、脇坂安治、糟屋武則、片桐且元のことを指す。加藤清正(虎之助)、福島正則(市松)が最も有名で、小学生時代の僕が初めて読んだ歴史小説でこの2人がインプットされた。関ケ原の戦いで東軍に寝返った脇坂安治(甚内)やその戦後処理で登場する片桐且元(助作)、どちらかというと江戸初期の大名として名前がインプットされた加藤嘉明(孫六)が含まれていたのは意外だった。

残る2人、糟屋武則(助右衛門)と平野長泰(権平)に至っては、知名度では他の5人に劣るため、気を付けて見たことがない。7人とも長浜入りして城持ち大名となった秀吉が旗下の戦力増強のために長浜で集めた若者に含まれている。本作品では、この7人に、同じくこの頃に秀吉によって登用された石田三成(佐吉)を「八本目の槍」として絡めて、7人各々の視点から他の七本槍や石田佐吉との絡みを描いていく連作短編となっており、物語が大詰めに向かうにつれて、徳川家康の存在感が増す一方で、豊臣家の御曹司が淀殿や大野治長に踊らされて家の存続を不意にし、滅びとともに七本槍も加藤嘉明を除いて徐々に退場していく様を描かれている。

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『喫茶おじさん』 [読書日記]

喫茶おじさん

喫茶おじさん

  • 作者: 原田ひ香
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2023/10/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
人生もコーヒーも、苦いけれどうまい。松尾純一郎、バツイチ、57歳。大手ゼネコンを早期退職し、現在無職。妻子はあるが、大学二年生の娘・亜里砂が暮らすアパートへ妻の亜希子が移り住んで約半年、現在は別居中だ。再就職のあてはないし、これといった趣味もない。ふらりと入った喫茶店で、コーヒーとタマゴサンドを味わい、せっかくだからもう一軒と歩きながら思いついた。趣味は「喫茶店、それも純喫茶巡り」にしよう。東銀座、新橋、学芸大学、アメ横、渋谷、池袋、京都──「おいしいなあ」「この味、この味」コーヒーとその店の看板の味を楽しみながら各地を巡る純一郎だが、苦い過去を抱えていた。妻の反対を押し切り、退職金を使って始めた喫茶店を半年で潰していたのだ。仕事、老後、家族関係……。たくさんの問題を抱えながら、今日も純一郎は純喫茶を訪ねる。『三千円の使いかた』で大ブレイクの著者が描く、グルメ×老後×働き方!
【コミセン図書室】
先週末にコミセン図書室にフラッと出かけ、適当に選んだ1冊。初・原田ひ香作品。

年齢的に僕も純一郎と同じ世代だ。離婚はしていないが、会社を早期退職して、無職になったところでもある。主人公の境遇に共感して、読んでみるかとなった。それに、この齢になるとフランチャイズのカフェよりも、地域に根付いた純喫茶の方が恋しくなる。

ただ、喫茶店巡りなんていい趣味してる。地元民でもなくいろいろな土地に出かけて行って、そこで喫茶店をハシゴする―――この感覚は僕には理解しがたい。早期退職の割増の退職金を投入して、それで開いた喫茶店を範として潰し、経済的には苦しい筈の主人公が、1日に何軒も喫茶店をハシゴして、コーヒー1杯どころか、サイドメニューまで必ず注文している。しかも、繁盛している地域の喫茶店から学ぶというより、ただ単に出されたメニューを賞味して、評論家気取りの記述が続く。メモしている様子は描かれていないし、店主から話を聞き出すような描写も少ない。なんだか、安全地帯から飛来してきて、いただくものだけいただいて、サッと飛び去ってしまう、一見さんの客に近い感覚。

成功している喫茶店に学ぼうという真剣さ、切迫感、悲壮感など微塵も感じさせない。それでよく早期退職に踏み切ったなと、読んでるこちら側も呆れる。起業がうまく行かなかったのに、喫茶店巡りで現実逃避しているように思えてならない。なんか、許せない感覚にも陥る。それに呆れる家族、特に妻・亜希子の感覚は理解はできるのだが、だからといってこの妻もあまり好きになれないキャラだった。

頑張る地域の喫茶店を応援したい気持ちもわかるのだが、作品としてはちょっと好きになれないかな。

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再読『ミッドナイト・バス』 [読書日記]

ミッドナイト・バス (文春文庫)

ミッドナイト・バス (文春文庫)

  • 作者: 伊吹有喜
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/09/23
  • メディア: Kindle版

内容紹介
故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事の間で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長篇。
【コミセン図書室】
10年ぶりの再読である。前回記事はこちらから。途中出てくるエピソードが話の本筋とどうかかわってくるのかがわからないケースもあり、読みづらい作品だったという印象だった。(今回も時間はかかった。)

その後伊吹有喜作品は何冊も読んで、他は結構いい作品も多い作家だというのはわかった。再読するにしても『ミッドナイト・バス』は違うかなと思ったが、それでも今回手に取ったのは、僕がこの、東京・池袋と新潟を結ぶ長距離バスの利用者に今後なる可能性があるからだ。

僕が今まで31年あまり過ごしてきた会社を、今年度末(つまり本日)をもって辞めるという話は、これまで何度かSSブログの中でも言及してきたが、その後何をするのかまではあまり詳述して来なかった。それは、予定通り1月から受講を開始した某グローバルディプロマコースの課題をこなすのが大変で、仕事との片手間にはできないという制約があるからで、会社を辞めても、当面は定職には就かず、この講座を生き残るのに専念したいというのが僕の希望だった。

ただ、使いたいときに機械に触れる環境には身を置いていたかった。自宅には3Dプリンタなどないし、工具も揃っているわけではない。一番近くにあったファブスペースは、これまた今年度末(つまり本日)をもって営業終了ときた。前述のディプロマコースは週単位で演習課題が出され、課題への取組状況のアップデートが求められる。現状では、土曜日に横浜のファブスペースにまで足を運び、インストラクターの指導を受け、この週1回のハンズオン実習をもとにして文章化のアリバイを作っている状況だ。

だから、平日日中でも手を伸ばせばそこに機械があるという環境をどう作るかを考えながら1月2月と過ごしていたところ、新潟県内のあるファブスペースで運営スタッフの求人が出ているのを人づてで耳にした。契約期間1年なら修業のつもりで赴任してもいいかと思った。仕事の内容としても僕がブータンで2年半滞在した時にやっていたことと大きくは変わらないし。

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『午後の行商人』 [読書日記]

午後の行商人 (講談社文庫)

午後の行商人 (講談社文庫)

  • 作者: 船戸与一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: Kindle版
内容紹介
カメラマンを目指し、メキシコを旅する香月哲夫は、ある夜、暴漢に襲われたが、タランチュラと名乗る老いた行商人に助けられる。彼は、民族解放運動に揺れる南東部へ、行商の途中だった。香月は強引に頼んで旅に同行するが、タランチュラの真の目的は、冷徹・非情の復讐行だった! 直木賞作家による、灼熱の長編冒険ロードノベル。
【MT市立図書館】
20年ぶりぐらいの再読である。どういう状況で本作品を読んだのか全く記憶にないのだが、単行本の初版刊行が1997年らしいので、それから数年以内に読んでいるとしたら、多摩に住んでいた頃か、米国駐在時代に読んでいたことになる。多摩に住んでいた頃はそれほど読書好きではなかったので、可能性が高いのは、米国駐在時代に知人から薦められて読んだ可能性が最も高い。

それで、今さらなんで再読したのかというと、この夏、メキシコのチアパス州に1週間ほど行くことになったからだ。メキシコで行われるコミュニティの課題解決に向けたアイデア出しとソリューションのプロトタイピングを短期間で行うというデザインスプリントに参加を申し込んだところ、受理したとの連絡が3月2日に入った。開催地はメキシコ国内8カ所に分散されており、応募の際には第1希望から第3希望まで書けた。チアパス州での先住民女性グループの収入創出活動は、第1だか第2だかで希望はしていたが、僕の経験値から言って、「ドラフト指名漏れ」のリスクの方がはるかに大きい。だから、参加が認められたこと自体が大きな喜びだった。

それでチアパス州に行けるというのは、何かのご縁を感じる。

ただ、内容紹介にもある通りで、本作品を読むと、チアパス州って結構ヤバイところなのかと思えてきて、少々ビビッてしまった。勿論、作品の舞台は1990年代のサパティスタ民族解放軍の活動が活発だった頃のチアパスで、以後テロ活動などは行われなくなったとのことではある。それに、若干のネタばらしになってしまうけれど、本作品で本当にヤバいのは、サパティスタ民族解放軍ではなく、それを鎮圧するために公安組織が養成しようとした、インディオを主力とするバンディード(無法者)なので、反グローバリズムを掲げるサパティスタ民族解放軍の活動の反動勢力としては今は弱まっていると考えてもよいかも。

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『我が手の太陽』 [読書日記]

我が手の太陽

我が手の太陽

  • 作者: 石田夏穂
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/07/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
第169回芥川賞候補作。鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。
【コミセン図書室】
芥川賞受賞作品、ないしは候補作品を読もうとするたびに、なんだか自分には合わないと感じることがこれまで多かった。どんな作品を読んだのかと訊かれれば、それほど多くはないのだが、読んだ作品はことごとく、僕にとっては読みづらく、それがあまり食指を伸びにくくしているところがある。だから、作品数が多くない結果につながっていると思う。

芥川賞受賞作品は、初読では理解がしづらく、よほどの動機がないと再読にもいたらないのだが、過去一度だけ再読に至ったケースがあった。「よほどの動機」というのがあったケースだが、再読で所見でのわかりづらさは多少払拭できた気がした。僕の読書の経験値が上がっていたのかもしれない。

勿論、今回は「候補作」であって、「受賞作」というカテゴリーを当てはめてどうこう言える作品ではない。ましてや初読なので、多少の読みにくさは覚悟はしていた。

でも、結果的には、面白かった。「溶接」のような地味(溶接工の読者の方がいらしたらごめんなさい)な作業の描写が、このような形で表現されるのだという新鮮な驚きがあったし、地味とは書いてしまったものの、溶接の仕事の奥深さというのを、自分なりに知ることもできた。

こういう作業でも文学作品の対象になり得るのだというのを知り、新鮮な驚きがあった。

同じ仕事を長く続けていると、自分なりの知りつくした気持ちになり、周囲のやり方がものすごくいい加減だと感じる経験は僕もしたことがある。周囲のやり方が許せない気持ち、さらにその許せない気持ちが言動になって表層化するのを抑えられなくなる状況、そしてそれを独りよがりだと誰かから咎められ、それでも忠告を素直に受け入れられない状況―――僕自身も経験があるし、同じような状況は、30年近くも主婦をして地域とつながってきている自分の妻にも最近感じるところがある。

本作品を読了した直後、妻と喧嘩しました。何がきっかけだったかというと、妻が周囲に押し付けようとする「市民としての正しさ」を、聴いていてつらくなったことでした。言っていることは100%正しい、でもそれが完璧にできる人はいない。本作品が影響していた可能性は大いにあります。

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『昭和の青春』 [読書日記]

昭和の青春 日本を動かした世代の原動力 (講談社現代新書)

昭和の青春 日本を動かした世代の原動力 (講談社現代新書)

  • 作者: 池上彰
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/11/15
  • メディア: Kindle版

【MT市立図書館】
実用書を借りた時に、「チョイ足し」で借りたもう1冊は、池上彰さんの著書。意外と最近の刊行だが、今調べてみたら刊行日的にはそれより後の著書が2冊はあるようで、この人メチャ多作だなと思う。ネームバリューもあるし、語る内容もボリュームゾーンにうまく打ち込んでくる。年齢的には10歳以上年下の僕らであっても、この手の本は自分たちの少年時代から青春時代を回顧する上でたまには読みたくなる。そして、語り方も上手い。なんというか、記述にムダがない。

出せば確実に売れる。そう厭味ったらしく書いてはみたけれど、読みやすくて良書が多い。

うちの子どもたちを見ていて常々感じるのは、自分のことは語るけれど、他の人のことにはあまり関心がないという点だ。こちらが尋ねれば自分のことについては饒舌に語ってくれる。僕らは仕事を通じてそういうコミュニケーションの取り方を体得して来ているからか、自分のことを話すよりも、相手のことを聞き出す問いの方に注力する。

ところが、同じことが子どもたちの世代の子たちにはあまりできない。そもそも僕たちを相手にして、何かを聞き出そうというところにはあまり関心もなさそうだ。我が家の3人の子どもたちはいずれもその傾向がある。

だから、自分の親がどのように生きてきたのかには、ほとんど関心がない。たぶん、オヤジが鬼籍に入った時に、自分が受動的に見てきたオヤジの姿をもとにオヤジとの思い出は語れるかもしれないが、オヤジが当時何を考えていたのか、どうしてそんな行動を取っていたのかなど、訊かなければわからないような情報はたぶん取れていないだろうと思う。

今さら「オレの話も聴けなどと野暮なことは言うつもりはないが、オヤジやお袋がなぜあんなだったか、わからなければ昭和の時代をサクッと学べる本書を読めとは言いたい。こういう最大公約数的な時代背景や文化風俗・社会経済の成分が、僕らのその後の行動や生き方を規定した部分は相当大きいと思う。

同様に、僕自身の父や母が生きた時代を改めて理解するのにも、本書は有用だった。「チョイ足し」とは書いたけれど、なかなかいいインプットにはなったかな。

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『起業家ナース』 [読書日記]

起業家ナース

起業家ナース

  • 作者: 大石 茂美
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2023/02/02
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容紹介
何かを始めるのに遅過ぎることはない!介護士が笑顔で働ける施設をつくりたい――51歳、ベテラン看護師の遅咲き起業物語
【コミセン図書室】
先々週末にコミセン図書室に行って、性懲りもなく3冊も借りてしまったものだから、返却期限までに読まなきゃと、すき間時間を利用した読書が続いている。本書も、なんとなく借りずに帰るのは淋しいからというようなはっきりしない理由で借りてしまったので、なんでこんな本を読んでいるのかと訊かれても、積極的な理由はない。適度な薄さだったし、表紙のイラストを見てたらちょっと元気をもらえそうだった。このイラストの看護師さんと目が合ってしまったとしか言いようがない。

これも、前回ご紹介した畠山織恵『ピンヒールで車椅子を押す』と同じビジネス書だ。しかもこの2人の著者はいずれも関西人で、起業もしておられて、ちゃんとした自社のウェブサイトも持っておられる。分野は障害者福祉と看護介護とで違いもあるけれど、多分本を出された動機はいずれも起業とともに行われる事業広報の一環だという印象。いわば、「名刺代わりの1冊」というやつだ。

苦労しながら今に至るという体験談は、読んでいて面白い。本書の著者も、51歳で介護事業所を事業継承するまでは、わりとあっち行ったりこっち行ったりというのが続いた。勤め先の先々での苦労やそこを辞めて次のステップを踏み出すまで考え方といったものは、読んでて参考になるし、お話の中に引き込まれていく感覚があった。

ただ、その介護事業所をM&Aで事業継承する話は、いきなり唐突に出てきて、誰がどのような経緯でこの話を著者に持って行ったのか、著者がどのような判断でこの事業所を継承することにしたのか、全然わからなくて、著者のご経歴の中でも、その部分だけは謎が多くてあまり共感できなかった。売り手の挙動を見ていれば訳あり物件なのは明らかなのに、それでもあえて購入する判断がよくできたと思う。しかも、事業継承後事業所に乗り込んでからの苦労話も、結局のところ、スタッフは著者の経営方針に対して賛同して一緒に歩んでくれるようになったのかどうかがわからない。スタッフの心をどうつかんだのか、事業所の黒字転換の話は書かれているが、スタッフの支持をどう受けたのかの記述が薄めで、ここもあまり共感できなかったポイントである。

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『ピンヒールで車椅子を押す』 [読書日記]

ピンヒールで車椅子を押す

ピンヒールで車椅子を押す

  • 作者: 畠山 織恵
  • 出版社/メーカー: すばる舎
  • 発売日: 2023/07/07
  • メディア: 単行本
内容紹介
自分らしく生きるために、実家を出たい。その一心で両親に「妊娠」という既成事実を突きつけ、家出同然に家を飛び出した。生まれた息子は重度の脳性麻痺だったーー。本書は、誰よりも自分を信用できなかった少女が、障害とともに生まれた我が子を、誰よりも自分を信用できる子に育てようと挑んだ、23年間にわたる親子と家族の成長記録です。

他の誰かになんてならなくていい。どんな過去も、どんな現在も、私たちは自分の手で、希望へと変えることができる。そんなメッセージが詰まった本です。「自分を好きになりたい」、「未来に希望が持てない」、「一歩踏み出す勇気が欲しい」……。そんなあなたに読んでほしい1冊です。
【コミセン図書室】
本書を読みながら、「One Size Fits One」(1つのサイズは1人の人にしかフィットしない)という言葉をちょっと噛みしめていた。「脳性麻痺」を患った人が、みなこの亮夏君のように生きられるとは思えないし、考えをはっきり伝えられるとは思えない。たぶん、亮夏君の場合にこの母親が取ったコミュニケーションのあり方は、この母子については合っていたのだと思うけれど、これを重度の脳性麻痺の子の子育て全般に当てはめられるのかどうかはわからない。

僕はブータンでCP(脳性麻痺)の子どもを何人か見てきた。家庭や学校での過ごし方を含めた観察をしてきたわけではないけれど、本書で登場する亮夏君ほど意思表示ができる子は見たことがなかった。

にもかかわらず、本書を読みながら、ブータンで出会ったある母子と本書の主人公である母子の姿を重ねている自分がいた。ブータンでその母子と交流した時間は限られたものでしかなかったが、日常生活はどのようなものであったのか、どのような会話が親子の間で行われるのか、本書での一つ一つのエピソードを読みながら、僕はブータンで見ていなかった部分を埋める作業をしていたような気がする。

障害当事者の方や、その家族が書かれた体験談は、これからもなるべく読むようにしたいと思う。

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