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社会への再統合への一歩となるか? [ブータン]

ハピネスセンター、14人に技能訓練を提供
Centre gives skills training to 14 clients
Rajesh Rai記者(プンツォリン)、Kuensel、2022年5月24日(火)
https://kuenselonline.com/centre-gives-skills-training-to-14-clients/
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【抄訳】
プンツォリンにおける薬物依存症回復支援ボランティアグループ「ハピネスセンター」の14人の回復者が、CSTで、エネルギー節約型建設、屋内電設、大工塗装、配管といった技能について研修を受けた。同センターが企画したもので、Nazhoen Lamtoen、CST、労働省、HELVETUSの支援を受けて、5日間の基礎技能研修として行われた。研修は5月20日に終了。HELVETUSが資金拠出したもの。

受講者の1人、ペマ・ドルジさん(21)は、屋内電設の研修を受けた。多くのことを学べたという。配線もできるし、家電製品に関係する電気関連の仕事だったらできるだろうと述べる。理論と実践を両方学べる、いい研修だったと振り返る。彼は2015年にクラス6を落第した。薬物依存が原因だった。彼はハピネスセンターの最初のクライアントの1人だ。

カルマ・ワンディさん(21)も薬物依存からの社会復帰を目指す1人。クラス10は修了。彼は配管の研修を受けた。「僕は家の配管工事ならたいていのことは修理できます。5日間の研修はとても実戦的で、忘れることはないでしょう。」彼はセンターに8カ月身を寄せている。

市内トールサとオムチュの合流地点にあるハピネスセンターは、再発予防のためのボランティアグループとして知られる。復帰途上にある全ての人々のニーズに応える取組みを行っている。現在、センターでは17人の回復者が暮らしている。

HELVETUSのタシ・ペム代表は、CSTでの修了式に出席し、ブータンの若者の失業者数は極めて深刻だと述べた。「小さな国なので、余計に深刻。若者に機会を提供することができなければ、社会として失敗します。」技能開発研修は、受講者に生きる目的と安定をもたらす。こうした研修はさらに推進され、若者はこうした機会をもっと活用していくことが必要。タシ代表はこう述べた。

ハピネスセンターの創設者の1人、バップ・ドジ・ゲレさんは、この研修はHELVETUSとの初めての共同プロジェクトだったと述べた。「HELVETUSはこうした作業に必要なツールもご提供下さいました。感謝しかありません。うちの若者たちの未来を形成していく長い道のりの、この研修は第一歩だと思っています。」

プンツォリンに引っ越してきて、僕はかなり早い時期にこの「ハピネスセンター」を訪問し、バップさんと面談した。記事の文面からはなかなか伝わらないが、このトールサとオムチュの合流地点というのは、アモチュ川の河原の一段目の段丘で、すぐそばにCOVID-19対策で作られた仮設住宅が立ち並ぶ一角がある。現在17人が暮らしているとあるが、3つほどの部屋しかなく、ベッドマットが床に敷かれ、その入居者はそういうところで寝泊まりしている。17人も暮らしているとしたら生活環境としてはかなり劣悪。HELVETUSのタシ代表も、修了式の後このセンターの共同生活の現場を視察して、絶句されていたと耳にした。

こうして知り合ったバップさんが、先々週の金曜日、突然、「相談があるのでそちらに行く」と電話を下さった。CSTの構内にある僕のプロジェクトの事務所で会った。訪問目的は、このHELVETUSの資金提供による技能研修実施が決まったが、適当な研修会場が思いつかなかったので、CSTならどうだろうかと相談に来たとのことであった。CSTでの最初のコンタクト先が僕だったというのにもびっくりだ。でも、僕は労働省が委託する技能研修の会場として、CSTが場所を提供していたのを知っていたので、実施は可能だろうからとCSTの管理部門棟へ彼を案内した。

バップさんも、実はCSTの前身だった職業訓練校時代のここの学生で、1999年頃にここで勉強していたそうである。そして、その当時にすでに薬物の影響を受けて、ドロップアウトしたのだという。同じプンツォリンで暮らしていながら、CST構内に足を踏み入れたのはそれ以来だというから、一般市民にとって大学というのがいかに敷居の高い場所なのか、想像ができると思う。

翌週月曜日、朝9時前に構内を歩いていたところ、学長とたまたまバッタリ出会った。「これからハピネスセンターの技能研修の開会式に出席する」と仰っていた。「え?もう始まるの?」と僕はびっくり。なかなか物事が思ったように進まないこの国において、ローカルレベルでのこのスピード感は、かなりの驚きだ。

そんなわけで5日間の技能研修がここCSTで行われた。僕は他の予定があったりして、技能研修の現場を見学したりする時間はなかったのだけれど、最終日の昼過ぎに会場を少しだけ覗き、昼休みでくつろいでおられた受講生の人たちと会った。見た目は普通の若者たちです。

バップさんや、ティンプーから来られていたNazhoen Lamtoenのティンレーさん、そして、HELVETUSのタシ代表にもご挨拶した。ちょうど、学長がタシ代表を学内視察に案内されていたからだ。できれば修了式も傍聴したかったのだけれど、金曜午後は2つ別の予定があり、修了式の終了には間に合わなかった。で、ずっと会いたかったクエンセルのプンツォリン担当記者ラジェシュ・ライさんとも会うチャンスを逃してしまった。きっと彼もアテンドしていた筈なのだが。

労働省の職業訓練校なら、溶接にしても電設や配管にしても、1年半ぐらいかけて教える。そんな技能を、今回はわずか5日間でやるのだから、この研修は本当にさわりだけやった感じの基礎技能だったといえる。だから、これだけやったからといって、受講者がインタビューで言っているほど「なんでもできる」というレベルにはならない気はする。一過性の研修で終わらせるのではなく、今後も、困難な状況があればいつぜもCSTの講師がアドバイスできるような関係が構築できるといいですね。

また、できることなら、薬物依存症回復者だけで研修を構成するのではなく、域内ですでにこうした技能を用いて働いているような人と組んで学べる仕掛けがあると、薬物影響下にあった人々に押された「スティグマ」を打ち破れる可能性があると思う。「けっこうちゃんと働いてくれるんだな」というのを知ってもらうことが求められているのだと僕は思うが、対象グループだけを切り出して決め打ちで介入する姿が一般的なのは、別にブータンに限ったわけでもない。昨日ご紹介した障がい者向け技能研修とアプローチの仕方は同じだ。でも、変な色めがねで見ることを抑制し、ごちゃまぜの環境の中でお互いに思いやりながら働けるのが本当は理想なのではないかと思う。

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