廃棄物管理フラッグシッププログラムの概要 [ブータン]
ティンプー市、来年度に最終埋立地を建設
Thimphu thromde to construct sanitary landfill next fiscal year
Yangyel Lhaden記者、Kuensel、2022年5月21日(土)
https://kuenselonline.com/thimphu-thromde-to-construct-sanitary-landfill-next-fiscal-year/
【要約】
ティンプー市は、来年度、メメラカの開放埋立地に変わる最終処分場を建設する。国の廃棄物管理フラッグシッププログラムに基づくもので、リサイクル工場、ストックヤード、コンポスト、バイオガスプラント、建設及び破壊工場、焼却場などから成る48.7エーカーの総合的廃棄物管理施設となる。
メメラカの埋立地は1993年に作られ、耐用年数は10年と言われていた。18年も前にその耐用年数を越えてしまっていた。市の関係者によると、メメラカがただ単に開放地に廃棄されるだけの構造だったのに対し、新たな衛生埋立地は工学的措置が施された施設となる。「埋立地の設計がようやく最終確定し、総費用を現在算出中です。」
この担当者のよると、新しい衛生埋立地の耐用年数は22~29年で、その年数は、廃棄物の分別とリサイクルの進展度合いによるという。ティンプーでは、埋立地で廃棄されるゴミは、2019年には1万4,824.8トン、2021年には1万9,717.5トンとなり、2年間で4,800トン増えたとされる。
衛生埋立地の浸出液タンクを備えた施設の完成には1年半がかかると見られている。
一方、フラッグシッププログラムでは、廃棄物分別、回収、運搬、処置、回復、処分等の一連の工程を、段階的に全国で実施する予定であり、その第一歩がティンプーでの実施となる。ティンプーは、市内に9つのドロップオフセンターを建設し、ティンプー県は5ゲオッグで合計25カ所の回収所を建設し、電動のゴミ収集車9台を受け取った。ドロップオフセンターはそれぞれの指定地域における回収施設で、住民はゴミ収集車による回収に間に合わなかった場合のゴミをここに持ちこむことが可能。
このフラッグシッププログラムの支援のため、日本政府と日本国民は、28台のゴミ圧縮収集車と、3台のダンプカー、2台のバックホウローダー、掘削機1台、ブルドーザー1台、コンテナ24基を4つの市に供与するという、総額3億3千万ニュルタムの無償資金協力を行った。
このフラッグシッププログラムは、2030年までに廃棄物ゼロを実現することを目指している。これは、現在埋立地に運搬される廃棄物を、全体の80%から15%未満にまで削減することを意味する。
固形廃棄物管理の問題は、今年4月24日に描いた「ゴミ収集車に付加できるもの」という記事の中でもご紹介しているが、今回のクエンセルの記事は、廃棄物管理のフラッグシッププログラムについてかなり包括的にカバーされている記事で、改めて取り上げることにした。
記事の中で、新しい最終埋立地の設計の最終案が確定したと言及があるが、先々週までこの目的で日本人の専門家の方がブータンに来られていたとその方とのメールのやり取りで聞いたので、この記事自体のリリースのきっかけは、まさにこの方の助言をもとに確定した最終案があってのことだったのだろう。
また、この1カ月の進展として、記事にある日本の無償資金協力で供与された機材は、ゲレフやプンツォリンにはすでに届いている。プンツォリン市役所で聞いたところでは、同市の収集車は現在8台で、これを2つの廃棄物処理業者に外注して回収運搬業務に当たっているという。プンツォリン市街地自体は小さいが、これにアモチュの新都市エリアとパサカもカバーしているので、業者も2社必要なのだとか。これに新たに4台が加わることで、運行管理には少し余裕も生まれることが期待される。処分場は、僕らにとってはリンチェンディンのチェックポストを越えないと行けないところにあるが、距離としては歩いて行けるところにあるらしい。ここも耐用年数の問題をチラホラ耳にする。
フラッグシッププログラムの全体像がイメージできたところで、早めに供与されたゴミ収集車の配備は別として、プンツォリンでのプログラムの展開は、まだ先の話なのだなというのが記事からはわかる。でも、準備はしていかないといけないから、地元の工科大学として今からでもできることを考えていかなければならない。ただ、CSTの現在の学科構成から見て、工科大学内でどう展開したら廃棄物問題に取り組めるのかがまだよくわからない。少なくとも各学科所属の教員のイニシアチブとしてはなかなか出てこない気がする。
この話、CSTの学内である教員にしてみたところ、「シェラブツェカレッジの環境学科じゃないの~」と言われた。まあ、そうなんだけど。でも、シェラブツェがプンツォリンの課題解決に取り組んでくれるとは思えない。フラッグシッププログラムの事務局が、「何年か資金つけるから研究開発やってくれ」とでも外部からアプローチしてきてくれたら、CSTも体制組みやすいのかもしれない。
最後にもう1つ。4月の記事の中で言及した、ティンプー市が「ファブシティ(Fab City Global Initiative)」のメンバー都市に入っている件、その後このファブシティ財団に二度にわたって問い合わせてみたが、なしの礫である。ホント、市役所の誰が窓口になっているのかが謎だが、フラッグシッププログラムが目指している目標年の2030年というのは、ファブシティの2054年よりも早いので、ちゃんと計画的に実行できているのなら、ティンプーは加盟都市の中でも胸を張っていい取組になるかもしれない。今のところは、僕らが当たり前だと思っている取組みを当たり前のように実施していくことが前提となったプログラムのように思われるが、これに廃棄物のアップサイクリングで、もう少しイノベーティブなものが出てくるといいのだが…。
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