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再読『ミッドナイト・バス』 [読書日記]

ミッドナイト・バス (文春文庫)

ミッドナイト・バス (文春文庫)

  • 作者: 伊吹有喜
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/09/23
  • メディア: Kindle版

内容紹介
故郷に戻り、深夜バスの運転手として働く利一。子供たちも独立し、恋人との将来を考え始めた矢先、バスに乗車してきたのは、16年前に別れた妻だった。会社を辞めた長男、結婚と仕事の間で揺れる長女。人生の岐路で、忘れていた傷と向き合う家族たち。バスの乗客の人間模様を絡めながら、家族の再出発を描いた感動長篇。
【コミセン図書室】
10年ぶりの再読である。前回記事はこちらから。途中出てくるエピソードが話の本筋とどうかかわってくるのかがわからないケースもあり、読みづらい作品だったという印象だった。(今回も時間はかかった。)

その後伊吹有喜作品は何冊も読んで、他は結構いい作品も多い作家だというのはわかった。再読するにしても『ミッドナイト・バス』は違うかなと思ったが、それでも今回手に取ったのは、僕がこの、東京・池袋と新潟を結ぶ長距離バスの利用者に今後なる可能性があるからだ。

僕が今まで31年あまり過ごしてきた会社を、今年度末(つまり本日)をもって辞めるという話は、これまで何度かSSブログの中でも言及してきたが、その後何をするのかまではあまり詳述して来なかった。それは、予定通り1月から受講を開始した某グローバルディプロマコースの課題をこなすのが大変で、仕事との片手間にはできないという制約があるからで、会社を辞めても、当面は定職には就かず、この講座を生き残るのに専念したいというのが僕の希望だった。

ただ、使いたいときに機械に触れる環境には身を置いていたかった。自宅には3Dプリンタなどないし、工具も揃っているわけではない。一番近くにあったファブスペースは、これまた今年度末(つまり本日)をもって営業終了ときた。前述のディプロマコースは週単位で演習課題が出され、課題への取組状況のアップデートが求められる。現状では、土曜日に横浜のファブスペースにまで足を運び、インストラクターの指導を受け、この週1回のハンズオン実習をもとにして文章化のアリバイを作っている状況だ。

だから、平日日中でも手を伸ばせばそこに機械があるという環境をどう作るかを考えながら1月2月と過ごしていたところ、新潟県内のあるファブスペースで運営スタッフの求人が出ているのを人づてで耳にした。契約期間1年なら修業のつもりで赴任してもいいかと思った。仕事の内容としても僕がブータンで2年半滞在した時にやっていたことと大きくは変わらないし。

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『電子部品が一番わかる』 [仕事の小ネタ]

電子部品が一番わかる (しくみ図解)

電子部品が一番わかる (しくみ図解)

  • 作者: 松本 光春
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2013/06/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
電子機器を構成する電子部品の働きと用途を細かく図解する。1章 電子部品の基礎知識/2章 抵抗/3章 コンデンサ/4章 コイルとトランス/5章 ダイオード/6章 トランジスタ/7章 その他の半導体デバイス/8章 回路基板/9章 電池/10章 マイコン関連素子/11章 その他の電子部品/12章 センサ
【MT市立図書館】
現在受講中のデジタルものづくりのブートキャンプで、先週のテーマが「電子回路工作」だったが、肝心の週1回のハンズオン実習が全然わかったという感覚になれず、実習から返った翌日、藁をもすがる思いで図書館に行き、ページをパラパラとめくった上で選んだ本の1つである。他の本も既に紹介を始めているが、先週の課題について最も参考になったのは、一昨日紹介した『電子工作の素』だと思う。ただ、次の週のテーマは「出力デバイス」、3週後には「入力デバイス」と続く。デバイスの話になっていくと、『電子工作の素』のような百科事典的本は勿論依然として有用だが、各デバイスをサラッと見開き2ページで紹介してくれる技術評論社の「一番わかる」シリーズなんかもけっこう役に立つ。電車やバスの中、外出時には携行しやすいのだ。

ただ、読みながら記述の重点が今とそぐわないと感じるところも多い。例えば、第10章「マイコン関連素子」ではPICやH8マイコンが紹介されていて、Arduinoやmicro:bitには言及もされていない。第8章「回路基板」も、ブレッドボードやユニバーサル基板はいいし、プリント基板で「アディティブ法」と「サブトラクティブ法」と方法論が紹介されていたのは嬉しかったが、そのサブトラクティブ法として先週から今週にかけて僕がやっていた「プリント基板のデジタル切削加工」には触れられていない。入門編だとはいえ、第9章「電池」の記述はかなり詳しい。全体の構成からすると、ちょっと戸惑うぐらいの詳しさだ。

もっと早く気付けよと言われそうだが、本書は刊行が2013年と古く、情報として旧いと感じる。さすがにこの手の本を10年以上アップデートせずに置いておくのは大変だ。『電子工作の素』については、今読むのが旬だと感想で書いたが、この「一番わかる」シリーズの1冊の旬は10年前だったのだろう。そう、10年前の最新情報を知るのには面白い本だな。

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『電子工作の素』 [仕事の小ネタ]

改訂新版 電子工作の素 作る、できる/基礎入門

改訂新版 電子工作の素 作る、できる/基礎入門

  • 作者: 後閑 哲也
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2021/10/26
  • メディア: Kindle版
内容紹介
部品の知識、回路図の読み方、ブレッドボードの使い方、表面実装部品のはんだ付けの仕方、デジタルマルチメータの使い方、工作道具の使い方から、加工、製作まで詳しく解説しています。工作名人のテクニックとノウハウを満載した、実際に使うための「道具」としての書物です。電子工作の素がぎっしり詰まっています。改訂版では、シングルボードコンピュータ、マイコンボードの中でも特に人気の、micro:bit、Arduino、Raspberry Piをとりあげ、使い方から活用方法、製作例まで詳しく解説してあります。入門者にもやさしく、もちろんホビーユーザ、学生、エンジニアにも満足できる一冊です。
【MT市立図書館】
今年に入ってから電子工作関連で図書館で借りられる書籍には何冊も当たっていて、ブログでも何冊か紹介している。本書を近所の市立図書館から借りてきたのも今年に入ってから二度目だが、前回1月末頃に借りた時には、百科事典チックな編集に、「今じゃない」と思った。正直、どのチャプターの記述も僕には難しいと感じたのだった。

ところが、それから2カ月近くが経過し、実際にマイコンチップを組み込んだ回路を自分で作り、プログラムの書き込みも行うようになると、僕もこの本で書かれていることがかなり理解できるようになり、自分にとって有用度がかなり高いと感じるようになった。つくづく、本にはそれを読むべきベストのタイミングがあると思う。

以前読んでみて自分に合わなかったからといって、「読みたい本」リストからは落とさない方がいい。むしろ、こういう本が理解できるようになりたいと、努力目標としてキープしておいたらいい。

1カ月後には僕は当市の市民ではなくなるため、必要な時に図書館に出かけて閲覧するとか、必要なら借り出すということができなくなってしまう。結局購入して転居先の自分の根城で蔵書として持って行た方がいいだろうなという気持ちに傾きつつある。2カ月前に読んでいたような本は入門書としてはいいが、さすがに現時点ではそんな本を座右に置いておくというわけにもいかないと思う。レファレンスブックとして、本書はお勧めだと思う。

但し、EDAツールとして本書で紹介されているEAGLEは、2026年にはサービス終了予定で、おそらくAutodesk社はEAGLEユーザーをFusionに誘導したいのだと思われる。EAGLEを使っていればFusionの機能はあらかた想像はつくと思うが。本書ではラズパイ(Raspberry Pi)もラズパイ3をもとに説明されているが、ラズパイPicoについては言及がない。シングルボードコンピュータの開発も日進月歩。解説書もあるタイミングでは最新だったとしても、時間の経過とともに記述内容が実際と合わなくなる現象はあり得る。

ということで、本書は現時点が旬だと言える。これをもっと理解できるようになりたい。そう強く思っているところだ。
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『基礎からのプリント基板製作』 [仕事の小ネタ]

基礎からのプリント基板製作: Autodeskの基板設計ソフト「EAGLE」を使う (I/O BOOKS)

基礎からのプリント基板製作: Autodeskの基板設計ソフト「EAGLE」を使う (I/O BOOKS)

  • 作者: 佐倉 正幸
  • 出版社/メーカー: 工学社
  • 発売日: 2017/05/01
  • メディア: 単行本

内容紹介
基板設計ソフトには、Autodesk社の「EAGLE」を使用し、本書では、プリント基板の基礎から始めて、基板設計ソフトの使い方、製造業者への発注方法までを解説。
【購入】
本書は2021年12月の購入である。当時ブータンに赴任中だった僕は、友人の1人であるケザン君が出身校であるジグミナムゲル工科大学(JNEC)の現役学生向けにオンラインで講義をやるというので聴講していたのだが、そのケザン君がEAGLEの機能紹介をしているのを見て、ちょっとEAGLEが勉強してみたくなった。それで購入して、家族にブータンまで送ってもらったのだが、結局駐在を終える2023年12月まで、自分自身でプリント基板を製作する機会がなかったので、積読のまま日本に持ち帰ることになった。

それが今復活を果たし、慌てて読了にまで至ったのは、先週から今週にかけて、自分で回路基板をデザインして基板の切削をやる機会があったからである。これまでも何度かご紹介しているが、現在僕は半年間のデジタルものづくり人材養成プログラムを受講中で、毎週のように近くのファブ施設でハンズオン実習を受けている。回路基板の切削は3週前に体験済みだが、今週はそもそもの回路の設計を自分でやり、基板の切削まで辿り着かねばならなかった。

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『百年の藍』 [シルク・コットン]

百年の藍

百年の藍

  • 作者: 増山 実
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2023/06/28
  • メディア: 単行本
内容紹介
ジーンズに懸けた人々の百年にわたる物語。鶴来恭蔵は、故郷の岡山県児島から浅草に来ていた。車夫の政次のアドバイスにより、憧れの竹久夢二に奇跡的に会うことができた。しかし翌日の大正十二年九月一日、関東大震災に遭遇。親を亡くした娘りょう、政次とでしばらく避難生活をしていた。りょうと児島に戻るという時に、政次からアメリカの救援物資にあったズボンを受け取る。生まれつき色覚に異常があった恭蔵だがズボンの藍色に魅せられ、国産ジーンズを作りたいと考えるようになる。時代は進み、日本は太平洋戦争に突入し、鶴来家もその大きな波に巻き込まれた。戦後、世の中が激動する中で鶴来の会社を支えたのは、りょうだった。そして、彼女も日本でジーンズを作るという恭蔵の夢を忘れてはいなかった。ある日、鶴来の家をひとりの男が訪ねてきた。恭蔵の思いは、途切れることなく繋がっていた――
【コミセン図書室】
ちょっと前に成田成璃子『世はすべて美しい織物』をご紹介した。そちらは群馬県の桐生で昭和のはじめの頃から現在に至るまでの歴史をフィクションを織り交ぜて描いた作品だったが、今回ご紹介する作品は、岡山県の児島を中心とする国産ジーンズ開発の歴史を、大正12年(1923年)の関東大震災にまで遡って描いている。この2作品を間髪入れることなく読んでみると、似た構成になっており、両作品を同時期に図書館に所蔵したコミセン担当者にも、何か含むところがあったのではないかと感じざるを得ない。

国産ジーンズ開発の歴史については全く知らなかったが、昭和40年代は自分もボブソンのジーンズを履いていたので、なぜあの時代にボブソンだったのか、改めて考えるいい機会にもなった。途中で笠置シズ子の『買い物ブギ』が唐突に出て来たのには、朝ドラとのタイミングがばっちり合っていて、偶然以上の何かを感じた。それに、60歳になって生活の拠点を児島から神戸に移したりょうの生き方も、今同じ60歳を迎えて、定年延長の打診を断って会社を辞め、生活の拠点も東京から別の地に移そうとしている自分自身と重なるものを感じた。

「自分の信ずる途を行け」———そんな言葉が作品内で何度か出てきたかと思うが、僕も同じ心境だ。

ただ、100年かつ三世代も連なる年月を描くわりに、鶴来恭蔵が追い求めたジーンズの染めの技術の種明かしが、縁者の回想シーンとして最終盤になって語られたのにはちょっと拍子抜けした。竹久夢二や中原淳一の絵画を絡めた序盤と戦前戦中を描いた中盤の展開がものすごく書き込まれているわりに、終盤になってはじめて登場する三世代後の人物を中心とするストーリーがあまりにもサラッとし過ぎていて、ちょっと拍子抜けする終わり方だったなというのは残念な気がする。たぶん、回収されていない伏線が相当散らばっているような気もする。

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『午後の行商人』 [読書日記]

午後の行商人 (講談社文庫)

午後の行商人 (講談社文庫)

  • 作者: 船戸与一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/02/07
  • メディア: Kindle版
内容紹介
カメラマンを目指し、メキシコを旅する香月哲夫は、ある夜、暴漢に襲われたが、タランチュラと名乗る老いた行商人に助けられる。彼は、民族解放運動に揺れる南東部へ、行商の途中だった。香月は強引に頼んで旅に同行するが、タランチュラの真の目的は、冷徹・非情の復讐行だった! 直木賞作家による、灼熱の長編冒険ロードノベル。
【MT市立図書館】
20年ぶりぐらいの再読である。どういう状況で本作品を読んだのか全く記憶にないのだが、単行本の初版刊行が1997年らしいので、それから数年以内に読んでいるとしたら、多摩に住んでいた頃か、米国駐在時代に読んでいたことになる。多摩に住んでいた頃はそれほど読書好きではなかったので、可能性が高いのは、米国駐在時代に知人から薦められて読んだ可能性が最も高い。

それで、今さらなんで再読したのかというと、この夏、メキシコのチアパス州に1週間ほど行くことになったからだ。メキシコで行われるコミュニティの課題解決に向けたアイデア出しとソリューションのプロトタイピングを短期間で行うというデザインスプリントに参加を申し込んだところ、受理したとの連絡が3月2日に入った。開催地はメキシコ国内8カ所に分散されており、応募の際には第1希望から第3希望まで書けた。チアパス州での先住民女性グループの収入創出活動は、第1だか第2だかで希望はしていたが、僕の経験値から言って、「ドラフト指名漏れ」のリスクの方がはるかに大きい。だから、参加が認められたこと自体が大きな喜びだった。

それでチアパス州に行けるというのは、何かのご縁を感じる。

ただ、内容紹介にもある通りで、本作品を読むと、チアパス州って結構ヤバイところなのかと思えてきて、少々ビビッてしまった。勿論、作品の舞台は1990年代のサパティスタ民族解放軍の活動が活発だった頃のチアパスで、以後テロ活動などは行われなくなったとのことではある。それに、若干のネタばらしになってしまうけれど、本作品で本当にヤバいのは、サパティスタ民族解放軍ではなく、それを鎮圧するために公安組織が養成しようとした、インディオを主力とするバンディード(無法者)なので、反グローバリズムを掲げるサパティスタ民族解放軍の活動の反動勢力としては今は弱まっていると考えてもよいかも。

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『Notion 最強の仕事術』 [仕事の小ネタ]

Notion最強の仕事術

Notion最強の仕事術

  • 出版社/メーカー: シーアンドアール研究所
  • 発売日: 2022/07/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
Notionは「オールインワン・ワークスペース」と銘打っている通り、さまざまなツールの機能を包含したオンラインツールです。使いこなせると便利ですが、機能が多く、どうやって使ったらいいかがわかりにくい面もあります。そこで本書では、「Notionを使ってどのように仕事をするか」という観点でNotionの使い方を解説していきます。メモから始め、タスク管理、議事録、プレゼンテーション、情報収集、社内ポータルなど、実際に著者が所属している会社での具体例をもとに、わかりやすく解説しています。
【MT市立図書館】
昨年知己を得た方から、「プロジェクトのドキュメンテーションプラットフォームはいろいろ試してみたが、Notionが最も使い勝手がいい」と勧められたことがある。ここで言う「プロジェクトのドキュメンテーション」とは、短期間で行われるデザインスプリントのグループワーク―——フィールドワーク、アイデア出し、プロトタイピングという一連の作業を、参加者がどのように行い、何が学びでどんなアイデアが出され、どのような検討プロセスを経てグループで取り組むアイデアがまとまったのか、どのようなツールを使ってプロトタイピングは行われたのか、全てを文章に落とし込むというものである。

写真や動画の挿入は大いに結構。当然ながらプロトタイプを作ったら、設計データも併せて共有しようとなる。そしてこれらが公開されると、世界各国で同じような問題意識を持っていた人々がそれを参照し、それに各々の地元の文脈を加味して改編が行われ、それがさらに文章化されることで、さらに拡散していき、小さなイノベーションの輪がどんどん広がっていくのが期待されている。

従って公開は大前提。しかもグループで作業するので、皆が閲覧して、書き込みができると良い。

この、グループワークと公開が両立しているプラットフォームとして、僕はNotionの他に、Fab ManagerやFabble(ファブル)を使ったことがある。どれがいいのかはまだ良くわからないが、自分が関わったプロトタイピングのプロジェクトの情報共有プラットフォームが、あっちにもこっちにもあるというのは結構具合が悪い。自分はどのような人間で、これまで何を作ってきたのか、そのポートフォリオを1つのプラットフォームで見せられたらいい―――そう思っていたところ、GitとGitLabを使って自分のドキュメンテーションプラットフォームを作ってウェブ公開するという演習が始まってしまった。GitLabでバージョン管理している僕のウェブサイトには、自己紹介のページもあるし、グループワークのドキュメンテーションのページもあって、一応共同作業ができるようになってはいる。ただし、英語だ。

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『我が手の太陽』 [読書日記]

我が手の太陽

我が手の太陽

  • 作者: 石田夏穂
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/07/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
第169回芥川賞候補作。鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。
【コミセン図書室】
芥川賞受賞作品、ないしは候補作品を読もうとするたびに、なんだか自分には合わないと感じることがこれまで多かった。どんな作品を読んだのかと訊かれれば、それほど多くはないのだが、読んだ作品はことごとく、僕にとっては読みづらく、それがあまり食指を伸びにくくしているところがある。だから、作品数が多くない結果につながっていると思う。

芥川賞受賞作品は、初読では理解がしづらく、よほどの動機がないと再読にもいたらないのだが、過去一度だけ再読に至ったケースがあった。「よほどの動機」というのがあったケースだが、再読で所見でのわかりづらさは多少払拭できた気がした。僕の読書の経験値が上がっていたのかもしれない。

勿論、今回は「候補作」であって、「受賞作」というカテゴリーを当てはめてどうこう言える作品ではない。ましてや初読なので、多少の読みにくさは覚悟はしていた。

でも、結果的には、面白かった。「溶接」のような地味(溶接工の読者の方がいらしたらごめんなさい)な作業の描写が、このような形で表現されるのだという新鮮な驚きがあったし、地味とは書いてしまったものの、溶接の仕事の奥深さというのを、自分なりに知ることもできた。

こういう作業でも文学作品の対象になり得るのだというのを知り、新鮮な驚きがあった。

同じ仕事を長く続けていると、自分なりの知りつくした気持ちになり、周囲のやり方がものすごくいい加減だと感じる経験は僕もしたことがある。周囲のやり方が許せない気持ち、さらにその許せない気持ちが言動になって表層化するのを抑えられなくなる状況、そしてそれを独りよがりだと誰かから咎められ、それでも忠告を素直に受け入れられない状況―――僕自身も経験があるし、同じような状況は、30年近くも主婦をして地域とつながってきている自分の妻にも最近感じるところがある。

本作品を読了した直後、妻と喧嘩しました。何がきっかけだったかというと、妻が周囲に押し付けようとする「市民としての正しさ」を、聴いていてつらくなったことでした。言っていることは100%正しい、でもそれが完璧にできる人はいない。本作品が影響していた可能性は大いにあります。

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『世界一やさしい「プチ起業」の教科書』 [仕事の小ネタ]

世界一やさしい「プチ起業」の教科書――3ヶ月で自然と月5万円稼げるようになる

世界一やさしい「プチ起業」の教科書――3ヶ月で自然と月5万円稼げるようになる

  • 作者: 上野 ハジメ
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2023/12/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「プチ起業」は、元手もかからず、時間と場所も自由!オンラインで、あなたの知識やスキルを必要としている人に教えてみませんか?この本は、経済的に楽になりたいと考えている会社員や主婦が、起業、それも大それたことではなく、自宅で得意なことを人に教えるような「プチ起業」をして、自然と月に5万円、稼げるようになるお手伝いをする本です
【MT市立図書館】
先月後半ぐらいから「退職」の日を意識するようになり、それに伴う収入の落ち込みをどう軽減するかを考えることが多くなった。

そもそも早期退職の途を選んだのは、現在受講中のデジタルファブリケーション技能訓練と仕事の両立が難しいと思ったからで、退職後しばらくの間は、その訓練を終えるのが先決であり、収入の落ち込みは織り込み済で、当面は失業手当と退職金の取り崩しでなんとか暮らしていくしかない。小遣い稼ぎ程度ではあるけれど2つほどお約束している仕事があるため、4月に入れば開業届は取りあえず提出し、事業用口座や事業用クレジットカード等は作ってしまうつもりではいる。それでも、メインは技能訓練を無事に卒業することである。今働いていることによってどうしても自由にならない時間をすべてこの技能訓練に費やすことにはなるだろう。

―――と、そう思っていたのだけれど、最近、もうちょっと小遣い稼ぎ程度の仕事は4月に入ってすぐに積み上げていってもいいような気がしてきた。

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『昭和の青春』 [読書日記]

昭和の青春 日本を動かした世代の原動力 (講談社現代新書)

昭和の青春 日本を動かした世代の原動力 (講談社現代新書)

  • 作者: 池上彰
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/11/15
  • メディア: Kindle版

【MT市立図書館】
実用書を借りた時に、「チョイ足し」で借りたもう1冊は、池上彰さんの著書。意外と最近の刊行だが、今調べてみたら刊行日的にはそれより後の著書が2冊はあるようで、この人メチャ多作だなと思う。ネームバリューもあるし、語る内容もボリュームゾーンにうまく打ち込んでくる。年齢的には10歳以上年下の僕らであっても、この手の本は自分たちの少年時代から青春時代を回顧する上でたまには読みたくなる。そして、語り方も上手い。なんというか、記述にムダがない。

出せば確実に売れる。そう厭味ったらしく書いてはみたけれど、読みやすくて良書が多い。

うちの子どもたちを見ていて常々感じるのは、自分のことは語るけれど、他の人のことにはあまり関心がないという点だ。こちらが尋ねれば自分のことについては饒舌に語ってくれる。僕らは仕事を通じてそういうコミュニケーションの取り方を体得して来ているからか、自分のことを話すよりも、相手のことを聞き出す問いの方に注力する。

ところが、同じことが子どもたちの世代の子たちにはあまりできない。そもそも僕たちを相手にして、何かを聞き出そうというところにはあまり関心もなさそうだ。我が家の3人の子どもたちはいずれもその傾向がある。

だから、自分の親がどのように生きてきたのかには、ほとんど関心がない。たぶん、オヤジが鬼籍に入った時に、自分が受動的に見てきたオヤジの姿をもとにオヤジとの思い出は語れるかもしれないが、オヤジが当時何を考えていたのか、どうしてそんな行動を取っていたのかなど、訊かなければわからないような情報はたぶん取れていないだろうと思う。

今さら「オレの話も聴けなどと野暮なことは言うつもりはないが、オヤジやお袋がなぜあんなだったか、わからなければ昭和の時代をサクッと学べる本書を読めとは言いたい。こういう最大公約数的な時代背景や文化風俗・社会経済の成分が、僕らのその後の行動や生き方を規定した部分は相当大きいと思う。

同様に、僕自身の父や母が生きた時代を改めて理解するのにも、本書は有用だった。「チョイ足し」とは書いたけれど、なかなかいいインプットにはなったかな。

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