わからん!『わかる!電子工作』 [仕事の小ネタ]
内容紹介【購入】
かつて電子工作のイメージと言えば、専門的な知識と技術を必要とするものでした。しかし、「Raspberry Pi」や「M5Stack」など、ハンダなしでも動かせるマイコンボードが主流となり、そのハードルは下がりました。本書では、手軽になった「電子工作の現状」や「最低限必要なもの」や、意外とつまずきやすいプログラミングについての基本的な事項など、実例を交えて解説します。
この手の本を内容も確認せずに購入検討する際、僕が参考にしているのは、メイテック社が運営しているネットメディア「fabcross」である。ここで新刊の案内を確認して、面白そうだとアマゾンで注文し、家族に食材を送ってもらう際に、段ボール箱のなかに紛れ込ませてもらう。本書もそんなプロセスを経て、今年1月に僕の手元に届いた。
電子工作は依然として僕にとってもブラックボックスだ。取り組むために最低限揃えておいた方がいいものが何なのかもわからない。難なく電子工作をこなしている人は「趣味の延長」ではじめたと仰るが、この年齢になってから新たに取り組むには最もつらい領域だと僕には思える。この手の本は新陳代謝が激しいので、同じテーマを扱うなら刊行が新しいものを選んだ方が得策だと考えたりする。開発環境が頻繁にアップデートされるので、数年経ると本の解説と実際の画面が全然違うということも日常茶飯事だ。
そんな時に、こんな情報がSNS上で踊ったら、それは手を出しますわ。そして、事前に内容確認せずに購入したわけだけれど、確かに、第1章「電子工作の基礎」はまあまあ良かった。何が必要なのか、第1章を読んだらある程度まではイメージができた。
しかし、実際のマイコンボードを使った開発の章に入っていくと、「あれ?」と思うことが多くなった。この本の作例通りに何かをやってみようと思ったら、ファームウェア以外に何が必要なのかが事前に明示されていないから、自分がどこにいるのか迷子になる。例えば、M5StackやM5Stickを扱っている第2章は、M5Stackの説明などほどほどにして、途中からM5Stickでの工作の解説にどっぷり入って行ってしまう。また、執筆者がMacユーザーだからだと思うが、WindowsとMacでケースを併記している節の入り方をしておきながら、途中からMacのことにしか言及しなくなったりとか、あまり初心者読者の目線では書かれていないように感じた。
加えて、各節を異なる執筆者が分担執筆しているので、前節からのつながりがあまりない記述が目立った。どこにも書かれていないけれど、どこかの雑誌で連載されていたのをホチキス止めしたような印象を受ける。時には記述の重複もあるし、逆に解説を端折り過ぎているところもある。
第2章のM5Stack/M5Stickの解説はそれでもまだいい。もっとひどいのが第3章のRaspberry Piである。ここは、「ラズパイを使った電子工作に馴染みのない方向け」と謳っていながら、ラズパイ4の説明を全部端折っていきなりPicoとZero Wから入る。「馴染みのない方」向けというより、馴染みのない方は馴染みを深められないまま「ふ~ん」で終わってしまいそうだ。
加えて挿入されている白黒写真も見にくい。
今後、もうちょっと自分なりにわかってきて、自分自身で本書の行間が読めるようになってきたら、もう一度読み直すことはあるかもしれないが、現時点では、第1章以外は僕には参考にならないと判断した。また、作例を参照に自分でやってみろと言われるのなら、その章を読むのに揃えておいたらいいマイコンボードや付属品の類を一覧表にして定時してほしいくらいだ。そうなってくると、M5にしてもラズパイにしても、もっといい解説書は世に出ていると思う。本書でないといけない理由はない。
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