ウクライナ情勢の影響 [ブータン]
卸売業者とFCB、生活必需品価格の影響最少化に向け在庫積み増し
Wholesalers and FCB advised to stockpile essentials to minimise impacts of increasing prices
Karma Wangdi記者、BBS、2022年3月10日(木)、
http://www.bbs.bt/news/?p=166571
【抄訳】
世界中の専門家やアナリストは、ロシアのウクライナ侵攻は世界経済に大きな影響を与えると警告してきた。ブータンも例外ではない。輸入依存度の強い経済であるため、経済省関係者は、すでに高いブータンの物価上昇率が今回の世界的な危機でさらに高まると見込む。このため、同省は、卸売業者とブータン食糧公社(FCB)に対し、物価上昇のインパクトを最小化するため、必需品の在庫を積み増すよう指示した。
ティンプー、プンツォリン、サムドゥップジョンカルの卸売業者とFCBは生活必需品の積み増しを開始した。ティンプー市内の卸売業者によると、今週に入って食用油の価格は急騰しており、今後も続く見込み。
ロシアとウクライナは、食用油、小麦、肥料を含む食料品の主要生産国となっていた。ブータンは両国と直接交易はしていないが、影響は被ると予想される。両国は世界の小麦供給の30%近くを占める。ブータンが使用する肥料の14%はロシアとウクライナで作られたもので、ブータンが世界の食料生産に占めるシェアはさらに下がると見られている。
食料油の原料の50%はロシアとウクライナから来ている。これらの食料品価格は世界中で上昇する。ブータンは両国と直接交易しているわけではなく、またインドがいくらか価格上昇を吸収する努力を続けているので、直接打撃を受けるわけではないと経済大臣は強調。
外国メディアは、米国がロシア産原油の禁輸を決定したのを受け、原油価格が史上最高値を記録したと報じている。ロシアは世界第三位の産油国で、日産800万バレルを世界市場に供給してきた。
ブータンの物価上昇率は、パンデミックの影響を受けて2021年に7%以上を記録。中央銀行(RMA)は、商品価格の上昇や世界的サプライチェーンの分断の影響で今後も物価上昇は続くと予想。戦争の継続は、国内の物価の押し上げにもつながることが懸念される。
ブータンで暮らしていると、ロシアのウクライナ侵攻の話をメディアでまったく聴く機会がない。クエンセルもBBSも、ウクライナ情勢を報じることはほとんどなく、もっぱらソーシャルメディアが、他の外国メディアや個人のSNSポストをシェアする形で報じ、それを僕らは目にしている。
うちのホテルのオーナーは、ロシア軍のウクライナ侵攻から数日経ったある日、BBSから要請を受けてウクライナ情勢がブータン経済にもたらすインパクトについて3分ほどのインタビューを受けた。(ロックダウン中だったので、インタビューというより、コメンタリーのビデオクリップを自身で作ってBBSに送って欲しいという依頼だったらしい。)BBSは首相のコメントを取りたかったらしいが、首相が地方出張中で不在だったために、うちのオーナーにお鉢が回ってきた。
ロックダウン中の合宿生活では、1日三食をオーナー夫妻とホテル滞在者が一緒に食べる。ウクライナ侵攻が始まった後、この話題は頻繁に食卓での会話に上るようになり、ロックダウンの閉塞感もあって、ウクライナの話を始めるたびに、同席者の間ではため息をつくことが多くなった。窓の外には人がほとんどいないティンプーの街並みが広がっている。そんな平和(?)な光景が、余計に気持ちをどんよりしたものにさせる。
彼は、BBSからのインタビュー依頼に対し①燃料価格、②小麦価格、③グローバルサプライチェーンの分断による物資全般の調達、の3項目を挙げた。結局そのコメンタリーは使われたとは聞かないが、使われていないとしたら、国内メディアの当時の関心はそれくらいのものだったのに違いない。
で、今回取り上げたのは、おそらく主要メディアがウクライナ情勢のブータンへの影響を取り上げた最初の報道だったのではないかと思われる。口火を切ったのはクエンセルで。3月10日(木)付けの論説で、「ウクライナ侵攻と私たち(The Ukraine invasion and us)」というのを載せたら、すかさずBBSが夜のニュースで食用油と小麦、原油価格の高騰を取り上げた。トップニュースであった。
だったら食料品に関しては自給率を上げようとなるが、日本のケースを見ればそんなことは難しい。ただ、もっと一般論で言ってしまえば、世界的なサプライチェーンの分断がまだ続くと言うのなら、なんでもかんでも輸入に頼るとか、「連結性」提唱に乗っかり国際道路網の整備を図るとかいうのは少しお休みして、「データ・イン、データ・アウト(DIDO)」を推し進めてみたらどうかと思う。
《以前僕が使ったことがあるスライドです》
オープンソースのデータをベースにして、現地で入手可能な材料を用いて設計データを改編し、地元にあって利用可能な工作機械を用いて作ってしまおうという動きを、ブータンでも加速させてみては?
ガソリン、軽油の店頭販売価格が最高値を付けたそうです(3月17日)
https://kuenselonline.com/fuel-prices-hit-record-highs/
by Sanchai (2022-03-17 21:30)