『カラ売り屋、日本上陸』 [黒木亮]
内容紹介【コミセン図書室】
日本企業の不正を投資ファンドが暴き出す!
粉飾決算や株価が過大評価されている企業を探し出し、カラ売りを仕掛けて追及レポートを発表、株価が下がったところで買い戻して利益を上げる投資ファンドを「カラ売り屋」という。ニューヨークに本拠地を置くカラ売り専業投資ファンド、パンゲア&カンパニーは東京事務所を開設。パートナーの北川靖は「タイヤ・キッカー」のトニーと組んで、傘下のMS法人を使って病院買収に邁進する巨大医療グループ、架空売上げの疑いがあるシロアリ駆除会社、タックス・ヘイブンを悪用して怪しい絵画取引を行う総合商社絵画部とそれぞれ対決。窮地に追い込まれた相手は、何とか株価を吊り上げ、パンゲアを叩きつぶそうと画策するが――。金融市場に蠢く男たちの息詰まる攻防戦の先に、気鋭の経済小説家が描いた日本経済の病巣とは!?
先々週、近所のコミセン図書室に本を返却&新規借出しの手続きに行ったが、さすがに毎回3~4冊のハイペースで行くと数カ月でネタの糞詰まりを起こしてしまい、なかなか借りたい本を見つけることができなかった。そこで目に留まったのが黒木亮の新作だった。
370ページあるが、だいたい1話が120ページぐらいある中編小説3話で構成されていて、それぞれ病院グループ、シロアリ駆除会社、絵画取扱い商社という、それぞれあまり取り上げられにくい業界でのコンプライアンスにもとるような株価つり上げ工作と対峙する話になっている。各々の業界の事情はよく知らなかったので、話がすごく新鮮だった。
「カラ売り屋」というとなんだかダーティーなイメージが付きまとうが、パンゲアという投資ファンドはまともで、ちゃんと情報収集して、適正な株価水準で市場の評価がなされるよう、まっとうな企業調査レポートを公表している。従って、勧善懲悪的な作品にどれもなっていて、読後には爽快感も得られる。
読んでいて、これを1作品3、4話で計10回になるようなドラマにしたら面白いだろうなと感じた。TBSの日曜劇場でよく取り上げられている池井戸潤作品みたいに、正しいことは正しい、間違っていることは間違っている、というエンディングにでき、気持ちよく翌日からの仕事に行かせてくれるような作品になるだろう。
タグ:角川書店
『アパレル興亡』 [黒木亮]
内容紹介
経済小説の旗手が、大手婦人服メーカーを舞台に、焼け野原からのアパレル産業の復興、「ガチャマン」景気、百貨店の隆盛と高度経済成長、バブルの熱気、カテゴリーキラー台頭による平成の主役交代、会社とは何かを社会に問うた村上ファンドとの攻防、社長の死と競合他社による経営乗っ取りまでを描く。85年間にわたるアパレル業界の変遷というプリズムを通して展開する、戦後日本経済の栄枯盛衰の物語。
2月を締めくくる最後の読書日記は、黒木亮の新刊ビジネス小説―――。
先週、国立の外勤先での用務が終わった後、歩きながらふとスマホでFacebookの画面を見ていたら、黒木亮の記名入り記事「村上ファンドを退けた名門アパレルがたちまち消滅した理由」を見かけた。導入のパラを読んだだけで、著者がファッション・アパレルの業界を舞台にした新作を上梓したんだとわかり、そのまま国立駅前の本屋に飛び込んで平積みになっていた本書を1冊購入した。
黒木亮の作品は2002年の『アジアの隼』が最初。これを薦めてくれた知人の評では、「誰だか知らないけど、国際金融業界の中の人じゃないとここまでは詳しく描けない」とのことだった。実際読んでみて、僕も同じ印象を持った。実際にその業界に身を置いたことのある人だったし。
そして今回、東京スタイルがモデルと思われるアパレルメーカーを中心に据えた85年にもわたるファッション・アパレルの変遷の歴史を読んでみて、もし黒木亮の過去の作品を全く読まずに本書を最初に読んでいたら、著者はファッション・アパレルの業界に身を置いたことがある人なのだろうと信じたに違いない。
『鉄のあけぼの』(上・下) [黒木亮]
内容(「BOOK」データベースより)先月下旬、母校の大学院の創設10周年記念イベントに出席した際、お目にかかったある先生から、途上国の輸入代替工業化は往々にして悪い政策と見られがちで最初から輸出志向工業化を目指せとよく言われるが、必ずしも輸入代替が悪いというわけではないというお話があったのが印象に残っている。
灼熱の鉄づくりに命をかけ、経済大国・日本を創り出した男のドラマ。日本は貿易立国しかない。だから鉄をつくるのだ。それがわたしの信念だ―。川崎製鉄(現JFEスチール)創設者、西山弥太郎は、銑鋼一貫工場を千葉に建設し、戦後日本企業が世界市場を席巻する礎を築いた。「鉄のパイオニア」の生涯を描く大河小説。
初の世銀融資。夢の水島製鉄所―「世界をつくる火」が燃え上がる。「暴挙」「二重投資」「製鉄所にぺんぺん草が生える」…批判の嵐の中、信念を貫き、高炉メーカーへの脱皮を果たした川崎製鉄社長・西山弥太郎は、世界の鉄鋼需要拡大を見通し、さらなる巨額投資に踏み切る。西山弥太郎が示した、真のリーダーシップとは―。
先生の論点は、輸出志向工業化では軽工業製品の輸出を目指すために、素材を供給する重化学工業がなかなか育たない、育った国は数えるほどしかない、ということだった。現在、国内に鉄鋼業が存在している国といったら、韓国は輸出志向に政策転換する前に輸入代替をやっていたし、インドはさらに広大な国土を抱えていて輸出を指向するインセンティブが働かない。
そんなお話を聞いた後だったから、日本の鉄鋼業の発展の歴史について、川鉄の西山弥太郎のライフヒストリーを中心に描かれたノンフィクションを読むことは即決だった。西山の伝記であるが、周囲の情勢についてもこまめに言及されており、日本の近現代史のどの時期に西山と川崎重工・川崎製鉄が何に取り組んできたのかがよくわかる。
『赤い三日月』(上・下) [黒木亮]
内容(「BOOK」データベースより)久々に黒木亮の長編ビジネス小説を読んでみることにした。
巨額の対外債務、高インフレの激震―巨大銀行と国家の暗闘がはじまった!国家の命運を賭け、市場を切り拓く新興国財務官僚たちロンドン、ワシントン、東京、トルコを呑み込むマネーの濁流。
舞台は主にロンドンとトルコ。邦銀ロンドン支店でトルコ向け融資のシンジケーションに携わる主人公・但馬と、トルコ財務省(省庁名は正しくないが、要するに「トレジャリー)の高級官僚エンヴェルを軸に、国際金融業界に見える社内での葛藤、他金融機関や融資先との駆け引き、また新興国に垣間見える政官の癒着、それでも国を良い方向に導こうと努力を傾ける財務官僚たちの姿を絡めて話が展開する。
シンジケート・ローンは1件扱ったら終わりというものではない。幾つもの案件が同時並行的に進むので、長編小説の割にはきっちりここまで描いて終わりという感じではない。本書は主に1990年代前半のトルコ向け融資案件の話だが、東西銀行・但馬はこの後香港に転勤となる。黒木亮の処女作『アジアの隼』で描かれた世界へと繋がっていく。
『排出権商人』 [黒木亮]
7月10日(土)は僕の四十ン歳の誕生日であったが、朝からフル稼働で、次男を学校の自転車教室に連れて行って半日費やした後、夕方からは帰国後の剣道初稽古に参加してきた。梅雨前線の影響で大雨が心配された東京地方はこの日は快晴。湿度も低く、前線通過の影響で心地よい風も吹いていた。日なたに出れば暑さは感じるが、自転車教室の会場は深大寺の公園で、なかなか快適だった。剣道の稽古の方も、先月のデリー最後の稽古が空調の止まった体育館の中だったことを思えば全然快適。僕がお世話になることにした道場の床も剣道のための床で、本当に久し振りに膝や足を痛めることを気にせず稽古ができた。
誕生日の最大のプレゼントは、次男が道着・袴姿で剣道の稽古に初めて参加したことだ。小学校1年生から始めれば、どこまで伸びていくのだろうか、とても楽しみだし、少々気が早いが、彼が中学あたりまで続けてくれたら、僕が高校時代に使っていた防具を使って欲しいと期待もしている。
肝心の僕の稽古の方は、床はともかく初めてお手合わせをした先生方に中心をなかなか取らせてもらえず、面が全く入らない散々な出来だった。中心を取る攻防はデリー時代から課題でもあったので、いい先生方にまためぐり合うことができたのではないかと思う。三鷹市で剣連登録すれば、年度末頃には四段を受けてみたらと勧めてはいただいたが、中心の攻防で全く手も足も出ない現状ではまだまだやることも多い。
いずれにせよ剣道に関しては上々の滑り出しと言えるのではないかと思う。誕生日の大きな収穫だ。
タイトルとは全く関係のない書き出しでごめんなさい。これから読書日記に入ります―――。
誕生日の最大のプレゼントは、次男が道着・袴姿で剣道の稽古に初めて参加したことだ。小学校1年生から始めれば、どこまで伸びていくのだろうか、とても楽しみだし、少々気が早いが、彼が中学あたりまで続けてくれたら、僕が高校時代に使っていた防具を使って欲しいと期待もしている。
肝心の僕の稽古の方は、床はともかく初めてお手合わせをした先生方に中心をなかなか取らせてもらえず、面が全く入らない散々な出来だった。中心を取る攻防はデリー時代から課題でもあったので、いい先生方にまためぐり合うことができたのではないかと思う。三鷹市で剣連登録すれば、年度末頃には四段を受けてみたらと勧めてはいただいたが、中心の攻防で全く手も足も出ない現状ではまだまだやることも多い。
いずれにせよ剣道に関しては上々の滑り出しと言えるのではないかと思う。誕生日の大きな収穫だ。
タイトルとは全く関係のない書き出しでごめんなさい。これから読書日記に入ります―――。
『シルクロードの滑走路』 [黒木亮]
内容(「BOOK」データベースより)『アジアの隼』、『トップ・レフト』、『冬の喝采』に続いて4冊目の黒木亮作品挑戦である。ブログで紹介するのは『アジアの隼』を除く3作品目だが、本作品の内容的には『アジアの隼』との比較で述べてみたいと思う。『アジアの隼』の紹介も兼ねて…。
中央アジア最深部、キルギスタンの首都ビシュケクは、氷河を頂く天山山脈の麓の知られざる国際都市。総合商社のモスクワ駐在員、小川智は旅客機2機を仲介するため交渉を開始する。テーブルの向こうでは、でっぷり太ったキルギスの運輸大臣が、黒縁眼鏡の奥に小狡そうな目を眠たげに開いていた。現地には、政治と戦争に翻弄された朝鮮人やドイツ人たちが暮らす。しかし、自分のすぐそばに、民族の運命を背負う別の男がいることを小川は知らなかった。ユーラシアの彩り豊かな四季の中、航空機ファイナンスは進行して行く。航空機ファイナンスで知る中央アジアの真実。
『冬の喝采』 [黒木亮]
祝・東洋大学総合優勝!
祝・早稲田大学総合第2位!
(あ、私、早稲田OBじゃありませんけど…。こう書いた理由は以下の本の紹介をご覧下さい。)
場所はオリッサ州ブバネシュワル。大晦日の昼間に到着し、新年をここで迎えた。「山こもり」第二弾はオリッサ州ブバネシュワルとプリーで過ごす計画でここに来たが、第一弾のボパール滞在中に少し体調をおかしくし、デリーに一時的に戻った際にくしゃみ・鼻水が止まらなくなった。前回のブックレポートをデリー滞在中に何とか仕上げ、家の中の用事をいろいろ済ませて大晦日の早朝空港に向かったため、前夜の睡眠時間がわずか3時間程度。機内で少しでも寝ようと思ったが、鼻水は止まらないし左耳の気圧調節がうまくいかないしで、ブバネシュワルに着いた時には頭痛と吐き気までもよおしてきた。
大晦日は少しぐらいブバネシュワル市内を歩こうかと思ったが、ホテルに入ったらもうそんな気力もない状態で、とにかく寝た。正午ぐらいから夜21時頃まで、断続的に睡眠を取った。それでも頭痛と吐き気はあまり引いた様子はない。吐き気があるので食欲はないし、かといって何も食べないで鎮痛剤も飲めない。そんなつらい大晦日だった。
祝・早稲田大学総合第2位!
(あ、私、早稲田OBじゃありませんけど…。こう書いた理由は以下の本の紹介をご覧下さい。)
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内容紹介この記事掲載日付は1月4日だが、実際の原稿は元日の朝に書いている。
「天才は有限、努力は無限」北海道の大地を一人で走り始めた著者が、怪我によるブランクを乗り越え、準部員として入った競走部には、世界的ランナー・瀬古利彦がいた。入部後も続く怪我との戦い、老監督との葛藤など、1年8ヶ月の下積み生活に耐えて掴んだ箱根駅伝の桧舞台で、タスキを渡してくれたのは 瀬古だった。それから9年後、30歳になって自分を箱根路に導いた運命の正体を知る。感動の自伝的長編小説!
場所はオリッサ州ブバネシュワル。大晦日の昼間に到着し、新年をここで迎えた。「山こもり」第二弾はオリッサ州ブバネシュワルとプリーで過ごす計画でここに来たが、第一弾のボパール滞在中に少し体調をおかしくし、デリーに一時的に戻った際にくしゃみ・鼻水が止まらなくなった。前回のブックレポートをデリー滞在中に何とか仕上げ、家の中の用事をいろいろ済ませて大晦日の早朝空港に向かったため、前夜の睡眠時間がわずか3時間程度。機内で少しでも寝ようと思ったが、鼻水は止まらないし左耳の気圧調節がうまくいかないしで、ブバネシュワルに着いた時には頭痛と吐き気までもよおしてきた。
大晦日は少しぐらいブバネシュワル市内を歩こうかと思ったが、ホテルに入ったらもうそんな気力もない状態で、とにかく寝た。正午ぐらいから夜21時頃まで、断続的に睡眠を取った。それでも頭痛と吐き気はあまり引いた様子はない。吐き気があるので食欲はないし、かといって何も食べないで鎮痛剤も飲めない。そんなつらい大晦日だった。
『トップ・レフト』 [黒木亮]
黒木亮著
『トップ・レフト―ウォール街の鷲を撃て』
祥伝社、2000年11月
夏に黒木亮著の『シルクロードの滑走路』を読んで、本ブログでレポートしたことがあるが、ちょっとまとまった休日があると、なんとなく読んでみたくなるのが、国際金融業界を舞台とした長編小説である。2000年に発表された『トップ・レフト』は、その黒木氏の処女作だ。内容(「BOOK」データベースより)
欲望とリスク、栄光と失意が交錯するロンドンの国際金融ビジネス。都銀上位行の富国銀行ロンドン支店次長の今西は、じり貧の邦銀で必死にディールをこなしていた。案件の多くは中近東を中心とする国際協調融資。ある日、今西に日系自動車会社のトルコ現法向け1億5千万ドルの巨大融資案件が持ちかけられた。資金の使途はイラン工場建設資金。が、米国の投資銀行に勤める日本人龍花がその情報を聞きつけた。強引な手法で単独・全額引受け(ソール・アンド・フルアンダーライト)を目指すウォール街の鷲と、誇り高き金融街シティの契りで結ばれた今西率いる四行共同引受けグループとの息詰まる闘い。その渦中で、世界の金融界を揺るがす巨額のM&Aが持ち上がった…。果たして栄光の主幹事の座を射止めるのはどちらか?在英現役国際金融マンが空前のリアリティで描く、驚嘆の国際経済小説。