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『フォン・ノイマンの生涯』 [読書日記]

フォン・ノイマンの生涯 (ちくま学芸文庫)

フォン・ノイマンの生涯 (ちくま学芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2021/04/12
  • メディア: 文庫
内容(「MARC」データベースより)
量子論、ゲームの理論、原水爆、コンピュータ、数値気象学…を立ち上げ、20世紀後半の科学と社会を基礎付けたユダヤ人天才科学者の足跡を追った伝記。
【MT市立図書館】
現在受講中のグローバルディプロマコースの冒頭で紹介されたのがフォン・ノイマンも関わった黎明期のコンピュータの話だったので、この際だから一度フォン・ノイマンの電気でも読んでおこうかと思って手に取った。毎度のことながら、そのセレクションは衝動的なもので、他の蔵書を借りるために市立図書館に出向いた際、何かもう一品付け加えようと思い、文庫・新書の棚を物色し、パッと目に止まったというのが実態に過ぎない。

500頁以上ある分厚い文庫。しかも、3月末でそれまで勤めていた会社を辞めたため、通勤もしなくなった。読書に充てられる通勤時間がなくなったことで、集中して読書ができるのはディプロマコースのローカルセッションに通う毎週土曜日ぐらいしかない。幸い、ここ2週間は土曜日以外にも横浜に出向いた日があったため、なんとか読み進め、4週間かけてなんとか読み切った。

とんでもなく多産な人で、多くの、今なら相互に関連性がなさそうな領域で大きな功績を残された20世紀の偉人である。今なら、アカデミー賞を最近受賞した『オッペンハイマー』でロスアラモス研究所が出てくるので、その時代背景を知る上でも参考にできる評伝だと思う。但し、僕は『オッペンハイマー』を観ていないのでわからないのだが、Wikipediaの記述を見ると、作品の登場人物リストにフォン・ノイマンの名前はないため、映画には登場していない可能性もある。その辺は、作品編成上の事情や思惑もあるのだろう。映画の方で原爆開発者の苦悩が描かれているようだが、フォン・ノイマンは「必要悪」の立場から開発には積極的に関わっていたようだから。

原水爆のことも、コンピュータのことも、ゲーム理論のことも、それぞれある程度理解していればもっと味わえる評伝だと思う。僕は断片的かつ中途半端な理解の上に立って本書を読み、このブログも書いているので、稚拙な記述があると思うがどうかお許しいただきたい。

僕自身の知識や理解が断片的だと思うのは、例えば原水爆開発でいえば、「ロスアラモス」での核実験や、広島・長崎への原爆投下とその影響、「マンハッタン計画」という言葉とそれを主導した「グローブス准将」という人物の名前ぐらいしか知らなかったという点にある。但し、それらを知ったのは高校生の頃なのだが。大学1年の英作文の授業で、「英語でショートストーリーを書け」という宿題が出されたことがあり、「マンハッタン計画」と「グローブス准将」と「広島」というのを組み合わせてフィクションを書いたことがあった。当然ながら、グローブス准将以外にマンハッタン計画に関わった人物に関する情報など持っていなかったし、広島への投下が決まった経緯すら知らない。無知な高校生の愚かな行為だと笑っていただきたいのだが、それから40年以上が経過し、そのあたりの知識のギャップをようやく埋めることができたような気が今はしている。

既に冗長な感想をつらつら語ってしまっているのだが、軽めにあと3点ほど述べたい。

1つめは、フォン・ノイマンがこれだけ多くの異なる領域で評価されているのは、数学者だからなのかなと思った。今ならビッグデータの活用とかDXとかでもてはやされ、大学で数学を勉強した学生のニーズは大きいのではないかと思うが、それとよく似た構図かと思う。勿論、彼が超天才的な数学者であったことから引く手あまたとなったことは間違いないのだが。数学者の知見が当時どのように求められたのかを知るいい評伝だったと思う。

2つめは、そうしたグローバルな知見を取り込もうとするオープンなところが「アメリカ」という国のパワーになっていたんだなというのを改めて実感できた点だ。マンハッタン計画のような国の根幹を揺るがす大事業を外国生まれの研究者に委ねるというのは、当時の日本とは対照的だと思う。

3つめには、そうやって合衆国に請われて、またナチスドイツが接見していた当時の欧州の状況に身の危険を感じて米国に渡った多くの研究者たちが、それでもリスクを冒して米国と欧州の間を往来しているモビリティの高さも驚きだった。本当に世界から求められる人材というのがどういう挙動をするのか、どういう挙動をするのが理想なのか、本書を読んでいたら痛感するところが多かった。本当に求められる人材なら、1カ所に長く留まるというよりも、短期間で多くの場所を転々として仕事をこなしていく。

自分がそういう働き方を今後できるのかどうかはわからないし、できたとしても相当な低空飛行だと思うけれど、そういうところが本書では気になった。

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