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政府高官への厳しい評価 [ブータン]

王立人事院のリーダーシップ評価で50%の高官が「失格」
50% of top civil servants fail RCSC’s leadership assessment
Phurpa Lhamo記者、Kuensel、2022年1月31日(月)、
https://kuenselonline.com/50-of-top-civil-servants-fail-rcscs-leadership-assessment/
【要約】
1)王立人事院(RCSC)が行った初めてのリーダーシップ能力評価において、対象となったエグゼクティブレベルの62人の公務員のうち、50%はRCSCが定めた期待値を下回っていたことがわかった。この評価結果を受け、RCSCはその対象者を現在のポストから外す手続に入った。降格、あるいは辞任ないし辞職を勧告するという。

2)昨日付のプレスリリースによると、62人中4人(7%)が期待値を超えるパフォーマンスを示していた。この4人については、さらに広い権限を付与してよいかどうか、さらに見極めるという。事務次官や局長級のこの4人が誰なのかは明らかにされていない。

3)リーダーシップ評価は、昨年7月に導入された。評価者は現地人と外国人から構成された。今後は部長級にまで評価の対象を拡大し、今年3月に完了する予定。

4)過去、公務員は、所管部署の年次成果評価合意(APA)に基づくパフォーマンスを近似値として評価を受けてきた。APAでは、その組織が「秀逸(Outstanding)」と評価されれば、その管理職も高い評価を受けた。これでは、組織のパフォーマンスと管理職のパフォーマンスが一致しない可能性を排除できなかった。

前回駐在していた頃から、国王の建国記念日演説で毎年指摘されてきたのが「公務員の質」の問題だった。大卒の成績優秀者は皆公務員をめざすが、公務員の働き方が効率的かとといえば、批判の対象となることが多い。昨年12月の建国記念日演説を聴いていた元国会議員の知人が、「公務員に対する国王のいら立ちがにじみ出ていた」と仰っていた。そして、それはその直後の首相の一般教書演説にも反映されていた(「首相演説ににじみ出る危機感」(2022年1月3日))。最近も、公務員のデジタルリテラシーがやり玉に挙がったばかりである(「公務員のデジタルリテラシー」(2022年1月25日))。

今は公務員を相手に仕事をしていないから、公務員のパフォーマンスにどうこうというのはない。自分の国の公務員や準公務員を棚に上げて、他人様の国の公務員のパフォーマンスがどうのこうのとはとても言えない。

人のパフォーマンスって、一緒に働く上司や部下のパフォーマンスや相性とシンクロするところがあって、ある部署で出色の成果を上げたような人が、別の部署に移ったらからっきしだったということはよくあると思う。今回の50%の幹部公務員が、どういう大臣や次官の下で働いていたのかとか、周囲にどんな部下がいたのかとか、そういうのも見てみないと、低パフォーマンスの理由はわからないと思う。なんか、低パフォーマンスについてはご本人たちにも言い分があるのではないかと思うんですよね。

よく言われるじゃないですか。アリの集団の中で働き者なのは2割ほどで、残り8割は2割の働きアリに依存していると。それでその2割だけを抽出して新たな集団にしても、やっぱり働くのはそのうちの2割程度で、残りの8割は働かなくなると。そう考えると、50%が低パフォーマーって、そんなに悪い数字でもないのではないかと思うし、残りの中パフォーマーと高パフォーマーを残したところで、その中からまた低パフォーマーが出てくるのではないかとか、あるいはその50%を新しい幹部人材に入れ替えても、結局のところ低パフォーマーは出てくるんじゃないかとか、そういうのを考えてしまう。

また、記事を見る限りはこれは単年度のパフォーマンス評価である。例えば、自分が3年程度の任期を想定して自分なりの作業計画を立てていたとした場合、1年目は準備期間で大きな成果は出せず、最も大きな成果は3年目に訪れるというシナリオを想定している可能性もある。幹部公務員の在任期間に関する記述は記事の中にはないが、おそらく就任1年未満の人も、3年以上在籍している人も含まれていたのではないか。その場合、少なくとも就任1年未満の幹部公務員には、情状酌量は認めてあげてもいいのではないかと思う。

そういうのすら待つ余裕がなくなってきているのだろうか。

ただ、これは言える。行政の縦割りで、クロスカッティングで魅力ある開発事業がなかなか作れない。例えば、王様も立ち寄られて日本の橋梁建設技術をお褒めになられたというワンディポダン県のチュゾムサ橋に、もっと通行者に立ち寄ってもらえるような仕掛けを作れば、そこに市場ができる。道の駅のようなものだ。そのために関わって来る政府関係機関は多岐に及ぶ。公共事業省、ブータン観光庁(TCB)、県、農業省、教育省、文化局等々。そういう時に、所管の部署を超えて調整役を果たし得たかどうか。そういうのができる幹部公務員なら、ポジティブな評価をしてあげた方がよい。

残念ながら、そんなことは日本でもそうそうできることじゃないので、高望みのきらいはある。そういう時に、「これ民間にいた方が動きやすいかも」と思ってしまう。

おそらく、今回の幹部公務員パフォーマンス評価の結果も、民間企業や市民社会組織にとっては「自分たちにとってはチャンス」とポジティブに受け止められているのだろう。

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Sanchai

この記事の続編です。Directorクラスの59人に対する評価の結果は、約1/3に相当する19人は高評価だったとのこと。
https://kuenselonline.com/one-third-of-directors-show-promise-rcsc/
by Sanchai (2022-02-19 20:23) 

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