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『純喫茶トルンカ』 [読書日記]

純喫茶トルンカ 〈新装版〉 純喫茶トルンカ<新装版> (徳間文庫)

純喫茶トルンカ 〈新装版〉 純喫茶トルンカ<新装版> (徳間文庫)

  • 作者: 八木沢里志
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2022/06/08
  • メディア: Kindle版
内容紹介
東京・谷中の路地裏にある小さな喫茶店『純喫茶トルンカ』を舞台にした3つのあたたかな物語。決まって日曜に現れる謎の女性とアルバイト青年の恋模様、自暴自棄になった中年男性とかつての恋人の娘との短く切ない交流、マスターの娘・雫の不器用な初恋――。コーヒーの芳ばしい香りが静かに立ちのぼってくるような、ほろ苦くてやさしい“奇跡″の物語。各所で反響を呼んだ傑作小説、待望の新装版。
【購入(キンドル)】
これも、伊藤調『ミュゲ書房』同様、久々の読書で読書スピードを上げることをめざし、帰国便の機内で読み切ろうと考えてダウンロードした小説であった。幸い『ミュゲ書房』はすんなり読み切ることができたが、『純喫茶トルンカ』の方は読み始めがバンコク発羽田行きの夜行便の機内となったため、読書よりも睡眠を優先させ、旅の途中で読み始めることもかなわなかった。しかも、帰国して早々にバンク-ミケルセンの評伝を図書館で借りることができたため、さらに読み始めがうしろにずれ込んだ。

小説なので、あっという間だった。「中編」と言った方がよい3編が収録されていて、いずれも通勤の往復でちょうど1編を読み終われるというぐらいのボリューム感。今週月曜から水曜までの3日間の通勤で、全3編を読了した。

八木沢里志というのは「森崎書店」シリーズで知った作家なのだが、僕にはちょうどいい感じの作品が多いと思う。「森崎書店」シリーズは、舞台が神保町だったので昔バイト先通いしていた懐かしさも手伝っていい感じの読後感だった。「純喫茶トルンカ」のシリーズも、僕は勝手にモデルが神保町の老舗喫茶店「ミロンガ」のことだと思い込み、勢いで手に取ってしまった。残念ながらこのシリーズの舞台は谷中だったが、こういう落ち着いた喫茶店があるのなら、そのうち一度は歩いてみたいと思わせる雰囲気を本作品からは感じた。

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『「ノーマリゼーションの父」N・E・バンク‐ミケルセン』 [仕事の小ネタ]

「ノーマリゼーションの父」N・E・バンク‐ミケルセン―その生涯と思想 (福祉BOOKS)

「ノーマリゼーションの父」N・E・バンク‐ミケルセン―その生涯と思想 (福祉BOOKS)

  • 作者: 花村 春樹
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 1998/07/25
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
本書は、「ノーマリゼーション」という福祉思想が誕生した背景を述べ、今後への展望を探るため次のように構成しました。第一部では、「ニルス・エリク・バンク‐ミケルセン」という一人の行政官の生涯を辿ります。それによって、今や世界の福祉の重要な潮流になっている「ノーマリゼーション」という思想が、どのような経緯で彼の中に形成されてきたのか、彼はその考え方をどのように提唱し行政に反映させ、福祉実践に結びつける努力をしたのかを探ってみようと思います。つづく第二部では、彼の思想の一端に触れるため、彼の講演と論文と最終講義を採録しました。これによって、バンク‐ミケルセンの「ノーマリゼーション」という思想を、彼の言葉を通して理解したいと思います。さらに第三部には、ビヤタ夫人と長男オール氏による「思い出」を載せました。家族から見たバンク‐ミケルセン像を通して、彼の人柄を知ることができるでしょう。
【MS市立図書館】
帰国して真っ先に図書館で借りた。MS市立図書館は、分館の1つが僕の最寄り駅にあるが、僕の住民登録はお隣りのMT市で、そのMT市住民の利用に対する処遇を徐々に厳しくしているように思える。数年前に、MT市住民への貸出可能冊数に厳しい制限をかけたのに続き、最近、発刊から2年以内の本の貸出も不可にした。MT市民なんだからMT市立図書館で借りろというのは正論かもしれないが、僕らの最寄り駅はMS市に属するものの、駅南側に住む通勤・通学客の半数以上はMT市住民の筈だ。逆のケースだってあるかもしれないのに、こんな差別的処遇ってありなのだろうか。「悔しかったらMS市に引っ越して来い」とでも言うのだろうか。

それはともかく、発刊から2年以内の本は借りられないMT市の住民としては、MS市立図書館ではそれより古い蔵書しか借りることが許されないのが現状。それで借りた本は、初版が30年も前に出されたバンク‐ミケルセンの評伝である。

バンク‐ミケルセンとその「ノーマリゼーション」という思想は、僕が度々ブログでも言及しているCOTEN RADIOの「障害の歴史」回で取り上げられた。自分の職場では、徐々に障害児向け自助具の研究開発を取組み重点分野として育てつつある。しかし、早くから障害と向き合ってこられた方々の間では、そこにテクノロジーが入って来ることにピンと来ている方はあまり多くなく、どちらかというと、テクノロジーが入ってくることに対して、懐疑的ないしは否定的な反応が返ってくることが多い。

テクノロジーを持ち込んで新たな課題解決の手段にしようとしている側にいる僕らには、なぜそのような反応が返って来るのかが理解しづらい。今さらなのだけれど、どうしたら理解が得られるのかを考える意味でも、また社会・人文科学の面からも、障害をもう一度、勉強し直してみようと思っている。2024年の前半は、そういう時間に充てたいと思っている。

そこで、COTEN RADIOの「障害の歴史」シリーズで、もっとも印象に残った「バンク‐ミケルセン」と「ベンクト・ニィリエ」という2人の北欧人について、学ぶところからスタートさせた。ちなみに、こうやって2人の人物を並べて書くと、バンク‐ミケルセンは名前と姓で構成されていると思いがちだが、彼の姓は「バンク-ミケルセン」で、ファーストネームは「ニルス・エリク」なのだとか。

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『コミュニティナース』 [地域愛]

コミュニティナース

コミュニティナース

  • 作者: 矢田 明子
  • 出版社/メーカー: 木楽舎
  • 発売日: 2019/06/01
  • メディア: Kindle版

内容紹介
ウーマン・オブ・ザ・イヤー 2018 を受賞 世界が注目する島根発、新しい地域ケアのあり方!
コミュニティナースという新しい働きかた・生きかたが、全国各地で始まっています。見守りや巡回など、さまざまな活動を通じて地域の人たちのそばで関係性を深め、安心を届けることで、健康的なまちづくりに貢献するキーパーソンです。 この活動を島根県でたった一人で始めた矢田明子さんと、全国に広がるコミュニティナースたちが取り組む、これからの地域ケアをめぐる奮闘記です。
【Kindle Unlimited】
ブータンを離任するまでの最後の3カ月間、早朝起きて夜明け前のヘリパッドを周回ウォーキングするのが日課となった。自分なりに健康状態をこれ以上悪化させないための措置で、薄暮で視界が限られる中、ポッドキャストでCOTEN RADIOを毎日1話聴くのが日課となっていた。そんな時に聴いたのが、本書の著者がゲストとして出られた3回シリーズだった。拝聴して、もうちょっと知りたいと思ったので、キンドルで探してダウンロードしてみることにした。

まだ読書スピードのリハビリが終わっていないため、集中力に欠けた散漫な読書になってしまったのは申し訳なく思う。機会があればまた読んでみたい。現時点で断定的なことは書きづらく、「要するに」というまとめをするのは失礼だとも思う。僕が知りたかったのは、①看護師をはじめとしたら医療資格を持っていないと「コミュニティナース」にはなれないのかということと、②僕が帰国して暮らしている地域にはコミュニティナースはいるのかということだった。残念ながら②については本書では紹介されていないのだけれど、①については看護師資格がないといけないわけではないということだけはわかったので、近くにコミュニティナースっぽい活動をされているコミュニティファシリテーターがいらしたら、「自分は自助具作製でお手伝いできます」とお伝えしておいて、何かの時にはお手伝いができるよう、知識と経験を深めておきたいと思う。

地域の人びとのふだんの何気ない会話や所作から、体の変調を察知するという能力は僕にはないけれど、地域の誰が何を知っているのかを知っていて、何かの時に誰をつないだらいいのかが判断できるのが大事なのだと僕は理解した。看護師免許や看護師としての勤務経験がなくても、近所で誰がそのような免許や経験を持っているのかを知っていたら、本書で描かれたコミュニティナースの活動は実現可能なのではないかと思う。本書は看護師経験者の視点で描かれているのでこういう書きぶりになるのだろうが、抱えていることはコミュニティでのファシリテーションそのもので、誰かが地域で活動していて、ケアのニーズに出会った時、それを地域の看護師経験者につなげてお助けを仰げればいいのだ。

いずれの場合であっても、出発点は地域の誰が何を知っているのかを知っているのが大事ということになる。僕が今勤めている会社を退職した後、どこで何をやろうとしても、これは必要なステップである。それに、僕が何を知っているのかを、周りの人びとにも知ってもらっておく必要も当然ある。

そう考えると、僕たちがコミュニティで暮らしていくのに、当たり前のように必要なことが書かれているのかなと思えてきた。

本書では上記②はわからないので、著者が立ち上げたコミュニティナースカンパニー(現在は株式会社CNC)のウェブサイトも見てみた。わりと僕の実家に近い地域でもコミュニティナース実践講座が開かれているのもわかった。残念ながら都合がつかないので講座受講というわけにはいかないのだけれど、冒頭の発言に戻るが、コミュニティナースが近くにいれば、「オレ、これなら手伝えます」と手を挙げられるようにはしておきたい。


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『ミュゲ書房』 [読書日記]

ミュゲ書房

ミュゲ書房

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2021/03/17
  • メディア: Kindle版
内容紹介
そこは、人も物語も再生する本屋さん―――
小説編集の仕事をビジネスと割り切れない、若手編集者の宮本章は、新人作家・広川蒼汰の作品を書籍化できず、責任を感じ退職する。ちょうどその頃、北海道で書店を経営していた祖父が亡くなり、章はその大正時代の洋館を改装した書店・ミュゲ書房をなりゆきで継ぐことに……。失意の章は、本に関する膨大な知識を持つ高校生・永瀬桃ら、ミュゲ書房に集まる人々との出会いの中で、さらに彼のもとに持ち込まれた二つの書籍編集の仕事の中で、次第に本づくりの情熱を取り戻していく。そして彼が潰してしまった作家・広川蒼汰は――。挫折を味わった編集者は書店主となり、そしてまた編集者として再起する。本に携わる人々と、彼らの想いを描いたお仕事エンターテインメント。
【購入(キンドル)】
ブータンから日本に帰国する機中、せめて1冊ぐらいは本を読もうと思い、ダウンロードしたのが本書である。パロ空港の待合室で読込み開始し、経由地バンコクの空港で乗継便待ちの間に読み終えた。所要時間は約5時間。最近本を読んでなかったので、景気づけに小説を選んでスピードを上げようと狙ったが、久々の読書で感覚がつかめず、途中で何度も休憩を入れた。読書の方もリハビリが必要だ。

本書は、1年半ぐらい前からずっと「読みたい本」のリストに入っていた。この書店に関わったすべての人が最終的にはハッピーになれるエンディングで、若干予定調和的な印象は受けるものの、僕ごときの読者には、こういう静かでほっこりする終わり方でもとても嬉しい。

かつ、そんな中でも、地方の書店がどんどん閉業していく現状に対して地元の小規模スタートアップに場所を貸して集客の一助にしようとするサバイバル策とか、編集者と新人作家との力関係とか、逆にこだわりの強すぎる執筆者をどうやって編集者がいなしていい本に仕上げて行けるのかとか、装丁デザインやイラストの採用のされ方とか、1冊の本ができ上がっていくプロセスを追体験できる要素も相当盛り込まれていて、読みながらも勉強になった。

僕の親友が数年前から北海道に移住し、全道中で読書の楽しさを普及させる仕事に取り組んでいる。彼とのやり取りでも出てきたことがある「選書サービス」や「書店スペースを使ったイベント開催」等も、本書には登場する。帰国を機会に、彼ともどこかで会ってみたいと思う。

会えば話題は本の話となる。書店や出版、編集、文学賞、作家、図書館、まちづくりといったいくつかの切り口があるが、本書はそれらの要素をひと通り備えた作品として、彼との話のネタの1つにさせてもらえそうだ。


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ブログ更新再開のお知らせ [ご挨拶]

気が付けば、2カ月にもわたってブログを休載しておりました。
理由は、単純に仕事が忙しかったからです。

当時のSSブログの位置付けは、当時住んでいたブータンの時事ネタ紹介と読書日記の二本立てでした。しかし、ここ数カ月、そのどちらもやっている余裕を無くしました。新聞・テレビなどのメディアをフォローし、世間一般の時事ネタを拾っている余裕も、読書日記掲載のための読書も、どちらもできず、もっぱら職務に専念していました。

その職務の一環でやっていた情報発信は、noteの方でずっと掲載を続けています。むしろ、ここ数カ月はそちらの方をメインに書いていました。

お気づきかとは思いますが、このSSブログおさぼり傾向は今年7月頃から見られたものです。それでも8月頃は、12月の帰国を視野に入れて読み込みを急いだ時期でもあったので、読書自体はしていて、それでブログも掲載できていました。そんな余裕すらなくしたのが9月以降です。

でも、今僕は既に帰国しました。これでブータンからは切り離されますし、しばらくは古巣の職場に身は寄せますが、それも今年度内いっぱいで、2月以降は有給休暇を消化することにしています。たくさん本が読めることでしょう。今からワクワクしています。

そんなわけで、SSブログの方は、読書ブログとしてこれから再スタートさせたいと思います。
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