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『日本の聖域 ザ・コロナ』 [時事]

日本の聖域 ザ・コロナ(新潮文庫)

日本の聖域 ザ・コロナ(新潮文庫)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2021/10/28
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「三万人のための総合情報誌」をうたう雑誌「選択」の名物連載「日本の聖域」をまとめた第六弾。今回は「新型コロナウイルス」問題が中心となる。欧米と比べて感染者数も死者数も段違いに少ないのに、日本はなぜ医療崩壊の瀬戸際に立たされているのか。なぜアジア諸国に比べて、経済状況の悪化が激しいのか。エビデンスが信頼に値しない緊急事態宣言はなぜ何度も発出されるのか。PCR検査はなぜ受けられないのか……。答えは明白だ。人命を脅かす疾病を前にしてなお、利権拡大に勤しむダニのような人間がこの国には存在するからだ。行き当たりばったりのデタラメなコロナ対策に終始し、国民をエセ情報の沼に放り込んだ責任は誰にあるのか。しがらみにまみれ、権力、利権、欲望渦巻く国の中枢の真実に迫る。
【購入(キンドル)】
これを書いている時点で日本時間は10月31日(日)の21時過ぎ。衆議院議員選挙の開票速報をときおり見ながら書いている。「当選確実」とか「落選確実」とかという速報とともに、候補者の顔写真も報じられるのだが、与野党とも有力議員は20時の開票開始とともに当落が報じられ、なんかいつものメンツだなという感じと、知らない議員の多さ、それに高齢者の多さがすごく気になった。与野党双方に言えることだが、当選回数のわりには実績が何なのかわからない現職の多さとか、で当選回数重ねていくうちにフレッシュさも失っていき、なんだかどんよりした顔ぶれだなという気がした。

そういう、総選挙のタイミングで本書は世に出た。発刊が10月28日で、僕は発刊日にキンドルでダウンロードしたが、読み終えるのに足かけ3日を要した。僕の場合は在留届の提出が先月だったし、そもそも大使館が当地にないから、不在者投票も不可能だったわけだが、仮に日本にいて本書を超速で読んでいたとしても、投票行動に影響が出ることまでは間に合わなかっただろう。

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『新型コロナ 7つの謎』 [時事]

新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体 (ブルーバックス)

新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体 (ブルーバックス)

  • 作者: 宮坂昌之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/11/18
  • メディア: Kindle版
内容紹介
免疫学の第一人者が、最新の科学データで正体不明のウイルスの謎に迫る。これぞ新型コロナ解説書の決定版! 新型コロナウイルスが中国で発生したのは、2019年12月。それからわずか半年の間に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は瞬く間に世界に伝播し、10月末には全世界の感染者数は4400万人を突破し、死者は120万に迫ろうとしている。このウイルスは過去にパンデミックを引き起こしたインフルエンザウイルスとは明らかに違う性質を持っており、得体の知れない様々な謎を秘めている。「あり触れた風邪ウイルスがなぜパンデミックを起こしたのか?」「幼児は、感染しても軽症が多いのに対して、高齢者が感染すると重症化しやすい。なぜかくも症状に差が出るのか?」「なぜ獲得免疫のない日本人の多くが感染を免れたのか?」「有効なワクチンは本当に開発できるのか?」など誰も知りたい新型ウイルスの7つの謎に、最新の科学的知見に精通した免疫学の第一人者が果敢に挑む。本格的流行期を前に必ず読んでおきたい「読むワクチン」。
【購入】
某全国紙の科学部記者をやっていた大学時代のサークル同期が、Facebookで本書を薦めていたので、だまされたと思って昨年末に購入した。お正月休みの読書のつもりでキープしてあったのだが、これまでに図書館などで追加で借りた本の点数も多く、先送りを繰り返すうちに、1カ月以上が経過してしまった。

ただ、今読んでよかったとも思う。今はちょうど世間では新型コロナウィルスのワクチン接種がホットな話題として取り上げられており、本書で7つめの謎として掲げられている、「有効なワクチンを短期間に開発できるのか」で書かれていることが、とても腑に落ちたからだ。ワクチン開発には通常3年ぐらいはかかると思っていたので、パンデミックになってから1年も経たないうちにどんどん登場して接種が進められようとしているワクチンが、本当に効くのか謎で仕方がなかった。日本はワクチン接種が遅れ気味だけれど大丈夫なのかとメディアも不安を煽っている気がするし、僕も外国の友人から、「日本は大丈夫なのか」と訊かれることもあるけれど、拙速にならないようにしたいと改めて思った。

その他の謎については、エッセンスだけ拾えば確たることは未だわかっていないのだというのがわかったけれど、挿入されている図表を見ながら読み進めても、書かれている専門的なことはなかなか頭に入ってこなかった。優しい文体で書かれているけれど、内容が易しいわけではないから要注意。そこはさすがにブルーバックスだと思う。

免疫学者である著者は、今回のコロナ騒ぎでメディアの取材を何度も受けて来たそうだが、そこでわかったのは、日本のメディアの自然科学に関するリテラシーがほとんど醸成されていないという実態だったとあとがきで指摘されている。よくわかってないからパニック論調で報じる。するとそれに読者の僕らも踊らされてしまう。新聞記者である僕の友人がいみじくもFacebookで何度も発言しているが、ちゃんと理解していれば極端に恐れることもないし、だからといって極端な楽観論も危険だという。

メディアの報道を鵜呑みにせず、どこからどこまでは信じていいのか、自分なりのものさしを作ってリテラシーを高めていかないといけない。ちょっと深呼吸して、こういう分析の効いた時事ものも読まんで勉強しないとなぁ。

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『新興アジア経済論』 [時事]

新興アジア経済論――キャッチアップを超えて (シリーズ 現代経済の展望)

新興アジア経済論――キャッチアップを超えて (シリーズ 現代経済の展望)

  • 作者: 末廣 昭
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/07/30
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより) グローバル化、経済自由化、IT革命…国際環境は大きく変化している。その動向を追いながら、中国の台頭、域内相互依存の深化、「中所得国の罠」、人口動態や国内格差といった社会問題にも着目して、従来の「キャッチアップ型工業化論」を刷新する。
【会社の図書室】
著者が2000年に『キャッチアップ型工業化論』という本を出された直後、僕は当時通っていた大学院で、この本をテキストに使った講座を履修したことがある。僕は1980年代後半に別の大学で学生をやっていた当時、当時一世を風靡していた「雁行型経済発展論」を少しかじったことがあるので、それとどこが違うんだ最初からこの講座で批判的な発言をして、担当教授を激怒させ、途中から講義室に行かなくなった。その後、「大いなる収斂」のような主張も出てきていて、平均で見た場合の国家間の格差は収斂してきていて、見た目はキャッチアップが進んでいるようであり、なおのこと「キャッチアップ工業化とは何だったのか」がわからなくなりつつあった。

その提唱者が、2014年に、サブタイトルに「キャッチアップを超えて」と付された新たなアジア経済論の本を出された時、早く読もうと思った。でも、近隣の市立図書館には所蔵されておらず、いきなり買って読むほどには僕も勇気がなく、躊躇している間に5年半が経過してしまった。その間に、SDGsは制定され、気候変動対策がかなり前面に出てきた。アジアが生産面でも消費面でも世界経済を牽引しているという認識には異論はないが、今のような状況になってくると、世界経済を牽引しているアジア地域で、新興国やASEAN諸国が、気候変動対策にどう取り組んでいくのかには関心もあるが、本書の発刊ではそこまでは言及されていない。その点では少し古さも感じるし、本書発刊後に各国で行われたであろう人口センサス等の統計を踏まえて、何が変わってきているのか、アップデートするような新たな文献には触れる必要があるかもしれない。

とはいえ、自分の理解を現在にまでアップデートしていくためには、2014年時点でのアジアのスナップショットを、ベースラインとして理解しておく必要はあると思う。本書で出てくる大泉『老いていくアジア』や『消費するアジア』は、発刊直後に一度読んでいて、アジアの高齢化や中所得者層の台頭については、それなりの理解はしてきたつもりだが、そういうのも全部まとめて、一度整理したい。そういうニーズには本書は応えてくれる良書だと思う。

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『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』 [時事]

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

ベストセラーで読み解く現代アメリカ

  • 作者: 渡辺 由佳里
  • 出版社/メーカー: 亜紀書房
  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
「アメリカで話題になっている本はなんですか?」は、人気レビュアーである著者がビジネスリーダーたちから常に聞かれる質問だ。本の良し悪しというより、話題となる本は、アメリカ人の興味を如実に映す。数々のトランプ本、ミシェル・オバマやヒラリーの回想録、ITビリオネアが抱く宇宙への夢、黒人や先住民から見える別の国アメリカ、ジェンダーの語られ方…「ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト」の連載を中心に、人気レビュアーが厳選して伝えるアメリカのいま。

アメリカ大統領選の投票まであとわずか。このタイミングで、こういう本を図書館ですぐに借りることができたのは、ものすごくラッキーだったと思う。7月にレベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』をご紹介したが、これを翻訳されたのが、本日ご紹介する本の著者である。今年3月だったか、米国で新型コロナウィルスの感染拡大が始まった頃、ラジオ番組に渡辺由佳里さんがゲスト出演されていて、レベッカ・ソルニットの著書と渡辺さんご自身の著書の宣伝をされていた。その頃から、いずれ2冊とも読もうとは思っていて、2冊目はギリギリ大統領選に間に合うタイミングでの読了となったわけだ。

本になるまでの効率がものすごくいい本だと思う。元々ブログやらニューズウィークやらのブックレビューで紹介してあった原稿をまとめたものなので、本にするにあたっての原稿書き下ろしの必要がほとんどない。普段コツコツやられてきたことの成果であり、見習いたいと思う。但し、僕の本のチョイスはこういう現代アメリカ社会といった特定の切り口ではないため、僕がいくらブログで記事を書き溜めたからといって、本にはとてもできないだろう。

レベッカ・ソルニットの著書を読んで、なんで4年前の大統領選でトランプが勝っちゃったんだか分析がされていたのだが、さらに今回ご紹介のブックレビュー集を読むと、ヒラリー候補が女性で、女性の有権者に敬遠されたというだけでなく、トランプを担ぐ共和党も昔の共和党ではなくなってきているらしく、ひょっとしたら今回も、トランプが勝っちゃうかもしれないと思えてきた。トランプはあれだけ嘘をまき散らしているのに、「しょうがない、トランプなんだから」というので許してしまう共和党右派支持者や白人労働者階級の人がすごく多いというのは衝撃的だ。「人は、自分が聴きたいと思うことを語ってくれる人を好む」とか、「政治家の小難しい論法よりもシンプルなトランプの物言いの方が率直に語っていると捉えている人が多い」とか、それはそうかもしれないが、危険だなと思う。

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『それを、真の名で呼ぶならば』 [時事]

それを,真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力

それを,真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/01/30
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
「ものごとに真の名前をつけることは、どんな蛮行や腐敗があるのか―または、何が重要で可能であるのか―を、さらけ出すことである。そして、ストーリーや名前を変え、新しい名前や言葉やフレーズを考案して普及させることは、世界を変える作業の鍵となる。解放のプロジェクトには、新しい言葉を作り出すか、それまで知られていなかった言葉をもっとよく使われるようにすることが含まれている。」現在の危機を歴史から再考し、すりかえや冷笑に抗い、予測不能な未来への希望を見いだす。勇気のエッセイ集。アメリカで、全米図書賞ロングリスト選出、カーカス賞受賞、フォワード・インディーズ・エディターズ・チョイス賞受賞の話題作(いずれもノンフィクション部門)。

外出自粛の間のご近所ウォーキングで、スマホでラジオを聴いていて、米国在住(?)の翻訳家である渡辺由佳里さんが出演され、紹介されていた1冊である。購入してまで読もうという気はなかったが、今月から貸出業務を再開した市立図書館で、たまたま蔵書があることを知り、借りて読んでみることにした。

ひと言で言うと、アルンダティ・ロイの米国人版だね。取り上げているテーマもそうだが、それを美しい修辞や文体で描いている。最近はあまり米国の時事ネタを追いかけていないので、たまにこういうエッセイ集を読むのは新鮮だし、刺激的でもある。アルンダティ・ロイがインドに対して向けている視線と同様のものを、レベッカ・ソルニットは米国に対して向けているように感じた。

扱っているのは時の権力に対する批判であり、もっと言ってしまえばドナルド・トランプに対する批判である。今、米国では5月にミネアポリスで起こったジョージ・フロイド事件をきっかけに、抗議デモが米国内どころか世界各国でも起こっているが、『Black Lives Matter』という標語はもっと以前からあり、白人男性至上主義のような差別的思想が底流にあって、それに対する批判や抵抗のマグマがこれまでにも何度も噴き出してきていたことを改めて知った。

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スポーツ五輪もいいけど… [時事]

若き匠に“高き壁”――技能五輪カザン大会閉幕
日刊工業新聞、2019年8月30日
日本「金」2個、強い中国/ロシア躍進、V字復活ならず 戦略練り直し
 若手技能者が技術を競う「第45回技能五輪国際大会」がロシア西部の都市カザンで閉幕した。日本勢は「情報ネットワーク施工」で8連覇を達成し、「産業機械組立て」でも優勝。金メダル2個のほか、銀3個、銅6個を獲得した。ただ、国別の金メダル獲得数順位は7位であり、日本は国際大会に向けた戦略の練り直しが迫られる。(日下宗大)


《カザン大会開会式の様子》

日刊工業新聞の記事は全文ダウンロードできないので、個々のメダル獲得者のストーリーは別として、要点を簡単に列挙しておく。

1.技能五輪国際大会は、原則22歳以下の若手技能者が2年に一度、技能世界一を競う大会。カザン大会には、史上最多の63ヵ国・地域から1300人以上が参加した。種目数は56.

2.金メダル獲得総数でトップは前回に引き続き中国(16個)、2位は開催国ロシア(14個)、3位は韓国(7個)で、この3カ国で金メダルの過半数を占めた。日本は前回9位から7位にランクアップしたが、メダル獲得数では減った。

3.技能五輪の目的は技能者全体の技術の引上げ。しかし、競技の性格上、メダルに近づく戦略の策定は必要。日本では前回大会での低迷を踏まえて、企業や団体を超えた技術交流などの取組みが広がったが、結果は芳しくなかった。1年以上かけて国際大会の選手を育成する必要性が指摘されている。産学官が連携したバックアップ体制の構築も必要。

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『バイユーの悪手』 [時事]

横浜市がカジノ誘致を正式発表 「これまでにない経済的社会的効果」
朝日新聞、2019年8月22日
横浜がIR誘致、山下ふ頭がカジノ候補地 反発は必至
 横浜市は22日、カジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致すると発表した。横浜港の山下ふ頭(同市中区、47ヘクタール)に整備し、2020年代後半の開業を目指す。だが、IR誘致には市民の間や議会内に根強い反対の声がある。林文子市長が「白紙」としてきた従来の姿勢を変えたことに対し、反発が起きるのは必至だ。
 林市長は元々、IR誘致に前向きだったが、17年の市長選を前に「白紙の状態」と慎重姿勢に転じた。一方、昨年7月のIR実施法成立後、IRに関心がある民間事業者から構想案を公募。「白紙」の姿勢を維持しつつ、IRに関する情報を集めてきた。
 市は9月2日から始まる市議会定例会に、誘致実現に向けた専門的な調査分析、ギャンブル依存症の実態調査などの費用として計2億6千万円の補正予算案を提出する。可決されれば、誘致に向けた準備を本格化させる。
 市は22日に示した資料で、市内の人口が19年をピークに減少に転ずると推計。高齢化が進む中、経済の活力低下や財政悪化が進むと見込んでいる。また、宿泊せずに日帰りする観光客が多く、1人あたりの観光消費額が全国と比べて少ないことが課題とし、「IRはこれまでにない経済的社会的効果が見込まれる」としている。
 IRの経済波及効果について、建設時は1兆2千億~7500億円、開業後は年1兆~6300億円に上るとの試算も公表した。(武井宏之)

22日から休暇をいただいていた。まさにその休暇初日に報じられたニュースがこれだが、僕はこの横浜市長のIR誘致表明の報道を聴きながら、20年以上前に米国ルイジアナ州で起こっていたことを思い出していた。

このブログのアバターがずっとLSU(ルイジアナ州立大学)フットボールチームのヘルメットであることが示す通り、僕はルイジアナ州バトンルージュにあるLSUのメインキャンパスに、1985年8月から86年5月まで留学していた。当時は、エドウィン・エドワーズ州知事の二度目の任期の2年目にあたり、僕が留学開始する頃には、既にエドワーズ知事が打ち出したカジノ誘致が政策論争の焦点になっていた。

ルイジアナ州は元々産油州で、特に原油価格が1バレル40ドル前後あった1980年頃は州財政が非常に潤っていた。ところがその後の原油価格の低迷により、州財政は悪化の一途を辿り、そこでエドワーズ氏が1983年の知事選で勝利して二度目の就任を果たして以降、打ち出してきたのがカジノ誘致であった。それが留学当時、テレビでニュース番組を見ると連日報じられていた争点となっていたのである。

エドワーズ知事は民主党の選出で、立場的には黒人票やマイノリティ票、低所得者層の支持票は彼に流れるというのがパターンだったようだが、知事選で勝つたびに何かしらのスキャンダルにも見舞われて、再選というのがなかった。1983年の知事選もそうだったし、87年の知事選も結局共和党候補に敗れている。その時の敗因の1つは、明らかにこのカジノ誘致論争があった。

それでも91年の知事選に立候補して勝つことができたのは、この時の知事選にはデビッド・デュークという、白人至上主義の秘密結社KKK(ク・クラックス・クラン)の指導者が出馬していて、なんと決選投票にまで勝ち上がっていたからだった。さすがにKKKの指導者と民主党候補者とであれば、後者に支持は流れる。結果として四度目の知事就任を果たすのである。そして、この選挙で勝ったことで、カジノ誘致論争についても、支持を得たことになる。

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グローバル化時代の東南アジアのムスリム [時事]

Southeast Asian Muslims in the Era of Globalization

Southeast Asian Muslims in the Era of Globalization

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan
  • 発売日: 2014/12/16
  • メディア: ハードカバー
内容紹介
Islam and Muslims in Southeast Asia have often been described using two sets of very contradictory terms. On the one hand, they are imagined as being Sufistic, syncretistic and localized, as opposed to their counterparts in the Middle East who are considered to be orthodox and 'fanatical'. On the other, after the 9/11 attacks and especially after the October 2002 Bali bombing in Indonesia, the danger of radical Islam has been emphasized with Southeast Asia suddenly becoming a new location in the War on Terror. This volume seeks to bridge the gap between these opposing perceptions and demonstrate the appropriate position of Islam in Southeast Asia by looking at the Muslim responses to globalization and processes of negotiation. Foreign ideas, goods and texts are creatively adapted and re-contextualized in local situations, acquiring a localized cultural meaning. However, globalization aptly adapts to local conditions, penetrating deep inside territories. The contributors examine how Southeast Asian Muslims respond to globalization in their particular regional, national and local settings, and suggest global solutions for key local issues.

この本は事情があってかなり早い段階から入手して読んでおり、しかもこの本から何が読み取れるのかを整理していたので、ご紹介したいと思う。(せっかく書いたメモがお蔵入りになってしまいそうだったので。)

提言1 世界的なイスラム主義運動とイスラム復興の大きな趨勢は、東南アジアの公的制度・組織や公共政策にも影響を与えている。事業実施の外部条件として、その世界的趨勢には注意を払うことが必要である。

イスラムではイスラム共同体の成員全体の利益が考慮されなければならないとされている。富は善であるが、その追求や蓄積の結果もたらされる経済的報酬は共同体の他のメンバー、特に貧者に還元されなければならないと説く。こうしたイスラム共同体の平等観や正義感が、貧富の格差の広がりなど現実世界の社会経済的矛盾や、また政治腐敗がある場合、それは政治経済社会制度や人々の生活が十分にイスラム的でないから起こっているのだとし、イスラムの原点に戻ろうとする運動となって現れる。これがイスラム主義運動で、1970年代以降顕在化してきた。イスラムを政治・社会の根本に据え、現代の矛盾を正そうとする運動である。

各地で起こっているイスラム主義運動のモデルとなっているのはエジプトのムスリム同胞団である。本書の中で、Shiozakiは、ウラマー(イスラム法学者・教師)の政党として設立されたマレーシアイスラム党(PAS)の政治思想が、近隣の南部タイやインドネシアだけではなく、ムスリム同胞団にも繋がるエジプトのウラマーとのネットワークを通じて形成されていると指摘する。また、van Bruinessenによると、インドネシアのイスラム運動には改革主義と伝統主義という2つの大きなグループがあったが、スハルト政権下では改革主義グループがイスラム主義の国内普及チャンネルの役割を果たした。しかし、スハルト体制崩壊後のイスラム主義者や原理主義者の国際的な活動は、改革主義、伝統主義双方を代表する主要組織に影響を及ぼし、西洋文化への反感を示す「ガズウル・フィクリ(文化侵略)」という言葉が、アラブ・イスラムによる文化侵略を示す言葉として使われるようにもなってきたという。進歩的でリベラルなムスリムは、アラブ世界だけではなく西洋からも新たな思想を折衷的に取り入れている。

東南アジアでは、こうした政治指導者や宗教指導者の間のネットワークを通じたイスラム主義の伝播だけではなく、人の移動や、テレビやインターネットの発達により、市民のレベルでも世界的なイスラム主義の影響が見られる。1970年代以降、ムスリムの一般生活の中でも、イスラム的であると認識されるシンボルや行為、道徳や正義を重視する規範が広がった。これが「イスラム復興」と呼ばれる現象で、ヴェールを着用した女性の姿が目立つようになったのがその典型例である。これはイスラム主義運動のような団体行動だけではなく、精神的な救済を求める個人的な宗教行為の高まりとも見られる。

Tatsumiは、中東、とりわけエジプトのアズハル大学に留学してイスラム学を学ぼうとするフィリピン人ムスリム学生の留学動機について分析した。フィリピン政府が公教育として認定していないマドラサ(イスラム教学校)で学んだ彼らにとって、中東留学は、マドラサで学んだアラビア語を生かして「ウラマー」と呼ばれる自立した人物になるための手段と位置づけられており、いわば、グローバル化がもたらした東南アジアの域内外の労働市場の変化に対する、周縁部からの積極的対応の1つだと指摘する。

東南アジアにおけるイスラム社会の動きを文化的背景に即して正しく理解するには、そこでの「近代化」の意味を明確に把握することが必要だと本書は指摘する。

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体罰と竹刀 [時事]

世の中のおおかたの人は思っておられるだろうが、全日本柔道連盟が下したこの判断は、世間一般と柔道界との間で、意識の隔たりが相当に大きいということを如実に表しているように思う。園田監督とそのコーチ陣が女子柔道日本代表候補選手に暴力を伴う「指導」を行なっていたというのが事実だったと認めたばかりではなく、全柔連はその罪を問わずむしろ彼ら指導者側を庇う姿勢を見せたことで、日本国内での柔道の信用を失墜させたばかりか、世界中の柔道家からも失笑されることとなるだろう。

柔道界のトップがこんなことをやってて、それが当たり前のことだと彼ら自身が思っているとしたら、たとえ中学校の体育で武道が必須化されたからといって、それが柔道競技者人口の増加には絶対繋がらないだろう。親からすれば、子供をこんな競技に入れたいとはまったく思わない。また、欧州諸国にやられっ放しだった国際柔道連盟の役員選挙でも、日本を支持しない国がもっと増えるに違いない。また、多くはないけれども海外に派遣されている柔道指導者はそういう目で見られ、今後は指導者派遣要請も減ってしまうだろう。「我が国における柔道の普及、選手の強化を図るのなら、別の国から指導者をお招きしたい」なんて言われて…。

東京五輪招致にも悪影響があるのは致し方ないだろう。メダル獲得を目標にしてこうした暴力指導が横行するような国に、五輪開催を持って来れないという意見も出てくるに違いない。ことは柔道だけで済まないかもしれない。

誰がどう見たって「柔道」そのものが存亡の危機だと思うに違いない。園田体制を存続させたからといって、勇気を出して告発に踏み切った15人の女子選手がついて来れるとも思えない。もっと陰湿ないじめが横行する可能性だってある。既に「JUDO」の国際試合でメダルすら獲れなくなった男子に続き、女子柔道も弱体化は避けられない。全柔連はそこまでの危機感を持っているのだろうか。

それにつけても悲しいのは、教師や監督による体罰の話が出るたびに、竹刀やバットが登場することである。素手や他の道具だったらいいと言っているわけではないが、こんなことで竹刀やバットを使ってほしくはないし、こういう目的で使用している他の競技の指導者は、剣道や野球を馬鹿にしているのかとすら思ってしまう。

他の競技よりも沢山の人が竹刀を使っている(当たり前か)剣道で、では体罰や暴力が多いかというと、僕には正直よくわからない。指導者が子供たちと1対1の稽古をつけることは、道場でも部活動でもよく行なわれており、それが「ちょっと厳しいな」と感じることもないわけではない。(それでも周囲のチームメイトが「頑張れ」「ファイト」などと声援を送ってくれることで頑張れると思う。)また、自分も経験したことがあるが、子供に対する言葉が厳しすぎる道場も実際にはあり、それで僕は長男を剣道の世界に引きずり込むのに失敗もしたが、ではその言葉が暴言かというと、最低限の「しつけ」のニュアンスは感じられた。

チームメイト同士の声の掛け合いがあるところでは、厳しい練習でも歯を食いしばってなんとか頑張れると思う。でも、今回は15人ものチームメイトがもう耐えられないと声を上げたわけで、指導者の留任が許されるような状況ではない。
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『南部アジア』 [時事]

南部アジア (世界政治叢書)

南部アジア (世界政治叢書)

  • 編者: 山影進・広瀬崇子
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2011/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
ダイナミックに変貌しつつあるアジア政治は、さまざまな問題を抱えながら、新しい課題に挑戦している。本書は、世界の注目を集めている南・東南アジア諸国を「南部アジア」として一括して取り上げ、その成り立ち・特徴・現況・将来展望について、各国が抱える主要課題ごとにまとめて詳解するとともに、地域協力・地域秩序の現状と将来を論じる。ユニークな編集方針の下、グローバル化する世界の中にアジア政治の「今」を6部構成で立体的に描き出す。
この週末、相当量の仕事を持ち帰っていた。2日合計48時間をフルに使ったとしても片付くかどうかわからないほどの分量だった。こういう場合、実際に想定作業量を100%クリアすることは先ず不可能で、想定作業量の3割から4割程度しか達成できないことが多い。金曜夜は打合せからすぐ飲み会へと移行したので、持ち帰る仕事にあまり優先順位付けもせず、取りあえず全部持ち帰ったという感じだった。

本気で100%を狙うなら、持ち帰り残業よりも休日出勤の方が良い。或いは、図書館や喫茶店など、自宅以外の場所で集中して作業するのでもよい。19日(土)は、午後から近所のコミセン図書室に出かけ、週明け月曜日の職場の自主勉強会で取り上げる論文を斜め読みした。英文なので読んでいて眠くなり、あまり集中して取り組めなかったが、自分がレジメを作って発表する当番ではなかったので、取りあえず目を通したというアリバイだけでOKとした。

図書室での次の読み物は、今回紹介する各国政治情勢について書かれた論文集だった。これは、その後に予定している2つの作業のための予習と位置付けた。この2つの作業は、デッドラインがそれぞれ週明け火曜日と金曜日である。平日でも作業できるといえばできるのだが、平日は平日で他の雑多なロジが立て込んでいる。

たいていの論文集は、一定の枠組みの下で、参加した研究者がそれぞれ独自の研究テーマを設定して論文を書く。共通の分析枠組みがしっかりしていて各章が一定の視点で書かれているのは気持ちがいいが、分析枠組みに対して参加者の裁量の余地を広めにしている場合は、なかなか収拾がつかなくて、論文が寄せ集めにしか見えないこともある。

論文集で難しいのは、ある一定の分析枠組みが定められていたとしても、各章で取り上げるテーマが国別になっている場合である。たいていの読者は、複数の国を横並びで見るよりも、ある特定の国に関心があると思う。例えば、特定の政策課題についてASEAN各国での取組み状況はどうなっているのか、各国別に章建てがなされている場合、たいていの読者は課題よりも国に興味があるため、全ての章に目を通そうとはしないだろう。章建てが国別になっている場合、読まれる章と読まれない章が明確に分けられる。読者の興味の持ち方によっては、歩留まりが少ない。

通常、地域研究では、「東南アジア」と「南アジア」は別々の文献で取り上げられることが多いが、本書はこれを「南部アジア」と定義し、東はフィリピン、インドネシア・パプア州、ベトナムあたりから、西はインド、パキスタンあたりまでを取り上げている点がユニークだ。僕などは個人的には南アジアのインド、ネパール、ブータンあたりに関心があったが、逆に仕事の方ではインドネシア、フィリピン、マレーシアあたりのムスリムと国のアイデンティティの問題を勉強しておかなければならないので、歩留まりが大きくて非常にありがたい1冊であった。それでも読んだのは全体の半分程度の章でしかないのだが(苦笑)。

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