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2021年のGOOD-BAD-UGLY [ご挨拶]

毎年大晦日にアップしている回顧録ですが、2021年版はとてもエモーショナル、かつマイナスオーラがかなり出まくった書きぶりになっているので、お見苦しいところがかなりあろうかと思います。気になる方は「BAD」「UGLY」部分はすっ飛ばし、No.1とNo.10だけをご覧下さい。

10.父の介護(BAD)
これは年末になって急に浮上してきた懸案事項で、本番は年明けからだろうと思っています。
―――1年前のブログの最後を、僕はこんなふうに締めくくっていました。

父と二人で暮らしていた実家の母と、離れて生活していた三人の息子たちの間で、どのように介護を進めて行ったらいいのか模索をはじめてから3カ月後の3月末、父は施設で息をひきとりました。東京都の緊急事態宣言が一時的にでも解除されて、僕が里帰りしていたタイミングでの出来事でした。しかも、5月中旬からのブータンへの赴任を控え、いったん渡航したら簡単には戻って来れない状況下で、母が介護疲れで共倒れになってしまわないかと心配していた中での突然の死去でした。オヤジ、タイミング良すぎます(苦笑)。四十九日の法要までは見届けられませんでしたが、おかげで、そこまでは息子の1人として、できるだけのことはして出発できたかと思います。

またしても生活環境に大きな変化があったわけですが、人生の手本としてずっと僕の前方に君臨していた父を失ったことは、やはり僕にとっては今年最大の悲しい出来事でした。

◇◇◇◇

以上申し上げた上で、2021年の個人的重大ニュースを以下で概括してみます。

1.Snapmakerとの出会い(GOOD)
2021年は、Snapmakerという、3Dプリンターとレーザー加工機、CNCの3つのモジュールの付け替え可能なデスクトップ工作機械の購入ではじまりました。これに加えて、年明けから3Dデザインのプログラム「Tinkercad」を徹底的に独習し、1カ月ほどで、人にも教えられるほどになりました。自宅の机の上で、何か急にものを作りたくなった時、デザインから3Dプリントまですぐにできるようになり、かつプリントに伴って発生するアドヒージョンの問題とか自分で解決策を探り、自分なりのフォーミュラを探すこともできたと思います。

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『Designing Reality』 [仕事の小ネタ]

Designing Reality: How to Survive and Thrive in the Third Digital Revolution (English Edition)

Designing Reality: How to Survive and Thrive in the Third Digital Revolution (English Edition)

  • 出版社/メーカー: Basic Books
  • 発売日: 2017/11/14
  • メディア: Kindle版
内容紹介
過去に起きた2つの「デジタル革命」――コンピュータとコミュニケーションーーは、私たちの経済や生活を根本的に変えてきた。そして、第三のデジタル革命は今、ファブリケーション(工作)の分野で起きている。今日の3Dプリンターはトレンドの始まりでしかなく、指数関数的に加速の度を高め、データを物質へと変換していく。ニール・ガーシェンフェルドとその協力者たちは、スタートレックで登場したユニバーサル・レプリケーターを実際に作ることを究極の目的としている。デジタルファブリケーションは自給自足可能な都市や(ほぼ)なんでも作ることができる能力を約束するが、大きな不平等につながる可能性もある。最初の2つのデジタル革命で世界のほとんどがまずい状態に陥った。本書で描かれたこれからの現実をデザインしていくことで、今回はそうならないことが期待される。
【購入】
11月に読み始め、ダラダラ読んでいたところ、自分のFacebookの写真に写り込んだ本書を見た当地の友人から、「読み終わったら読ませてくれ」と懇願された。僕の読書日記もいよいよ年末の佳境を迎え、年越しの読みかけは残したくなかったので、1週間ぐらいかけて、一気に150頁以上を読み切った。(貸すけど、ちゃんと返してくれよ!)

なぜ友人から「読ませてくれ」と懇願されたかというと、共著者の1人であるニール教授は、ブータンにファブラボ(デジタルファブリケーション・ラボ)を作るために、2014年に初めてブータンに来られ、最初のファブラボができた2017年の開所式にも来訪され、その薫陶を直接受けたブータンの若者が何人かいるからである。「読ませてくれ」と言ってきた友人もそのうちの1人だ。そして、オミクロン株の感染拡大が深刻化しなければ、2022年7月にはブータンで第17回世界ファブラボ会議(FAB17)が開催され、ニール教授は三度目のブータン訪問を果たすことになるだろう。

内陸山岳国であるブータンは、デジタルファブリケーションの普及から得られる便益がとりわけ大きい。2014年の初訪問の際、ニール教授は当時のツェリン・トブゲイ首相とも面談されていて、その際のエピソードが本書の中でも紹介されている。コメを主食とするブータン人は、電気炊飯器を輸入に頼っている。その多くが日本製だ。炊飯器の原理など簡単なのに、なぜ日本からの輸入に頼っているのかという話題になったという。(ちなみに、僕がニール教授から聞いた他のたとえとしては、ティンプーの市内でやたらと見かけるナイキのシューズがある。)

そのトブゲイ前首相が、本書の推薦文を書いておられるので引用する。
ブータンが自身の開発哲学であるGNHを推進する上での最大の制約は、輸入品への過度の依存にある。しかも、ブータンは長く伸びたサプライチェーンの末端に位置する。本書は、デジタルファブリケーションがグローバルな思考を進めつつGNHの原則にも忠実に添いながら、生産はローカルで行うことを可能にし、制約を打破することを可能であることを示してくれている。ブータンが都市単位での自給自足を指向する「ファブシティ」になるだけでなく、国全体として自給自足を指向する「ファブカントリー」に変貌していくことを楽しみにしている。

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再々読『FabLife(ファブライフ)』 [仕事の小ネタ]

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)

FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)

  • 作者: 田中 浩也
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2012/06/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
【蔵書】
1年前に「再読」として紹介したばかりなのに、今回また読み直した。座右に置いて、何か迷いが生じた時にはその都度手に取ってみるような1冊なのだが、節目節目で時々読み直すと、前回よくわからずにスルーした箇所が、今回は「そんなことまで書かれていたのか」と気付かされることもあり、自分の成長も確認できたりする。

特に、本書で紹介されている米MITの「(ほぼ)なんでも作る」コースの事前準備のための機械操作習熟研修がここブータンでも行われており、その様子をたびたびファブラボ・ブータンで見ていたから、本書の著者がMITの14週間講座に参加した際のレポートの記述がしっくり理解できた。ブータンでの研修の様子や、参加者との会話の中で頻出していたデザインソフトのほとんどは、本書においても言及がある。

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僕はMITの講座から派生したファブマスター養成講座「ファブ・アカデミー」を、いますぐ受講するつもりはない。でも、おそらく近い将来には受講する。その時までに、少なくともやっておいた方がいいことは何か、特に来年1年間で底上げした方がいいスキルは何なのか、それが確認できたのは再々読の収穫だ。

実は、今回は、「迷い」というよりも、今年4月頃からずっとしこっていた懸案事項に自分なりのケリをつけるための再読だった。

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借りたものはちゃんと返せ! [仕事は嫌い]

師走の借金取りみたいな話題を1つ―――。

シビックテックイノベーション 行動する市民エンジニアが社会を変える (#xtech-books(NextPublishing))

シビックテックイノベーション 行動する市民エンジニアが社会を変える (#xtech-books(NextPublishing))

  • 作者: 松崎 太亮
  • 出版社/メーカー: インプレスR&D
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: Kindle版
智場#119 オープンデータ特集号 (庄司昌彦 責任編集)

智場#119 オープンデータ特集号 (庄司昌彦 責任編集)

  • 出版社/メーカー: 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

上記2冊の本は、今から1年半前に読んで、このブログでも紹介したことがあるのだが、当時このブログを読んだ職場の同僚から「貸して欲しい」と言われ、貸した。

で、今年5月にその職場を離れて海外赴任することになった時、在宅勤務が行われていた中、職場の誰のところで回し読みが止まっているのかもわからなかったから、「返して欲しい」とメールでメッセージを一斉送信した。誰も返事しなかった。「貸して欲しい」と依頼してきた当の本人もノーレスだった。

最近、その部署から思いもよらぬハシゴ外しを食らってしまった。しかも、ハシゴ外しのきっかけを作ったのが僕に僕の蔵書を「貸して欲しい」と要望してきた張本人であった。

思い付きで人にいろいろ頼むのはいいが、それに応えてもらったらせめて礼ぐらいは言うべきだし、それがその後どう展開したのか、折に触れてフィードバックしてもいいくらいだ。そういうのがないと、頼まれた相手はただ利用されただけという気持ちだけが残る。人から借りた本を返さないのだって同根ではないのか。

挙句の果てがハシゴ外し、これまでその人に積み上げてきた貸しを、見事倍返しされた感じだ。この一件があって、僕は、自分の古巣だからというので感じていたこの部署へのシンパシーを捨て去ることにした。

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『妄想する頭 思考する手』 [仕事の小ネタ]

妄想する頭 思考する手 (ノンフィクション単行本)

妄想する頭 思考する手 (ノンフィクション単行本)

  • 作者: 暦本純一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2021/02/05
  • メディア: Kindle版
出版社からのコメント
誰も考えなかった新しい技術は、ひとりの「妄想」から生まれる。「新しいことを生み出す」には、思考のフレームを意識して外したり、新しいアイデアを形にし、伝えたりするためのちょっとしたコツが必要だ。この本では、そういった思考の方法や発想のコツなどを、自分の経験を踏まえながら具体的に紹介する。
【購入】
この半年の僕の大きなテーマは「アイデア出し」だった。だから、突拍子もない「無駄づくり」の藤原麻里菜さんの著書なんかもよく読んだし、「アイデアスケッチ」なんて手法についても少し勉強したりもした。川喜田二郎先生の「KJ法」をかじったのも今年の出来事だった。

そんな流れで本書も購入した。サブタイトルに「想像を超えるアイデアのつくり方」とあるくらいだから、やはりこれもアイデア出しのハウツーが述べられている。著者の肩書はソニーコンピュータサイエンス研究所副所長であり、扱われているアイデアは研究開発のフロンティアを行っているテクノロジーの話が多い。Arduinoを使って日常のちょっとした不便を解消するような民主的なものづくりの領域の話とは違い、それなりにエンジニアリング的な手法で、役に立つかどうかはわからないけれど、本人的には面白い、主体的に没頭して取り組みたいと思うような研究を突き詰めていって作られるイノベーションの領域の話が展開されている。

で、まあそういう研究開発のためのアイデア出しはそれなりに参考にはなったのだけれど、読み手の僕が今抱えている悩みに対して、「そういう見方もあるのか」と気付かせてもらったのが今回の読書での収穫だ。

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『草原の椅子』 [読書日記]

草原の椅子(上) (幻冬舎文庫)

草原の椅子(上) (幻冬舎文庫)

  • 作者: 宮本 輝
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2001/04/05
  • メディア: 文庫
草原の椅子(下) (幻冬舎文庫)

草原の椅子(下) (幻冬舎文庫)

  • 作者: 宮本輝
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/12/25
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
【上巻】遠間憲太郎は長年連れ添った妻とも離婚し、五十歳になりさらに満たされぬ人生への思いを募らせていた。富樫重蔵は大不況に悪戦苦闘する経営者だが、愛人に灯油を浴びせられるという事件を発端に、それを助けた憲太郎と親友の契りを結ぶ。真摯に生きてきたつもりのふたりだが…。人間の使命とは? 答えを求めるふたりが始めた鮮やかな大冒険。【下巻】憲太郎が恋心を寄せる篠原貴志子。両親に捨てられた五歳の圭輔。行き場のない思いを抱えた人間たちが、不思議な縁で憲太郎と結ばれてゆく。しだいにこの国への怒りと絶望を深める憲太郎は、富樫と壮大な人生再生への旅を企てる。すべてを捨て、やり直すに価する新たな人生はみつかるのか? ひとりひとりの人生に熱く応える感動の大長篇。
【購入(キンドル)】
今年は年初に「宮本輝作品を何冊か読む」と目標を立てていたが、なんとか10冊(分冊になっているものも別個にカウント)に到達することができた。以前読んだ著者のエッセイ集『いのちの姿 完全版』の中で、旅行でタクラマカン砂漠やフンザに出かけた時のエピソードが書かれていたのを思い出し、それをベースにこの『草原の椅子』という作品が生まれたのだろうと考え、今年の締めくくりとして読んでみることにした。上巻はKindle Unlimitedで。それが良かったので、下巻は購入して読んだ。

読書に臨むにあたっての僕の状況はというと、様々な出来事に対して、感情で対処してしまうことが目立って増えた数週間であった。目の前の仕事の方も思った通りには進まないことが多かったが、これに関しては感情で対処するにも相手がいない状況なので、そういうものだと諦めるしかない。ただ、僕を後方支援している方々に対しては、なぜそう来るかと理解できないことも多く、さらには、自分が日本に残してきた仕事の処理に関する「総論賛成・各論大反対」の反応には、一度はメンタルやられるかもというところまで追い込まれ、そこからなんとか気持ちを取り直して今日まで来たけれど、またもやハシゴを外される出来事に直面し、文字通りの悔し涙を流した。

組織に対する幻滅、あるいは憎悪―――そんなものを感じざるを得ないこの数週間だった。

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『無駄なマシーンを発明しよう!』 [仕事の小ネタ]

無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング

無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング

  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2021/07/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
ポンコツなロボットも、ぶさいくなぬいぐるみも、無駄づくりなら大成功!世界で君だけしか思いつかない「無駄」を生み出そう!低い技術力で不必要なものを作り上げる「無駄づくり」を続けてきた“無駄なもの発明家"が、ついに子ども向けに工作のアイディアと方法をわかりやすく解説!「作りながら読む」「簡単なことのプロになる」「自分で考える」というコンセプトのもと、手に入りやすい道具・素材で工作を行います。もちろん、「インスタ映え台無しマシーン」をはじめとする無駄づくりのつくり方も紹介しています。書籍の後半では初学者にもやさしいマイコンボード・Arduinoを用いたプログラミングや、自分でアイディアを考える方法も取り上げます。エンジニアリング、プログラミング、発想力と、これからの時代に必要とされる能力を楽しみながら伸ばせるため、STEM教育・STEAM教育にも役立ちます。「無駄づくり」のファンの方はもちろん、ものづくりに興味を持つお子さんや、夏休みの研究に悩んでいるお子さんがいるご家庭にもおすすめの一冊です!
【購入】
藤原麻里菜さんのYouTubeチャンネル「無駄づくり」を時々視聴するようになってから、数点出ている彼女の著作も読むようになった。といっても本書を含めても3冊目に過ぎないのだが。実は、このYouTubeチャンネルを知ったのは、今年7月に出た本書のことをネットで知ったのがきっかけだった。それで、多分本書が出てすぐぐらいにアップされた著書の販促動画(下記)を見たら、Arduinoのことがえらくやさしく解説されていて、物覚えが悪いオジサンにもすんなり入って来る内容だったために、「無駄づくり」にハマってしまった。


実際に手に入れるまでには少しタイムラグがあったが、入手後も他に一緒に入手した書籍の方の読み込みに時間を取られていて、結局目を通すのが年末になってしまった。しかも、まだArduinoが手元にない状態でである。

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あのタクシー配車アプリはどうなった? [ブータン]

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2018年5月11日付のブログ記事で、「タクシー配車アプリ、2件続けて公開」というのを書いた。この年の4月末から5月初めにかけて、Oie(オイ)とYANA(ヤナ)という2つのタクシー配車アプリが立て続けに公開されたという記事だった。この当時、ブータンには、2017年に創業した別のタクシー配車サービス「DrukRide(ドルックライド)」というのがスマホアプリでの配車サービスを既に始めていて、狭いマーケットで3つの配車サービスが競合するという状況が生じた。

あれから3年が経ち、僕は今回の赴任では車は持たない、運転しないことを心に決め、市内の移動にはもっぱら徒歩かタクシーを利用している。赴任から半年が経過し、信頼できる特定の運転手に必要な時にSMSで連絡して送迎をお願いするので今は落ち着いているが、来たばかりの頃は、タクシー配車アプリでの利用を試みたことがある。

結論からいうと、OieとYANAはまったく機能せず、かろうじてアプリが機能していたのは先行していたDrukRideだけだった。

DrukRide.png

そのDrukRideの創業者から、先日お茶に誘われた。僕が上げていたFacebookの記事を読んで、ちょっとストレスが溜まっているんじゃないかと感じられたので、気分転換にお茶でもどうかというお誘いだった。(ありがとうございます。Facebookのポストから僕の感じているストレスに気付いてくれたのは、彼が初めてです。)

で、OieとYANAはどうなったのかと訊いてみた。OieはインドのIT企業が開発したアプリで、操業開始後、DrukRideは提携を打診されたらしい。しかし、DrukRideの社長は、「お互い持っているカスタマーベースもミッションも違う」というので、提携話は断ったらしい。で、ほどなくOieはブータン市場から撤退。一方のYANAも、あまりカスタマーベースを拡大できず、創業から1年も経たずに撤退したのという。要するに、OieもYANAも、今はサービスをやっていない。

3年も前の記事だが、これを読んでティンプーにもタクシー配車サービスが今も存在すると思っている人がいるとしたらいけないので、お詫びしてアップデートさせていただきます。構想段階の提灯記事の場合は実際に実現しなかったということはこの国ではよくあるが、市長や大臣が主賓で駆けつけて除幕式をやっておきながら、これほど簡単に撤退してしまうというのも、残念ながらよくあることだ。状況が変わったと言うのは簡単なことだが、なんで配車アプリが突如乱立したのかは当時も疑問だったし、全国メディアも単に除幕式を報じるだけじゃなく、懸念事項も指摘するなり、撤退したなら撤退することもちゃんと報じて欲しいところだ。

で、生き残っているDrukRideは、ネットベースでの長距離バスのチケット予約サービスやフードデリバリー等にサービスを拡大し、今週にはタクシーを利用した荷物の宅配サービスをローンチするらしい。

これができると、僕がプンツォリンに引っ越した後も、長距離タクシーの予約だけでなく、プンツォリンで調達した物資の国内各地への託送や、ティンプーに届いた僕の荷物を郵便局やDHLオフィスでピックアップして、プンツォリンまで持って来てもらう、そんなサービスも利用可能となるだろう(勿論、ティンプーのタクシーは現在、新型コロナウィルス感染拡大対策のため、プンツォリンの手前のソルチェンまでしか行けないので、事はそう簡単ではないが)。

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『インド残酷物語』 [インド]

インド残酷物語 世界一たくましい民 (集英社新書)

インド残酷物語 世界一たくましい民 (集英社新書)

  • 作者: 池亀彩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2021/11/25
  • メディア: Kindle版
内容紹介
世界有数の大国として驀進するインド。その13億人のなかにひそむ、声なき声。残酷なカースト制度や理不尽な変化にひるまず生きる民の強さに、現地で長年研究を続けた気鋭の社会人類学者が迫る!日本にとって親しみやすい国になったとはいえ、インドに関する著作物は実はあまり多くない。また、そのテーマは宗教や食文化、芸術などのエキゾチシズムに偏る傾向にあり、近年ではその経済成長にのみ焦点を当てたものが目立つ。本書は、カーストがもたらす残酷性から目をそらさず、市井の人々の声をすくいあげ、知られざる営みを綴った貴重な記録である。徹底したリアリティにこだわりつつ、学術的な解説も付した、インドの真の姿を伝える一冊といえる。この未曾有のコロナ禍において、過酷な状況におけるレジリエンスの重要性があらためて見直されている。超格差社会にあるインドの人々の生き様こそが、“新しい強さ”を持って生きぬかなければならない現代への示唆となるはず。
【購入(キンドル)】
先月下旬に発刊になったばかりの新書だが、発刊直後に著者がフィールドワークを行ったカルナータカ州南部地域で昔長期駐在して養蚕の技術指導に携わった日本人専門家OBの方々の間で話題に上り、僕自身も本を書く際にフィールドワークを行ったので土地勘もあったので、矢も楯もたまらず読んでみることにした。

先に述べた日本人専門家の間でやり取りされているメールの中では、「5回も現地に行きながら、カンナダ語を一語でも覚えようと思わなかった自分とは大違い」とか、「数回に及ぶインド訪問滞在の経験も、なんと皮相なものであったか」などの言葉が飛び交っている。それでもこれらの大先輩の皆さまがそのご専門の領域における活動で南インドのランドスケープを変えていかれた功績は色褪せることはないと思うが、一見してもわからない、インド社会の諸相への洞察は、本書を読んで眼が開かれたというご意見も多いようだ。

そしてかく言う僕自身も、本書は自分自身のフィールドワークで調べられなかったことに気付く機会となった。同じ地域を見ていても、その関心領域が異なると、見えるものが相当異なる。ましてや僕の場合は3週間程度の調査期間だったし、カンナダ語を勉強した上での調査だったわけではない。だから、本書で著者が描いたような、カルナータカ州南部のダリットやOBC等、社会に深く横たわる諸相への切り込みなど、僕の調査でできるわけがない。それを、ただ「インドの社会問題」として深刻に描くだけでなく、その中で暮らす人々のしたたかさを、著者が人々と交わした日々の会話を通じて描き出している。決して著者の断定をさしはさむわけでもなく、淡々と事実を並べて、著者の判断や感想にゆだねる描き方にも好感が持てる。

軽妙な語り口だが、扱っている内容については本書のタイトルにもあるような「残酷」さがある。デリーやムンバイに出張や駐在でいらっしゃる方ならともかく、ベンガルールのような南インドに行かれる方は、本書は読んでおかれることをお勧めする。今年初めに読んだ佐藤大介『13億人のトイレ』といい、インド関連ではいい本が最近出てきているなぁ。

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『起業のすすめ』 [読書日記]

起業のすすめ さよなら、サラリーマン (文春e-book)

起業のすすめ さよなら、サラリーマン (文春e-book)

  • 作者: 佐々木 紀彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/10/26
  • メディア: Kindle版
内容紹介
NewsPicks創刊編集長の著者が提案する、「夢」も「お金」もあきらめない、会社に縛られない新しい生き方。「サラリーマン教の呪い」を断ち、今こそ起業しよう!起業の醍醐味とは、「自分の人生の”独裁者”になれること」。本書は、初めの起業にあたり、私自身が悩んだこと、知りたかったことを、100人以上の起業家やプロフェッショナルへ徹底取材し、絶対に成功する秘訣を詰め込んだ『起業の教科書』の決定版です。
【購入(キンドル)】
以前ご紹介した鈴木忠平『嫌われた監督』と出版社が同じだったからか、著者同士の対談録がYahoo!ニュースに掲載されているのを見て、気になったのでキンドルでダウンロードしてみた。NewsPicksの創刊編集長という肩書になっているから、実際の起業家への取材や著書のリサーチをベースにして書かれているんだろうと想像はしていたものの、結論から言うと、50代後半のオジサンが読むべき本ではない。半分ぐらい読んで嫌になり、残りは惰性でパラパラ読んだに過ぎない。

なんでこうなってしまったのかは、後で見たアマゾンのレビューコメントの1つが如実に語っている。「地方での起業やスモールビジネスくらいのスケールの起業を目指す方には参考にはならない」―――そう、リタイアして目指そうとしている個人事業主というのは僕にとってはまさにこの規模のもので、本書で語られている起業のスケールのデカさとはまったくレベルが違う。イメージが合わないのだ。本書には申し訳程度に個人事業主にも言及があるし、引退しても週3日ほど働いている起業家の話も出てくるのだが、そういう話の後にすぐに場面遷移が起こり、話がまた30代起業に戻ったり、わりと世間的にも有名な起業家のストーリーに移ったりする。そもそも著者が言う「起業するのに遅いことはない」というのも、せいぜい40代まででの話なのだ。

そういうのが見えてきてしまうと、もう読み手である僕の心が閉ざされてしまい、まともに著者の論点に耳を傾ける気持ちが失せてしまった。そうなるともう嫌なところだけが目に付くようになり、他書の内容を紹介して「詳しくはそちらを読むことをおススメする」という誘導が気になって仕方なくなってしまった。すごく極論すると、本書を使って他書の宣伝をやっているように読めるのである。そして、そんな他人の受け売りが頻発する。

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