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再読『ザ・ジャパニーズ』 [仕事の小ネタ]

ザ・ジャパニーズ (角川ソフィア文庫)

ザ・ジャパニーズ (角川ソフィア文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/10/24
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
世界において日本ほど長い孤立の歴史をもつ国はない。その経験と地理的特異性とが相まって、日本人は文化的に特異な民族でありつづけた。つよい自意識と集団性、独自の宗教観、自己完結の傾向、他から学習し自らに適応させる並外れた能力―。日本研究の第一人者ライシャワーが圧倒的分析力と客観性、深い洞察をもって日本を論じた本書は70年代にベストセラーを記録。日本の未来に向けて発した期待と危惧が今あらためて強く響く。
【購入】
今からちょうど2年前、図書館で借りて『ザ・ジャパニーズ』を読み、その後ブログで書いた紹介記事の中で、「図書館に返却するついでに、本屋さんで1冊購入することにした」と述べていたが、それがこの角川から出ている復刻版である。購入から2年間、積読状態で放置されていたものを、今回ようやく読む決断を下した。

理由は1つには、当地に持って来ている積読書籍を、年末までに少し減らしたかったからだが、もう1つの大きな理由は、この本は僕の手元に置いておくよりも、当地で在留邦人の目に触れるようなところに置かせてもらって、一種の公共財として、多くの邦人の方に読んでもらいたいと思ったからである。

それくらい、日本研究の書籍としてはまとまっている。元々歴史学者だし、かつ日本大使も務められて日本の政治や外交についても造詣のある大家である。それが、同時通訳者としても名をとどろかせた國弘正雄先生の翻訳で、とても格調高く、かつ読みやすい訳文でまとまっている。著者本人も日本語がおわかりになるだけに、國弘先生のプレッシャーも相当なものだったようで、その緊張感が美しい文章でまとまっているように思う。訳者あとがきの中で、國弘先生は「many」を「多くの」とか「沢山の」とか訳しているのでは手抜きだと語っておられる。それくらい、一字一句の訳し方には気を遣われたようである。

僕は本書が書かれた時代―――1960年代から70年代を実際に経験しているので、書かれている内容には懐かしさも感じるのだが、そこから引き出される日本の政治や社会の特徴や課題は、40年以上経過した今日でも、かなり当たっていると思えるところは多い。

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仕事の断捨離 [備忘録]

今日は、読書日記でもない、滞在国の報道紹介でもない、ただの雑感である。

今年は、2017年からプロボノで務めてきた某一般財団法人の理事を5月の任期終了とともに退任し、その財団の活動からは距離を置くことにした。いろいろ思っていたことはあったのだが、父を亡くした時、代表理事はおろか他の役員からもお悔やみのひと言もなく、当時忙殺されていた僕の仕事のバックアップも得られなかったという、感情的な部分がきっかけになった。

辛うじて評議員という別の立場で名は残しているが、これも現在の任期が終了したらたぶん辞めると思う。僕もあと2年したら還暦なので、もっと若い人に道を譲りたいというのが表向きの理由で。で、同様に今は休職扱いになっている所属組織も、駐在国での仕事が終わったらたぶん退職する。

僕には3つの「帽子」があったが、これで2つは手放すことになる。そして残る1つは、某私大の非常勤講師だったが、これも今年度いっぱいで辞めることを、今年の9月、大学院研究科長に宣言し、速やかに後任の人選に入ってもらうようお願いした。

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転校も選択肢の1つに [ブータン]

教育省、プンツォリンの生徒に対して転校の選択肢を提示
Education Ministry offers option to relocate students in Phuentshogling
to low-risk areas

Sonam Penjor記者(プンツォリン)、BBS、2021年12月5日(日)、
http://www.bbs.bt/news/?p=162171
pling-stds.jpg
【ちょっとだけ要約】
教育省は、プンツォリンに残っている公立学校のクラスPPからクラス8までの生徒約2,400人の父兄に対し、新型コロナウィルス感染拡大リスクの低い地域の学校への転校を選択肢として提示した。早ければ、次の学期より転校は実施される。

父兄の受け止め方は複雑で、オンライン授業中心の進め方に対する懸念から転校を前向きに受け止める父兄もいる一方、子どもを低リスク地域へ転校させれば家族がバラバラになるとか、転校に伴って父兄も移転することになれば追加の費用がかかるとの懸念の声もある。

プンツォリンではこれまで4カ月、コロナの新規感染者は出ていない。

親の都合で子どもが転校というのは日本では僕たちが子どもの頃からよく見られた現象だが、コロナの時代には、子どもの都合で親が引越しを余儀なくされる、そんな事態も起こっている。もっとも、プンツォリンの市内で商売をやっている親が、そうそう簡単に店をたたんで新しい土地で商売を始めるなんてわけにもいかないだろうし、かといって小さな子どもだけを親元から離れて見知らぬ土地で授業を受けさせるというのも、なんだか忍びない。難しい選択を各世帯に強いることになる。

確かに、もう4カ月も新規感染者は出ていないとはいえ、お隣りの国には既にオミクロン株の新規感染者は出ているので、今後ブータンで最初のオミクロン株が確認されるリスクが最も高いのは確かにプンツォリンやその他の南部地域であろう。予防策として転校はまああり得る選択肢だが、本当にオミクロン株感染が起こってしまった場合、家族が離れ離れになっている中で移動が制限されるのはつらいだろうな。

事態の推移を見守るしかないのだろうけれど、以前から述べてきた通り、プンツォリンに残っている生徒さんたちに、何か楽しくかつためになる課外プログラムを提供できたらと思っている。

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『日本の国際協力』 [仕事の小ネタ]

気付けば12月、先月のブログを振り返ると、なんと8回しか更新していない。ちょっとそれどころではないいくつかの懸案事項を同時にこなすことになり、あまりゆっくり読書をしていられなかった。ブログの更新頻度が低い月はたまにあるが、振り返ると、たいていが心の余裕を失くしている時期だった。12月もそうなる予感がある。とはいえ、先月よりは少し多くしたいものだ。

日本の国際協力 アジア編:経済成長から「持続可能な社会」の実現へ (Minerva KEYWORDS6)

日本の国際協力 アジア編:経済成長から「持続可能な社会」の実現へ (Minerva KEYWORDS6)

  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2021/06/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

日本の国際協力 中東・アフリカ編:貧困と紛争にどう向き合うか (Minerva KEYWORDS 7)

日本の国際協力 中東・アフリカ編:貧困と紛争にどう向き合うか (Minerva KEYWORDS 7)

  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2021/08/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

日本の国際協力 中南米編: 環境保全と貧困克服を目指して

日本の国際協力 中南米編: 環境保全と貧困克服を目指して

  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2021/12/14
  • メディア: 単行本
内容紹介(アジア編)
国際協調主義を掲げた戦後日本は、政府開発援助(ODA)を通して世界の発展途上国とどのように関わってきたのか。各国の経済発展や福祉向上のために、試行錯誤や批判も浴びながら、いかなる援助を行ってきたのか。本書では、アジア諸国へのODAの全貌を、その形成と展開、現状と事例、課題と展望から解明し、21世紀の日本の国際協力の課題を考えるための基礎的判断材料と論点を提供する。
【購入(アジア編のみ)】
仕事柄、自分の関係している国のことだけは知りたくて、アジア編だけは入手した。これだけの国における日本の国際協力の歴史を1冊の本にまとめるのだし、だから執筆者に対する原稿謝金もまとまったらそれなりの金額になるから高価なのだろうと思っていたが、入手してみたら意外と薄かった。出版の事情を知らない人から見ると、なんでこの本が4000円以上するのかと怪訝に思うかもしれないね。

よくこれだけ多くの国のことを書ける研究者を集めたものだ。何人かは存じ上げている方なので、本書の宣伝には協力もしたいと思う。

僕自身がこれまで関わった国々に関しては、「自分ならこう書くのに…」という物足りなさも正直感じる。同じような趣旨で、昔、ある国への国際協力の歴史について、論文を書いたことがある。自分の名前で世に出なかったのは悔しいが、「歴史」なので、たとえ12年も前に書いたものであっても、昔を知るには今も有効だ。せめて本書の当該国担当章でも参考文献に挙げて欲しかったが、残念ながらそうならなかった。

こうして、人それぞれその国の見方、国際協力の捉え方には違いがある。多分原稿の文字数にも制限があったのだろうから、執筆している方々自身も、泣く泣く削ったという箇所も多かったに違いない。誰が読んでも及第点があげられるまとめ方には、どうしてもならなかっただろう。

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