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『アパレルは死んだのか』 [シルク・コットン]

アパレルは死んだのか

アパレルは死んだのか

  • 作者: たかぎ こういち
  • 出版社/メーカー: 総合法令出版
  • 発売日: 2019/07/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
1991年に15兆円を超えていた日本のアパレル市場。現在は10兆円と言われている。シュリンクを続ける市場に表れた新たな脅威。さらにグローバル化の波により、強力な敵が容赦なく攻め立ててくる。そんな中、成長できる企業と縮小を続ける企業の二極化が進む。その差はどこにあるのか。問題はアパレルに限った話ではない。どんな業界、職種にも必要な、時代の変化への対応である。変らない日本の企業、主体性を持たない個人、持続した対策を打てない行政。これからの社会で生き残るために、もう一度誇れる日本の経済を取り戻すために、私たちは何をすればいいのか。

帰国してこのかた、自分が任国で3年間やってきたことをまとめた本の執筆や、M社の本の1章分の執筆協力、それに来週末の学会発表の準備など、とかく書き物に時間を費やしてきた。当然、準備は必要で、参考文献も読まなければならない。仕事の関係で読まざるを得ない文献もあったりするので、自分の読書の記録を見ると、雑食かとあきれられるほどバラエティに富んでいる。それでもある程度の塊にはなっている時期もある。今月はブータン関連の書籍読了が相次いだ時期だったのは、M社の本の原稿執筆の関係だった。そしてこれからは、過去に読んだ本の再読も含め、アパレル関連の参考文献の内容確認が多くなるだろう。

アパレル業界が瀕死の状態にあるという指摘は、2017年5月に出た『誰がアパレルを殺すのか』の頃からたびたび行われてきている。その後も、経済誌の特集などを経て、今年に入ってからは、『アパレル・サバイバル』(2月)、『2030年アパレルの未来』(6月)と続き、そして本日ご紹介の1冊が7月に出た。ファストファッションやセレクトショップの新たな戦略など、時とともに企業の業況も変わっていっているし、少し前なら驚きの急成長で注目されていたZOZOなども、今は問題点の方が指摘されるようになってきている。

だから、発刊時期を少しずつでもずらして、業界俯瞰できるような文献が出てくるのはありがたいのだけれど、本書の紹介記事を書くのに過去に読んだ文献に関する記事を読み直してみると、なんか、同じようなことが書かれているんだなというのを改めて感じてしまう。『誰がアパレルを殺すのか』あたりで指摘されていたことと、本書で描かれていることには大きな違いはない。本書でちょっとは感じられる付加価値といえば、「サステナブル消費」について、これまでに出てきた文献に比べて扱いが少しだけ大きいという点ぐらいだろうか。

本を出すのには目的もあるだろう。本書の著者は東京モード学園のファッションビジネス学科で講師もされているとのことだから、自分の講義のテキストとして使えるようなものがあれば、受講する学生は購入せねばならない。そういう根強い需要が見込めることから、総合法令出版も出版企画の採用に踏み切ったんじゃないかなと想像する。

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『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』 [持続可能な開発]

「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる―――赤字知らずの小さなベンチャー「日本環境設計」のすごいしくみ

「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる―――赤字知らずの小さなベンチャー「日本環境設計」のすごいしくみ

  • 作者: 岩元 美智彦
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/10/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
BBC、CNN、NHK・・・全世界のメディアが大注目!
2015年10月21日、ごみであの「デロリアン」を動かした男、初の著書!!
イオン、セブン&アイ、良品計画、スターバックス、パタゴニア――なぜ世界中の企業が、この小さな会社のプラットフォームに次々と参入するのか?「今まで誰もできなかったこと」を次々やってのけたのは、知識も伝手もない42歳の元営業マンだった!?〈技術〉と〈しくみ〉と〈ブランディング〉で「リサイクルのグーグル」を実現した遅咲きの起業家が、その驚きのビジネスモデルの全貌を語る。

D社でこの本の編集を担当した方から勧められたので、読んでみることにした。8月上旬頃に個人的に盛り上がっていた「クリエイティブリユース」の流れで気になっていた本でもある。もう1冊D社の編集者の方に勧められたのが、出雲充『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』だったが、こちらはすでに1年前に読んでいた。

当然、類書としてこのユーグレナ社の創業者のストーリーとの比較になってしまうのだが、どちらもそのアイデアを思い付いた人が東大の理学部出身の研究者と組んで実験に実験を重ねて成果を出してきたベンチャーだが、どちらがどん底を経験していたかというと、実はユーグレナの出雲氏の方である。

本書の著者の岩元氏がこのベンチャーを始めたのは繊維商社の営業などで相当経験積んでからだし、コットンからバイオエタノールを作るとか、化繊から化繊を再生するとか、これはこれでかなり有望な技術だというのはわかる。でも、印象としてはこのアイデアを思い立ってから実用化に至るまでの過程がけっこう順調で、あっという間にものにした印象が強い。あまりドラマチックじゃなかった。それと、同じことが僕にできるかというと、完全無欠すぎて手が出せない気がしてしまったのである。

それは差し置いても、このベンチャーも技術の普及がもっと進んだら、この世界を変える破壊力は相当あることは間違いない。理解はするけれども、自分を行動に走るよう背中を押してくれわけじゃないなと思ってしまった。著者の岩元さん、生意気言ってごめんなさい。

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『物を作って生きるには』 [仕事の小ネタ]

物を作って生きるには ―23人のMaker Proが語る仕事と生活 (Make:Japan Books)

物を作って生きるには ―23人のMaker Proが語る仕事と生活 (Make:Japan Books)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2015/12/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
本書は、物を作ることによって生計を立てているメイカーによるエッセイおよびインタビュー集です。登場するメイカーが作る物は、エレクトロニクスキット、家具、玩具、さらにハッカーのための共有スペースまで幅広く、その目的や規模もさまざまです。しかし、共通しているのは、自分に一番適したやり方を自分の頭で考え抜き、そのアイデアを実際に手を動かして実現していること。いくつかのエッセイでは製造や販売などに関する実践的なノウハウも紹介されています。日本語版では、ヒゲキタ、乙幡啓子、山田斉(工房Emerge+)、テクノ手芸部、石渡昌太(機楽)、湯前裕介(ホットプロシード)の各氏によるエッセイとインタビューを追加しました。

今週末、僕はある決断をした。27年ぶりの大きな決断である。帰国してちょうど半年が経過したところだが、今の自分の状態は自分としては受け入れがたいので、思い切って環境を変えようかと思っている。具体的な行動は連休明けから移す。すでに家族には伝えてある。

先週は、身の回りでその決断に関して背中を押してもらえる出来事がいくつかあった。ひと言では説明もできないので詳述しないが、いったん心が決まったら、周りの風景がちょっと新鮮に見えるようになった。自分にとって何が重要なのかがよくわかった。

そんな時に手に取ったのが本書であった。翻訳がひどいという評価もあるようだが、僕は翻訳の問題というよりも、英語で書かれた文章そのものがそんなスタイルで描かれていたのではないかと想像している。確かに読みにくい。でも、そこは最後に載っている日本人メイカーのエッセイやインタビューがそれなりの日本語になっているので許せる。

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『ブータンの教育変容』 [ブータン]

ブータン王国の教育変容――近代化と「幸福」のゆくえ

ブータン王国の教育変容――近代化と「幸福」のゆくえ

  • 編著者:杉本均
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/08/31
  • メディア: 単行本
内容紹介
1970年以降の急速な近代化は、ブータン社会の教育と若者たちの意識に何をもたらしたのか。信仰が支える伝統と新しい価値観の相克、熾烈な試験競争がもたらすストレス、ドロップアウトする若者たちなど、近代化推進の過程で生じた諸問題を、京都大学による長年の現地調査をもとに、比較教育学の見地から考察する。

この本は、発刊当時から読みたいと思っていたものだったが、新品の価格(9180円!)を見てぶったまげてしまい、怖くて手が出せなかった。中身を知らない状態で払える金額ではない。ページ数(248)でそんなに高い理由は何なんだろうか、強気の価格設定ができるだけの説得力ある内容なのだろうか、いろいろなことを考えさせられるアマゾンの紹介ページだった。

結局、帰国するまで内容確認はできず、買わずに3年間を過ごしてしまったのだが、さすがに入るところには所蔵されていて、借りて読んでみることができた。

結論から言うと、これから赴任する人は、買わなくてもいいけど図書館で借りて読んでおくことは勧める。特に、教育分野でブータンで何か活動をされようという青年海外協力隊の人とかなら、徒手空拳で現地に乗り込むより先に、ブータンの教育行政の機構や歴史などは予め理解しておいた方がいいので、こういう本はきっと有用だと思う。強気の価格設定を受け容れられるかどうかは別として(笑)。

予備知識があるからというわけじゃないと思うが、かなりスラスラ読める文体である。写真や図表も多くて、それも読みやすさの確保に一役買っている。一方で、写真を多用するアカデミックリサーチというのは珍しくて、アカデミックな体裁を取っている割にはアカデミックっぽくない、ややもすると紀行文かエッセイのような記述も所々に見られた。

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『ODAの終焉』 [仕事の小ネタ]

ODAの終焉: 機能主義的開発援助の勧め

ODAの終焉: 機能主義的開発援助の勧め

  • 作者: 浅沼信爾・小浜裕久
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2017/09/28
  • メディア: 単行本
内容紹介
本書は、現在のODAへの違和感と危機感を表明しようという目的で書かれた。開発の現場近くで仕事をしてきた著者達にとって、MDGやSDGは夢の議論のようでその非現実性に強い違和感を抱かざるをえない。ODA自体が存亡の危機にあるのではないかという危惧感さえ抱く。ODAの将来の方向性についての議論を呼び起こす一冊。

この本、僕の海外駐在期間中に発刊されていた。読んで内容を確認したかったのだけれど、3,456円もするのが気になって、どうしても購入するまでは至らなかった。勁草書房の本は高すぎて手が出ない。早めに確認できていれば、今自分が教えている通信制大学院の講座の参考文献ぐらいでは挙げておきたかったのだけれど、さすがに今年度シラバスにこれを挙げるのは断念した。

帰国してみて、①近所の市立図書館にはなく、②会社の図書室で借りようにも返却待ちが10人以上続いている人気の本だったので、順番がなかなか回ってこない(会社の図書室は貸出期間が3週間とちょっと長めなので、10人待ちというと1年ぐらいは順番が回ってこない感覚だ。)悶々としていたら灯台下暗し、僕の職場の隣りに座っている同僚が購入していて、お陰で貸してもらえた。

なんとなく世銀寄りの本だなと感じた。世銀がやっていることを針小棒大に捉えているところがあるような気もした。多分共著者のどちらかが世銀に近いのだろう。そこまで大きな話かと首を傾げるところもないことはないが、国連とその専門機関がやっていることには結構辛辣な論評が並んでいる点については、「国連嫌い」を隠さない僕にとっては溜飲が下がる思いである。


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『英語と日本軍』 [英語一期一会]

英語と日本軍 知られざる外国語教育史 (NHKブックス)

英語と日本軍 知られざる外国語教育史 (NHKブックス)

  • 作者: 江利川 春雄
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2016/03/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
軍のエリートはいかに「敵国語」を学んだのか?
陸海軍の学校では敗戦後まで英語教育が行なわれていた。目的はなんだったのか。どんな教科書や参考書が使われていたのか。幕末に始まった外国語教育は近代陸海軍創設からアジア・太平洋戦争に至るまで、皮肉にも日本の帝国主義の歩みを下支えしてきた。英語教育史研究の第一人者が、当時の生徒が使用した教科書や残された手記の分析、生存者への取材から、知られざる教育の実態に迫るとともに、それらが戦後に遺したものを明らかにする。

日本の近現代史を様々なテーマで取り上げて、45分のコンテンツにするという仕事をここ数ヵ月やってきた。その関連で個人的に勉強のために読んだ文献も何冊かある。僕自身の守備範囲じゃね~なと思いながらも読んだ文献もある。あまり本意ではないんだけど、本意でないものにどう前向きに取り組めるかといえば、自分が少しは昔かじったことがある領域に、この本意ではないものを引っ張り込めるかというのにかかっている気がする。

ブータンで、最近セクハラ疑惑で6人の講師が解雇されて問題になっている言語文化カレッジ(CLCS)の教務主任の方から、以前、「日本は日本語をどうやって公用語として維持したのか」という質問を受けたことがある。その質問の心は、熊谷誠慈編『ブータン』の第7章「輪廻のコスモロジーとブータンの新しい世代」の中で、西平直先生が書いておられる。西平先生はCLCSの学長へのインタビューでそれを聞かれている。僕が教務主任から言われたのは、「それが知りたいから日本に留学させてほしい」というオチまで付くのだが(苦笑)。しょうがないから少しだけ自分なりに心当たりを当たってみたりもしたが、多分西平先生も同じリクエストを受けて奔走されたに違いないと思い、ど素人が深追いするのはやめにした。

ただ、こうした経緯があっただけに、明治以降の国語政策とか外国語政策とかは、できれば日本の近現代史のテーマの1つとして取り上げられないかと思っていたのだが、この仕事の関係者から、「誰がこんなテーマ入れたんだ」とチェックが入り、「私の意見です」と言ったらあっさり却下された。会社でこの仕事をやっていても日の目は見ないかもしれないが、僕個人としては、日本の外国語教育政策史とかは、もう少し語れるようにしておきたいものだ。

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タグ:江利川春夫
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『帝国ホテル建築物語』 [読書日記]

帝国ホテル建築物語

帝国ホテル建築物語

  • 作者: 植松三十里
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
1923年(大正12年)に完成した帝国ホテル2代目本館、通称「ライト館」。「東洋の宝石」と称えられたこの建物を手掛けたのは、20世紀を代表する米国人建築家、フランク・ロイド・ライトだった。世界へと開かれた日本において、迎賓館の役割を果たしていた帝国ホテル。そのさらなる進歩を目指す大倉喜八郎と渋沢栄一が、明治末期、アメリカで古美術商として働いていた林愛作を帝国ホテル支配人として招聘したことから、このプロジェクトは始まった。しかし、ライト館完成までの道のりは、想像を絶する困難なものだった―。ライト館の建築にかけた男たちの熱い闘いを描いた、著者渾身の長編小説。

先々週末、近所のコミセンの図書室に寄った際、何気なく借りた本。植松三十里作品は昔、富岡製糸場の初期の製糸工女・尾高勇を主人公にした『繭と絆』を読んでいたし、パラパラとページをめくっていたら伊藤博文とかチラッと出てきたので、それなら借りようかということになった。同時に借りたのが、重松清『木曜日のこども』である。

結局、『木曜日の子ども』の方から先に読み始めちゃった。それで先週1週間を費やしてしまったのだが、11日になって『帝国ホテル建築物語』を読み始めて、プロローグでライト館の明治村への移設の話が出てきたとき、僕はこの読み方の順序を逆にしていればよかったと激しく後悔した。

先週木曜日(5日)、僕は愛知県犬山市に行っていたのである。用があったのは犬山といっても市の南部の方面だったが、名鉄線の乗継で犬山駅は使っていたので、明治村は目と鼻の先だった。用務を済ませて、ちょっと足を延ばせばライト館は見てくることができたのだ。それに加えて、明治村のことをもうちょっと調べてこの日の用務に臨んでいれば、用務先での会話の中でもそれを生かすことができたかもしれない。大げさかもしれないが、ちょっと自分の将来を左右したかもしれない。

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タグ:植松三十里
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『ブータン、これでいいのだ』 [ブータン]

ブータン、これでいいのだ

ブータン、これでいいのだ

  • 作者: 御手洗 瑞子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/02/01
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
クリーニングに出したセーターの袖は千切れているし、給湯器が壊れてお湯が噴出するし、仕事は思ったようにまったく運ばない。でも、問題山積みだけど、これでいいんだよね。現地で公務員として働いた著者が語る、「幸福」の国の秘密。特別企画・夜這いインタビュー収録。王室の写真など、カラー写真満載。

2011年から2012年にかけて、日本の出版業界では、ちょっとしたブータンブームが起きた。きっかけは国王御夫妻の訪日であった。当時、お仕事でご一緒した某出版社の社長さんから、「ブータンがテーマだったら出したいんだけどね」と言われた。原稿を書いてくれそうな人を探すのに難航し、結局実現できないうちに、わが社とその出版社との関係が途絶えてしまった。そのことがあったので、僕は先ず原稿を書くことから始めた。

そうした出版業界のブータンブームの中でも、トップ集団で出てきた本の1つが、本日ご紹介の1冊である。著者は初代首相フェローとして、2010年9月より1年間、ブータン政府のGNH委員会(計画委員会)に勤務されていた方である。そうすると2011年9月には帰国されていたことになるので、本書の刊行までは4ヵ月程度しか猶予がなかった筈である。現地でお勤めされていた間に相当書き進めていないと、この日程での書籍刊行は難しいと思う。聞けば元々マッキンゼーにお勤めで、ネットワークも持っておられた状態でブータン行きを決められていて、ブータンでの生活の様子をブログで発信しておられたという。また、日経ビジネスオンラインでも、『ブータン公務員だより』なる連載枠を確保しておられた。なるほど、それなら書き溜めてあったものを編集すればある程度の短期間で本に仕上げることができるだろう。

はなから脱線気味でもう少し述べると、実は僕もブータン赴任が決まった時に、知り合いのつてを頼って某地方新聞の編集部の方に、同じような企画を持ち込んだことがある。その時に付けられた条件が3つあって、①女性目線で見て書くこと、②娘に父の喜怒哀楽の表情のイラストを4パターンぐらい作ってもらうこと、③800字の原稿を隔週ペースで書いてこの編集者に送ること(新聞紙上での掲載の確約はなし)、というものだった。

ブログの文体をご覧いただければわかると思うが、僕にとっては女性目線でテーマを選んで「です・ます」調で書くというのがとてつもない難題であった。以前某経済紙に隔週でインドのことを書かせてもらった時のイメージでいた僕には、①は特に高いハードルだった。②は高校漫研の娘には難易度は高くないと思ったが、①が捗らなかったので娘に無理強いもしなかった。そして、③は①が決まらなかったのでとてもできなかった。代わりにやったのがブログでのハードなブータンネタの発信だった。でも、御手洗さんは女性だから、女性目線で見た事物をやさしいトーンで発信できただろう。

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タグ:御手洗瑞子
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『戦後日米交渉を担った男 外交官・東郷文彦の生涯』 [ブータン]

戦後日米交渉を担った男  外交官・東郷文彦の生涯 (.)

戦後日米交渉を担った男 外交官・東郷文彦の生涯 (.)

  • 作者: 伊奈 久喜
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
戦後日米外交史に残る「安保改定」と「沖縄返還」の交渉に深くかかわった外交官の活躍と苦悩を描き、知られざる人物像に迫る評伝。

ブータンと日本の二国間関係に深くかかわっておられた方にお話をうかがうと、よく、「東郷大使」という言葉を耳にする。「あの頃カルカッタの日本総領事をなさっていた」と聞く。実際、1965年には『ブータン~ヒマラヤの王国』という本も出しておられる。1985年にお亡くなりになった後、遺骨の一部は、パロのキチュ・ラカンを見下ろす山麓で慰霊されている。

この他に、『日米外交三十年』という著書もあることや、本日ご紹介する伝記でも中心テーマになっているのでおわかりの通り、1960年の日米安全保障条約改訂、1972年の沖縄返還交渉、日米核持ち込み問題などで、事務方として日米交渉を支えたのが東郷大使であり、1974年には外務事務次官、1975年から80年までは駐米大使を務めておられる。

そんなアンシャンレジーム出身のエリート中のエリートが、日米安保条約改訂時を外務省北米局安全保障課長として過ごした後、1960年秋から2年間、カルカッタ総領事を務められた。外交交渉の骨休みのような意味合いだったようだが、この間、1962年5月に約2週間、ブータンを訪問されている。その時に同伴された夫人が、ブータンを訪問した最初の日本人女性なのだとか。

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『木曜日の子ども』 [重松清]

木曜日の子ども

木曜日の子ども

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/01/31
  • メディア: 単行本
内容紹介
「きみたちは、世界の終わりを見たくはないか――?」 震撼の黙示録!
「世界はこんなに弱くてもろくて、滅ぼすなんて簡単なんだってことを……ウエダサマが教えてくれたんですよ」
7年前、旭ヶ丘の中学校で起きた、クラスメイト9人の無差別毒殺事件。
結婚を機にその地に越してきた私は、妻の連れ子である14歳の晴彦との距離をつかみかねていた。前の学校でひどいいじめに遭っていた晴彦は、毒殺事件の犯人・上田祐太郎と面影が似ているらしい。この夏、上田は社会に復帰し、ひそかに噂が流れる――世界の終わりを見せるために、ウエダサマが降臨した。やがて旭ヶ丘に相次ぐ、不審者情報、飼い犬の変死、学校への脅迫状。 一方、晴彦は「友だちができたんだ」と笑う。信じたい。けれど、確かめるのが怖い。そして再び、「事件」は起きた――。

いつもとずいぶんタッチが違う重松作品だなと思った。2007年頃から角川の雑誌『野生時代』で連載されていた作品だそうで、それがなんで10年もたった今頃単行本化されたのかは知らないけれども、現在の方がリアリティがありそうな作品として取り上げられそうな気がする。

僕としては『ゼツメツ少年』で重松ファンを辞めようと思ったくらいだったから、帰国して半年間に読んだ重松作品にはちょっとした新鮮さは感じていた。その延長でとらえれば、『木曜日の子ども』のような作品もまあ許せる。(ちょっと、『疾走』を想起させる装丁と中身だったけど。)

ただ、この作品でシゲマツさんは何を訴えたかったのだろうか。こんな、誰かに模倣犯罪を起こされそうな作品を何で書いたのか。そのへんはちょっと謎だ。


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