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女性企業家を阻む壁 [ブータン]

金融アクセスが女性企業家にとっての障害
Access to financial capital a major impediment to women in business
Kuensel、2018年8月22日、Nima記者
http://www.kuenselonline.com/access-to-financial-capital-a-major-impediment-to-women-in-business/

経済的必要性が女性をビジネスに駆り立てる
Economic necessity drive women into business
Kuensel、2018年8月25日、Nima記者
http://www.kuenselonline.com/economic-necessity-drive-women-into-business/

◇◇◇◇

女性のビジネスに関する記事が立て続けに2つ、クエンセルに掲載された。いずれも同じ記者で、情報源も同じ全国統計局(NSB)のレポートである。

NSBのHPを覗いてみると、どうやら元ネタは5月30日に掲載された「Challenges Facing Bhutanese Businesswomen in Micro and Small Enterprise Sector(小規模零細企業部門の女性が直面する課題)」と題したレポートらしい。それが3カ月近くの時差を置いて今頃メディアに取り上げられたのは、このレポートの製本版が、最近NSBから関係各機関に配布されたからである。

著者にはLham Dorji、Cheda Jamtsho、Tashi Norbu、Cheku Dorjiという方々が名を連ねている。うち、主筆はLham Dorji氏のようだ。レポートの冒頭謝辞を読むと、この方、幕張のアジア経済研究所に半年ほど研究フェローとして滞在して、そこでこのレポートの原型とも言える別のディスカッションペーパーを書いておられる。「Women-owned micro and small enterprises in Bhutan : what major obstacles impede their growth and innovation?(ブータンの女性小規模零細企業:成長とイノベーションを妨げているのは何か?)」というタイトルで、これまた今年5月にアジ研から公開されている。

今回この2つの記事に注目してブログでもご紹介しておきたかったのは、このアジ研研究フェローの書かれた第二弾のレポートも、アジ研から研究助成が出ているからだ。アジ研の方がどれくらいの頻度でブータン入りされているかは僕は存じ上げないが、こういう、日本とつながりをお持ちのブータン人研究者の方を、大使館なりJICAなりは、もっと現地でサポートすべきだと思う。「すべての女性が輝く社会づくり」(首相官邸HP)なんて安倍首相が言っているぐらいなんだから、そういう視点で事業を構想していくべきだ。

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『スモールイズビューティフル』 [持続可能な開発]

スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)

スモール イズ ビューティフル (講談社学術文庫)

  • 作者: F・アーンスト・シューマッハー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1986/04/07
  • メディア: 文庫
内容紹介
1973年、シューマッハーが本書で警告した石油危機はたちまち現実のものとなり、本書は一躍世界のベストセラーに、そして彼は“現代の予言者”となった。現代文明の根底にある物質至上主義と科学技術の巨大信仰を痛撃しながら、体制を越えた産業社会の病根を抉ったその内容から、いまや「スモールイズビューティフル」は真に新しい人間社会への道を探る人びとの合い言葉になっている。現代の知的革新の名著、待望の新訳成る!

これまで何度か挑戦を試み、その度に跳ね返されてきた本書。先週末からインドに行く機会があり、その行きのフライトの中で読み始め、インド滞在の最初の2日間で読み切った。以前イアン・スマイリー『貧困を救うテクノロジー』をご紹介した際にも、「本書を理解する前提としてシューマッハーの『スモールイズビューティフル』を読んでおくと良いかもしれない」と書いていたので、前掲書の再読を果たしたこの8月、できるだけ間髪入れずにシューマッハーの著書にも挑戦すべきだと思っていた。今は終わってホッとしているところである。

本書はいろいろな立場の人がいろいろな読み方ができると思う。第2部第4章「原子力――救いか呪いか」なんて、福島以降論争が喧しい原発開発の可否について、シューマッハーが1967年には警鐘を鳴らしていたことがよくわかる記述になっている。また、以前クレア・ブラウン『仏教徒の経済学』をご紹介した際にも少しシューマッハーに関する引用をしたが、クレア・ブラウンの著書は『仏教徒の経済学』と銘打っている割には「持続可能な開発」全般の啓蒙書のような感じだったが、『スモールイズビューティフル』の中の第1部第4章「仏教経済学」の方はもっとシンプルに「仕事」というものの捉え方についての従来の経済学と仏教経済学というところに絞っての違いとして論じられている。

元々著者が各所で行った講演や執筆論文をまとめた本なので、取りあえずテーマに合わせて1章ずつ集中して読むというのでいいと思う。通読すると、所々記述の重複もあるし、自分の関心と必ずしも合わない章はやっぱり読みづらく、どうしても時間がかかってしまう。『貧困を救うテクノロジー』の趣旨から言って、今回の読み込みで僕が注目していたのは「中間技術」に関する記述だったので、特に第3部の最初の3章――「開発」「中間技術の開発を必要とする社会・経済問題」「二〇〇万の農村」あたりを集中的に読み、そしてマークした。

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ショートノーティスにドタキャン [ブータン]

マツタケ祭り中止、ツアー会社を混乱させる
Cancellation of mushroom festival upsets tour operators
Kuensel、2018年8月24日、Rinchen Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/cancellation-of-mushroom-festival-upsets-tour-operators/

【ポイント】
下院の選挙活動が23日から始まったことで、ブムタンで最も待ち望まれたフェスティバルが中止となり、ツアーオペレータを落胆させている。ウラ郡のカンドゥ・ワンチュク郡長は、ブムタン県庁が選挙を理由にフェスティバル開催申請を許可しなかったと述べた。

ウラでは、約10年前からマツタケ・フェスティバルが毎年開催されてきた。このフェスティバルは、地域の住民が収入を得る貴重な機会にもなってきた。郡長によると、フェスティバルは毎年、8月23日と24日に開催されてきており、ブータン観光評議会(TCB)のイベントカレンダーにもそう掲載されてきた。

中止の決定は、開催のわずか11時間前になされた。あるオペレータによると、既に中国人観光客を案内して、ガンテまで来ていたという。3年間にもわたって中国でマツタケ・フェスティバルを宣伝してきたのに「観光客にウソをついた形になってしまった」と不満を述べる。この中国人ツアーは23日午後、ブムタンに到着した。

ウラ郡長によると、郡では15日には県庁に開催の可否を文書で打診していた。県からの回答は21日付けで、フェスティバルが選挙キャンペーン期間中に該当し、大衆を動員するイベントであるため、開催許可することは困難とするものだった。ブムタン県庁のパサン・ドルジ知事は、フェスティバルが選挙キャンペーン初日の開催となるため、イベント自体が政治利用される可能性が高いと指摘する。

ブータン・ツアー・オペレータ協会(ABTO)によると、フェスティバルには40人という。以上の観光客が訪問を予定していた。別のオペレータによると、彼の会社ではスペイン人観光客4名からの予約があり、19日にはブータンに到着していた。フェスティバル訪問をブッキングしていたが、中止の決定に、「それを聞いた瞬間、彼らは不満をあらわにしていた」という。フェスティバルに代わる措置として、同社では客をタン渓谷に案内したという。「今はもう不満をあらわにされることもないが、こんな通達がショートノーティスで出されるようでは、我々に対する信用が台無しになってしまう。ブータン人として、選挙に真剣に取り組みたい気持ちはよくわかるが、もっと早く言って欲しい。」

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これで竹刀を作れたら… [ブータン]

バムテックは竹に機会を見出す
Bamtech to explore opportunities in bamboo
Kuensel、2018年8月16日、Nima記者
http://www.kuenselonline.com/bamtech-to-explore-opportunities-in-bamboo/
【ポイント】
2018-8-16 Bamtech.png8月14日、ティンプーにおいて、竹製家屋建築工事アプリ「バムテック(Bamtech)」のローンチングが行われた。このアプリは家屋建築や建設現場、家具製造その他の目的における竹の使用に関する基本情報を掲載したもので、これを以って起業家や民間企業は竹材の商業化と建設資機材としての竹材の普及を目指すのだという。

アプリは、南アジア竹財団(South Asia Bamboo Foundation)が開発。アプリは先ずデリー(インド)でローンチされ、インド国内各地でも紹介されてきた。今年はじめ、このアプリは北京(中国)でも紹介されている。ティンプーでのローンチングは、ブータン商工会議所(BCCI)、ブータン手工芸協会、南アジア竹財団のカメシュ・サラムCEOが出席して行われたもの。

カメシュCEOによると、竹製品は耐久性や耐用年数に疑問が呈され、またそれ自体が貧しい人の建材だと思われてきたが、それらは意識啓発努力の不足や竹材の管理や処理についての情報の不足が原因だと指摘する。しっかり処理されないと、竹材にはカビが付着する可能性があるが、燻製処理をしっかり行えば、これらは防げるという。こうした意識、情報の欠如が、竹材の商業化の妨げになっている。

ブータンには30種類以上の竹が自生し、資源賦存量として十分ある。しかし、非木材森林資源としての用途は現在、竹籠や道具箱、帽子、基礎的家庭用品に限定されているのが現状。今回紹介されたアプリは、竹栽培から竹製品製造に至るまでの商業ベースで行なえるようになるのを目指し、竹材に基づく持続可能な経済の形成の一助となるものと期待される。また、アプリは農村の生計活動の改善や環境保全、グリーン経済の推進等に向けて、竹材のより革新的な用途の開発と普及にも貢献するものと期待されている。

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タグ:竹細工 剣道
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『村に吹く風』 [読書日記]

村に吹く風 (新潮文庫)

村に吹く風 (新潮文庫)

  • 作者: 山下 惣一
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/12
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
1ヘクタールの水田を夫婦二人で耕して、秋の収穫80俵。肥料代など差し引くと、手取りはたかだかン10万。おまけに聞こえてくる声は「米は作るなミカンもやめろ。日本の農業、過保護だぞ」…まったく、やってられないよ。でも農業は、ひとの命を支える仕事。それをつぶしてなるものか。四季折々の村の暮らし、農業の実情をユーモアたっぷりに描く、都会人、消費者へのメッセージ。

今、ティンプーでは、『マウンテンエコー文学祭』という毎年恒例のトークイベントが市内各所を会場にして繰り広げられている。今年はブータンとインドが国交50周年ということで、例年にも増してインド色の強いイベントになっている気がする。去年は、知り合いの英国人が著書のプロモーションも兼ねてパネル登壇されていたので、ちょっとだけ顔を出した。今年は、あわよくば現在執筆中の本をここまでに発刊できたら、登壇狙ってやろうと思っていたのだけれど、最後の1章分の書き下ろしに手間取り、目標だった6月中の脱稿から2ヵ月も遅れて現在も奮闘中である。よって、文学祭に行くぐらいなら自分の原稿を書くのに時間を使おうと思い、せっかくのお誘いも断っている。とはいっても、僕が書いている本は文学じゃないが(笑)。

P_20170825_121458.jpg
《去年のマウンテンエコー文学祭の様子》

今月に入ってからご紹介している本の多くは、今週末ブータンを離任されるJICAの専門家の方からいただいたものだ。合計7冊あるのだけれど、僕自身も自分で購入しておいて積読状態にしてある本がまだまだたまっていることから、いただいたものだけでも先に捌いてしまおうと、暇を見つけては読んでいる。『村に吹く風』はその第4弾。これまで読んだ本も全て面白かったけれど、本書は別の意味で良かった。いわゆる「農村文学」というジャンルなのだ。

著者は唐津で農業を営みつつ、小説も書かれる方のようで、本書は昭和59年(1984年)頃に朝日新聞で連載されていたエッセイを集めて書籍化されたものである。この頃の農業を取り巻く環境といえば、日米貿易摩擦でオレンジ輸入の市場開放が争点の1つになっていた時期で、農業に対する風当たりは極めて強かった。当然本書の中でも、政府の貿易政策の影響だろうと思わせる農家の対応の様子が描かれているし、また1993年の「平成の米騒動」ほどではなかったにせよ、農水省の減反政策がうまく機能せず、減反目標を上回る休耕田が出て来始めた時期だった。従って、米作に関する農家の愚痴、農政批判というのも本書では頻出する。僕自身にとっては、米国でもお米を作っているんだというのを初めて知ったのがこの時期だった。

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ダッパ生産が素材入手にもたらす圧力 [ブータン]

タシヤンツェ、ダッパ生産盛況で節不足に直面
T/Yangtse runs out of burls as dappa business picks up
Kuensel、2018年8月16日、Younten Tshedup記者(タシヤンツェ)
http://www.kuenselonline.com/t-yangtse-runs-out-of-burls-as-dappa-business-picks-up/
2018-8-16 Kuensel.jpg
【ポイント】
タシヤンツェといえば、絶滅危惧種オグロヅルの飛来地やチョルテン・コラが有名だが、伝統工芸品の木の器「ダッパ」の産地としても知られている。13の伝統工芸(ゾリグ・チュスム)の1つである木地師(シャゾ(shagzo))発祥の地として、タシヤンツェは近年、ダッパ生産が好調だ。これは、地元の人によると、伝統工芸院卒業生が増えて、ダッパビジネスに次々と参入したからだという。また、テクノロジーの進歩により、ダッパ製造過程も機械化が進んで、少ない労力で生産できるようになってきているからだとも。

ただ、ダッパ生産者が増えることで、素材にかかる圧力も増大している。ダッパの素材はカエデやシャクナゲ等の幅広い樹種だが、耐久性の高い製品にするには、それらの樹木の節(burl)があることが必須だ。この節(boows)が、今ではタシヤンツェ県内では見かけることが少なくなった。

チョテン・デンドゥップさん(46)は、元々木地師としてキャリアをスタートさせたが、今ではこの節探し(burl hunter)に特化している。ベイリン村の元村長だったチョテンさんによると、今や県内には節は見当たらないという。「子どもの頃は、節は近くの森に行けばいくらでもありました。しかし、無秩序な過剰生産により、素材が無くなってしまったのです。」今日、節ハンターはルンツィやワンデュ、チラン、チュカ、シェムガン、さらにはハの原生林にまで足を延ばす。希少な節は高い値がつくからだ。

小さな節のある小皿なら1枚約550ニュルタム、標準サイズのダッパだと3,500ニュルタムで売れる。以前は標準サイズのものは1,500ニュルタム程度だった。これらのダッパ生産のために伐り出される木材は、ハンター1人につき年1回の許可で2本までと決まっているが、1本2万~2万2,000ニュルタムで売れる。

タシヤンツェでダッパの仲買を営むカルマ・ワンチュクさんは、節の仲買も行っている。昔に比べて原材料の節は減ったが、いい値をオファーすれば欲しいものは調達できるという。彼は年間20万ニュルタムの利益を出している。

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『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』 [持続可能な開発]

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。――東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

  • 作者: 出雲 充
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/12/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容(「BOOK」データベースより)
世界で初めて「ミドリムシの屋外大量培養」に成功し、ダボス会議「ヤング・グローバル・リーダーズ」にも選出!全世界待望の「地球を救うビジネス」とは?―――。
前回、イアン・スマイリー『貧困を救うテクノロジー』をご紹介したので、同じような文脈で2冊目の本を読んだのかと思われるかもしれないが、実は読むことにした経緯はちょっと違っていて、ミドリムシの本を読もうと思ったのは、このユーグレナ社がブータンにもビジネス可能性調査で来られているからである。
JICA「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」に ブータン王国でのキヌア生産・販売体制構築の事業調査が採択されました
2017年7月11日
 株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、社長:出雲充)は、JICAが行う「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」として、ブータン王国での『小規模農家の収入向上および栄養改善のためのキヌア生産・販売ビジネス調査』が採択されましたことをご報告します。
 ブータン王国は人口の半数以上が農業に従事する農業国ですが、山岳地帯が多く、農業に適した土地が少ないため、多くの小規模農家が貧困状態に陥っています。
 そのような中、本調査では、高地にて安定して栽培が可能なうえ栄養価が高く、北米などで需要が高いキヌア栽培の技術指導を実施します。また、栄養価に関する食育、海外輸出に向けたバリューチェーンの確立に取り組むことで、ブータン王国の食料問題および農村の貧困問題の解決を目指します。本調査はブータン王国農業省、伊藤忠商事グループなどと協力して実施する予定です。
 なお当社は、バングラデシュ人民共和国にて、日本の農業技術の指導を行うことで現地農家による良質な緑豆栽培や、バングラデシュ人民共和国内外での緑豆販売のバリューチェーンの構築を行う『緑豆プロジェクト』を2014年10月より推進しており、その知見とノウハウを本調査に活用していく予定です。
 今後も当社は、経営理念である「人と地球を健康にする」ことに向けた取り組みを実施してまいります。
ユーグレナ社HPより

従って、冒頭から言っておくと、本書ではキヌアの話は一切出てこないので注意が必要である。僕はミドリムシからの事業拡大でどうやって緑豆やキヌアがスコープに入ってきたのかという経緯が知りたかったのだけれど、本書は2012年発刊であり、どうやら緑豆やキヌアはその時点では未だ同社のスコープには入っていなかったらしいというのがわかった。

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再読『貧困を救うテクノロジー』 [持続可能な開発]

貧困を救うテクノロジー

貧困を救うテクノロジー

  • 作者: イアン・スマイリー
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2015/08/19
  • メディア: 単行本

Mastering the Machine Revisited: Poverty, Aid and Technology

Mastering the Machine Revisited: Poverty, Aid and Technology

  • 作者: Ian Smillie
  • 出版社/メーカー: Practical Action Pub
  • 発売日: 2000/11/01
  • メディア: ペーパーバック

邦訳が発刊された直後の2015年12月以来の再読となる。前回も指摘していることながら、邦訳は悪い本ではないのだが、2015年9月に「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」と「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連で合意され、その策定プロセスで南北間対立の1つの焦点となったのが「科学技術イノベーション(STI)」だったことから、そこへの打ち込みを勘案してかなり急いで発刊されたのではないかと思われるふしがある。拙速感を感じさせられるポイントは2つあり、1つは本書に出てくる引用の出典元を明記していないことと索引を付けていないこと(これは相当にクリティカル)、2つめは翻訳者ないしは有識者による作品解説がないことである。特に、出典明記や索引を省くような編集をなぜ本書ではあえてすることにしたのか、翻訳者なり編集担当なりからの説明があってもよかったのではないかと思える。だから原書も読めという、今回僕がやった方法にまで持って行って原書も売ろうなどと考えていたのであれば、出版社側の慧眼だったと言わざるを得ないが。

2つめのポイントについては、MITのD-Labの遠藤謙氏の巻頭緒言を載せることで解説を省いたのだと編集側では言いたいのだろう。遠藤氏の解説はこれはこれでいい。D-Labの説明・宣伝にはなっているので。原書『Mastering The Machine Revisited』をMITのテキストとして読んだ遠藤氏が何を本書から学んだのかを知る意味でも参考にはなる。しかし、作品解説にはなっているとはとうてい思えない。

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『大盗禅師』 [読書日記]

大盗禅師 (文春文庫)

大盗禅師 (文春文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/02/01
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
大坂落城から30年。摂津住吉の浦で独自の兵法を磨く浦安仙八の前に、ひとりの僧が現れる。妖しの力をあやつる怪僧と、公儀に虐げられる浪人の集団が、徳川幕府の転覆と明帝国の再興を策して闇に暗躍する。これは夢か現か―――全集未収録の幻想歴史小説が、30年ぶりに文庫で復活

人からいただいた本を読んでしまおうシリーズの第三弾は、再びの司馬遼太郎ものである。

文庫本といえども500頁超もある大作で、かつ時代背景をあまり知らない江戸・徳川家光の治世の頃の話で、これになおよく知らない由比正雪や鄭成功を絡めてきて、しかも幻想小説というような慣れないカテゴリーの小説だったので、読了するには1週間近くを要した。ゴールが見えてきたから最後の200頁はペース加速させることができたけれど、慣れるまでには時間がかかる作品だった。

結論から言うと、息抜きとして読むにはちょうど良かった。また、戦で政権を勝ち取った家康や秀忠と違い、三代将軍・家光は生まれながらにして政権を引き継ぐことが決まっていたわけで、豊臣家滅亡から30年経った頃の世相や外様大名、親藩・譜代大名の置かれた立場や役割、大坂城落城から未だに続いていた浪人の処遇の問題など、当時の空気を垣間見ることができる小説だと言える。

それを鄭成功の明復興に向けた反清活動と絡めるあたりは、ちょっと無理矢理感はあったけれど、日本で起きていたことと大陸で起きていたことを、同時代でくくることで理解がしやすくなるというメリットもちょっと感じた。また、僕は以前働いていた東京の職場が市谷山伏町から近く、由比正雪の江戸潜伏の地の周辺に多少の土地勘があったので、そのあたりでは作品を読んでてイメージはしやすかったところはある。

ただ、賛否両論は分かれる作品ではないかとも思える。僕にとっては小説は息抜き読書の対象だから、息抜きとして読む程度だったらいいが、なんだか盛り上がりには欠けるし、特に浦安仙八の迷走ぶりも、主人公としてのインパクトはそれほどない。結局由比正雪の謀叛も未遂に終わるし、鄭成功の明復興もかなわなかったわけだし、これらを素材として小説を組み立てるのも大変だっただろうなと思ってしまう。

タグ:司馬遼太郎
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イヌは増えているようです [ブータン]

2009年以降、不妊措置が取られたイヌは8万5000匹
85,000 dogs steralised across the country since 2009
Kuensel、2018年8月13日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/85000-dogs-steralised-across-the-country-since-2009/
【ポイント】
ヒューメイン・ソサエティ・インターナショナル(HSI)と農業省畜産局は、6月24日から7月10日にかけて、第2回イヌ人口調査を実施。それによると、ブータンのイヌ総人口の60~80%が不妊化及びワクチン接種措置がとられていたという。2009年、政府は全国イヌ人口管理・狂犬病抑制プロジェクトをスタートさせたが、それ以降の累計で約8万5000匹のイヌが不妊化と狂犬病ワクチン接種が行われてきたことになる。

同調査では、街のイヌの人口計測だけでなく、イヌの飼い主を対象としたKAP調査(知識、態度、実践実態調査)も実施された。結果、ティンプー、パロの都市住民世帯数の21%、農村世帯の40%がペットとしてイヌを飼っていることが判明。

調査によると、可移植性性器腫瘍(CTVT、イヌ科に発生する感染性の腫瘍)の兆候が見られるイヌはティンプーでは見られなかった。2009年以前にはCTVTはよく見られた兆候だったので、これは全国イヌ人口管理プロジェクトの成果といえると分析。

第1回イヌ人口調査は2015年に実施。その際、ティンプー市の野犬の67%、パロ市街地の野犬の73.8%が不妊化措置を受けていたことがわかっている。また、ティンプー県農村部の野犬の45.5%、パロ県農村部の野犬の57.6%も不妊化。都市部では毎年1500匹程度の不妊化措置がとられ、これによりイヌ人口がほぼ変わらない水準で数年経過しているとのこと。

一方、2018年の第2回調査の結果、パロ、ティンプーともにイヌ人口密度が上昇していることがわかった。これは、不妊化を免れているイヌの間で新たな子どもが生まれていることを意味し、2009年からのプロジェクトがうまく行っていないことになる。ティンプーやパロはこの間、人口も増え、ホテルも増えた。これに伴い精肉店も増え、生ごみも増えた。これらの人間生活の変化が、イヌの人口増加にもつながっているとHSIでは分析。

野犬実態調査は、ティンプー、パロ、サムチ、チュカ、ブムタン、タシガン、サルパン、サムドゥップジョンカルの8県で実施。また、飼い犬実態調査はティンプーとパロで行われた。

農業省の全国イヌ人口管理・狂犬病抑制プロジェクト担当官によると、こうした実態調査は、プロジェクトのインパクトを確認し、今後どのような措置を取っていくべきか、目的達成に向けた長期戦略の策定にも役立つとのこと。

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