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2018年のGOOD-BAD-UGLY [ご挨拶]

今年の大みそかはティンプーで過ごしています。日本は既に年末年始の長いお休みモードに入っておられることと思いますが、ブータンの1月1日は新年ではないらしく、祝祭日のムードはほとんどありません。大みそかは普通に仕事。元日も普通に仕事。正月2日には10月の国政選挙で選ばれた国会議員と新政権による初めての国会の会期が始まります。当然平日です。

ブータンなんて特別な国に来ている日本人はそれほど多くないから、2018年の回顧録を書けば身元がばれてしまいそうです(苦笑)。正体はご想像にお任せしますが、一応匿名は貫いて書きたいと思います。


1.(GOOD)ブータン人剣士の育成
2月、それまで使っていたカンフースタジオが利用できなくなり、代わりの稽古場所を探して回った結果、ブータンバドミントン連盟のご厚意により、毎週日曜午前、YDFのバドミントンホールを使わせていただけることになりました。6月から稽古再開し、すぐに高校生、大学生の4人が剣道習いたいと言って来てくれました。(ブータンの若者にメリットがあるからというので、ホール使用料はタダにしていただいています。)取りあえずは木刀による剣道基本技を半年間教え込み、12月2日の日本大使館主催のJapan Weekの開会式@時計塔広場で、見事な演武を披露できる機会を与えていただきました。日本にいらっしゃる僕の剣友の皆さまのお陰で、道着・袴、竹刀、防具等が揃い始め、あと1つ防具を確保して、年明け後なるべく早い時期から防具着用での稽古に入りたいと思っています。ご支援下さった皆さま、この場を借りて改めてお礼申し上げます。

個人的には、2年後の六段審査受験に向けて、最低限の稽古は欠かさずできたとホッとしていますが、年の瀬も迫ったある日、ちょっと気付いたことがあり、その閃きを大事にして来年は稽古を続けていきたいと思っています。

2.(UGLY)ブータン国際マラソン、故障によりまたも玉砕
3月に再挑戦したブータン国際マラソン。1年前に宣言した通り、今年はハーフの部で出ました。練習もそこそこ積めたのでハーフなら順調に行けると思っていたら、14km地点で左臀部の肉離れを発症し、マジで「リタイア」が脳裏を横切りました。足を引きずりながらもなんとか歩き通し、自己ワーストの2時間30分オーバーでゴール。今まで故障したことなどなかった箇所なので、その後もトラウマになって走る気持ちになかなかなれず、その後9カ月をいたずらに過ごしてしまいました。来年3月に再度リベンジ―――といきたいところですが、次回は思い出作りのためにゆっくり走ろうと思っています。

3.(BAD)「インドの父」逝く
古い読者の方であれば、僕がインドに駐在していたのはご存知かと思います。昨年4月、インド駐在時代に僕にとって父のような存在だったJさんとの涙の再会を果たしたことは、1年前のご挨拶の中でも触れましたが、今度は今年8月、出張でインドを訪問した際に別の形で再会することになりました。デリーに着いたその日の夜、Jさんはお亡くなりになったのです。まるで僕がデリーに到着するのを待っていて下さったかのようなタイミング…。翌日は予定をキャンセルして、僕はJさんの葬儀に参列し、見送ることになりました。今年最大のロスでした。

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今後見られる教育セクターの変革 [ブータン]

ブータンでは、2年に1回、「全国教育会議(National Education Conference)」というのが開催される。2017年1月第2週にプンツォリンで第18回全国会議が開かれた後、第19回は2019年1月だろうと勝手に予想していたら、2018年12月24日から28日まで、同じくプンツォリンで開催された。暖かい南部のプンツォリンは、冬場のカンファレンスで大繁盛だ。プンツォリンまでの移動時間は3.5時間にまで短縮されたとはいえ、やれ大会が終了したからレセプションに来いと招待を受ける外交団とか開発協力機関とかも大変だろう(苦笑)。なんで12月下旬だったか、そのタイミングを考えると、新政権発足後の最初の国会の会期が1月2日から24日までと決まったことが多分影響しているのだろう。

確か前回の決定事項もこのブログではご紹介していたと思うので、今回もそれを踏襲して、メディアで報じられた主な決定事項をここでまとめてご紹介しておく。


◇◇◇◇

ゾンカ語教員、571人不足
Education ministry short of 571 Dzongkha teachers
Kuensel、2018年12月25日、Rajesh Rai記者(プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/education-ministry-short-of-571-dzongkha-teachers/
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【ポイント】
12月24日に始まった第19回全国教育会議のオープニングセッションで教育省関係者が述べたところでは、ゾンカ語(国語)教員が現在571人不足しており、第12次五カ年計画期間中に、このギャップを50人にまで縮小するのが目標だという。これは、第18回大会で決議された、ゾンカ語は専任の教員によって指導が行われなければならないとする方針の影響。クラスPP(日本の幼稚園年長組に相当)からクラス3(同小学校3年生相当)まではこれまでゾンカ語が教科としてはなかったが、前回大会ではこれをカバーし、ゾンカ語はクラスPPからクラス12(同高校3年生相当)まで必須となった。取りあえず小学校低学年のクラス担任の一般教員(General Teacher)がゾンカ語も教えることでしのいできた由。

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『世界はシステムで動く』 [持続可能な開発]

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方

世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方

  • 作者: ドネラ・H・メドウズ
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
『世界がもし100人の村だったら』を生んだドネラ・メドウズに学ぶ「氷山の全体」を見る技術。株価の暴落、資源枯渇、エスカレートする価格競争…さまざまな出来事の裏側では何が起きているのか?

ブータンに来る直前、枝廣淳子・内藤耕『入門!システム思考』を読んだ。その時は「入門」―――のつもりだったので新書版のこの本から入ったわけだけど、その時に、機会があれば本家システム思考のドネラ・メドウズの著書もそのうち読もうと考え、赴任前に購入して、ジリアン・テット『サイロ・エフェクト』なんかと一緒に、ブータンに持って来ていた。タコツボで部分最適な方策ばかりを実行していて、全体を見ていないと、期待されたほどの成果が出せない。このことはブータンでも結構感じることが多く、その気になって「システム思考」を勉強でもしておれば、赴任からの2年8カ月の働き方も変わっていたのではないかと思われる。

また、ドネラ・メドウズといったら1970年代初頭に有名な『成長の限界』の著者でもあり、「持続可能な開発」や「SDGs」が喧伝される昨今、その著書が再び注目されている学者兼ジャーナリストの1人である。だから、SDGsを考えるならメドウズの著書は読んでおこうとも考えたのだが、この国でSDGs、SDGsとやいのやいのと言いつつ、でもその主流化の取組みを国連が独り占めしている状況だから、元来あまのじゃくな僕は、「じゃあもうええわ」と思ってブータンではSDGsについて口を開く回数を減らしていった(勿論、やることはやっている)。なので、SDGsを考えるならメドウズ、という意識も徐々に薄れてきていて、結局今日まで読む気が起きなかった。

それでも今手に取ったのは、自分の任期も残り僅かになってきており、積読状態の本をできるだけ圧縮しておきたいという気持ちからに過ぎない。

で、読んでみてどうだったかというと、正直言うとものすごく読みづらかった。

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ゲオッグ開発グラント廃止へ [ブータン]

ゲオッグ開発グラント、廃止へ
Government to scrap Gewog Development Grant
BBS、2018年12月28日、Sherub Dorji記者(ティンプー)
http://www.bbs.bt/news/?p=108864

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【抄訳】
政府は、第12次五カ年計画に向けて、ゲオッグ開発グラント(GDG)を廃止する方針を表明。GDGに代わり、四半期ごとに追加の開発予算を地方自治体に交付する。

この方針は、本日(28日)に開かれた閣僚メディア懇談会の席上明らかにされた。インド外遊中の首相に代わり、イシ・ペンジョル農相が政府を代表し、この開発予算が地方自治体からの申請に基づいて交付されると述べた。第6回閣議において決定したものだという。

「こうした支出予算を用意することで、地方自治体の首長が、年間予算を議論するために中央政府に出向いてくるようなことは必要なくなるでしょう」と農相。

内閣はまた、財務省に対し、地方自治体が年次交付金を活用する能力について調査するよう指示したという。「財務省はまた、2019/20年と2020/21年の2つの会計年度に、第12次五カ年計画予算の大部分を地方自治体に交付するよう指示を受けています。これにより、この間の開発作業の優先順位付けとスピードアップを図ります。」

これまでは、通常の予算とは別に、各ゲオッグ(郡)に年間200万ニュルタムのゲオッグ開発グラント(GDG)が交付されてきた。この交付金は、地方分権化プロセスを強化し、草の根レベルでの優れたガバナンスを促進することを目的としていた。

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タグ:地方分権化
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お祭り終わるとゴミの山 [ブータン]

建国記念日式典後、回収ゴミは433キロに
Volunteers collect 433 kgs of waste from national day celebrations
Kuensel、2018年12月19日、Rajesh Rai記者(プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/volunteers-collect-433-kgs-of-waste-from-national-day-celebrations/

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【ポイント】
12月17日にサムチ教育大学を会場に開催された第111回建国記念日式典。3万人以上が詰めかけ盛大に開催されたが、式典終了後、CSOクリーン・ブータンが動員したボランティア30人が会場周辺で回収したゴミの量は、433キロにも及んだ。

ゴミの内訳は、ペットボトルが414キロ、空き缶が18.5キロ。クリーン・ブータンとそのボランティアチームは、これをインド側に売却して7,000ニュルタムに換金した。

参加したボランティアの声―――。

「多くのボランティアは12月17日当日に参加しましたが、友人と私は2週間以上これを続けています。私達が掃除を続ける横で、人々はゴミを捨て続けました。建国記念日にボランティアとして式典に貢献することには大変満足しています。」(サムチ教育大学の学生ソナム・ワンモさん)

市民として、そこをきれいに片付けるのは自分の責任だと思っています。でも、式典の後に会場グランドを見て、私たちはショックに打ちひしがれてしまいました。なんとかしてやり遂げましたけど。こうした大規模な全国イベントを行う際には、主催者は観客にゴミ袋を提供すべきだと思います。」(サムチ教育大学の学生ウゲン・ドルジ君)

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アモチュ橋、観光名所に [ブータン]

アモチュ橋、観光名所に
Amochhu Bridge becomes a tourist attraction
Kuensel、2018年12月20日、Rajesh Rai記者(プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/amochhu-bridge-becomes-a-tourist-attraction/

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【抄訳】
全長175メートルのアモチュ橋は、地元の人だけではなく、国境を越えてやって来る人々にとっても、新たなお気に入りの観光スポットとなっている。国内で最も長い三次元放物線の鋼鉄製アーチ橋の特長と景観美が観光客を惹きつける。

19日に橋を訪れたディパヤン・マンダル(30歳)も初めての訪問だった。彼はプンツォリンと国境を接するインド側のジャイガオンからさらに100キロ以上離れたクーチ・ビハールからやってきた。「また戻ってきます。次は家族も連れて来たいです。」橋のロケーションだけでなく、古い吊り橋がその魅力をさらに高めていると彼は言う。ここはすべてが美しいと彼は称賛した。

ディパヤンをこの橋に連れて来たのは、彼の友人であるソウミク・ロイ(40歳)だった。「僕は二度目の訪問です。」ソウミク・ロイは、クーチ・ビハールに住む全ての知人にアモチュ橋の美しさについて伝えた。建設中の橋を訪ねた頃に較べると、アクセス道路も随分改修されたと彼は言う。「この橋の美しさは比類がありません。クーチ・ビハールでこんな風景を見ることはありません。」

ジャイガオンから来たというもう1人の訪問者ロニ・ビスワスは、今回が三度目の訪問。彼は既に家族や友人を連れてきている。「ここは気分がいい」と彼は言った。こうして国境を越えて来る人が多いのだから、入国管理局のチェックポストは自由に通過させて欲しいと彼は言う。橋はインド人にとっても良い観光地になっていくだろうと述べる。

アモチュ橋は2009年4月の着工から完成までに9年以上かかった。週末になると、プンツォリンに住む地元の人々も橋へとドライブに繰り出す。

午後遅くに、サムチからティンプーに向かうというソナム・ゲルツェンもこの橋に辿り着いた。彼もまた、写真撮影に余念がなかった。「橋の夜景も見てみたいです」と彼は言った。 「僕は日が沈むのを待っています。」エンジニアであるソナム・ゲルツェンは、7年間サムチで働いていて、橋が出来上がっていく過程を見てきた。 「月明かりの下で夜に橋が美しく見えるのだと聞きました。」

アモチュ橋チェックポストの警官と入国管理官によると、週末にはより多くの訪問者が訪れるという。橋はプンツォリンとサムチを国内でつないでいる。プンツォリン・サムチ間の移動距離は、インド側舗装道路を経由すると81.2キロあったが、今は57キロにまで短縮された。

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都市と農村の若者の交流機会を増やす取組み [ブータン]

キャンプRUF、予想外の反響
Camp Rural Urban Friendship (RUF) receives overwhelming response
The Bhutanese、2018年12月8日、Sonam Yangdon記者
https://thebhutanese.bt/camp-rural-urban-friendship-ruf-receives-overwhelming-response/

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【抄訳】
ルーラルアーバンフレンドシップキャンプ(Camp RUF)は、第5回となる今年、12月21日にチュカ県ダルラで農村部と都市部から学生を受け入れる。

昨年からキャンプを率いているナムゲル・ワンチュク君によると、この週単位のプログラムが学生を包摂的で刺激に満ちた学習活動に参加させることを目的としているという。読書、キャンプファイヤーとサバイバルクッキング、キャンプラジオ放送、地域のお宝探し、ホームステイ、様々なスポーツ活動、ライフスキル、ゾンカズンバ舞踊、エチケット学習、映画「ペマ・ツェワン・タシ」上映、フィールドトリップ等、そのプログラムはよく計画され周到に準備されているという。

キャンプRUFは、異なる学校から約96人のキャンプ参加者と8人の世話人の若者から成る。参加学生は、交通費、食料費、宿泊費、飲み物代をカバーするために、2,500ニュルタムの登録料を支払う。「しかし、恵まれない学生たちにも平等なプラットフォームを提供するために、キャンプでは財政的に恵まれない学生たちにキャンプRUF助成金も提供しています。今年は、成績優秀で将来のリーダーになる可能性があるさまざまな学校の18人の学生の参加を助成し、機会を提供しました」とナムゲル・ワンチュク君。

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タグ:地域おこし
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『ブータン:国民の幸せをめざす王国』 [ブータン]

ブータン: 国民の幸せをめざす王国

ブータン: 国民の幸せをめざす王国

  • 作者: 熊谷 誠慈
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2017/07/13
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
ブータンの国民は実際に幸福?ブータンの仏教と王制はどうなっている?ブータンは戦争をしたことがない?ブータンのめざす近代化とは?ブータンと日本の関係は?知れば知るほど魅せられる国ブータンの真実の姿。

今、このブログは日本に戻ってきて書いている。最近の読書日記で、「他の積読図書は読む時期を決めているので」というような趣旨のことを書いたが、今回1年ぶりに日本に戻るにあたって、積読にしてあった本を3冊ほど携行しており、折を見てどんどん読んでしまうつもりでいる。今回はその第1弾。

ブータンに来てから2年8カ月にもなるが、意外なことにあまりブータンについて書かれた本を読んでいない。そもそもあまり冊数が多くないこともあるけれど、ある程度駐在生活が長くなってから読んだ方が「ふむふむ」と腑に落ちるところもあるのではないかと考えたからだ。

この2年8カ月の間に新たに出版された本もある。この本、去年の秋篠宮眞子様のブータンご訪問と時期が近いので、出版社の営業サイドからすると相当いいタイミングでの刊行だったに違いない。部数どれくらい出てるのかわかないが、きっと結構売れただろう。僕もミーハーで、去年日本に帰った時に1冊購入してこちらに持ってきてはいた。でも、編著者の熊谷先生には申し訳ないのだが、第1章で挫けてしまい、1年以上積読にしてしまった。

購入から1年経過して、半ば必要にもかられて今回は読んでみたけど、意に反して(失礼)、スラスラ読めた。理由の1つは、この1年の間に、この本の執筆者(というか、一般市民向け連続講座の講師の方々)の1人と新たに面識ができたことや、本書の中で講師の方々が頻繁に言及されている、東部の地理に多少詳しくなったこと、僕は僕なりにブータン人の若手起業家との交流機会が増えて、そこから学んできたこともあったからである。

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LDC卒業に向けて [ブータン]

ブータン、最貧国からの卒業準備期間入り
Bhutan enters preparatory period to shed LDC status
Kuensel、2018年12月15日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-enters-preparatory-period-to-shed-lcd-status/

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【抄訳】
2023年12月にブータンは最貧国(LDC)から卒業し、下位中所得国入りする。2023年12月13日のLDC卒業に向け、正式な5年間の準備期間に入る。昨日、タンディ・ドルジ外務大臣が明らかにした。12月13日にニューヨーク国連本部で開催された第73回国連総会(UNGA)会合で、ブータンLDC卒業に関する経済社会理事会の報告書が検討され、卒業準備期間入りが承認された。

国連開発政策委員会は、ブータンの実質卒業日を2023年の第12次五ヵ年計画の終了とタイミングを合わせたいとするブータン側の要請を妥当なものと結論付けた。この卒業準備期間中、ブータンは国連の制度的支援を受け、二国間協力機関、域内協力機関、多国間協力機関と協力して円滑な移行戦略を準備する必要がある。

タンディ・ドルジ外相は、政府はLDC卒業に向けた事態の進展を歓迎すると述べた。「これは、ブータンの社会経済開発における成果と、開発パートナーとの実りある協力の証といえる。」外相は、第12次五カ年計画はLDCとしての最後の計画であり、すべての分野における最後の1マイルという課題に取り組み、ブータンが頑強な経済基盤を確実に築くことを保証するものだと語った。

ブータンは、3年ごとに実施されるレビュープロセスで、2015年に初めてLDC卒業の3条件の1つをクリアした。2018年のレビューでも、再びクリアしたことで、国連開発政策委員会がUNGAに推薦できる前提資格を得た。卒業資格条件は、①1人当たり国民所得(GNI)、②人間同意指数(HAI)、③経済脆弱指数(EVI)の3つの基準に基づく。卒業の前提条件は、3年間の平均で、①1人当たりGNIが1,242米ドル以上、②HAIスコアが 66以上、③EVIスコア32以下となることである。

3つの基準のうち少なくとも2つで卒業の閾値を満たしている場合、卒業資格が得られる。また、HAIとEVIのスコアにかかわらず、1人当たりGNIが既定の閾値の少なくとも2倍を超える場合、所得のみのルールに基づいて卒業資格を得ることもできる。卒業に向けた推薦を得るためには、3年ごとのレビュー審査で2回続けて基準をクリアすることが求められる。

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農村からの人口流出の経済損失 [ブータン]

健康と農村開発に関するセミナー開催される
Seminar held on health and rural development
Kuensel、2018年12月13日、スタッフ通信員
http://www.kuenselonline.com/seminar-held-on-health-and-rural-development/
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人口流出がどのように農業に脅威となるか
How migration threatens agriculture
Kuensel、2018年12月10日、Phurpa Lhamo記者
http://www.kuenselonline.com/how-migration-threatens-agriculture/

12月7日(金)、京都大学東南アジア研究センターCSEASは、王立ブータン大学(RUB)と共催で、第42回東南アジアセミナーというのを開催した。7日はRUB本部で開催されたセミナーで、8日以降はフィールドワークが行われている。セミナーにはCSEASと関係が深い東南アジア各国の若手研究者も参加し、フィールドワークにも同行して、初めてのブータン農村調査を行っている。

12月13日のクエンセルの記事は、全行程を終えた後のプレスリリースだと思うが、10日の記事は7日のセミナーでの発表の中からピックアップされたものだと思う。シェラブツェ大学のタシ・ドルジ講師がタシガン県バルシャム・ゲオッグ(郡)で行った調査で、同ゲオッグの農民の半数以上が人口流出に伴う労働力不足が農業にとっての大きな課題だと回答したと報告している。

バルシャムは、タシガン県内でもとりわけ「グントン(gungtong)」と呼ばれる空き家が多い地域である。ゲオッグ内の集落の中には、残留する世帯数の方が少なくて、多くの家が損壊し農地が荒れ放題となっているところもあるという。ゲオッグ内の所有地の7.45%が耕作放棄地だという。2015年から17年にかけて、トウモロコシとコメという主要穀物の生産高は同ゲオッグ内では増えた。しかし、タシ・ドルジ講師の推計では、同ゲオッグの生産可能規模からすると、トウモロコシで104.9トン、コメで32.3トン分の耕作が放棄されており、合計460万ニュルタム分の損失を生じているという。

人口流出は、現金の送金や現物移転の形で地域に還元され、1年間で140万ニュルタム相当が戻ってくるとの試算がある。これにより借入金返済や新規事業立ち上げ、農業、家屋新築、子女教育等に充てられているが、それでも460万ニュルタムの損失分を補うことはできず、逆に320万ニュルタムの損失を生んでいる。「この傾向が続けば、地域社会にとっては大きな脅威となっていく」とタシ・ドルジ講師は警鐘を鳴らしている。

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