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ゲオッグ開発グラント廃止へ [ブータン]

ゲオッグ開発グラント、廃止へ
Government to scrap Gewog Development Grant
BBS、2018年12月28日、Sherub Dorji記者(ティンプー)
http://www.bbs.bt/news/?p=108864

2018-12-28 BBS.jpg
【抄訳】
政府は、第12次五カ年計画に向けて、ゲオッグ開発グラント(GDG)を廃止する方針を表明。GDGに代わり、四半期ごとに追加の開発予算を地方自治体に交付する。

この方針は、本日(28日)に開かれた閣僚メディア懇談会の席上明らかにされた。インド外遊中の首相に代わり、イシ・ペンジョル農相が政府を代表し、この開発予算が地方自治体からの申請に基づいて交付されると述べた。第6回閣議において決定したものだという。

「こうした支出予算を用意することで、地方自治体の首長が、年間予算を議論するために中央政府に出向いてくるようなことは必要なくなるでしょう」と農相。

内閣はまた、財務省に対し、地方自治体が年次交付金を活用する能力について調査するよう指示したという。「財務省はまた、2019/20年と2020/21年の2つの会計年度に、第12次五カ年計画予算の大部分を地方自治体に交付するよう指示を受けています。これにより、この間の開発作業の優先順位付けとスピードアップを図ります。」

これまでは、通常の予算とは別に、各ゲオッグ(郡)に年間200万ニュルタムのゲオッグ開発グラント(GDG)が交付されてきた。この交付金は、地方分権化プロセスを強化し、草の根レベルでの優れたガバナンスを促進することを目的としていた。

◇◇◇◇

日本に帰っていたこともあって、その間のブータン国内の報道についてはあまりフォローできていないんだけれど、パッと見で大きな政策変更だなと思ったのはゲオッグ開発グラント(GDG)の廃止である。この政策は、前政権発足後の2013年11月に制度化され、上限200万ニュルタムの範囲で、全国205あるゲオッグの収入創出や雇用促進に向けた活動に役立てられるというのが売りだった。

ところが、蓋を開けてみたらGDGはあまりゲオッグの経済活動促進には活用されていないことが明らかになった。2016年11月に議会上院が発表した調査レポートによると、幾つかの問題点が指摘されている。

①一般住民がGDGとそれがカバーできる活動について理解していない。

②政府が各ゲオッグに一律200万ニュルタムを交付することが論理的に説明困難。貧困度合いや人口、面積等が考慮されていない。

③ゲオッグレベルで適切な計画立案、事前評価、状況分析等が行われていない。

④GDGが支援する活動のほとんどが、財務省の定めたGDGガイドラインに沿っていない。

⑤地元経済の成長と雇用の促進、コミュニティの所得機会の創出等を目的としていたのに、地方政府職員に新たなアイデアやイノベーティブなマインドが欠如しているために、GDGを活用する活動が分散傾向にあり、長期的なインパクトが期待しづらい。

⑥ゲオッグ及び県(ゾンカック)の両レベルに技術支援やモニタリング支援の能力が欠如しており、GDGを活用する活動に遅れが生じたり、質が劣悪だったりする。特にGDG活用の大半を占める農道整備でそれが顕著。

⑦確かにGDGは地域の直近の課題により柔軟に対応できる選択肢を増やしたが、それによって形成された地域の資産は適切に維持管理がなされておらず、汚職腐敗を招いたり、受益者が適切な主体者意識を持たなかったりする。

また、メディア懇談会の席上で農相が発言している中にある「首長の中央詣で」も顕著である。僕は、某県の県庁にほど近い場所に建設されている二階建て駐車場の建設の資金確保のために、県知事がわざわざティンプーの財務省やGNH委員会に陳情に出向いて予算をゲットしたと自慢げに仰っているのを聞いて、県知事ってそんなことまでしなければいけないのかと驚いた記憶がある。逆に、中央の政府職員も、そういう陳情を次から次へと捌かなければならない。だから「忙しい、忙しい」と仰る政府高官の口癖も耳にしたことがある。

勿論、規模の大小は違っても、同じようなことは日本でも行われていることは理解している。でも、日帰り出張で陳情を終えられる日本の場合と違い、東部からの中央詣では1週間がかりの出張になることが多い筈で、それによって生じる機会費用も大きいのではないかと思う。

農相の発言だけから想像するに、中央から直接ゲオッグに落とすGDGは廃止して、県経由で交付する方向に持って行こうとしているのかなと想像はする。ドラスティックにやるよりも、県レベルでの統制である程度の技術能力の蓄積を図ろうということなのだろう。また、地域の経済活動促進ということなら、既に優先セクター貸付(PSL)が今年年初よりスタートしており、こうして民間に資金を融通する方が、郡庁経由で公共事業を行うよりも直接的で効果も期待できるという判断もあるのだろう。PSLの融資決定も県レベルで検討委員会のような枠組みがあるし。

こうして考えていくと、新政権になって前政権時代のレガシーの否定にかかっているというよりは、GDG廃止は前政権時代に既に軌道修正への布石が打たれてきていたのかなという気もする。

タグ:地方分権化
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