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現代インドの「美しく呪われし人たち」 [インド]

The Beautiful and the Damned: A Portrait of the New India

The Beautiful and the Damned: A Portrait of the New India

  • 作者: Deb, Siddhartha
  • 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux
  • 発売日: 2012/09/18
  • メディア: ペーパーバック
内容紹介
21世紀にふさわしい作物の栽培に腐心する農家から、広大なカーペットが敷かれた会議室でのビジネスリーダーシップセミナー、小さな工場で仕事を探して町から町へ歩き続ける幽霊のような人物まで、The Beautiful and the Damnedは 、現代インドの、魅惑的だが矛盾した、暗い漫画のような物語である。著者であるシッダールタ・デブは、デリーでギャツビーのように振舞う有名人を含む5人のインド人を取り上げ、その魅惑的な生活の奥深くに読者を案内する。ギャツビーの趣味は、大きな予算のギャング映画の制作だが、それを誰も見ない。農民の自殺に苦しみ、埃にまみれた土地で農業を営むゴペティは、その町が暴動の震源地にもなっている。 また、北東部マニプール州出身のエステルは、生化学と植物学の2つの学位を取りながら、「シャングリラ」と呼ばれる高級ホテルで武器商人にスコッチを振舞うウェイトレスとして働いている。シッダールタ・デブは、小説家的アプローチから、その人々の混乱のなか、現代のインドの肖像を描く。その手法は野心的で魅力に溢れるが、絶望的でもあり、希望に満ちた作品に仕上がっている。まさに、「美しく呪われし人たち」である。。

F・スコット・フィッツジェラルドの1922年の作品に、『The Beautiful and Damned(美しく呪われし人たち)』というのがある。著者はインド北東部メガラヤ州シーロン出身のインド人だが、2012年に本作品を発表した当時は米国ニュースクール大学で創作文学を教えていた。本人にも発表された小説作品があるので、小説家ということができるが、本書については実際の取材に基づき、仮に登場人物が匿名だったとしても、それを除けばほとんどノンフィクションなので、ノンフィクション作家というのが適切なのだろう。

だんだん記憶が定かでなくなってきているが、発刊年月からみて、これも、2012年8月にインド出張に行った時に購入していた1冊だと思う。こうしてみると、この時の出張では4冊ものハードカバーをまとめ買いしていたことになる(『Jugaad Innovation』(邦題『イノベーションは新興国に学べ!』)『Churning the Earth(大地をかき回す)』『Behind the Beautiful Forevers』(邦題『いつまでも美しく』))。8年近くが経過して、ようやく4冊とも読み入ったことになる。長い道のりでした。

さて、本作品だが、ノンフィクション小説ということでは対比できるのは『Behind the Beautiful Forevers』だろう。実際、発刊年月が近いこの2つの作品は、並べて書評で紹介されることが多かった。かたやムンバイのスラムに焦点を絞った話だったが、『The Beautiful and the Damned』は、デリー、バンガロール、テランガナ州(当時はアンドラ・プラデシュ州)、そして著者自身も出身である北東州を舞台にした作品である。作品紹介には、5人の人物にフォーカスしたとあるが、ずっとこの5人に密着していたわけではなく、その周辺の人々にも取材して、各々のライフヒストリーを聴き出している。

5人だけのことだから、それぞれの章の概要を軽く述べておく―――。

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