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『教養としての上級語彙』 [読書日記]

教養としての上級語彙―知的人生のための500語―(新潮選書)

教養としての上級語彙―知的人生のための500語―(新潮選書)

  • 作者: 宮崎哲弥
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/11/24
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「さらば、ボキャ貧!」――文章の即戦力となる言葉の数々。
「矜恃」「席巻」「白眉」……ワンランク上の語彙を使いこなして表現をもっと豊かにしたい。そんな要望に応えるべく、博覧強記の評論家が中学生の頃より本や雑誌、新聞からメモしてきた「語彙ノート」の1万語から500余語を厳選。読むだけで言葉のレパートリーが拡がり、それらを駆使できるようになる異色の「文章読本」。索引は新潮社の本書ページでダウンロード可能。
【MT市立図書館】
僕が昨年末まで海外駐在生活を送っていた際、日本での毎日の報道の情報源はニッポン放送ポッドキャストにあった「飯田浩司のOK COZY UP」である。毎日異なるコメンテーターが登場して、その日の新聞朝刊の記事を中心にニュースに有識者としてコメントをされる。コメンテーターによって程度にばらつきはあるけれど、上から目線でコメントする嫌~なコメンテーターもいる。

実は本書の筆者もこのラジオ番組のレギュラーコメンテーターの1人で、2週間に1回程度の頻度で出演されている。他にもっと上から目線での物言いをするコメンテーターもいるので、宮崎氏のコメントが鼻につくという印象は、この番組を聴き続けるうちに徐々に薄れていった気がする。それでも、どちらかというとあまり印象の良くない方のコメンテーターの1人である。(あくまで主観ですので…。)

その宮崎氏が、2022年秋頃にこの本のことを盛んに番組出演の時に語っておられた。いつもシニカルなコメントをされる著者のこと、「上級語彙」というタイトルも刺激的で、「おまえらどうせ知らないだろうけど、上級国民はこういう語彙を使いこなせるんだよ」と訴えかけてきているように感じていた。

そのうち読もうと思っていたけれど、遅くなったのは著者に対する僕の印象論が素直に食指を伸ばすのを邪魔したからである。あと1週間で僕も国内で引越しして、しばらくは近所の市立図書館を利用することができなくなる。長らく「読みたい本」リストに挙げてあった本は少しぐらい読んでおこうと思い、何冊かをリストアップして図書館の貸出予約に登録した。その中で比較的早く順番が回って来たのが本書で、他の本はひどいもので27人待ちというのもあったりして、予約を断念したものが多い。

まず述べておきたいのは、著者宮崎氏に対するお詫びである。本書は、「上級国民ならこの手の語彙は使いこなせ」という上から目線で書かれたものでは決してなく、日本語が長らく維持してきた奥が深くて趣きがある豊かな語彙の使用を、虚心坦懐に復興させようという意図でかかれている。政治家や高級官僚、会社経営者や重役、大学教員等なら使われているという語彙に限定してリストアップされた語彙集ではない。もっと汎用性が高い。

こういう語彙の収集を著者はかなり若い頃から励行されていて、それが今回の書籍刊行につながっているらしい。語彙収集にかけた時間と情熱を考えたら、僕が簡単に批判していいものでもないような気がする。続編が待ち望まれているのもわかる。

アマゾンのブックレビューには「索引」がないことを理由に星1つという酷評をされている方も多々あるが、著者はその点についても番組出演の時に語っていて、紙面の都合という、出版社サイドの意向に押し切られたのが理由らしい。これを著者に文句言ってもしょうがないのだが、索引があった方が辞書的な使い方ができた気がする。

ただ、そうした索引もさることながら、自分が自身の意見や意思、感情、行動等を表現したいとき、どこをどう引いたらいいのかがわかりにくいのは気になった。各章の見出しはそういうのを意識して付けられていて、各節の書き出しは確かにそのような語彙の意味と用法、例文等で始まるのだが、それらの用法、例文の中で別の注目語彙が出てきた場合、そちらの意味と用法、例文に飛んでいくような描きぶりになっている。しかも、それら派生的に紹介された語彙は、その章や節の見出しとはまったく関係がないことが多い。

こうなると、本書の目次を頼りにして使える語彙を検索するという手法は取りづらい。索引はあくまで当該語彙が出てきたときの読み方や意味の確認のためにあるもので、今の自分の思いや情景などを表現したい時にどんな語彙が使い得るのかをパッと引いてくることができない。

従って、現時点ではあくまでも読み物の域にとどまっているように思える。それでも、僕自身の「ボキャ貧」を痛感させるには十分だった。本書を読んでこれを今後にどう生かすかを考えると、本書を辞書代わりにするというよりも、今後僕が進める読書の中で、お目にかかる見慣れない語彙を、ちゃんとテイクノートしておいて、どこかで使ってみるという実践を繰り返すことの方が重要だという気がした。



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