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ムンバイ・スラムの息吹 [インド]

Poor Little Rich Slum

Poor Little Rich Slum

  • 出版社/メーカー: Westland Limited
  • 発売日: 2012/01/01
  • メディア: ペーパーバック
内容紹介
小さなインディアンが1人、2人、3人、小さなインディアンが4人、5人、6人、小さなインディアンが7人、8人、9人…そして小さなインディアンの起業家が100万人―――。ここに収められているお話は、ダラヴィに暮らしながら大きな夢を抱く人々の物語である。ダラヴィは活力に溢れ、事業を起こそうとの試みも多く、希望にも満ちたスラムだ。そこでは、すべての人々が手を常に動かし、顔を常に上げて将来を見据える。そこでは、人々は悲惨であるかもしれないが、幸せになることを選択できる。 我々一人一人ができる選択。

振り返ってみれば、巣ごもりは積読状態にあった洋書を取り崩すよい機会となってきた。今月3冊目の洋書読了である。しかも、今回は実質的に読むのに充てたのはわずか2日である。カラー口絵が多かったことも幸いして、1日100頁をクリアできた。

本書も発刊年は2012年。その年にインドに行ったのは8月の出張の1回しかないので、既に紹介済みの4冊だけでなく、本書もその時に購入した可能性がかなり高い。8年近くが経つとその辺の記憶が非常に曖昧である。

映画『スラムドッグ$ミリオネア』をご覧になったことがある方なら、ムンバイにあるアジア最大の巨大スラム「ダラヴィ」の様子はご存じであろう。また、ダラヴィとは場所が異なるが、ムンバイ空港の近くのアンナワディ・スラムの人間模様を描いた『いつまでも美しく(Behind the Beautiful Forevers)』も以前ご紹介している。いずれもムンバイの生活実態がわかるが、どちらかといえば「貧困」や「停滞」、そしてそれらがゆえの「犯罪」といったものにフォーカスされていた。SDGs的に言えば「取り残された」人々が暮らす居住区である。

そういう先入観で本書を読み始めると、ダラヴィがまったく違った印象を与え始める。確かに貧しいし、生活基盤は脆弱で、ここで書かれたような暮らしがいつなんどきちょっとしたきっかけで崩壊するかはわからない。でも、決して停滞しているわけではなく、若者は成功を夢見るし、大人の中には、事業で成功した人もいっぱいいる。そして、成功したらダラヴィを抜け出して中間層として暮らす途を選ぶのかと思いきや、今も自宅はダラヴィの中にあり、スラムから通勤している人もいる。外に出て成功したら、またダラヴィに戻ってきたいという若者もいる。

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『お蚕さんから糸と綿と』 [シルク・コットン]

お蚕さんから糸と綿と

お蚕さんから糸と綿と

  • 作者: 大西 暢夫
  • 出版社/メーカー: アリス館
  • 発売日: 2020/01/20
  • メディア: 単行本
内容紹介
滋賀県と岐阜県の境にある山の麓の集落に、一軒だけ残っている養蚕農家。お蚕さんを育て、その繭から糸を取る。それが生糸になり、真綿にもなります。人間本来の生活の営みや、生き物の命を衣食住にいただいていることを伝えます。

意外だった。本書の著者は弟の中学時代の同級生だから、最近出された別の本を買おうと思ってネット検索したら、養蚕に関しても写真集を出しておられた。同郷人だから、当然この養蚕の舞台も故郷からわりと近いところで、しかも発刊が今年1月となっている。

今どきシルクの本なんて珍しい。僕にもシルクで著書があるが、最近、版元が在庫を廃棄すると聞きつけたので、著者割引で100冊まとめ買いした。1冊ぐらい大西さんに贈っておこうか、なんてことを考えている。

しかし、発刊年を考えたら、わりと最近まで、養蚕や座繰り、真綿作りが行われていた、いや、現在も行なわれている。しかも、この伊吹山から金糞岳に至る山脈の滋賀県側でということは、山を隔てた反対側の岐阜県に僕たちの故郷があるから、けっこうなご近所である。地図で調べたら、この養蚕やってる集落から、まっすぐ東に抜けた濃尾平野側に僕の町もある。

こんなに近いのであれば、お手伝いに伺いたい。四齢期、五齢期の、給桑に大変労力がかかる時期とか、回転蔟にカイコを上蔟する作業とか、手伝わせて欲しい。僕が万が一にでも生活の拠点を岐阜に移すようなことがあれば、そこをベースにやりたいことの1つとして、頭の片隅に留めておきたい。

本書は基本的に小学校3、4年生ぐらいを想定して書かれている。そう、学校の活動でカイコの飼育を体験する学年である。そういうのを実際に今でもやっておられる方々の暮らしを垣間見れる本というのは、小学生にとっても貴重だろうし、放っておいたらいずれなくなる。記憶が失われる前に記録しておくことは必要だったと思う。ブログ読者に「買って」とお薦めできる本ではないけれど、小学校図書館には所蔵して欲しい本である。

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『本屋を守れ~読書とは国力』 [読書日記]

本屋を守れ 読書とは国力 (PHP新書)

本屋を守れ 読書とは国力 (PHP新書)

  • 作者: 藤原 正彦
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
日本人の15歳の読解力はOECD(経済協力開発機構)の学習到達度調査で急落。月に1冊も本を読まない中高生や、移動時間に新聞や文庫本を読まず、スマホしか見ない大人たち。町の本屋の数は減る一方。著者いわく、これらは国家全体に及ぶ「読書離れと教養の低下」にほかならない。めざすは「書店の復活」である。愛国の数学者が独自の直観と分析によって達した結論。

最初に謝っておかねばならないのは、僕はこの本を、著者が忌み嫌うネットで、しかも電子書籍で購入ました。巣ごもり中だからお許し下さい。これ注文した後、駅前の本屋さんに行く機会もあったのだけれど、あとの祭りだった。

この本のことを知った時、「本」カテゴリーのブロガーとしては、真っ先に読まねばならぬと思った。今の中高生や大学生が本をあまり読まないのは、我が子を見ていればよくわかる。気が付くとスマホで動画を見たり、チャットをしたりしている。成人をとっくに迎えた長男が、食卓にタブレットを持ち込んで特撮動画を再生しながらご飯を食べたりしていると、さすがに「メシの時にはOFFにしろ」と注意しなければならない。本ブロガーをやっていて、自分の子どもたちがあまりにも本を読まないのを見ていると、ものすごい敗北感に苛まれる。(読むは読むけど実用書しか読まない妻とも、その点では話が合わないから残念…)

読書するオヤジの背中を見せても、子どもたちがいっこうに読書に興味を示さないのは、1人1台スマホを与えたのがかなり大きな理由だと思っている。つくづくスマホが恨めしい。便利な道具だし、それを使いこなしている子どもたちを見ているとスゲーなと思う部分は確かにあるが、それをもほどほどにして、読書に時間を充てて欲しいと思わざるを得ない。自分なりに先読みして、「この本いいぞ」と子どもたちに薦めたことなど数知れず。でも彼らはオヤジの期待などウザいだけで、結局積読で放置する。

その辺のところを、かなり断定的な口調でぶっ叩いてくれているから、本書における藤原先生の論調は好きだ。ただね、頭が切れる人は多分にそういうところがあるのかもしれないが、他人をバカにする言い方をされる。「今の大人はバカばっかりだ」と言われているような気がして、ちょっと反論もしてみたくなる。電子書籍を貶しておきながら、本書にも電子書籍版があるのはなんでなの?というのもその1つ。

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現代インドの「美しく呪われし人たち」 [インド]

The Beautiful and the Damned: A Portrait of the New India

The Beautiful and the Damned: A Portrait of the New India

  • 作者: Deb, Siddhartha
  • 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux
  • 発売日: 2012/09/18
  • メディア: ペーパーバック
内容紹介
21世紀にふさわしい作物の栽培に腐心する農家から、広大なカーペットが敷かれた会議室でのビジネスリーダーシップセミナー、小さな工場で仕事を探して町から町へ歩き続ける幽霊のような人物まで、The Beautiful and the Damnedは 、現代インドの、魅惑的だが矛盾した、暗い漫画のような物語である。著者であるシッダールタ・デブは、デリーでギャツビーのように振舞う有名人を含む5人のインド人を取り上げ、その魅惑的な生活の奥深くに読者を案内する。ギャツビーの趣味は、大きな予算のギャング映画の制作だが、それを誰も見ない。農民の自殺に苦しみ、埃にまみれた土地で農業を営むゴペティは、その町が暴動の震源地にもなっている。 また、北東部マニプール州出身のエステルは、生化学と植物学の2つの学位を取りながら、「シャングリラ」と呼ばれる高級ホテルで武器商人にスコッチを振舞うウェイトレスとして働いている。シッダールタ・デブは、小説家的アプローチから、その人々の混乱のなか、現代のインドの肖像を描く。その手法は野心的で魅力に溢れるが、絶望的でもあり、希望に満ちた作品に仕上がっている。まさに、「美しく呪われし人たち」である。。

F・スコット・フィッツジェラルドの1922年の作品に、『The Beautiful and Damned(美しく呪われし人たち)』というのがある。著者はインド北東部メガラヤ州シーロン出身のインド人だが、2012年に本作品を発表した当時は米国ニュースクール大学で創作文学を教えていた。本人にも発表された小説作品があるので、小説家ということができるが、本書については実際の取材に基づき、仮に登場人物が匿名だったとしても、それを除けばほとんどノンフィクションなので、ノンフィクション作家というのが適切なのだろう。

だんだん記憶が定かでなくなってきているが、発刊年月からみて、これも、2012年8月にインド出張に行った時に購入していた1冊だと思う。こうしてみると、この時の出張では4冊ものハードカバーをまとめ買いしていたことになる(『Jugaad Innovation』(邦題『イノベーションは新興国に学べ!』)『Churning the Earth(大地をかき回す)』『Behind the Beautiful Forevers』(邦題『いつまでも美しく』))。8年近くが経過して、ようやく4冊とも読み入ったことになる。長い道のりでした。

さて、本作品だが、ノンフィクション小説ということでは対比できるのは『Behind the Beautiful Forevers』だろう。実際、発刊年月が近いこの2つの作品は、並べて書評で紹介されることが多かった。かたやムンバイのスラムに焦点を絞った話だったが、『The Beautiful and the Damned』は、デリー、バンガロール、テランガナ州(当時はアンドラ・プラデシュ州)、そして著者自身も出身である北東州を舞台にした作品である。作品紹介には、5人の人物にフォーカスしたとあるが、ずっとこの5人に密着していたわけではなく、その周辺の人々にも取材して、各々のライフヒストリーを聴き出している。

5人だけのことだから、それぞれの章の概要を軽く述べておく―――。

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ピロリ菌除菌開始 [健康]

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4月で前の職場もお役御免になった。さすがに胸の痛みだけは我慢ができず、3月中に心臓のCT検査を受け、医師からは精神的なものだと診断され、有酸素運動を言い渡されて今も取り組んでいるが、それに加えて、1年間先送りにしてきた体のオーバーホールを今、徹底的に行っている。

1つは左肩痛で、いわゆる五十肩というやつだ。元々右肩痛を発症したのは2年前の4月で、それから1年経過して、帰国する頃もまだ痛かった。さすがにまずいと思って昨年10月に鍼治療を受け始め、わりとすんなり良くなったが、間もなく今度は左肩が痛くなり、夜寝ていて寝がえりをうつのもつらくなり、服を着たり脱いだりするのも、バッグパックを背負う時も支障が出るようになった。年明けから再び鍼治療を始めたが、なかなか痛みが引かない。そこで、4月に入ってから整形外科での治療に切り替えた。理学療法士の施術は結構痛いが、左肩痛は少し収まってきた気がする。

もう1つはピロリ菌。これは、弟が胃の内視鏡検査を受けてどうやら棲息しているらしいということで、兄貴も受けろとずっと勧められてきた。母もそれを受けたら、初期の胃癌が見つかり、摘出手術を受けた。子どもの頃同じ地下水を飲み、同じものを食べていたわけだから、弟にいるなら僕にもいるだろう。

また、専門家によると、ブータンには相当強いピロリ菌の野生株がいるらしく、胃癌の発症確率が有意に高いと言われている。王様は親友を胃癌で亡くされたことがあり、そのために胃癌撲滅にはことのほか御熱心でおられる。内視鏡検査をもっと普及させて、早期発見を進めるべきであり、そういうブータンの人々にも自分事として捉えてもらえればと思い、僕も帰国したら胃の内視鏡検査を受けるつもりではいた。その受診までに1年もかかってしまったのは、僕がその間やっていた仕事で心のゆとりが全くなかったからだ。

案の定、ピロリ菌は見つかった。医師から抗生物質を処方され、昨日から除菌を開始した。1週間、朝と晩に、3種類の薬を服用せねばならない。そして1年後には再び内視鏡検査となる。

実は、もう1つ、3月の心臓CT検査の後、診断して下さった先生から、有酸素運動を3カ月取り入れて、体重を減らした後、もう一度受診するよう言われている。それは高血圧。結果が伴わない場合は、血圧を下げる薬を使うと言われている。もう体ボロボロだな。巣ごもり中とはいえ、有酸素運動は意識的に増やして様子を見ているところである。

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『市民自治の育て方』 [仕事の小ネタ]

市民自治の育て方 ー協働型アクションリサーチの理論と実践ー (関西大学経済・政治研究所研究双書)

市民自治の育て方 ー協働型アクションリサーチの理論と実践ー (関西大学経済・政治研究所研究双書)

  • 編著者: 草郷 孝好
  • 出版社/メーカー: 関西大学出版部
  • 発売日: 2018/03/23
  • メディア: 単行本
内容紹介
関西大学経済・政治研究所の委託(2014年度-2017年度)を受け「市民自治力の醸成と向上を目指すアクションリサーチ(実践支援型研究)手法と実践知に関する学際的研究」をテーマとする研究班(市民自治力向上とアクションリサーチ研究班)の研究活動に基づいてまとめられた実践的研究に関する論考。

1年前に編著者の草郷先生からいただいていた本。当時駐在していたブータンからの離任直前だったこともあり、取りあえず日本に持ち帰った。1年寝かせてしまったことをお詫びしつつ、自分がこれからやろうとしていることとの接点領域がないかどうかを考えてみるために、今読んでみることにした。

本書で言われている「アクションリサーチ」とは、「当事者と研究者が協働して、特定の社会問題に向き合い、その問題の解決のために、関係者が協働して行う調査から改善への一連の研究活動」(p. 3)を指し、「調査によって問題の所在を明らかにし、次に、その問題を解決するための具体策を検討する。そして、具体策を実際に適用し、その結果を関係者が協働して検証することで、対策の成果と課題を詳らかにし、更なる改善を目指していくという一連の実践的研究手法」(同上)だという。

これをまちづくりや地域振興の文脈で言い換えると、「常に変化していく地域社会の中で生じるさまざまな市民生活に関する問題に対して、個々の問題の当事者である市民・行政・地域企業・NPOなどが研究者とともに、調査によって当該問題の内容を把握し、調査結果をもとにして、当事者と研究者が協働チームとして対応策を検討し、それを実行する。そして、その対応策の有効性について、当事者と研究者チームが協働して検証し、検証結果をもとにして、対応策の修正などを行い、当該問題の解決に向けてよりよい成果を導こうとする実践的調査活動」(同上)ということができる。

本書では出てこないが、僕が編著者の草郷先生と知り合ったのは、先生がブータンで関わっておられたブータンメディア開発センター(BCMD)の「コミュニティ・マッピング」との関連だった(関連記事はこちら)。2017年9月にBCMDがパロで行ったワークショップに、草郷先生はゲストで来られてレクチャーをやられた。その直後に先生にお目にかかる機会があった。先生のお陰で、BCMDの代表ともその後親交を深めることができた。

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堂場瞬一『チームⅢ』 [勝手にブックカバーチャレンジ2020]

チームIII

チームIII

  • 作者: 堂場 瞬一
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2020/03/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容(「BOOK」データベースより)
東京オリンピック前、スランプに陥ったマラソンのメダル候補。箱根駅伝で伝説を作った男は、大ピンチを救えるか―!? オリンピック関連のスポーツ小説、4社リレー刊行!

巣ごもり期間中のおススメの本ということで、堂場瞬一の「チーム山城」サーガの最新作を紹介する。『チーム』『ヒート』、『チームⅡ』に続く、孤高の求道者ランナー・山城悟を巡る群像劇第4弾である。残念ながら東京五輪の景気付けにはならなかったけど、巣ごもりオヤジの屋外エクササイズの気合い入れには十分な内容だった。

過去の3作も、ブログエントリーを読み返してみると、「気合いを入れる」という言葉を毎回使っていた。2011年の『チーム』の時は月例マラソン、2018年の『ヒート』&『チームⅡ』の時はハーフマラソン出場前の練習の景気付けだった。そして今回は、強いて言えばウォーキングからジョギングにシフトを入れ替えるタイミングでの景気付けだったと言える。

前回も書いた通り、僕は昨年以来胸の痛みを度々感じるようになり、その回数が年末から1月、2月にかけてあまりに増えた。健康維持のために歩く距離はある程度稼いでいたが、それでも通勤帰りの駅から自宅までの道のりが徒歩でも苦しかった日もあった。それで3月第1週に精密検査も受診したのだが、結果は心臓に異常なし。先生には、「胸の痛みは神経性のものでしょう」と言われ、「1日最低20分の有酸素運動を週4回やること」を命じられた。

でも、その程度のことなら既に僕はやっていたので、僕は目標を「1日2万歩を週4回、あとは最低でも1万歩確保」にちょっと格上げした。原因がメンタルなものだと言われて以降、胸の痛みを感じる頻度は徐々に減ってきている。でも、精密検査の時点で体重が83キロにまで増えていたので、先ずはウォーキングの歩数を増やして高頻度を維持することを意識し、1カ月過ごしてきた。

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2020年第1四半期を回顧する [ご挨拶]

前向き度曲線.jpg

このグラフは、2019年の大みそかに書いたブログエントリー「2019年のGOOD-BAD-UGLY」で使った自分の前向き度の移り変わりを示したものです。そして、後半前向き度がダダ下がりだった2019年を振り返り、「下がるだけ下がったので、あとは上がるだけ」と述べて結んでいました。

実際その後どうなったのかというと、年末時点でゼロだった僕の前向き度はその後も下がり続け、2月半ばにさらにどん底を迎えました。妻の手術というのもありましたが、それ以上にこたえたのは、妻の手術とその後の入院生活に付き添っている間に、自分の担当していた案件に上司からNGが出て、それ以降もネチネチやられたことでした。自分が何をやったらいいのかわからなくなる、足元がふらつくのも感じました。こりゃまたメンタルやられるかもと本気で危惧しました。

思えば3月第1週がどん底でした。あまりにも胸苦しさが頻繁に起きるようになったので、意を決して心臓のCT検査を受診することにしました。この検査を受けると言い始めた頃からようやく、人を平気でバカ呼ばわりする同僚の、僕に対する当たりが柔らかくなりました。上司は相変わらずだったけれど、同僚が仕事を代わってくれたところもあり、それに救われた部分もありました。幸いなことに、心臓には異常なしとの結果が出ました。本当に心臓に問題でもあれば、自分の将来設計に大きな狂いが生じるところだったのでホッとしました。

苦しかった担当案件も年度末に向けて徐々に片付くようになっていきました。マイクロマネジメントをしてくる上司も年度末で退任予定だったので、3月後半の当たりは弱まりました。なので、V字回復とまではいかないけれど、少しだけ僕自身の気持ちの前向き度は年度末に向けて改善していきました。年度末時点で、上記曲線の目盛りで20~30あたりまでは持ち直してきています。

この因縁の部署を、僕は昨日付で去りました。

新型コロナウィルスの影響でほとんどの同僚が在宅勤務に入っていますが、その間に僕は自分の机まわりを片付け、静かに職場を後にしました。自分の会社でのキャリアの中で、都合3回、通算8年1カ月もいた部署ですが、こうしてメンタルをやられかけたことが二度あり、あまりいい思い出がありません。

もう自分も「退職」が頭をよぎる年齢です。ここに出戻ることはもうないでしょう。

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再読『ステップ』 [勝手にブックカバーチャレンジ2020]

ステップ (中公文庫)

ステップ (中公文庫)

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/03/23
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
結婚三年目、三十歳という若さで、朋子は逝った。あまりにもあっけない別れ方だった―男手一つで娘・美紀を育てようと決めた「僕」。初登園から小学校卒業までの足取りを季節のうつろいとともに切り取る、「のこされた人たち」の成長の物語。

新型コロナウィルス感染拡大の影響で、公開延期となってしまった日本映画の中に、重松清原作の『ステップ』が含まれていた。重松作品が映画化されたものは少なくはないが、公開を知った当初、それがなんで『ステップ』なのか(『赤ヘル1975』あたりの方がいいようにも思えるのだが)、主演がなんであの(『全裸監督』の)山田孝之なのか、などといった疑問が渦巻き、まあそれでも公開されたら映画館には足を運ぶだろうとは思っていた。

それがこんな事態になり、僕自身も2月以降そもそも映画館に行っていないし、その間クラスターが発生しやすい映画館自体もリスク要因となって、公開予定だった映画がどんどん公開延期となっていき、そもそも『ステップ』の公開予定時期すら忘れていた。

それを思い出させてくれたのが、先週末日曜の昼下がりに、気分転換のために自宅周辺をウォーキングしていた時に聴いていたラジオ番組だった。伊藤沙莉がゲストで出て、主に自分が出演したこの映画のことを語っていた。ドジな保育園の保母「ケロ先生」役って、どう見たって伊藤沙莉がハマる(下映像)。



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タグ:重松清
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大地をかき回す~グローバルなインドの発展 [インド]

Churning the Earth: The Making of Global India

Churning the Earth: The Making of Global India

  • 出版社/メーカー: Penguin Books India Pvt Ltd
  • 発売日: 2014/01/15
  • メディア: ペーパーバック
内容紹介
世界はインドのきらびやかな経済発展を羨望のまなざしで見つめ、それが人と環境に影響を与えるものであることを認めるのにためらいが見られる。本書は、Aseem ShrivastavaとAshish Kothariという2人の著者が、この印象的な成長ストーリーについてタイムリーな問いを投げかける。彼らはこの近年の成長が性質的に略奪的であることについて、議論の余地のない証拠を提示し、その持続可能性に疑問を投げかける。際限のない開発は、数億の人びとの生活を可能にする生態学的な基盤を損ない、水、土地、その他の天然資源をめぐる紛争を引き起こし、富裕層と貧困層の間の亀裂を大きくし、文明としてのインドの将来を脅かしている。本書はデータとストーリーを豊富に取り上げる。インドの開発戦略に対する痛烈な批判は、環境の持続可能性、社会的平等、および生計の安全保障の原則に基づく急進的な生態学的民主主義(RED)の提唱につながる。2人は、社会的かつ生態学的な混乱状態への転落を未然に防ぐため、すでに草の根レベルの活動で既に萌芽が見られる代替的な発展径路への抜本的な転換を求めている。本書は、インドで何が問題になっているかだけでなく、グローバル化に基づく成長がもたらした危機から脱出する、ユニークな方策も論じている。

本書の原題は『Churning the Earth: The Making of Global India』という。2012年8月にインドを訪れた際に、『Jugaad Innovation(ジュガード・イノベーション)』と同時に、バンガロールの空港内の書店で購入した。『Jugaad Innovation』の方はその年の12月までには読了していたが、本日紹介する『Churning the Earth』の方は、なかなか読み始める覚悟がつかず、コロナの巣ごもりまで放置してきた。『Jugaad Innovation』は既に訳本が日本でも出ているが、『Churning the Earth』の方はそういうのはない。

英語で"churn"とは、「攪拌する」というような意味らしい。グローバル化に取り込まれた形でのインドの発展が、地球全体を攪拌するというような意味なのだろうか。確かにグローバルなプレイヤーとして台頭したインドは、世界全体のかく乱要因にもなり得るし、逆に安定性をもたらす要因にだってなり得る。なんとなく前者かなと思いつつ、そうすると、CO2排出をガンガン増やして、今後世界の気候変動を助長する可能性が大きいにもかかわらず、なかなか言うことを聞かない国として、インドは捉えられているのかなという内容を予想した。それが、買ったはいいけどずっと積読状態で放置していた理由かなと思う。

でも、今回コロナの影響もあって読み込みに踏み切ると、どうやらこれは「地球をかき回す」というよりもインドの「大地をかき回す」という方が本書の内容に近いという気がしてきた。

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