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体罰と竹刀 [時事]

世の中のおおかたの人は思っておられるだろうが、全日本柔道連盟が下したこの判断は、世間一般と柔道界との間で、意識の隔たりが相当に大きいということを如実に表しているように思う。園田監督とそのコーチ陣が女子柔道日本代表候補選手に暴力を伴う「指導」を行なっていたというのが事実だったと認めたばかりではなく、全柔連はその罪を問わずむしろ彼ら指導者側を庇う姿勢を見せたことで、日本国内での柔道の信用を失墜させたばかりか、世界中の柔道家からも失笑されることとなるだろう。

柔道界のトップがこんなことをやってて、それが当たり前のことだと彼ら自身が思っているとしたら、たとえ中学校の体育で武道が必須化されたからといって、それが柔道競技者人口の増加には絶対繋がらないだろう。親からすれば、子供をこんな競技に入れたいとはまったく思わない。また、欧州諸国にやられっ放しだった国際柔道連盟の役員選挙でも、日本を支持しない国がもっと増えるに違いない。また、多くはないけれども海外に派遣されている柔道指導者はそういう目で見られ、今後は指導者派遣要請も減ってしまうだろう。「我が国における柔道の普及、選手の強化を図るのなら、別の国から指導者をお招きしたい」なんて言われて…。

東京五輪招致にも悪影響があるのは致し方ないだろう。メダル獲得を目標にしてこうした暴力指導が横行するような国に、五輪開催を持って来れないという意見も出てくるに違いない。ことは柔道だけで済まないかもしれない。

誰がどう見たって「柔道」そのものが存亡の危機だと思うに違いない。園田体制を存続させたからといって、勇気を出して告発に踏み切った15人の女子選手がついて来れるとも思えない。もっと陰湿ないじめが横行する可能性だってある。既に「JUDO」の国際試合でメダルすら獲れなくなった男子に続き、女子柔道も弱体化は避けられない。全柔連はそこまでの危機感を持っているのだろうか。

それにつけても悲しいのは、教師や監督による体罰の話が出るたびに、竹刀やバットが登場することである。素手や他の道具だったらいいと言っているわけではないが、こんなことで竹刀やバットを使ってほしくはないし、こういう目的で使用している他の競技の指導者は、剣道や野球を馬鹿にしているのかとすら思ってしまう。

他の競技よりも沢山の人が竹刀を使っている(当たり前か)剣道で、では体罰や暴力が多いかというと、僕には正直よくわからない。指導者が子供たちと1対1の稽古をつけることは、道場でも部活動でもよく行なわれており、それが「ちょっと厳しいな」と感じることもないわけではない。(それでも周囲のチームメイトが「頑張れ」「ファイト」などと声援を送ってくれることで頑張れると思う。)また、自分も経験したことがあるが、子供に対する言葉が厳しすぎる道場も実際にはあり、それで僕は長男を剣道の世界に引きずり込むのに失敗もしたが、ではその言葉が暴言かというと、最低限の「しつけ」のニュアンスは感じられた。

チームメイト同士の声の掛け合いがあるところでは、厳しい練習でも歯を食いしばってなんとか頑張れると思う。でも、今回は15人ものチームメイトがもう耐えられないと声を上げたわけで、指導者の留任が許されるような状況ではない。
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