『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』 [時事]
内容(「BOOK」データベースより)
「アメリカで話題になっている本はなんですか?」は、人気レビュアーである著者がビジネスリーダーたちから常に聞かれる質問だ。本の良し悪しというより、話題となる本は、アメリカ人の興味を如実に映す。数々のトランプ本、ミシェル・オバマやヒラリーの回想録、ITビリオネアが抱く宇宙への夢、黒人や先住民から見える別の国アメリカ、ジェンダーの語られ方…「ニューズウィーク日本版オフィシャルサイト」の連載を中心に、人気レビュアーが厳選して伝えるアメリカのいま。
アメリカ大統領選の投票まであとわずか。このタイミングで、こういう本を図書館ですぐに借りることができたのは、ものすごくラッキーだったと思う。7月にレベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』をご紹介したが、これを翻訳されたのが、本日ご紹介する本の著者である。今年3月だったか、米国で新型コロナウィルスの感染拡大が始まった頃、ラジオ番組に渡辺由佳里さんがゲスト出演されていて、レベッカ・ソルニットの著書と渡辺さんご自身の著書の宣伝をされていた。その頃から、いずれ2冊とも読もうとは思っていて、2冊目はギリギリ大統領選に間に合うタイミングでの読了となったわけだ。
本になるまでの効率がものすごくいい本だと思う。元々ブログやらニューズウィークやらのブックレビューで紹介してあった原稿をまとめたものなので、本にするにあたっての原稿書き下ろしの必要がほとんどない。普段コツコツやられてきたことの成果であり、見習いたいと思う。但し、僕の本のチョイスはこういう現代アメリカ社会といった特定の切り口ではないため、僕がいくらブログで記事を書き溜めたからといって、本にはとてもできないだろう。
レベッカ・ソルニットの著書を読んで、なんで4年前の大統領選でトランプが勝っちゃったんだか分析がされていたのだが、さらに今回ご紹介のブックレビュー集を読むと、ヒラリー候補が女性で、女性の有権者に敬遠されたというだけでなく、トランプを担ぐ共和党も昔の共和党ではなくなってきているらしく、ひょっとしたら今回も、トランプが勝っちゃうかもしれないと思えてきた。トランプはあれだけ嘘をまき散らしているのに、「しょうがない、トランプなんだから」というので許してしまう共和党右派支持者や白人労働者階級の人がすごく多いというのは衝撃的だ。「人は、自分が聴きたいと思うことを語ってくれる人を好む」とか、「政治家の小難しい論法よりもシンプルなトランプの物言いの方が率直に語っていると捉えている人が多い」とか、それはそうかもしれないが、危険だなと思う。
これで本当にトランプが再選されてしまったら、アメリカ合衆国という国は、僕らが昔憧れて留学までしたアメリカとは違う国になってしまったと思った方がいいのかもしれない。また、ここで言われているポイントは、日本に置き換えた場合も、安倍前総理がやっていたこと、僕たちがそれを受け止めていた姿勢ともあまり変わらないのかもしれない。
読んでおいて良かったと思う一方、読後感を言えば、ちょっと陰鬱な気持ちになったというのが正直なところだ。
それにしても、よくこれだけの本を英語で読めるものだと思う。しかも、相当微妙なニュアンスもしっかり拾って、各々の本に対する論評も欠かすところはない。僕のペースではこんなに多くの本を英語では読めないので、こういう形で内容紹介や自分がどう読んだのかが語られていると、僕らも読んだ気にさせてもらえる。ありがたい話だ。
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