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石田衣良の言葉 [少子高齢化]

2月26日(月)の日経新聞朝刊のオピニオンシリーズ「領空侵犯」は作家・石田衣良のインタビューだった。「『デート法』を制定せよ」「残業を禁止、人生豊かに」―――これらの言葉に胸が躍り、思わずしっかり読んでしまった。この人、ただの作家ではない。すごく良いことを言っている。

「(法律で残業を禁止することは)少子化を食い止めるために必要です。30~34歳の未婚率は男性で47%、女性で32%。異常な高さです。働く時間が長すぎるから恋をしたり、遊んだりする時間がなく、疲れ果てている。少子化対策として出産や育児に補助金を出しても、結婚のチャンスが増えなければ効果が上がりません。」                                                                                                            ――この発言、今の政府の少子化対策の問題点をよく指摘していると思う。幸い、僕はこうした状態になる前に今の妻と出会い、結婚することができたが、今の職場の状況だったら絶対に出会いの機会がないと自信を持って言える。

「サラリーマンが恋愛や趣味に時間をかければ、消費が増えて景気にもプラスです。」                                                                                                                                     ――その通りだと思う。

「池波正太郎はエッセーで『大人の男が遊ばない国の文化はダメになる』と書きました。会社人間の男性は音楽も聴かず、演劇や映画も見ない。仕事漬けで定年を迎えてしまいます。受け手がこれでは文化も育ちません。一方、中年の女性は演劇などを大いに楽しみます。建築家の安藤忠雄さんに聞いたのですが、熟年離婚の原因は夫婦の『文化格差』にあります。」                                                                                                                           ――仕事が忙しくなればなるほど趣味や文化的素養を身につける取組みは疎かになりがちである。僕もとっくの昔にこうしたものは捨ててしまった。地域のボランティアですら最近諦める決断を下した。

「(残業を減らすには仕事の効率化が必要だという点について)個々の人間は優秀でも全体の生産性は低いと思います。経営者もムダな文書の作成や長時間の会議に精力を使いすぎます。自らの無策や非効率のツケを現場に押しつけるのでは、かつての陸軍のようなものです。」                                                                                       ――まるで僕の会社の状況を知っているかのような発言である。うちの部署の幹部を見ていて、一体どこを見て仕事をしているのかと怪訝に思うことが多い。社長や役員を見て仕事しているから、足元の現場の状況が見えていない。なにかにつけて精神論に陥る。「今我が社は大切な時だからもうひと頑張りなんとか協力して欲しい」――幹部連中が使う常套句だ。こんな言葉に踊らされてはいけない。体を壊しても会社は骨を拾ってはくれない。


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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第28回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第28回)                                      「少子高齢化と労働政策」                                                        講師:小崎敏男・東海大学政治経済学部教授

2月24日の講義。小崎先生、テンション高い方であった。熱が入って少々早口で、ついていくのもが大変だった。小崎先生は最初に結論について触れられていたが、その結論に辿り着く前に2時間を終えてしまった。多分、お話されたいことの半分くらいしかできなかったんじゃないだろうか。結論が先に述べられていたのでまあいいが。

本日の学びのポイント                                                                                                                       小崎先生は労働経済学のご専門であり、本日の講義も少子高齢化によって労働市場がどのように影響を受けるのかについての展望と課題が中心のお話であったと思う。

1.当然のことながら、労働力人口は今後減少が見込まれる。2000年の労働力人口は6,610万人だったが、労働政策研究・研修機構(JIL)の2004年推計値によれば、2010年の労働力人口は6,814万人といったんは増えるものの、2025年には6,385万人にまで減少し、その後も減少が予想される。労働力人口が減少する一方で、問題となるのは労働需給のギャップであるが、経済成長率が年平均3%と仮定した楽観的なシナリオでも2010年から2025年にかけて失業率は上昇(6.3%⇒7.2%)することが予想され、需給にミスマッチが生じる可能性を示唆している。

2.短期の労働需給の逼迫をある程度軽減しつつ、長期的な経済構造の転換に繋げていくためには、①短期的政策として若年層、女性、高齢者の雇用を促する一方、②長期的政策として、出生率向上を図る政策や、外国人労働者受入政策、教育を通じた労働生産性改善努力等が求められる。

3.女性の就業を促進するためには、当然ながら女性が働きやすい制度環境の整備が必要である。現状から見れば、子育てと仕事を両立できる環境にないことや、取得が困難な育児休業、育児休業から復帰した後の労働環境、進んでいない夫の育児参加等の問題が挙げられる。

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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第25回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第25回)                                      「若者を取り巻く雇用の課題」                                                        講師:廣瀬誠人・ハローワーク三鷹(公共職業安定所)所長

本日の学びのポイント                                                                                                                       23回と24回の講座のメモをようやくアップし、昨日の講義の分を時差なくアップできるところまで追いついてきた。それはそれでいいのだけど、それじゃあその日の学びは何だったかというと、ちょっとばかり思い出すのに手間がかかる。昨日はあまりノートを取ってないのである。

廣瀬氏もオフレコで随分と率直に語って下さっていたので、その部分をメモに取って公開するわけにもいかないが、1つだけ言うと廣瀬氏は「格差社会」の顕在化を認める立場の方で、公式には認めようとしていないどこかの官庁とは異なるということ。規制緩和とグローバル化が進み、企業はギリギリのところまでコストダウンに迫られている。その結果として、特に20代の若年層の格差拡大は深刻になってきており、これでは少子化はおろか、晩婚化・未婚化にも歯止めがなかなかかからないという。この辺は、少し前に紹介した本の幾つか(『縦並び社会』『階級社会』『持続可能な福祉社会』『若者はなぜ3年で辞めるのか?』等)で度々指摘されてきているところであり、目新しい論点ではない。(だからノートを取らなかった。)

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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第24回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第24回)                                      「人口統計学からみた少子高齢化と人口減少のメカニズム」                                                        講師:和田光平・中央大学経済学部教授

1月27日(土)開催分。この講座の後、週末をまるまる費やして九州大学の国際シンポジウム用に論文を書いていたので、1週間ほったらかしにしていてしまった。ゴメンなさい。

本日の学びのポイント                                                                                                                       ただ、この日の講義の内容は、講師の和田教授の近著を読めばだいたい書いてある内容である。僕のこの日の講義の最大の収穫は、人口問題を扱う場合に、どこの統計データを引っ張ってきてどのように加工すればいいのかが、和田教授の著書に書かれていることがわかったということである。さっそく購入してしまった。この本、結構お薦めです。途上国の人口高齢化を考えた場合には、これだけのデータが取れるかどうかが最大の問題だけど…。


Excelで学ぶ人口統計学

Excelで学ぶ人口統計学

  • 作者: 和田 光平
  • 出版社/メーカー: オーム社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本

内容(「MARC」データベースより)
表計算ソフトExcelを使って人口統計を分析したり、人口推計をできるような実力をつけることを狙いとした実践マニュアル。出生率や婚姻率と女性の社会進出との関係など、人口に関連した社会問題を捉える方法を解説する。


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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第23回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第23回)                                      「三鷹市の若い労働力の活性化について」                                                        講師:馬男木賢一・三鷹市生活経済課長

1月20日(土)開催分。北京出張直後にこの講座に出て、その後極めて余裕のない2週間を過ごしたため、ほったらかしにしていてしまった。ゴメンなさい。

本日の学びのポイント                                                                                                                       思い出すのも大変だが、個人的にはとても良いタイミングでこのテーマでお話が聞けたと思う。実は、2月1日、2日と九州大学で開催された国際シンポジウムの1分科会で発表をやってきたのだが、その発表に先立ち、1月29日までに主催事務局に発表の要旨を纏めたペーパーの提出を求められていた。僕の厚かったテーマは「高齢化問題とアクティブエイジング」に関するものだったので、 自ずと中高年の地域の経済活動への参加についても取り上げる必要があったのだが、元々仕事の上で国内の高齢化問題について十分な情報整理もしておらず、とっかかりとして自分の住む町はどうなのかというところから入らざるを得なかった。

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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第21回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第21回)                                      「団塊の世代の定年と日本経済」                                                        講師:永井保男・東京女学館大学教授

12月9日(土)開催分。この講座に出た後家族で温泉旅行に出発したので、1週間ほったらかしにしていてしまった。ゴメンなさい。

本日の学びのポイント                                                                                                                       団塊の世代の定年は、2007年問題として語られることが多く、新聞や雑誌などで特集されることも多い。                 

1.「団塊世代」とは、日本の場合は太平洋戦争終結後の1947年から1949年に生まれた世代を指す。2005年の国勢調査によると、この世代は56~58歳という 年齢層に相当し、その総数は692万人、総人口の5.48%を占める。彼らは、高校、大学卒業して結婚期を迎える頃に高度経済成長の真っ只中にあり、結婚当初から電化製品を揃えて消費の牽引役となった。団塊世代が注目をされる最大の理由は耐久消費財ブームの火付け役となった過去の経験にあり、彼らの退職後、高齢者の消費の牽引役となりうると考えられているからである。

2.彼らの就業機会は大都市圏に集中した。団塊世代の人口の地域別分布を見ると、1960年代後半に東京・南関東圏に流入し、現在も同地域に住んでいる。他方で、70代になってくると、人口移動が再び高まりを見せる傾向が今でも見られる。このことから、団塊世代は今後Uターン、Iターンが期待できる重要な年齢グループということで、遠隔地の地方自治体は招致活動を強めている。しかし、県外移動まで期待するのは実際にはかなり難しいものと考えられる。総務省の人口将来推計でも、高齢者の県外移動数の推計は2005年から2025年頃までは増加して年60万人程度になるものの、それ以降は頭打ちとなる。すなわち、団塊世代が70代後半を迎える頃には、高齢者の県外移動数は頭打ちになっている。

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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第19回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第19回)                                      「人口減少社会における都市再生」                                                        講師:菊池威・亜細亜大学経済学部教授

11月18日(土)開催分。ずっとほったらかしにしていてゴメンなさい。

本日の学びのポイント                                                                                                                       6月に続いて二度目の登場である菊池先生。都市経済学の方がご専門なのかなと思うほどきれいな整理をしていただいた講義だった。                   

1.人口減少のメリット・デメリットは、都市部と農村部の比較で考える必要がある。例えば、人口減少は、都市部においては混雑の解消や家賃・地価・住宅価格の下落、居住・生活空間の拡大、職住近接の可能性拡大といったメリットをもたらすかもしれないが、その一報で、農村部においては過疎化の進展、集落・コミュニティの崩壊、廃家・廃校・廃業・荒地の増加、農林水産業の衰退(それに伴う農産品供給減)、自治体破綻の可能性増大といったデメリットも生む。地方の自治体では、UターンやIターンを奨励しているが、都市部の若壮年世帯が農村部に住む高齢の両親を呼び寄せ、相殺される可能性がある。

2.政府の都市再生本部の目指す「都市再生」は、都市しか見ていないという点で不十分である。「都市と農村のバランス(シティ・カントリー・バランス)の上に経った都市再生が喫緊の課題である。都市だけを見て都市再生を指向すれば、東京一極集中を加速させかねない。

3.東京周辺でも、「郊外型複合商業施設の進出と中心市街地の空洞化」「中枢管理機能の集中とそれに伴う長距離通勤、それに必要な周辺都市のベッドタウン化」といった現象が起きてきている。三鷹・武蔵野地域の場合、周辺地域からの人口流入が始まっているが、逆に流出が始まっている自治体もある。

4.日本の都市は、中心から周辺へ拡散して無秩序に発展してきている感がある。言い換えると、都市と農村がない交ぜになって発展してきてきている。これは、高度経済成長の過程で、都市のスプロール化と第1次産業の衰退によって都市が農地を侵食してきたからで、「しまりのない都市化」が進んで今日に至っている。

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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第17回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第17回)                                      「少子化と日本の財政―財政再建は先送りできない」                                                        講師:井堀利宏・東京大学大学院経済学研究科教授

11月11日(土)開催分。僕がこの講座の第1回に出席して輪講の日程案を聞かされた時、もっとも驚いたのは井堀先生の講義が聞けるということであった。僕が今の職場で官民パートナーシップ(PPP)についてレポートを書いた際に、井堀先生の著書を数冊参照にさせていただいたことがある。政府と自民党の税制調査会にも関係しておられる先生が三鷹に来ていただけるなんて、感謝感激である。

本日の学びのポイント                                                                                                                       今回の講座の中で、少子高齢化と財政負担の問題を真正面から取り上げたのは井堀先生の回だけであり、とても貴重な講義だと思う。                   

1.政府の財政再建の目標は2011年度におけるプライマリーバランスの均衡であるが、財政審議会に提出された試算によると、その実現のためには20065年度予算との比較において、全ての経費を一律で18%削減する必要がある。この18%削減を社会保障関係費にも適用すると、2011年度の社会保障は次のような姿になる。

  • 医療費自己負担は、現在の約2倍になる。
  • 介護費の自己負担は、現在の約2.5倍になる。
  • 基礎年金支給開始年齢は、現在の65歳から69歳に引き上げる必要がある。
  • 現在111万人分ある民間保育所は91万人分にまで削減される。
  • 児童手当対象は現在の6年生以下から、4年生以下にまで引き下げられる。

2.勿論、社会保障関係費の歳出削減を一定幅で抑えて、その他を一定率で削減する仮定もできる。その結果として、以下のような事態が起こり得る。

  • 公共事業は現在の6割の規模に縮減される。
  • 防衛費のうち、物件費は現在の6割の規模に縮減され、武力攻撃などの有事における対応や、災害派遣、不発弾等の危険物処理、領海・領空侵犯の監視などの平時の活動について必要な対応ができなくなる。
  • 国立大学の授業料は現在の2.7倍に、私学助成金は現在の6割の規模に縮減される。
  • 科学技術関係の政府研究開発投資は、現在の対GDP比0.70%から、2011年には0.41%程度に下落する。
  • ODAは、現在の6割程度にまで縮減し、2015年度にはほぼ半減となる。これは国際機関経由の支援等を除き、世界の全域にわたって、二国間援助をほぼゼロとする事態に相当する。
  • 治安関係では、国内不法残留者数が現状の18万人が、2011年度には27万人に急増する。パトカーの更新が遅延し、その台数の減少及び老朽化のため、レスポンスタイムは2004年の7分15秒が、2011年度には10分程度に、2015年度には30分程度に大幅に悪化する。

3.財政再建は待ったなしの状況である。無駄な歳出を削減し、増税も視野に入れておかねばならない。今の安部政権は、増税の議論は来年の参院選以後に先延ばししようとしている。政治の悪弊。

4.受益と負担のリンクがある程度明確になっていれば、国民負担率が高まってもその分の便益を実感することができるので、「大きな政府」であっても国民の支持が得られる。しかし、日本ではこのリンクがそれほど明確になっておらず、税率や保険料率などの表面的な負担がそのまま実質的な負担になるため、悪い意味での「大きな政府」に陥りやすい。

5.この受益と負担のリンクの明確化は日本の大きな課題である。その具体的な方策として、①地方分権化を進めて地方レベルで歳出と税収を対応させる、②社会保障に個人勘定を導入し、就労期の自分の保険料で老年期の自分の給付を賄うことなどが考えられる。但し、後者については、団塊世代が引退して受給開始年齢に入ってくると、団塊世代が損をすることになるため、政治的には実現困難という大きな課題がある。

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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第16回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第16回)                                      「少子化の動向とその影響―人口高齢化と人口減少」                                                        講師:石川晃・国立社会保障人口問題研究所情報調査分析部室長

先週、10月21日(土)に出席したのだが、ずっと放ったらかしにしていた。決して面白くない講義だったわけじゃない。むしろこれまでに受講した中では最も面白かった。これだけアニメーションを駆使したパワーポイントでのプレゼンを見せられると、惹き付けられないわけがない。また、石川先生の話術も巧みだった。

本日の学びのポイント                    

1.人口高齢化は、①少子化が進行することによる出生数の減少(年少人口減少)と、②高年齢まで人が生きるようになった長寿化(高齢人口増加)という2つの要因から起きる。

2.人口減少は、①少子化によって出生数が減少することと、②長寿化に伴って死亡率が低下しても、絶対的な死亡数が増加することとを比べた場合に、死亡数が出生数を上回ることによって起きる。(当たり前)

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NGOにおける高齢化問題 [少子高齢化]

もう随分と昔の話になってしまったが、僕達が開発途上国の高齢化の問題に関心を持ち始めた頃、その話を大学院時代の同僚P.Oさんに酒宴の席上でしたところ、「NGO業界にも高齢化問題というのがあるんですよ」と教えて下さった。

会社勤めをリタイヤされたシニアの方々、特に国際舞台で活躍された方々というのは、蓄えは十分あり、自由になる時間もタップリある。経験は豊富で社会貢献への意欲も十分だ。だから、国際協力NGOでその経験を生かしてボランティアとして働いてみたいと強く思っていらっしゃる。

日本ではどこのNGOもそうだと思うが、活動費の捻出に苦労しており、事務局といっても専従のスタッフを沢山抱えることはできない。なけなしの資金で若手のスタッフを傭上する。そしてその多くは有能な女性である。

そこに会社のヒエラルキーで鍛え上げられたシニアのボランティアが参加してくる。時間はタップリあるから、平日の日中でも事務局に出入りできる。そうすると何が起きるかというと、「ねえ、ちょっとお茶お願い」と何の気なしに口に出されてしまう。会社での人間関係をNGOのようなフラットな組織に持ち込んだら、軋轢が生じるのは当然の帰結だ。言われてみてなるほどなと思った。

実は僕も今同じような経験をしている。「お茶汲み」の類ではないが、あるボランティアのグループの中で最年少の僕は、人生経験豊富な大先輩のお言葉に基づき企画の根回しをして、次の会議で別の大先輩の一言でチャラにされた苦い経験がある。企画をボツにされるのは会社の中で企画書を上司に上げてダメ出しを喰らうのと感覚的には大差がない。会議は諸先輩の皆様の独壇場である。豊富な人生経験・社会経験に裏打ちされた味わい深い薀蓄を拝聴することができる。皆さん会社で要職に就かれていた頃には、こうした様々な角度からのきめ細かな考察に基づいて重要な意思決定をされてきたのだろうなと思う。

ただ言いたいのは、ボランティア・セクターというのは上下関係のないフラットな組織なのだということである。企画書を下っ端に書かせてそれを会議で叩くようなやり方はボランティア・セクターには馴染まない。やりたい企画があれば老若男女を問わず自分から動いて形にしていくことが必要だと思う。

今後団塊世代が大量退職する時期を迎える。ボランティア・セクターは拡大の好機であると言うこともできる。会社というコミュニティから地域に戻り、地域社会の中で居場所を探していく作業が必要なのだと思うが、その時は、会社社会と同じ感覚で他の構成員と接しないことだ。
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