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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第28回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第28回)                                      「少子高齢化と労働政策」                                                        講師:小崎敏男・東海大学政治経済学部教授

2月24日の講義。小崎先生、テンション高い方であった。熱が入って少々早口で、ついていくのもが大変だった。小崎先生は最初に結論について触れられていたが、その結論に辿り着く前に2時間を終えてしまった。多分、お話されたいことの半分くらいしかできなかったんじゃないだろうか。結論が先に述べられていたのでまあいいが。

本日の学びのポイント                                                                                                                       小崎先生は労働経済学のご専門であり、本日の講義も少子高齢化によって労働市場がどのように影響を受けるのかについての展望と課題が中心のお話であったと思う。

1.当然のことながら、労働力人口は今後減少が見込まれる。2000年の労働力人口は6,610万人だったが、労働政策研究・研修機構(JIL)の2004年推計値によれば、2010年の労働力人口は6,814万人といったんは増えるものの、2025年には6,385万人にまで減少し、その後も減少が予想される。労働力人口が減少する一方で、問題となるのは労働需給のギャップであるが、経済成長率が年平均3%と仮定した楽観的なシナリオでも2010年から2025年にかけて失業率は上昇(6.3%⇒7.2%)することが予想され、需給にミスマッチが生じる可能性を示唆している。

2.短期の労働需給の逼迫をある程度軽減しつつ、長期的な経済構造の転換に繋げていくためには、①短期的政策として若年層、女性、高齢者の雇用を促する一方、②長期的政策として、出生率向上を図る政策や、外国人労働者受入政策、教育を通じた労働生産性改善努力等が求められる。

3.女性の就業を促進するためには、当然ながら女性が働きやすい制度環境の整備が必要である。現状から見れば、子育てと仕事を両立できる環境にないことや、取得が困難な育児休業、育児休業から復帰した後の労働環境、進んでいない夫の育児参加等の問題が挙げられる。

所感                                                                                              1.女性の労働参加については、①育児休業(育児休業取得者が安心して職場を離れられる環境づくりも含める)、②保育環境、③就労形態の柔軟化(再就職を妨げる障害の除去等)、が政策課題であるというのは確かにその通りである。ただ、この説明を聞いていると、この場合の政策目標とは女性の労働参加なのか、長期的な出生率改善なのか、どちらを達成しようとしているのかよくわからなくなってしまった。考えればわかることであるが、女性が収入獲得機会を求めて働くようになれば、誰かが育児の肩代わりをせねばならない部分が必ず出てくる筈である。どこかに子どもを預けて外に働きに行くことがもっとできるようにするということだから、この場合の受け皿機能を担うのが誰なのかをちゃんと考えておく必要があると思う。

2.実は、その受け皿機能を担ってきたのは、保育施設だけではなく、地域の専業主婦という女性層であったという実態を考えておく必要がある。ここで展開されている議論は、女性よもっと働こうということであり、実際の政府の施策も女性に働くことを勧めて専業主婦を続けることに対して厳しいものになりつつあるが、そうであれば専業主婦が地域で担っていた機能をもう一度見直し、こうした層が労働市場に出て行った後、彼女達が地域で果たしていた役割を誰が代わって担えるのかを考える必要がある。僕自身は、それは誰かが代わって担うという発想であってはいけないと思う。女性と育児休業をくっつける発想を僕があまり好きではない理由は、男性就労者であっても育児で担うべき役割があるのに、その議論がすっぽり落ちて、女性だけが働きながら育児もできる環境を整えればそれでいいという安直な議論に陥りがちであるからである。男性だって育児休業が取れることは必要だと思うし、一定期間職場を離れて育児に専念するだけではなく、平時においても育児参加が可能であるような就労形態が容認されることが必要である。だが、僕自身の経験も交えて言えば、現実は労働強化に繋がっている。

3.付け加えるならば、地域の受け皿機能を多くの時間担うことができるのは高齢者でもあると思う。ところが、今日の講義を聞く限り、高齢者の雇用機会の拡大も短期的には推奨されている。実際、日本の労働者は定年を迎えても働き続ける傾向が他の先進国に較べて強いと言われているが、それを強化するような施策は、地域における育児の担い手としての高齢者の役割を限定してしまう可能性があるように思う。会社勤めが長くて会社というコミュニティにどっぷり浸かった高齢者は、定年退職後に地域に戻っても、地域という新たなコミュニティにはなかなか参加することができず、往々にして会社というコミュニティへの依存心がなかなか抜けないと言われている。言い換えれば所得創出ではなくどこかに帰属しているという安心感を得るために働き続けるという発想である。だから、僕は高齢者の生き方に対して選択肢を増やすという意味での高齢者の就労機会拡大には賛成はするが、労働市場における需給ギャップを解消するために高齢者に期待をするのは政策目標としてどうかと思っている。

4.最後に小崎先生が時間切れで触れてくれなかった外国人労働者受入について。市民大学講座も残すところあと2回であるが、残る2回の講師を考えると、外国人労働者受入の問題について考える機会は今回が最後だったように思う。それが議論できなかったことは非常に残念だ。ただ、女性についても高齢者についても就業促進の議論の根底にあるのは労働供給が頭打ちだから需給ギャップを埋めるためには今まで労働市場にあまり供給されなかったグループからの供給が必要という、いわば穴埋め(gap-filling)という発想である。そして、僕はこの所感でも書いてきた通り、gap-fillingという発想には反対であり、外国人労働者の受入についても、単に労働力不足だからそれを埋めるためには受入が必要という発想は避けるべきだと思う。単純にgap-fillingという発想で外国人受入を考えてそういう政策が取られた場合、日本人はマイノリティに転落するという試算もあるくらいだ。

そんなわけで、本日は一方的に先生にまくし立てられて終わってしまったが、できれば意見を言う機会も与えて欲しかったなと思った。


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