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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第24回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第24回)                                      「人口統計学からみた少子高齢化と人口減少のメカニズム」                                                        講師:和田光平・中央大学経済学部教授

1月27日(土)開催分。この講座の後、週末をまるまる費やして九州大学の国際シンポジウム用に論文を書いていたので、1週間ほったらかしにしていてしまった。ゴメンなさい。

本日の学びのポイント                                                                                                                       ただ、この日の講義の内容は、講師の和田教授の近著を読めばだいたい書いてある内容である。僕のこの日の講義の最大の収穫は、人口問題を扱う場合に、どこの統計データを引っ張ってきてどのように加工すればいいのかが、和田教授の著書に書かれていることがわかったということである。さっそく購入してしまった。この本、結構お薦めです。途上国の人口高齢化を考えた場合には、これだけのデータが取れるかどうかが最大の問題だけど…。


Excelで学ぶ人口統計学

Excelで学ぶ人口統計学

  • 作者: 和田 光平
  • 出版社/メーカー: オーム社
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 単行本

内容(「MARC」データベースより)
表計算ソフトExcelを使って人口統計を分析したり、人口推計をできるような実力をつけることを狙いとした実践マニュアル。出生率や婚姻率と女性の社会進出との関係など、人口に関連した社会問題を捉える方法を解説する。


所感                                                                                                             単純な疑問なのだが、こういう統計を加工して何かを導き出そうとしておられる方々は、政策形成にどのように関わっておられるのだろうか。和田教授の著書に中に、「人口統計学のテキストが少ない原因のひとつには、それを書くべき人が政策的研究に忙殺されている」からであるとの行があるが、これを逆に読めば、人口統計学を書いている人は、政策的研究をほどほどにしかやっておらず、政策提言のようなものをあまりやっていらっしゃらないということになる。統計データばかりを扱っていると往々にそういう印象を持たれがちであるという恨みはあるが、どうも具体的な人の顔が見えてこない、冷たい、ドライな印象を受けてしまうのである。これは人口統計学がどうこう言っているのではなく、計量経済学をやっている人の話にも感じてしまう印象だ。

例えば、今回の講義を聞いていて2つの質問があった。講義でまるまる2時間が取られて質問する機会すら与えてもらえなかったので、まだまだ僕の中では整理がついていない問題である。

1.和田推計でいけば、日本の総人口は22世紀初頭には4千万人を割る。2400年頃には日本人の人口はゼロになってしまう。でも、日本の人口を日本人という枠組みで概念規定していく必要が果たしてあるのだろうか。欧米を見ていれば、国境を越えた結婚は幾らでもあるではないか。国境を越えた人の往来がこれだけ活発になってきている昨今、こういう100年、200年の人口推計に意味があるのだろうか。他の人口が減少している先進諸国でもこうした超長期の推計というのが行われているのだろうか。

2.上記1の疑問があるからといって、僕は人口減少と外国人労働者の受入論議を抱き合わせで考えるつもりはないが、第二の疑問は、こうした人口統計学者は、外国人労働者の受入の是非についてどう考えているのだろうかということである。

僕の立場は、そもそもこの2つの問題を繋げて考えること自体が誤りであるという点に尽きる。人口減少を外国人受入で埋め合わせようとすると、日本人が日本国内でマイノリティに転落するという事態にもなりかねないし、中国・上海のケースを見れば、元々住んでいる人々の人口構成と外から移り住んできた人の人口構成には明らかな違いがあり、短期的には埋め合わせができたとしても、長期的には少子高齢化の問題を増幅させるだけに終わると思う。大切なのは自分の住む地域の活力をいかに保つかにあり、魅力的な街であれば日本人、外国人を問わず人が集まってくる筈で、またそういう街づくりがひいては国としての魅力の維持に繋がっていく。外国人をどれだけ受け入れるかではなく、どのように受け入れて共生を図っていくかを考える必要があると思う。

すみません。本日は講義の内容というより、講師に悪乗りして持論を展開するだけに終わってしまった。


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和田光平

 中央大学の和田光平です。先日は、講義をお聞きいただきありがとうございました。また拙著を御購入ならびに御紹介いただきましたことも重ねて御礼申し上げます。 また、質問や議論の時間も取らずに失礼いたしました。次回は気をつけます。

 さて、疑念点としては大きく三点あると思います。まず、人口統計学者の政策コミットの問題です。これは拙著でも説明しておりますが、人口学には実体人口学と形式人口学(人口統計学)がありまして、社会のニーズとしては、政策的含意のわかりやすい実体人口学が重視されるようです。人口学者にもいろいろおられますが、私はともかく、いま一線で活躍中の方々は、この両方に長じていると思いますので、一概に政策研究に弱いということは言えないのではないかと思います。私自身は、政策研究に弱いので、やはり偉そうなことは言えないわけですが。

 それから、質問2点目。私の説明不足で誤解させてしまったかもしれませんが、出生率・死亡率一定にしての人口シミュレーション(西暦3000年で20数人になるというもの)は、推計とよべる代物ではなく、あれはあくまで、いまの出生率の低さを実感してもらうためのものです。私が推計として紹介したつもりのものは、2100年までの推計値のグラフです。あれについては責任が持てます。仰せのように、数百年先の未来などでは、どのようなテーマの議論もフィクションの域を出られないのではないでしょうか。

 最後の質問は実は一つめの質問と関連するわけですが、人口統計学の範疇である限り、そこに価値論は介在せず、外国人を受け入れるべきか否か、という価値判断はないと思います。それこそ政策研究の範囲です。ただ、人口統計学者の立場からは、国際人口移動が活発になるということは把握していますし、労働力人口の減少ももちろんわかっていますので、自ずから、外国人の流入が増加することは自然の流れと考えているでしょうし、私もその立場です。政策的立場からは、いろいろ議論があるので、ここでは書ききれませんが、なぜ外国人労働力を流入する必要があるのか、という、そもそもの問題の出発点が一般にはあまり議論されていないような、つまり、「足りなければ、受け入れる」という発想自体が安易なような気がします。モノやカネとは違いますから。

 疑問にお答えになったかどうか、かえって惑わせてしまったのではないかと心配ですが、また10日にも講義に伺いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
by 和田光平 (2007-02-06 17:07) 

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