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市民講座「少子高齢化と日本経済」(第19回) [少子高齢化]

市民講座「少子高齢化と日本経済」(第19回)                                      「人口減少社会における都市再生」                                                        講師:菊池威・亜細亜大学経済学部教授

11月18日(土)開催分。ずっとほったらかしにしていてゴメンなさい。

本日の学びのポイント                                                                                                                       6月に続いて二度目の登場である菊池先生。都市経済学の方がご専門なのかなと思うほどきれいな整理をしていただいた講義だった。                   

1.人口減少のメリット・デメリットは、都市部と農村部の比較で考える必要がある。例えば、人口減少は、都市部においては混雑の解消や家賃・地価・住宅価格の下落、居住・生活空間の拡大、職住近接の可能性拡大といったメリットをもたらすかもしれないが、その一報で、農村部においては過疎化の進展、集落・コミュニティの崩壊、廃家・廃校・廃業・荒地の増加、農林水産業の衰退(それに伴う農産品供給減)、自治体破綻の可能性増大といったデメリットも生む。地方の自治体では、UターンやIターンを奨励しているが、都市部の若壮年世帯が農村部に住む高齢の両親を呼び寄せ、相殺される可能性がある。

2.政府の都市再生本部の目指す「都市再生」は、都市しか見ていないという点で不十分である。「都市と農村のバランス(シティ・カントリー・バランス)の上に経った都市再生が喫緊の課題である。都市だけを見て都市再生を指向すれば、東京一極集中を加速させかねない。

3.東京周辺でも、「郊外型複合商業施設の進出と中心市街地の空洞化」「中枢管理機能の集中とそれに伴う長距離通勤、それに必要な周辺都市のベッドタウン化」といった現象が起きてきている。三鷹・武蔵野地域の場合、周辺地域からの人口流入が始まっているが、逆に流出が始まっている自治体もある。

4.日本の都市は、中心から周辺へ拡散して無秩序に発展してきている感がある。言い換えると、都市と農村がない交ぜになって発展してきてきている。これは、高度経済成長の過程で、都市のスプロール化と第1次産業の衰退によって都市が農地を侵食してきたからで、「しまりのない都市化」が進んで今日に至っている。

5.他方、現在求められているのは、都市機能を中心部に集中させ、人口集住を促進させる効率的な都市経営である。こうした取組みは「コンパクト・シティ化」と呼ばれ、1990年代の欧米諸国で持続可能な都市のあり方として主流化してきた。人口減少は都市の縮み現象(コンパクト化)をもたらす可能性があり、その過程で取り残された地域はグリーンベルトにして一種の田園都市が形成できる可能性がある。

6.しかし、そのためには、人口集住の核となる都市のアイデンティティが得られるかどうかにもかかっている。さもないと、コンパクト・シティ化の中で取り残される周辺地域(アウトスカート)に終わる可能性すらある。

田園都市を解く―レッチワースの行財政に学ぶ

田園都市を解く―レッチワースの行財政に学ぶ

  • 作者: 菊池 威
  • 出版社/メーカー: 技報堂出版
  • 発売日: 2004/04
  • メディア: 単行本

所感                                                                                                   1.都市と地方のバランス、都心と郊外のバランスといった、人口移動を念頭に置いた都市設計を強調された非常に面白い講義だったと思う。東京と田舎、東京都心とベッドタウン、市内駅周辺と郊外――それら各々に適用可能な枠組みだと思う。

2.三鷹という町を考えた場合、集住の中心となるのはやっぱり三鷹駅ないしは武蔵境駅、吉祥寺駅周辺だろうと思うのだが、こうした都市設計を考える場合に制約となってくるのは、理想的な都市設計と現在の自治体の境界が必ずしも一致していないことではないだろうか。三鷹市と武蔵野市が、市の行政区域を越えて連携して都市設計ができれば理想的なコンパクト・シティが形成できるのではないかと思う。

3.そう考えると、コンパクト・シティ化の議論は現在進められている市町村合併の理論的根拠にもなり得るように思える。都市の中心から遠い周辺地域に住む住民に対して十分な行政サービスを提供できないとしたら、逆に住民を中心部に集住させる方が効率的な行政になる。

4.但し、人の移動には時間もかかる。住みなれた土地を離れるのは高齢者ほど難しいと思う。


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