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『どんまい』 [重松清]

どんまい

どんまい

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/10/18
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
“ちぐさ台団地の星”と呼ばれたかつての甲子園球児、要介護の親を田舎に抱えるキャプテン、謎多き老人・カントク、そして夫に“捨てられた”洋子と娘の香織―草野球チームを通して交錯する「ふつうの人々」の人生を鮮やかに描ききった傑作長編小説。

本帰国するまで我慢していた重松清の新作を読んだ。電子書籍版があれば発売直後に購入していたと思うが、残念ながら電子書籍版はなく、帰国早々始めた歯医者通いの後、ちょっとの時間で近所のコミセン図書室に立ち寄り、たまたま未貸出で新着書籍の棚に置いてあった本書を即座に借りることにした。この週末をかけて読んだ。

祝・2019年プロ野球ペナントレース開幕。本書は表紙のイラストが1975年の広島カープ初優勝の時のユニフォームになっていて、この年のカープのユニフォームを身にまとった東京郊外の団地の草野球チームの面々のお話である。1975年のカープ優勝は、その前年に中日ドラゴンズが20年ぶりのセリーグ優勝を経験した直後だけによく覚えているが、当時小学校六年生だった僕はそれから43年が既に経過して、今や55歳になっている。

つまり、少なくとも本書の設定では僕と同世代である筈の主役の1人・洋子が、本書では40歳という設定だということは、今から15年前―――2003年頃が舞台となっている作品ということになる。1975年の広島カープに関する記述は作品中でよく出て来るが、今が何年で今の広島カープにどんな選手がいるのかにまでは言及されていない。もう1人、明らかに松坂がモデルだと思しき登場人物が出て来るが、松坂が西武入団したのが1998年秋で、それから5年稼働した時期というのは2003年ということになる。松坂は今も現役だが、本書で登場する同世代の旗手たる「吉岡」は本作品の最後に引退という選択肢を選ぶ。

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『家庭の科学』 [読書日記]

家庭の科学 (新潮文庫)

家庭の科学 (新潮文庫)

  • 作者: ピーター・J. ベントリー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/01/29
  • メディア: 文庫
内容紹介
寝坊する。シャンプーですべって転ぶ。パンを焦がす。ガソリンと軽油を間違える。カーペットにワインをこぼしてしまう。電子レンジで水を沸かしたら爆発した! ――朝から晩まで、あなたが日常生活で遭遇する小さなアクシデントの数々。なんでそうなるの? どうすれば防げるの?科学がみんな教えてくれます。一家に一冊。あなたの「なぜ?」に答えます!『不運の方程式』改題。

3月26日、ブータンをたち、日本に戻った。預入荷物は20kgオーバーで約4,000ニュルタムだった。相当な荷物を預けてしまったので、機内持ち込みしたのはバッグパックとビジネスバッグのみ。読んだ本は2冊のみだった。

先ず読んだのは、結局離任前に積読を解消できず、日本に持って帰らざるを得なくなった文庫版のこの1冊。『家庭の医学』をもじったと思われるタイトルで、僕らがほぼ忘れていた数々の「あるある」出来事を、科学的に解説している1冊である。主人公は朝からトラブル連発。その中身といったら上記内容紹介でも触れたようなものばかり。そのトラブルに引っ掛けて、なぜ人はそういうトラブルを引き起こすのか、どうしたら解決できるのかを科学的に解説する。解説があるから同じトラブルが避けられるのかというと、そういうわけでもない。薀蓄が語られているだけなのである。

でも、面白い。こういうタイプの本を読むのも久々で、忘れていた科学の原理を思い出させられたり、普段何気なく癖のようにやってしまっていたことが実は良くなかったというのがわかったりと、役には立つ。例えば、僕は低温やけどやマラソン走ってできた水ぶくれをすぐに針で突いてつぶそうとしてしまうが、これは本当はやってはいけない行為だったらしい。

一方で、ガムが髪に付いてしまった時に、僕が昔やったのは髪をはさみで切ることだったが、今もし同じようなことがあれば、ガムを温めるか油で拭き取る方法を試みるだろう。昔、ガムが口の中にある間にチョコレートを頬張ったところ、いつの間にかガムが溶けてしまったということもあったので。

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ドナー円卓会議の記事総ざらえ [ブータン]

ラストマイルは戦略的に行かないと:首相
Bhutan needs to strategise the last mile ride: PM
Kuensel、2019年3月13日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-needs-to-strategise-the-last-mile-ride-pm/
2019-3-13 Kuensel01.jpg

民主化が人間開発を前進させる
Democracy progresses human development
Kuensel、2019年3月13日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/democracy-progresses-human-development/
2019-3-13 Kuensel02.jpg

改めて開発と卒業後をイメージする
Re-imagining development, post graduation
Kuensel、2019年3月14日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/re-imagining-development-post-graduation/

UNDP、国王に記念盾を贈呈
UNDP honours His Majesty The King
Kuensel、2019年3月14日
http://www.kuenselonline.com/undp-honours-his-majesty-the-king/

開発協力パートナー、LDC卒業支援を表明
Development partners commit to support graduation
Kuensel、2019年3月15日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/development-partners-commit-to-support-graduation/
2019-3-15 Kuensel01.jpg

小規模零細産業と市民社会組織が持続可能な卒業への鍵
CSIs and CSOs, agents for sustainable graduation
Kuensel、2019年3月15日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/csis-and-csos-agents-for-sustainable-graduation/

円卓会議、卒業に向け政府を後押し
RTM boosts government’s confidence to graduate
Kuensel、2019年3月16日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/rtm-boosts-governments-confidence-to-graduate/
2019-3-16 Kuensel01.jpg

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世銀ブータン開発レポート [ブータン]

国の関与が大きい経済が民間部門の発展を阻害:世銀報告
State dominated economy hinders private sectors: World Bank
Kuensel、2019年2月15日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/state-dominated-economy-hinders-private-sectors-world-bank/


教育への投資が質の高い職につながらず:世銀報告
Lack of quality jobs despite heavy investment in education, says World Ban
Kuensel、2019年2月16日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/lack-of-quality-jobs-despite-heavy-investment-in-education-says-world-bank/

2019-2-15 WB.jpg2月中に疎かにした新聞の読み込みを、今さらながら始めているところである。といっても、自分の駐在期間もあと20日を切ってしまったので、他にもやることが多く、新聞の読み込みにもあまり熱が入っていないというのが正直なところだけど。

2月15日と16日のトップで、クエンセルが、1月に世界銀行が発表したワーキングペーパー"Bhutan Development Report - A Path to Inclusive and Sustainable Development" の内容を紹介している。本文は36頁程度の報告書なので、ご関心ある方は是非全文を読んでみられることをお勧めする。各論ではちょっとばかりの異論もあるのだけれど、ブータンの開発をマクロで見ているエコノミストの集合的な見方というのはこんなところになるのだろうなというのがよくわかる。

最初の記事の方は、政策当局と国営企業(SOE)の上層部の距離が近すぎて、民間企業が同じ土俵の上で競争できる環境になっていないというのが主旨である。まあSOEが存在するセクターというのが、SOEがなかった場合に本当に民間企業が参入してくるセクターなのかというと、そうでないケースもあると思うが、一般的にはこの指摘は的を射ているといえる。一方で、企業家の側の行動原理も、政策当局、それでできるだけランクが上の偉い人とつながりを作れるかというところで腐心しているようなところも感じる。

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本を出すのも大変で [ブータン]

昨年末にご挨拶した際、英文書籍を準備中だと書いた。原稿は全て書き上がっていて、著者の僕自身ができることは全て終わっているのだけれど、実際に本を出すとなった場合に、この国ではいろいろ難しいことがあることがわかってきた。

第1に、どこの出版社がいいのかと考え、既に本を出されたことがある方々に助言を求めた。装丁はとても立派で、いい作り方がされている。こんな本が出せたらいいなと思わせる出来だ。しかし、ほとんどの方は、国外で印刷製本をかけられていることがわかった。たいていの場合はインド・コルカタ、もっといいのは欧州でやられている。そうはいっても今の僕の立場でインドの版元とやり取りするのも難しいので、次善策を探ったのだけれど、それは多分クエンセルにしかできないだろうと言われた。

第2に、本当は商業出版にしてブータンの書店店頭に並べてもらえないかと考えたのだけれど、商業出版にするとブータンの規制当局(BICMA)のクリアランスを取らなければならないことがわかり、またしても壁にぶち当たった。しょうがないから私費出版に切り替えた。編集費用、印刷製本費用は全額個人負担である。180頁ぐらいで、300冊ぐらい刷ったら、30万ニュルタムぐらいらしい。(まあ、運転していた車を売って多少の原資は確保できたので、なんとかなるだろうが。)

第3に、私費出版だからというので、僕は悪乗りして、高校漫研部長をやっていた自分の娘に4点ほどイラストを描いてもらって、これを挿入することにした。まあそれはそれでいいのだけれど、問題はクエンセルの印刷機。色のバリエーションが少なくて、きれいな印刷ができないらしい。これは未だサンプルを見てないのでわからないが、娘が使った色彩を、本でそのまま表現するのはかなり難しいだろうと覚悟している。

Chisato04.jpg
《イラストの1枚。ブータンではドローン飛行禁止なんですが…》

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このためだけに作ったのか? [ブータン]

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国会を人々のもとに:ブータンのバーチャル集会
Bringing Parliament to the People: Bhutan's Virtual Zomdu Initiative
Open Government Partnership、2016年11月14日、Namgay Wangchuk(UNDPブータン)
https://www.opengovpartnership.org/stories/bringing-parliament-people-bhutans-virtual-zomdu-initiative

ブータン:バーチャルに国会を人々のもとへ
Bhutan: Bringing parliament to people - virtually
UNDP Asia Pacific、2016年1月30日
http://www.asia-pacific.undp.org/content/rbap/en/home/ourwork/development-impact/innovation/projects/bhutan-virtual-zomdu.html

3月1日、ロイヤルティンプーカレッジ(RTC)で開かれた某ワークショップに出ていて、ゲストスピーカーが「バーチャル・ゾムドゥ(Virtual Zomdu、バーチャル集会)」のウェブサイトを紹介して下さった。ブータンのIT業界の中ではかなり有名な方なので、当日のゲストスピーカーをされていたわけだが、SDGsとコミュニティの持続可能性を学生が論じるワークショップでこの話題を出された理由は、「SDGs」という言葉と、ご自身の専門とする情報通信技術を絡めて検索したらヒットしたということだったような印象だ。そして、このスピーカー、「活用状況には検討の余地があるけれども…」と正直におっしゃっていた。

このコメントは、僕が地方のゲオッグ・センターを幾つか訪問した時の印象とも非常に通じるものがある。全国205あるゲオッグ(郡)には、選挙で選ばれたガップ(Gup、郡長)、マングミ(Mangmi、副郡長)、それに行政を司り、中央政府からの任命で配置されているGAO(Gewog Administration Officer、郡行政官)、AEO(Agriculture Extension Officer、農業普及員)等がいる。彼らの務めるゲオッグ・センター(郡庁)には、執務室の入った管理棟の他に、コミュニティインフォメーションセンター(CIC)や、多目的ホール等が建てられている。

バーチャル・ゾムドゥというのは、このCICにテレビ会議システムを入れて、地元選出の国会議員が、国会会期中でありながらも、地元選挙区の人々の声を聞くことができるようにしようという取組みだと理解した。UNDPが2015年8月にローンチして、先ずはサムチ、ブムタン、タシヤンツェ、ダガナの4県で、47ゲオッグのCICにテレビ会議システムを入れたということらしい。

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