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本を出すのも大変で [ブータン]

昨年末にご挨拶した際、英文書籍を準備中だと書いた。原稿は全て書き上がっていて、著者の僕自身ができることは全て終わっているのだけれど、実際に本を出すとなった場合に、この国ではいろいろ難しいことがあることがわかってきた。

第1に、どこの出版社がいいのかと考え、既に本を出されたことがある方々に助言を求めた。装丁はとても立派で、いい作り方がされている。こんな本が出せたらいいなと思わせる出来だ。しかし、ほとんどの方は、国外で印刷製本をかけられていることがわかった。たいていの場合はインド・コルカタ、もっといいのは欧州でやられている。そうはいっても今の僕の立場でインドの版元とやり取りするのも難しいので、次善策を探ったのだけれど、それは多分クエンセルにしかできないだろうと言われた。

第2に、本当は商業出版にしてブータンの書店店頭に並べてもらえないかと考えたのだけれど、商業出版にするとブータンの規制当局(BICMA)のクリアランスを取らなければならないことがわかり、またしても壁にぶち当たった。しょうがないから私費出版に切り替えた。編集費用、印刷製本費用は全額個人負担である。180頁ぐらいで、300冊ぐらい刷ったら、30万ニュルタムぐらいらしい。(まあ、運転していた車を売って多少の原資は確保できたので、なんとかなるだろうが。)

第3に、私費出版だからというので、僕は悪乗りして、高校漫研部長をやっていた自分の娘に4点ほどイラストを描いてもらって、これを挿入することにした。まあそれはそれでいいのだけれど、問題はクエンセルの印刷機。色のバリエーションが少なくて、きれいな印刷ができないらしい。これは未だサンプルを見てないのでわからないが、娘が使った色彩を、本でそのまま表現するのはかなり難しいだろうと覚悟している。

Chisato04.jpg
《イラストの1枚。ブータンではドローン飛行禁止なんですが…》

第4に、これが今ものすごく苦戦していることなのだけれど、クエンセルの編集者って、タイトルだけ編集してそれが本文に及ぼす影響について見ていないのだというのがわかった。僕は小見出しに番号を振っていて、それを元に本文中でも「第〇〇節でも述べたように…」と書いていたところが数カ所あるが、クエンセルの編集では小見出しの番号を全部削除してしまった。それなのに本文中にある小見出しの番号はそのまま。もっと言えば、僕が送ったデータを相当見落としていて、データが反映されていない箇所がものすごく多い。お陰で毎ページ目を皿のようにしてチェックをかけないとどこにどんな落とし穴があるのかわからない。

第5に、編集者とデザイナーの連携の悪さ。編集を終えた原稿はデザイナーに送られて書籍用に組み立てられるが、この連携が悪くて編集者の思っていたようなデザインになっていないらしい。(編集をちゃんとやらなかった言い訳に、デザイナーがスケープゴートにされているのかもしれないが。)

第6に、こうした問題があって、もうメールベースでは埒が開かないと思って連絡をもっと頻繁にとりたいのだけれど、携帯がつながらない。デザイナーからゲラが出てくるのがあまりにも遅かったので、僕は編集者に相当以前からリマインドをしていたのだが、1月から2月上旬にかけて、編集者がまったくつかまらなかった。ご家族に不幸があって、留守にしていたとの由。それを言われてしまうと、こちらとしては追及できない。泣き寝入りしなければならなくなる。

第7に、ISBNの取得。商業出版であろうと、自費出版であろうと、ISBNを取得するには自分でやらねばならない手続きがある。ブータンの場合はこのISBN取得はCBS(Centre for Bhutan Studies)が手続きをやっているので、所定の書式に必要事項を記入し、ここ宛にレターを出さないといけない。この手続き、申請すればメールでISBNを知らせてくれる。本が出来上がったあかつきには、5冊を国会図書館に、3冊をCBSに納品しなければならない。

そんなわけで、胸を張って英文書籍をブータンに遺していけるのかどうか、かなり不安に陥っているというのが正直なところである。2月後半は、ほとんどWIFIのつながらないところを移動して回っていたので、その間ブログ更新は放棄して、多くの時間はゲラの校閲に充てた。来週明けにクエンセルに行って、赤ペンチェックを入れたポイントは全て先方に知らせるつもりだが、それでも全幅の信頼は置けないので、何度か進捗確認に直接出向いた方がいいと思えてきた。

既に、出来上がることを前提に僕は宣伝も始めてしまっている。既に内容の多くはウェブ上で個別公開されていてダウンロード可能だが、未発表の書き下ろしが4章あるので、やっぱり全部まとめて製本できた方がいいに決まっている。26日の離任まであと20日あまり。綱渡りの日々が続く。

◇◇◇◇

―――と言いつつ、実は保険もかけようと思っている。Kindle Publishingを使って電子書籍化しちゃおうとも考えている。まあ、これは当地での印刷製本が上手くいこうといくまいと、日本に帰ってからやっちゃうつもりである。

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