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『近代文学にみる女と家と絹物語』 [シルク・コットン]

最初にお伝えしたいことがあります。どうやら春からまた海外赴任のようです。どこの国かはいずれお知らせします。そうすると、長らく「読書メーター」で「読みたい本」ないし「積読本」にしていたものをできるだけ圧縮せねばという気持ちが働きます。また、逆に今関わっている仕事も収束させる必要があるので、手広く様々なジャンルの専門書を読んでものも、見直ししていかねばばと思っています。

近代文学にみる女と家と絹物語 (みみずく叢書)

近代文学にみる女と家と絹物語 (みみずく叢書)

  • 作者: 堀井 正子
  • 出版社/メーカー: オフィス・エム
  • 発売日: 1995/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

本日ご紹介する1冊も、前から読みたい本としてリストアップしてあったものだ。ただ、近所の図書館にはどこにも蔵書がなく、読むなら中古であっても購入しないと読めないという1冊だった。発刊は20年前である。送られてきたのは安い中古の1冊だったが、扉のところに著者が知人の方に謹呈したサインが入っている。どのような経緯があったのかは存じ上げないが、著者謹呈の本を中古本のマーケットに出されたのには恐れ入った。僕ならちょっとできない行為だが、お陰でこうやって入手することができたわけで、少なくとも僕が生きている間は、できるだけ手放さないようにしたいと思う。

多分、長野県のどこかの公開市民講座で使われていたテキストのようなものなのだろう。19世紀後半から20世紀前半にかけては日本は生糸輸出で近代化に成功してきたので、製糸や養蚕に関わった人々を題材にした文学作品は沢山あっても不思議ではない。そんな作品の幾つかは、既にこのブログでも紹介してきている。文学作品じゃないのも含まれてはいるが、その主な記事は以下の通りだ。

 『あゝ野麦峠』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-02-12

 『あゝ野麦峠』関連図書
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-02-16

 『続・あゝ野麦峠』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-02-26

 『絹の文化誌』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-03-06-1

 『地平線以下』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-03-20

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『楫取素彦と吉田松陰の妹・文』 [シルク・コットン]

楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫)

楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫)

  • 作者: 一坂 太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
  • 発売日: 2014/12/09
  • メディア: 文庫
内容紹介
2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の準主役、楫取素彦(小田村伊之助)のことが一番詳しくわかる決定版!!NHK大河ドラマ「花燃ゆ」のヒロイン・文の夫にして、吉田松陰の至誠を継いだ、知られざる偉人・楫取素彦(小田村伊之助)の人生に迫ります。天才で知られる吉田松陰の陰で、彼を生涯支え続け、松陰の死後もその志を継ぎました。幕末、長州藩主の側近として各地を飛び回り、坂本龍馬を桂小五郎に紹介して薩長同盟の端緒役となります。維新後は初代群馬県令として活躍し、富岡製糸場の危機を救い、のちに群馬の父と呼ばれました。こうした楫取の功績は驚くほど知られていません。本書は、楫取素彦と吉田松陰、その妹・文の生涯を丹念に描いた労作です。巻末には、坂本龍馬との出会いを語る楫取の回顧録「薩長連合の発端」と文(美和子)が、松陰がいた頃の杉家の話を語った「楫取美和子回顧録」を特別収録しており、必見です。

今年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』はご覧になっていますか? 僕は、去年の『軍師官兵衛』のように毎週かぶりつきで見るというようなことはないけれど、幕末の出来事を学ぶにはいいコンテンツだと思い、なるべく見るようにしている。井上真央さんがあまり好きじゃないというのもあるのだけど、まあそれは置いておく。むしろ、長年の大河ドラマフリークとしては、『花燃ゆ』というタイトルにも若干抵抗がある。『花神』、『草燃える』、『山河燃ゆ』、『炎立つ』等をガラポンしたらこんなん出ました的なタイトルだ。安易なネーミングだと最初から思っていた。

また、主人公をわざわざ吉田松陰の妹にしなくてもよかったんではないかという気もする。ドラマの視聴率が低迷しているので話題になっているが(僕はそんなに悪いドラマじゃないとも思うが)、夫・久坂玄瑞が蛤御門の変で自刃して長州藩が朝敵と見なされるというドラマのクライマックスが終わると、文が長州藩内外の情勢に絡むシーンが極端に減る筈なので、ドラマの脚本家としては相当頭が痛い時期を迎える。これからの方が視聴率確保が難しいんじゃないかと勝手に心配してしまうところもある。まさかと思うが、坂本龍馬とか西郷隆盛とか木戸孝允とか岩倉具視とかと文を絡ませるんだろうか。それじゃあ『利家とまつ』や『江』の二の舞だ。

なぜこんなことをグダグダ書くかといえば、松下村塾の関係者で吉田松陰と絡んでいた人で1年間という大河ドラマを持たせるとしたら、割と長生きした人――伊藤博文とか小田村伊之助とかを主人公に据えた方が、ドラマの脚本は書きやすかったんじゃないかと思うからだ。取り分け、小田村伊之助の最初の妻は松陰の妹・寿で、寿を亡くした後、松陰の母・滝の勧めもあって寿の妹である文と再婚している。「楫取素彦」に改名した小田村が、明治政府樹立後初代群馬県令になるまで結構な愛妻家だったらしいし、群馬県令を務めていた頃に寿を亡くし、喪が明けてすぐに文と再婚したのも、県令たる者が独り身でいるのも具合が悪かろうというぐらいの感じだったらしいから、楫取を中心に据える方が、多分人物としてもドラマとしても描きやすかったんじゃなかろうか。

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『絹の国拓く』 [シルク・コットン]

SilkCountry.jpg

絹の国拓く―世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 上毛新聞社
  • 発売日: 2014/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
世界遺産登録を目指した県民、国民の思いがついに実を結んだ。養蚕、製糸の技術開発に情熱を注いだ幕末から明治の先人たち。4半世紀に及ぶ登録に向けた水面下の努力と粘り強い活動…。登録への道のりは決して平坦ではなく、険しく、波乱に満ちていた。多くの困難を知恵と汗で克服し、偉業を成し遂げた記録は、小説よりドラマチックだ。上毛新聞が連載した登録に至る軌跡のすべて。

少し前に『絹の国を創った人々』を読んで、ちょっと読みづらいと書いたばかりだが、本日ご紹介する本の方は、実際に上毛新聞社の記者の方々が特集チームを組んで実際の執筆にあたられた記事をまとめたものなので、非常に読みやすい。ハードカバーで、しかも全頁カラー口絵付きなのに値段は1500円とお手頃で、僕は取りあえず市立図書館で借りて読んだけれど、よくまとまった1冊なので、お金を払って手元に置いておいてもいいかなと思っているくらいだ。

第1の良さは、「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界遺産登録に至るまでの経緯、関係者の努力が、時系列でうまくまとめられていることだ。なぜこの4ヵ所に決まったのか、群馬県内にある他の蚕糸業関連の事物はなぜ対象にならなかったのか、いろいろ謎なことがあったのだが、本書を読んでかなりスッキリした。

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『絹の国を創った人々』 [シルク・コットン]

絹の国.jpg

絹の国を創った人々―日本近代化の原点・富岡製糸場

  • 作者: 志村 和次郎
  • 出版社/メーカー: 上毛新聞社
  • 発売日: 2014/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
明治期、国を挙げての養蚕、製糸、絹織物の振興策が取られる。富岡製糸場の器械製糸をキーワードに、生糸、蚕種の輸出や養蚕技術の向上策など、日本版産業革命の推進力になった「絹の道への先駆け」ロマンとは!

富岡製糸場等の世界遺産登録に合わせて上毛新聞が組んでいた様々な特集ものの1つ。 地元の歴史研究家兼ジャーナリストが、群馬県や埼玉県北部の深谷周辺を出身とする幕末から明治期に活躍した偉人を取り上げて、近代日本の建設にどう貢献したのかを紹介している本である。(1人はフランスから招聘されて富岡製糸場の設計から創業にかけて貢献したポール・ブリュナであるが。) ジャーナリストの方が書かれたという割にはあまり読みやすい文章でもなく、誤植も目立つが、地元の人は一度読んでおかれるとよいであろう。地元への愛着が湧きそうだ。

世界遺産に認定された「富岡製糸場と絹産業遺産群」であるが、富岡はともかく、あとの3カ所については、それぞれの歴史的意義は説明がされているものの、シルク産業の発展という1つの歴史の中で、それがどこでどのように位置づけられているのかが各々の個別の説明だけでは全く理解できず、困ったことがある。本書が扱っている登場人物は大きくは6人だが、その郷土の偉人の伝記を描く中で、これら産業遺産群がそもそもどうやって作られていったのかが書かれており、その点からも理解はしやすかった。富岡製糸場が蚕糸業人材育成の拠点となっていた期間は意外と短く、その後は採算維持のためにいろいろ取組みが進められたが、それにコンパクトに触れている本として有用でもある。また、生糸の主要輸出先が欧州から米国に変化していった経緯が、本書を読んで初めてわかった気がする。

フィーチャーされている偉人の冒頭は渋沢栄一であるが、彼についての説明は多言を要しないだろう。明治政府の産業振興・工業化政策の一環として、器械製糸の導入を図るため、富岡製糸場の開設に踏み切った仕掛け人である。

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『富岡製糸場と絹産業遺産群』 [シルク・コットン]


遅ればせながら、1週間前の21日(土)、「富岡製糸場と絹産業遺産群」がユネスコ世界文化遺産に正式に決まった。関係者の皆さんの長年の努力がようやく実を結んだ格好で、本当におめでたいことです。関係者の皆さまのお喜びもひとしおでしょう。少し前に自分が本を書く際に富岡製糸場のこともかなり調べたことがあるので、こうして近代日本の発展を牽引した蚕糸業に再び注目が集まるのは嬉しいことである。

世界遺産認定がほぼ確実になっていた中、富岡製糸場にスポットを当てた本がチラホラ出始めている。僕も1冊ぐらいはと思い、富岡製糸場総合研究センターの所長さんの書かれた本を購入していた。しばらくは積読状態で放置しておいたが、今週海外出張した際にこの新書を携行し、現地でひと仕事終えた後で読み始め、一晩で読み終えた。

富岡製糸場と絹産業遺産群 (ベスト新書)

富岡製糸場と絹産業遺産群 (ベスト新書)

  • 作者: 今井 幹夫
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 2014/03/08
  • メディア: 新書
内容紹介
富士山に続いて本年、ユネスコ世界遺産登録をめざす群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」。明治5年創業以来、日本の近代化を支えた伝説の模範工場の歴史と真価が写真や絵画、数々の史料でいま甦る。カラーグラビア64頁+本文160頁。奇跡の産業遺産がここにある!

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南インドの農村-柳沢悠著作集中読込み月間 [シルク・コットン]

10月はあっという間に終わってしまった。毎週末何らかのイベントが入り、11月1日の転勤の準備もあったことで、とても慌ただしく過ごした。

思い起こせば、10月最初の週末は、広島まで出かけて広島大学を会場にして開催された学会に初めて顔を出してみた。もう2ヶ月ぐらい前の話に思えるが、未だ1ヵ月も経っていないのだ。そこで、僕は千葉大学の柳沢悠先生のご報告を初めて聞いた。

柳沢先生のフィールドは南インド・タミルナドゥ州ティルチラッパリー県の農村が中心で、同じタミルナドゥ州でもエロード県の農村で養蚕農家しか訪ねていない僕とはフィールドも違うが、対象村で全世帯を調査し、他の研究者が行なった南インドでの農村調査の結果にも言及されているので、発表を聞いていて本当に勉強になった。僕が断片的にしか見てこなかった特定農村の今を、南インドの共通の現象として一般化し、さらに18、19世紀頃の英国植民地統治時代にまで遡って農村社会の歴史的変容を押さえておられる。

僕は2012年に自分の調査結果をもとにして本を書かせていただいたが、その前に柳沢先生の著作にもっと触れていれば、もう少し深い考察ができたのではないかと悔いている。逆に言えば、柳沢先生の著作とそこで引用されている幾つかの文献をしっかり読んでおけば、自分が南インドで見てきたことに、これからでも箔が付けられるような気がする。自分がやってきたことを発展させるためにも、少しずつでも勉強を続けていきたい。

そんなわけで、10月は、図書館で借りることができる柳沢先生の著作を集め、毎週末に「早勉」時間を使って少しずつ読んでいった。本日挙げる書籍はどれも1冊まるごと読んだわけではなく、柳沢先生の書かれた章を中心に、タミルナドゥ州やカルナタカ州の農村変容を扱っている他の論文も合わせて部分的に読んだものである。引きまくったマーカーをいちいちここで引用するのも大変なので、一部分のみ引用する形でご紹介してみたい。

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アジア・中東: 共同体・環境・現代の貧困 (双書 持続可能な福祉社会へ:公共性の視座から)

アジア・中東: 共同体・環境・現代の貧困 (双書 持続可能な福祉社会へ:公共性の視座から)

  • 編者: 柳澤悠・栗田禎子
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2012/07/27
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
急速なグローバリゼーションと市場化のもと、崩壊する地域環境や旧来の共同的関係、生み出される新たな貧困層。伝統主義とは異なる形でのセーフティネットの構築に向け、新タな形態の共生を追求するアジア・中東の実践を追う。
読んだのは「第4章 岐路に立つ南インドの地域共同資源-管理体制、肥料、農村経済の変容と村落共同利用地」(柳澤悠)のみで、その構成は以下の通りとなっている。

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『日本の産業革命』 [シルク・コットン]

日本の産業革命――日清・日露戦争から考える (講談社学術文庫)

日本の産業革命――日清・日露戦争から考える (講談社学術文庫)

  • 作者: 石井 寛治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/11
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
製糸・紡績、鉄道、鉱山、金融。日本の近代化を支えたものは戦争と侵略だったのか?本書は日清・日露両戦争と産業革命の関係を軸に、構造を変革する主体の姿を解明、新たな歴史像を描出する。明治の国家目標「殖産興業」が「強兵」へと転換する過程を追い、19世紀末から20世紀初頭にかけて世界経済の中で日本が選択した道を鮮やかに活写する。
ゴールデンウィークに12連休を取って米国武者修行に出かけた際、僕が携行した本のうち、いちばん最後に読み始め、帰りの機中で読み切ったのが本日ご紹介する1冊である。日本での「産業革命」という視点が面白く、このところ日本経済史を読み直すような機会もなかったので、真面目に読んでみようと考えた。小説ばかりじゃありませんよ。

通説としては、日本の産業革命というのは、1880年代前半の「松方デフレ」による激しい資本の本源的蓄積(資本・賃労働関係の創出)の一時期を経て、1886年頃に始まり、日清・日露の二大戦争を経験した後、1907年恐慌前後にひとまず終わるというものらしい。これに著者が加えて強調したのは、日本の産業革命の前提そのものが、対外戦争についての緊張に満ちた政治的選択の中で創り出されたものだという点だ。征韓論派が下野して、殖産興業路線が基本国策として採用され、民間ブルジョアジーの活動への容認と支援がなされることで、日本の産業革命への道ははじめて切り開かれたのだと著者は強調し、そうした産業革命の前提条件の整備の過程で、日本政府は当時の国際的常識にも逆らい、外資の導入を禁止する自力建設の路線を選択したとする。(p.271)

そして、当然のことながら、この産業革命をリードしたのが、蚕種製造や製糸といった蚕糸業と綿紡績業だった。僕が本書を手にとった最大の理由は、僕らが通説としてよく聞かされている「蚕糸業が日本の近代化の原動力となった」という話を、もっと具体的に知りたいと考えたからである。蚕糸行政研究の専門家が書かれた歴史の本が別にあるのはもちろん知っているが、それを読む前に、もう少し日本の近代史の中で蚕糸業というのを客観的に捉えた研究者の書かれた本を読んでおきたいと考えたからだ。

その目論見はだいたい当たっていて、本書では取り扱う全期間を通じて、製糸業に関する記述が随所に見られる。それと並行的に進められていった鉄道、鉱山、金融などの分野での国の整備状況が絡められており、一過性の読み物としても面白いが、後で何度か読み返して当時の出来事をチェックする教科書・参考書としても有用だと思った。この本から引用してすぐに何か論文でも書こうというわけではないが、いずれは活用する場面もあるので、ずっと手元に置いておきたい。

当面僕の興味はそうした蚕糸業が1907年恐慌以降衰退の途を辿っていくそのプロセスにあるため、もう少し長いスパンで日本の産業近代史を描いた文献を読んでみる必要があるように思う。しかも、それを踏まえて南インドの蚕糸業の今を捉えるというその先の課題があって、それでなにがしかの発表を秋の某学会でするつもりで応募した。選考結果がどうなるかはまだわからないが、自分を追い込むために立てた目標であり、それに向けてもっと頑張っていかねばと思うし、その作業に集中するため、他の懸案はどんどん片付けていかねばとも思う。

いずれにせよ、本書はそのとっかかりとして読んでみてよかった。

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『内発的自然感覚で育みあう将来世代』 [シルク・コットン]

内発的自然感覚で育みあう将来世代―インド植林プロジェクトを通して学ぶ

内発的自然感覚で育みあう将来世代―インド植林プロジェクトを通して学ぶ

  • 作者: 矢崎 勝彦
  • 出版社/メーカー: 地湧社
  • 発売日: 2011/12
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
よりよい社会を将来世代に受け渡すために森が育ち、人が育ち、物語がつむがれていく。「三方善」のビジネスモデル実践録。
通販会社フェリシモの会長が、比較的最近書かれた本。インド駐在の頃から、フェリシモの方々とは接点もあるので、「ともに幸せになる幸せ」という会社の理念がどのようにして生まれてきたのか、本書を読んで少し勉強してみようと考えた。

そもそも僕がフェリシモと接点ができたのは、現在同社が支援してオリッサ、アンドラ・プラデシュ両州の5つの県で展開している綿花栽培農家のオーガニックへの移行支援の取組みの立ち上げに関わらせていただいたのがきっかけである。その事前調査の際、本書でも紹介されていて現在は専務の要職にあるH氏ともお目にかかり、同氏が以前から西ベンガル、ジャルカンド州などで展開されていた植林プロジェクトを通じてインドとは繋がりがあることを知った。1990年代から協力が始まったこの植林プロジェクトでは、禿山だった土地が木に覆われ、やがて野生のゾウがやって来るようにもなったというのを、「使用前vs.使用後」の比較の写真をもって見せていただいた。

この「ゾウの森」の話は同社の他のスタッフの方もよくオーガニックコットン栽培移行支援事業の説明の冒頭で、同社のインドとの関わりの前史としてよく言及される。しかし、そのプロジェクトで実際に同社の社員の方々が具体的にどのように関わられたのか、現地のパートナーとなった団体がどこだったのか、植林事業の際に必ず問題となる地域住民の主体性はどうやって引き出せたのか、日本からの「遠隔操作」(言い方は悪いが)でそれがどうやったら可能だったのか、そういったことはあまりわからなかった。

僕からしてみれば、オーガニックコットン栽培移行支援事業の立ち上げと立ち上げ後の管理運営でご苦労なさっている同社の社員の方々を横目で見てきたわけだから、1990年代前半以来これだけのご経験をされて今に至っているのだというのは驚きでもあったし、今オーガニックコットン事業に関わられている方々も、「植林プロジェクトではここまでやったんだから」というところで、会長の期待値がこのレベルにあるのだというのがわかり、今事業に関わられている方々も大変だなとは思いつつも、今お手伝いできることはしたいと気持ちを新たにした。

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あなたのTシャツはどこから来たのか? [シルク・コットン]

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

  • 作者: ピエトラ リボリ
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本
内容の紹介
 米フロリダ州で買った1枚5ドル99セントのTシャツについて、原料である綿の生産現場、繊維工場、小売店、古着の回収・流通などをたどる中で、グローバル化の問題を考察していく。
 綿は米テキサス州産だった。同州ラボック周辺の農地は現在、世界のTシャツの生まれ故郷である。綿作りのように単純な川上産業が、高度なサービス業中心の米国経済で繁栄し続けているのはなぜか。著者は歴史をひもとき、米政府の補助金制度、つまり200年以上にわたり発達してきた綿の生産・販売におけるリスクを緩和する政策が競争優位に影響していると分析する。
 綿は遠く海を隔てた中国・上海で糸に紡がれ、布に織られ、Tシャツに縫い上げられる。18世紀に産業が興って以来、繊維・衣料品生産の単純労働は低賃金、長時間労働、粗末な労働環境に耐えて働く労働者が担ってきた。中国は労働者の移動を制限する戸籍制度の下で、従順な労働者を尽きることなく供給している。豊富な労働力と低い人件費により、現在、中国は世界の繊維・衣料品産業に君臨している。
 Tシャツの「一生」の大部分に、政治による保護や介入が関わっていることを示し、グローバル化を引き起こしているのは市場ではなく政治や歴史であると結論づける。
今月上旬に市内の図書館で借りた。途中出張があったりして優先度を上げて読まなければならなかった本もあったので、返却期限を2週間延長し、またその期限も今月末に迫っていたため、急いで読むことにした。

元々本書を読もうと思ったのは、少し綿花やコットン製品貿易のことを勉強したいと思ったからである。インドでオーガニックコットン栽培支援事業立ちあげに関わったことから、僕は日本のコットンアパレル製品販売会社や繊維商社の方々と知り合いになった。特に繊維商社の方々が、米国駐在経験があると仰っていたのが印象に残っている。でも、コットン製品のバリューチェーンについての僕の知識はあまりにも少ない。

―――以上の記述は、今年2月26日時点で一度記事を書こうと試みて、途中で保存したところまでに書いたものである。それから半年近くが経過しており、中途半端な状態で記事を残しておくのも忍びないと思い、取り急ぎアップすることにした。

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『小さな変革』 [シルク・コットン]

小さな変革

小さな変革

  • 作者: ヒューマン・ライツ・ウオッチ
  • 出版社/メーカー: 創成社
  • 発売日: 2009/03/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
「朝4時に起き、絹糸の巻き取りをして働いた・・・(中略)・・・家に帰るのは週に一度だけ。あとは、2,3人の子といっしょに工場で寝起きして、自炊した。夜は機械の間で寝た。工場主から米を渡され、それを自分で炊いていた。代金は賃金から引かれた。休憩は1時間だけで、日に12時間働いた。糸を切るようなミスをしたら工場主から叩かれ、きたない言葉で罵られた。そしてもっと働かされた。(本文より抜粋)」
前著「インドの債務児童労働:見えない鎖につながれて」に続き、絹織物業に焦点をあてた本書では、債務児童労働の構造・実態、カースト差別との関係を法の執行に注目し分析しています。(NPO法人国際子ども権利センター紹介分より)
インドの製糸、絹織物工場では児童労働が行なわれているのではないかという話は聞いたことがある。インドの蚕糸業の暗部だろうと思う。僕は昨年南インドを訪れた際、ラマナガラム繭市場周辺に集積している製糸工場を見学したことがある。多条繰糸機を導入していたその工場では、14歳以下の労働者はいなかった。おそらく、伝統的な座繰り式の家内制零細工場の方が児童労働はあり得るのではないだろうか。

製糸工場での労働が過酷だというのはわかるし、そこで就学適齢期の児童が労働に従事しているのは一般的に言ってよくないことだというのもわかる。ただ、日本だって明治から大正にかけて全国各地に林立した製糸工場で雇われていた工女の労働環境は劣悪だったし、中には12、3歳の女の子もいたという。『ああ野麦峠』を読むと、過酷な労働環境は指摘はされているものの、工女たちの多くが、村で暮らしているよりも食事にも恵まれていてずっとましだとポジティブに捉えているのが意外だった。今のインドと明治・大正期の日本を比較するのは反則行為かもしれないが、本書を読んでいて蚕糸業自体が悪者視されていることについてはちょっと複雑な気持ちがする。

原題のサブタイトルは「インド・シルク産業における重債務児童労働」となっている。ところが、訳本のサブタイトルは「インドシルクという鎖につながれる子どもたち」である。この2つは、似ているようでちょっと意味が違う。訳本の方が、「シルク=悪」というニュアンスが強く、シルク産業が存在していること自体が問題だと指摘されているような気がする。

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