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『近代文学にみる女と家と絹物語』 [シルク・コットン]

最初にお伝えしたいことがあります。どうやら春からまた海外赴任のようです。どこの国かはいずれお知らせします。そうすると、長らく「読書メーター」で「読みたい本」ないし「積読本」にしていたものをできるだけ圧縮せねばという気持ちが働きます。また、逆に今関わっている仕事も収束させる必要があるので、手広く様々なジャンルの専門書を読んでものも、見直ししていかねばばと思っています。

近代文学にみる女と家と絹物語 (みみずく叢書)

近代文学にみる女と家と絹物語 (みみずく叢書)

  • 作者: 堀井 正子
  • 出版社/メーカー: オフィス・エム
  • 発売日: 1995/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

本日ご紹介する1冊も、前から読みたい本としてリストアップしてあったものだ。ただ、近所の図書館にはどこにも蔵書がなく、読むなら中古であっても購入しないと読めないという1冊だった。発刊は20年前である。送られてきたのは安い中古の1冊だったが、扉のところに著者が知人の方に謹呈したサインが入っている。どのような経緯があったのかは存じ上げないが、著者謹呈の本を中古本のマーケットに出されたのには恐れ入った。僕ならちょっとできない行為だが、お陰でこうやって入手することができたわけで、少なくとも僕が生きている間は、できるだけ手放さないようにしたいと思う。

多分、長野県のどこかの公開市民講座で使われていたテキストのようなものなのだろう。19世紀後半から20世紀前半にかけては日本は生糸輸出で近代化に成功してきたので、製糸や養蚕に関わった人々を題材にした文学作品は沢山あっても不思議ではない。そんな作品の幾つかは、既にこのブログでも紹介してきている。文学作品じゃないのも含まれてはいるが、その主な記事は以下の通りだ。

 『あゝ野麦峠』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-02-12

 『あゝ野麦峠』関連図書
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-02-16

 『続・あゝ野麦峠』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-02-26

 『絹の文化誌』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-03-06-1

 『地平線以下』
 http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-03-20

今回ご紹介する本を読んでみて、蚕糸業文学の中核を成すのはやっぱり横田英の『富岡日記』と山本茂美の『あゝ野麦峠』なんだというのがわかった。この2作品は本書の中でも扱われ方が別格で、それぞれ日本における器械製糸の揺籃期と発展期の代表的な作品だ。そこでのいちばんの違いは製糸工女の置かれた労働環境で、揺籃期は技術を学んで自分の故郷に帰り、地元での器械製糸に行かそうという前向きなムードもあったようだが、それが20年も経過して全国各地で器械製糸が普及すると、製糸工女は農村の貧困世帯の女子の余剰労働力を吸引する、単なる働き手として見られていたような雰囲気が感じられる。岡谷あたりの製糸工場で働く工女の職場環境の話になると、すぐに細井和喜蔵の『女工哀史』が引き合いに出される。確かに職場環境としてはそんなことがあったのかもしれないが、『女工哀史』は基本的に綿紡績工場のお話である。

わずか80頁強の短い本だが、やはり当時の日本の産業の根幹をなしていて就業者人口もそれなりにいたことから、文学作品で扱われることは多かったらしい。だから、知らない作品も幾つか登場した。いずれ読んでみたいとは思うけれど、これは次の海外赴任から帰ってきてからの課題ということになるだろう。

とはいっても、僕は未だ肝心の『富岡日記』を読んでない。せっかく昨年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の終盤であれだけ群馬の蚕糸業が取り上げられたわけだし、読まずに海外行っちゃうのはなんだか心残りだ。僕はまだ富岡製糸場にも行ったことがないし、これは海外赴任前の懸案事項として、是非実現させてしまいたいし、その予習として『富岡日記』は読んでおきたいと思う。

幸いなことに、次の赴任国にも伝統的な絹織物が今でもあるらしい。但し、産業養蚕で用いられるいわゆる家蚕ではなく、野蚕ではあるが。従って、この絹織物を発展させていって産業としての養蚕振興というのは難しいだろう。機会があればブログでも紹介したいので、それに先立つ日本の養蚕の復習ということで、ちょうどいい読み物だった。

養蚕・製糸に関してはまだ「読みたい本」リストに残っている本が数冊存在する。本日ご紹介した本から派生的に出てきた新たな作品タイトルは帰国後の課題でもいいと思うが、冒頭でも書いた通り、「読みたい本」や「積読本」に残っているものは、早めにクリアしてしまいたいと思っている。



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