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あなたのTシャツはどこから来たのか? [シルク・コットン]

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

  • 作者: ピエトラ リボリ
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 単行本
内容の紹介
 米フロリダ州で買った1枚5ドル99セントのTシャツについて、原料である綿の生産現場、繊維工場、小売店、古着の回収・流通などをたどる中で、グローバル化の問題を考察していく。
 綿は米テキサス州産だった。同州ラボック周辺の農地は現在、世界のTシャツの生まれ故郷である。綿作りのように単純な川上産業が、高度なサービス業中心の米国経済で繁栄し続けているのはなぜか。著者は歴史をひもとき、米政府の補助金制度、つまり200年以上にわたり発達してきた綿の生産・販売におけるリスクを緩和する政策が競争優位に影響していると分析する。
 綿は遠く海を隔てた中国・上海で糸に紡がれ、布に織られ、Tシャツに縫い上げられる。18世紀に産業が興って以来、繊維・衣料品生産の単純労働は低賃金、長時間労働、粗末な労働環境に耐えて働く労働者が担ってきた。中国は労働者の移動を制限する戸籍制度の下で、従順な労働者を尽きることなく供給している。豊富な労働力と低い人件費により、現在、中国は世界の繊維・衣料品産業に君臨している。
 Tシャツの「一生」の大部分に、政治による保護や介入が関わっていることを示し、グローバル化を引き起こしているのは市場ではなく政治や歴史であると結論づける。
今月上旬に市内の図書館で借りた。途中出張があったりして優先度を上げて読まなければならなかった本もあったので、返却期限を2週間延長し、またその期限も今月末に迫っていたため、急いで読むことにした。

元々本書を読もうと思ったのは、少し綿花やコットン製品貿易のことを勉強したいと思ったからである。インドでオーガニックコットン栽培支援事業立ちあげに関わったことから、僕は日本のコットンアパレル製品販売会社や繊維商社の方々と知り合いになった。特に繊維商社の方々が、米国駐在経験があると仰っていたのが印象に残っている。でも、コットン製品のバリューチェーンについての僕の知識はあまりにも少ない。

―――以上の記述は、今年2月26日時点で一度記事を書こうと試みて、途中で保存したところまでに書いたものである。それから半年近くが経過しており、中途半端な状態で記事を残しておくのも忍びないと思い、取り急ぎアップすることにした。

実を言うと、借りていた本を返却する前に、中古の本を1冊購入した。借りていた本に貼り付けてあった付箋を購入したマイブックにペタペタ貼り直し、印象に残った記述にはマーカーでラインを引いておいた。これだけやっておけば後でブログの記事も書きやすいだろうし、読み直す時の参考にもできる。そうは思ったが実際に半年も間を空けて再度記事を書こうとした際に、個々の記述ではなく全体の構成について理解しておく必要があることを痛感し、仕方ないので訳者あとがきからの引用で内容紹介のお茶を濁すことにする。いずれ個別の引用箇所について紹介する第二弾の記事を書いてみたいと思う。

僕らが着ているTシャツの一生は、原料であるコットンの生産現場から、繊維工場、小売店、古着の回収と流通へと続いている。そして、僕らが「グローバル化」の名の下にかなり激しい市場競争が繰り広げられていると思い込んでいる繊維市場だが、著者によると、実は原料コットンからTシャツになって消費者の手元に届くまでは、実は市場競争を回避しようとする政治力に翻弄されていて、Tシャツが本当の意味での市場原理や自由貿易に出会うのは、古着になってフリーマーケットに送られてからだと本書では述べている。グローバル化の中で勝ち組になるためには、経済的な力だけでは不十分で、国際社会を相手にするだけの政治力が必要であるという。

僕は2003年に米国駐在生活を終えて帰国する際に、Tシャツを含めた相当数の古着を、近所に設置されていたドロップボックスに投函した。本書ではそうしてタダでNGOや教会が集めた古着を業者が買い取ることで、NGOや教会は活動資金を得、買い取った業者は古着を何種類にも選別して米国内で再販に回すもの、途上国に輸出するものを分けていく。そして途上国に持って行かれた古着は、さらに選別され、時には縫製し直されて、新しい衣料品として店頭販売に回るらしい。こうした古着になってからの流れは、資源が相当に有効に活用されている姿が想像できる。

本書は、「グローバル化する経済活動をTシャツというわかりやすい材料で解説」(p.329)していることで注目され、多くの国々で訳本が出ている。日本語版も翻訳がわかりやすく、極めて平易な表現で纏められており、非常に読みやすい本に仕上がっている。ちょっと頑張れば高校生でも十分読める本なので、僕が読み切ったら、次は来年高校に進学する長男、そして中学生の長女、そしていずれは今小学生の次男も読んで有効活用をしていって欲しいと期待する。普段からお世話になっているTシャツがどのように作られるのか、古着として寄付したらそれがどのようになってどこで活用されるのかを理解するのに格好の図書だ。

子供達を見ていると、自分達が消費しているものについて、原材料はどこで生産され、それがどこに運ばれて誰によって加工され、そしてそれが誰によって運ばれて、お店の店頭に上るのかまで思いをはせるような思考の訓練が全くできていないのではないかと危惧を抱くことが多い。Tシャツなんてその最たる例だが、それ以外にも、ラーメン屋で食べるラーメンの具材の調達先とか、書店で購入するマンガ雑誌がどのようにして作られるのかとか、「グローバル化」の文脈とはちょっと違うかもしれないが、そういう世の中の「仕組み」にもっと興味を持って、調べてみる方向になんとか動機づけできないものかと頭を悩ませている。

この本は2006年12月の発刊当時に一度購入したいなと思ったことがある。タイトルは面白そうだったが、当時の僕は仕事の方で追いつめられており、仕事と無関係の本を1冊購入してすぐに読みたいと思えるほどの心の余裕もなかった。それから5年も経過してようやく読めたわけだが、そんなに肩肘張って専門書のように身構えなくても、内容的には気楽な読み物と捉えて、通勤電車の中でパラパラと頁をめくっていればよかったのだというのがわかった。

読了後に本を購入して積読にしておくパターンとしては、最近ではポール・コリアー『最底辺の10億人』がある。こうして我が家の蔵書が徐々に積み上がっていく中で、次にいつ本書に手を伸ばせるかはわからない。少なくとも、コットン関連で何かあれば、予習も兼ねてもう一度読み直してみることは十分あり得るだろう。


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