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英国人尼僧の奔走 [ブータン]

ブータンでせっかくいいものを作ることができても、それを世界中の消費者に知ってもらうことは難しい。ブータンでせっかく優れた社会貢献事業が行われていても、それを世界中の人に知ってもらい、支持者を募ることは難しい。強い動機と意志を持っていたとしても、往々にしてそれは、ものを作ることや、現場での活動に多くの時間が割かれ、買い手を探すことや、支持基盤を強化することに時間とエネルギーを投入することがおろそかになってしまう。

ここに住んでいて常々感じるのは、市民社会組織(CSO)の数の少なさだ。ブータンでCSOを自称している団体は30数団体しかないと聞くし、名前の知れたCSOであっても、財務基盤がぜい弱で、政府や外国からの資金支援がないと事業の存続すら危ういという話は度々耳にする。かく言う僕自身も、外国人であるだけでなく、日本人であることから、「援助してくれないか」と言われることが少なくない。CSOが作っているパンフレットを見ると、寄付金の受付口座はしっかり明記されている。でも、肝心の寄付者に対する説明責任はどのように果たしているのか、財務諸表は作っているのか、と尋ねると、そういうものは作っていないということが判明する。資金ギャップがいくらぐらいあるのかと尋ねても、事業実施にかかる支出がどれぐらいあるのかしか教えてくれない。自分達の活動を外国の人々に知ってもらう努力を自分達でしているのかと尋ねると、外国には行ったことがないという。ブータン人は内向き志向なので仕方ないが、その分、ここに住んでいる外国人に安易に頼ってしまう傾向が強い。

2017-3-20 Draktsho03.jpgピースが欠けている―――。そんな思いを抱きながら毎日過ごしている。

いいものを作ればマーケットが要る。作ることに一生懸命で、それを外国に売るとなったら、ブータンに来る外国人観光客が安直なターゲットになる。外国人観光客受入れを抑え気味にしていてただでも狭いマーケットで、同じようなものを沢山作っても売れない。僕が個人的に見て目的も活動内容も素晴らしいと思うCSOであっても、寄付者を国内にばかり頼っていては財務基盤強化の余地はかなり限定される。外国の消費者、外国の市民社会とつなげるピースが必要なのだと思う。それを、1人の企業家や1つのCSOの努力だけでなんとかしろというのはハードルが高すぎで、「つなぐ」という役回りは、ブータン人ではない誰かが担ってコラボしていくことが必要なのだろうと思う。

1月、僕はある英国人女性と初めてお目にかかった。仏教僧の装束を身にまとい、きれいに頭を丸めた、青い目の女性である。話す口調には落ち着きが感じられ、会話を続けているうちにこちらまでいい気持にさせられる。名前はエマ・スレイド、別名ペマ・デキという。

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