『海外でデザインを仕事にする』 [読書日記]
内容紹介
自分なりのスケールで世界に確かな存在感を示す14人のデザイナーによるエッセイ。
IDEOの欧米オフィスを渡り歩いた職人的仕事術、Googleのアートディレクターに至る紆余曲折、テキスタイルの可能性を探る北欧のアトリエ風景、制約だらけの途上国のファブラボでの奮闘・・・
フィールドに飛び込み領域を切り拓く先駆者からのメッセージ。
1月に出たばかりの本だが、知り合いの方が2人、本書にエッセイを寄稿されているので、2月に日本に帰った時に1冊購入してブータンに持って来ることにした。大きくは欧米で働いておられた方と、中国、シンガポール、フィリピン、ガーナ等の国々に足を運んだ方々とに分けられる気がする。
僕ら中年世代は「デザイン」というと本当に狭い意味でのデザインしかイメージできないことが多いが、2年ほど前に大騒ぎになった新国立競技場の建設問題でもちょっとだけ垣間見れたように、1つの建物が出来上がるためには様々なステークホルダーとの調整も出てくる。単に建造物のデザインだけでなく、それに関わる人々全ての役割を定義して、全体を俯瞰できるデザインである必要がある。
本書で登場する多くの執筆協力者が、大学でデザインを勉強して、取りあえずメーカーに就職して働き始めてみたものの、全体の中の一部のみのデザインをやらされていて、そのうちに全体のデザインをやりたくなって会社を辞め、海外に飛び出していったという点では共通性がある。単に白い画用紙の上にスケッチを描くだけでなく、実際のステークホルダーとの調整も入ってくる。デザイナーというよりも、ひょっとしたら「トータルコーディネーター」と言った方がいいのかもしれない。
どこの国に行っても、何をやろうとしても、本当にそこに必要と思われる仕事は、複数のステークホルダー、省庁、企業、住民/市民等にまたがることが多い。それまでつながっていなかったもの、なかなかつながれなかったものをつなぎ合わせることで、今までとは違う何かが生まれてくる―――そう思えることは多いけれど、実際にそれを実現させるのは大変なことだと思う。当事者はわかっていてもできてこなかったケースも少なくない。そういうことはブータンに住んでいてもよく直面する。必要なのにできてないのがわかっているから、政府は「コーディネーション」や「コラボレーション」を強調するのだろう。