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『流星と稲妻』 [読書日記]

流星と稲妻

流星と稲妻

  • 作者: 落合 由佳
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/09/13
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
熊のような巨体の阿久津善太は、授業で、もう一人の剣道経験者、蓮見宝と模範試合をすることになるが、小柄でおどおどしている宝に、あざやかに「抜き胴」を決められてしまった。クラスの中では「根性なしとビビり」と、からかわれている善太と宝は、剣を交えるうちに互いをかけがえのないライバルとして意識するようになっていく。
【MS市立図書館】
有名な野間道場が近くにある講談社から、剣道を題材にした子ども文学作品が出た。僕が読書メーターでフォローしている読者さんが、最近読了したとして挙げておられた1冊で、僕もそれにより本作品の存在を知った。

うちの末っ子は小6になってから剣道を辞めてしまったので、こういう作品を読ませる機会は逸してしまったが、小学生のお子様がいらして剣道をされている親御さんなら、おススメしたい作品だと思う。こういう、的確な助言と指導ができる絹先生のような先生がいらっしゃる道場は少ないのではないかと思われるが、勝ち負けじゃなく、人としての成長機会を与えてくれる剣道の良さを味わえる作品である。

こういう作品を読むこと自体、僕自身が少しばかり剣道に未練を感じている証拠なのかもしれない。

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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上下巻 [読書日記]

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/12/16
  • メディア: Kindle版
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下

プロジェクト・ヘイル・メアリー 下

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/12/16
  • メディア: Kindle版
内容紹介
地球上の全生命滅亡まで30年……。全地球規模のプロジェクトが始動した!
グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。
『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。
【コミセン図書室】
3月上旬に僕の任地を訪問された方から薦められたSF作品。『三体』も同時に薦められたのだが、長すぎて手を出すのは勇気も要ったので、上下巻2冊構成の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に先に挑戦することにした。3月22日に帰って来て、自宅近所のコミセン図書室に行ったら、すぐに2冊まとめて借りることができた。

宇宙空間での3Dプリンタ使用シーンが当たり前のように出てくる。CNC切削加工なんかも登場する。必要なものはその場で作る―――その究極の姿が宇宙船の船内外での活動ということになる。

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『安倍晋三回顧録』 [読書日記]

安倍晋三 回顧録

安倍晋三 回顧録

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/02/08
  • メディア: Kindle版
知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされる
2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に倒れ、非業の死を遂げた安倍元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。第1次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。オバマ、トランプ、プーチン、習近平、メルケルら各国要人との秘話も載録。あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った、計18回、36時間にわたる未公開インタビューを全て収録。知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされます。
【購入(キンドル)】
好きか嫌いかの二択だったら必ず「嫌い」と答える。歴代総理経験者の中でも最も「嫌い」な部類に入る―――。ブログではあまり政治の話はしてこなかったが、正直言えば、総理時代の安倍氏にはあまりよい印象は持っていない。

それでも読むことにしたのは、メディアで登場する多くのコメンテーターが本書を言及するからである。発刊から間もない時期で、まだ最初の数節しか読んでないような段階であっても、出演していた番組でわざわざ言及した人もいた。僕が朝のウォーキングの最中に聴いている番組のキー局自体が与党寄りなので、そういうコメンテーターを多く集めている傾向がないとはいえないが(それはある意味ここ数年の番組改編で、それまで愛聴していたTBSラジオがつまらなくなったからだともいえる)、2月以降複数のコメンテーターが度々言及していたし、その番組以外の場でも耳にする機会が何度かあった。安倍氏のことをどう思っていようと、一度は彼の言い分を訊いてみるのも悪くはないか―――そんな思いで手に取り、一時帰国の最初の読書の対象とした。

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『天路の旅人』 [読書日記]

天路の旅人

天路の旅人

  • 作者: 沢木耕太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/10/27
  • メディア: Kindle版
内容紹介
「この稀有な旅人のことを、どうしても書きたい」。
「旅」の真髄に迫る、九年ぶりの大型ノンフィクション。
第二次大戦末期、敵国の中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した若者・西川一三。敗戦後もラマ僧に扮したまま、幾度も死線をさまよいながらも、未知なる世界への歩みを止められなかった。その果てしない旅と人生を、彼の著作と一年間の徹底的なインタビューをもとに描き出す。著者史上最長にして、新たな「旅文学」の金字塔。
【購入(キンドル)】
気が付けば、3月も既に23日にになっている。
この間、ブログ更新を完全にストップしていてスミマセン。
言い訳で必ず言うのは、こんなに働いた3週間はなかったということです。
翌日のプレゼン資料の作成が前夜の時点でまったく着手できておらず、早朝に慌ててやったなんて日も。
しかも、二度にわたってティンプーにも行った。
そして、今は一時帰国して東京の自宅にいる。

こんなに慌ただしい3週間の中で、会話を交わした邦人お二人から、くしくも沢木耕太郎の近著について聞かされることがあった。ブータンに住んでいるなら読んでおいたらいいと。実際、本書の主人公の西川一三は、インドで仕入れたタバコをカリンポンからチベットのラサに密輸しようとしていた途中、ルートを変えてブータン入りし、そこで売り払ったことがあったらしい。

それで、仕事をなんとか片付けて、帰国の飛行機に乗り込む際、この帰国の途上で本書を読んじゃおうと考えた。パロを飛び立ったドルックエアーのフライトは、西川の辿ったルートの上空を飛ぶ。ジュモラリ峰を背に、右手にはカンチェンジュンガを眺めながら。

ブータン入りはその1回だけだったらしいが、物語の後半の舞台はインドやネパールで、自分も訪れたことがあるような地名がずらずらと出てきた。バラナシ、サルナート、クシナガル、ゴラクプール、ブリンダ―ヴァン、マトゥーラ。さらにはネパールのルンビニにビルガンジ、チサパニ峠にチョーバル峠。その西川の行動範囲の広さは半端がない。


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『セブン セブン セブン』 [読書日記]

セブン セブン セブン アンヌ再び… (小学館文庫)

セブン セブン セブン アンヌ再び… (小学館文庫)

  • 作者: ひし美ゆり子
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/02/10
  • メディア: Kindle版
内容紹介
今の子どもたちは、家の周囲に空き地や原っぱもないし、そんな時間もなくなって、「缶蹴り」や「陣取り」をして遊ぶような、幼馴染の世界を失っているけれども、ウルトラセブンをつくっていた人間関係は、それに似ていたと思う。おやじさん(円谷英二さん)はその中で「大将」だった。そしてアンヌは、みんなに可愛がられた『オミソ』のような存在だったのではないか、と今にして思い至るのである。(解説より)
永遠の特撮ヒロイン、アンヌ隊員がホンネで書いたあのころの真実。写真ページを刷新して待望の文庫化!
【Kindle Unlimited】
まあ、Kindle Unlimitedでダウンロード可能だったから読んだわけです。昨年10月はウルトラセブン放映開始55周年だったそうで、YouTube動画でも各回のストーリー解説とか円谷プロのウルトラマン公式チャンネルでウルトラセブンの番組再放送が行われたりしている。このブログ記事を書いている時期はちょうどウルトラセブンの第14、15話「ウルトラ警備隊、西へ」が公式YouTubeチャンネルでは公開されていたのだけれど、これがテレビ放映されたのも1968年1月上旬だったらしいから、本当に55年前の今頃だったことになる。粋な配慮だな。

当時の僕は4歳で、リアルタイムでウルトラセブンをテレビで見ていたのかどうか、記憶が定かではない。親に買ってもらったソノシートで、第18話『空間X脱出』はなぜか聴いていて、「擬似空間」「アマギ隊員」「ソガ隊員」「ベル星人」といったキーワードは、それで覚えたものと思われる。ウルトラセブンが確実にインプットされるのは、むしろその後何度か行われたウルトラシリーズの再放送を通じてのことだったのではないかと思う。

で、なんとなくの流れでウルトラセブンものが何か読んでみたくなり、いちばんお手頃だったのが、Kindle Unlimitedに上がっていたアンヌ隊員役ひし美ゆり子さんの初エッセイ集のリメイク版だったというわけ。これだけでもセブンの撮影裏話はいろいろと知ることができて面白い。

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『御社の新規事業はなぜ失敗するのか?』 [読書日記]

御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学 (光文社新書)

御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学 (光文社新書)

  • 作者: 田所 雅之
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/02/18
  • メディア: 新書
内容紹介
外部環境が激しく変わり、プロダクトやサービスのライフサイクルがどんどん短命になる現代において、「うちの会社には新規事業は必要ない」と断言できる人は、よっぽど環境が恵まれているか、変化に非常に鈍感かのどちらかだ。少なくとも、本書を見つけた人であれば、新たなビジネスを生み出すことの重要性は、すでに感じているのだろう。それなのに、なかなか一歩を踏み出せない。いざ踏み出すとなっても、及び腰になる――。なぜ新規事業には、ネガティブなイメージがつきまとっているのだろうか? そして、なぜ実際、たいていの新規事業はうまくいかないのだろうか。このような現状を変える方法を本書では明らかにしたい。結論を先に言ってしまえば、「3階建て組織」を実装できるかだ。
【購入(キンドル)】
本書の著者には『起業の科学』(2017年)というベストセラーがある。ちょうど、ブータンで「スタートアップ」と呼ばれる人々との付き合いが始まって、その付き合いの中で彼らに対して若干の不信感も芽生え始めていた時期でもあったので、日本人的に見た場合の起業の王道みたいなものを一回知っておきたいという気持ちもあって、注目していた新刊だったが、「大きいディスプレイを備えた端末で読む方がいい」という注意書きにも関わらず、キンドル版でも2000円以上するというのでどうしても買う勇気が起きず、先送りにした。

日本に戻ってからも、図書館で借りられないかと何度か試みたが、いずれも長い順番待ちがあるのに怖気づき、結局読むことができずに今日に至っている。そのうちに「ブータン人スタートアップとの付き合い方」という当初の問題意識の優先順位は後退してしまい、そもそも自分自身が定年後にどうするかという別の問題意識が台頭してきている。それに必要なのは起業の知見よりもそもそもの技能の方なので、『起業の科学』に手を出すのは、もうちょっと先でもいいかと思っている。

ただ、今回ご紹介する書籍に関しては、ちょっと内容を見てみたいという気持ちが強く、新書でキンドルでのダウンロードにも向いているかと思ったので、購入に踏み切った。自分自身が起業するというよりも、所属している会社の中での新規事業が進められるか否かの話である。

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『世界史を大きく動かした植物』 [読書日記]

世界史を大きく動かした植物

世界史を大きく動かした植物

  • 作者: 稲垣 栄洋
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2018/09/21
  • メディア: Kindle版
内容紹介
一粒の小麦から文明が生まれ、茶の魔力がアヘン戦争を起こした――。人類は植物を栽培することによって農耕をはじめ、その技術は文明を生みだした。作物の栽培は、食糧と富を生み出し、やがては国を生み出した。人々は富を奪い合って争い合い、戦争の引き金にもなった。歴史は、人々の営みによって紡がれてきたが、その営みに植物は欠くことができない。人類の歴史の影には、常に植物の存在があったのだ(本書の「はじめに」より)。 【本書の目次より】コムギ――一粒の種から文明が生まれた/イネ――稲作文化が「日本」を作った/コショウ――ヨーロッパが羨望した黒い黄金/ジャガイモ――大国アメリカを作った悪魔の植物/ワタ――「羊が生えた植物」と産業革命/チャ――アヘン戦争とカフェインの魔力/ダイズ――戦国時代の軍事食から新大陸へ/チューリップ――世界初のバブル経済と球根/サクラ――ヤマザクラと日本人の精神……
【Kindle Unlimited】
今から20年以上前、僕がまだブログというものを知らなかった時代、エリック・ドゥルシュミート『ヒンジ・ファクター』『ウェザー・ファクター』という2冊の本を読んだことがある。それぞれ、「幸運と愚行は歴史をどう変えたか 」「気象は歴史をどう変えたか」というサブタイトルが付いており、どちらも面白くて一気に読んでしまったのを覚えている。アラフォーの時代から、僕はそこそこの読書愛好家だったのだ。

それ以降も、「〇〇の世界史」という類の、何らかの切り口をもって世界史(時には日本史)を解説する本に出会うと、なんとなく読んでみたくなる自分がいる。要は歴史が好きなのだ。ましてや、そんなタイプの書籍がKindle Unlimitedで読めるとあらば、飛びつかない手はない。

本書で扱われている植物は以下の通りだ。「コムギ」「イネ」「コショウ」「トウガラシ」「ジャガイモ」「トマト」「ワタ」「チャ」「サトウキビ」「ダイズ」「タマネギ」「チューリップ」「トウモロコシ」「サクラ」———。海外駐在生活、あるいはこれまでに自分が関わった仕事の中で、接点があった植物が結構多い。「トウガラシ」「ジャガイモ」「トマト」などは中南米起源らしいし、「タマネギ」は中央アジア起源らしいが、それらをいずれも今住んでいるブータンで見かけるというのには、ちょっとしたらロマンも感じる。伝播の歴史がきっとある筈なのだ。「ワタ」はその起源と言われるインドでの仕事でお世話になった。

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『君と会えたから……』 [読書日記]

君と会えたから……

君と会えたから……

  • 作者: 喜多川泰
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2013/02/04
  • メディア: Kindle版
内容紹介
将来に対する漠とした不安を抱えながらも、自分のやるべきこともやりたいことも見つけられずに何もせず、無気力に過ごしていた平凡な高校生の僕のもとに、ある夏の日、美しい女の子がやってきた。そして、彼女から、その後の僕の人生を変える教えを聞くことになる。いつしか彼女に恋心を募らせていた彼の前に次第に明らかになっていく彼女の秘密とは……
【Kindle Unlimited】
Kindle Unlimitedだったから読んだ。自分の子どもたちが中高生だった頃に読ませたいような自己啓発系の小説で、還暦前の自分自身には今更感があるし、病魔に侵されていた女の子がこれだけ啓発的な言葉を理路整然と長セリフで言ったり書いたりできるのかと、突っ込みたくもなったのだが、まだスポンジのように柔軟な中高生なら、きっと響くのではなかろうか。

ただ、そんな自分の子どもたちも、いちばん下でも今や大学生で、本書を読ませるにはもはや遅い。20代は20代のうちに読むのに相応しい本が他にもある筈だ。

喜多川泰×ディスカバー・トゥエンティワンといったら、自己啓発系小説の鉄板のような組合せだ。そもそも中高生が入っていきやすいストーリーから入って、登場する同世代の人物からその啓発的メッセージを語らせるか、あるいは大人の場合は主人公の中高生に何らか試練を与えて、それで主人公自身に気付きを促すといった展開が多い気がする(サンプル数は少ないが)。

定年後は中高生とちょっと関わるような仕事をしたいと考えているので、引き続き中高生受けしそうなおススメの本のリサーチは時々やっておきたい。


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『さいはての彼女』 [読書日記]


さいはての彼女 (角川文庫)

さいはての彼女 (角川文庫)

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2013/02/21
  • メディア: Kindle版

内容紹介
25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!? だが、予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。人は何度でも立ち上がれる。再生をテーマにした、珠玉の短篇集。
【Kindle Unlimited】
前回ご紹介した通り、僕は「1ヵ月10冊」の最低ノルマをこなすために、池井戸潤『下町ロケット』の四部作のうち、第二作以降を通しで読むという行動に出た。この流れで行けば、僕のキンドルに入っている過去の池井戸作品でも読んで冊数の荒稼ぎでもしようかとなりそうなところだったが、そこでたまたま、これまた時々読んでいる原田マハの作品が、Kindle Unlimitedに挙がっているのに気付いた。

「さいはて」とあるぐらいだから、たぶん北海道が舞台として出てくる作品だろう。(余談だが、「さいはて(最果て)」といったら、別に九州の最南端だってそうとは言える筈なのに、どうしても北の果てを連想してしまうのはなぜなんだろうか…)

北海道で本の仕事をしている親友との話のネタにでもしようと考え、急遽予定を変更して読んでみることにした。収録されているのは4作品のみで。184頁と比較的薄めのボリュームだが、短編というよりは中編に近い。ちょっと息抜きで読もうとしても、1話読了するにはそれなりの時間が必要となる。収録されたどの作品も主人公は女性だが、最初の3作品(「さいはての彼女」「旅をあきらめた友と、その母への手紙」「冬空のクレーン」)は、恋と仕事に疲れた30代のキャリアウーマンが旅に出るお話。残る「風を止めないで」だけは、前3作と違い、旅に出た夫や娘を見送る50代か40代後半(?)の女性のお話となっている。

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『定価のない本』 [読書日記]

定価のない本 (創元推理文庫)

定価のない本 (創元推理文庫)

  • 作者: 門井 慶喜
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2022/10/19
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
神田神保町―江戸時代より旗本の屋敷地としてその歴史は始まり、明治期は多くの学校がひしめく文化的な学生街に、そして大正十二年の関東大震災を契機に古書の街として発展してきたこの地は、終戦から一年が経ち復興を遂げつつあった。活気をとり戻した街の一隅で、ある日ひとりの古書店主が人知れずこの世を去る。男は崩落した古書の山に圧し潰されており、あたかも商売道具に殺されたかのような皮肉な最期を迎えた。古くから付き合いがあった男を悼み、同じく古書店主である琴岡庄治は事後処理を引き受けるが、間もなく事故現場では不可解な点が見付かる。行方を眩ました被害者の妻、注文帳に残された謎の名前―さらには彼の周囲でも奇怪な事件が起こるなか、古書店主の死をめぐる探偵行は、やがて戦後日本の闇に潜む陰謀を炙りだしていく。直木賞作家の真骨頂と言うべき長編ミステリ。
【購入(キンドル)】
長年の親友が推していた本。本が好きな人、神田神保町にお世話になっている人にはお薦めの作品である。神田神保町がなんで本の街、古書の街になっていったのか、その歴史がわかるだけでなく、古書店に陳列されている古書に対する見方も変わるだろう。丸善の商売や人材養成のシステム、白木屋デパートの位置付け、皇居にある楠木正成像など、ところどころでトリビアもさしはさまれていて、かなり満足感の得られる内容だった。

物語自体はフィクションだけれど、ところどころで実在の有名人をストーリー展開に絡めてくる。それらが伏線としてちりばめられていて、それらもいい具合に終盤回収されていく。エンタメ小説として読む分には面白いと思う。

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