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『御社の新規事業はなぜ失敗するのか?』 [読書日記]

御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学 (光文社新書)

御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学 (光文社新書)

  • 作者: 田所 雅之
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2020/02/18
  • メディア: 新書
内容紹介
外部環境が激しく変わり、プロダクトやサービスのライフサイクルがどんどん短命になる現代において、「うちの会社には新規事業は必要ない」と断言できる人は、よっぽど環境が恵まれているか、変化に非常に鈍感かのどちらかだ。少なくとも、本書を見つけた人であれば、新たなビジネスを生み出すことの重要性は、すでに感じているのだろう。それなのに、なかなか一歩を踏み出せない。いざ踏み出すとなっても、及び腰になる――。なぜ新規事業には、ネガティブなイメージがつきまとっているのだろうか? そして、なぜ実際、たいていの新規事業はうまくいかないのだろうか。このような現状を変える方法を本書では明らかにしたい。結論を先に言ってしまえば、「3階建て組織」を実装できるかだ。
【購入(キンドル)】
本書の著者には『起業の科学』(2017年)というベストセラーがある。ちょうど、ブータンで「スタートアップ」と呼ばれる人々との付き合いが始まって、その付き合いの中で彼らに対して若干の不信感も芽生え始めていた時期でもあったので、日本人的に見た場合の起業の王道みたいなものを一回知っておきたいという気持ちもあって、注目していた新刊だったが、「大きいディスプレイを備えた端末で読む方がいい」という注意書きにも関わらず、キンドル版でも2000円以上するというのでどうしても買う勇気が起きず、先送りにした。

日本に戻ってからも、図書館で借りられないかと何度か試みたが、いずれも長い順番待ちがあるのに怖気づき、結局読むことができずに今日に至っている。そのうちに「ブータン人スタートアップとの付き合い方」という当初の問題意識の優先順位は後退してしまい、そもそも自分自身が定年後にどうするかという別の問題意識が台頭してきている。それに必要なのは起業の知見よりもそもそもの技能の方なので、『起業の科学』に手を出すのは、もうちょっと先でもいいかと思っている。

ただ、今回ご紹介する書籍に関しては、ちょっと内容を見てみたいという気持ちが強く、新書でキンドルでのダウンロードにも向いているかと思ったので、購入に踏み切った。自分自身が起業するというよりも、所属している会社の中での新規事業が進められるか否かの話である。

実際、僕自身も2年前からずっと難航を強いられている社内新規事業があって、冗談じゃなく一時は「自〇」も考えるほど精神的に追い込まれた。自分自身の調整能力のなさに原因を求めるのは簡単だ。発起人だった自分が会社を休職して外国に来てしまっていて、残されたタスクチームのメンバーだけで社内調整するには限界もあるという難しさもきっとあるだろう。でも、「組織の垣根を越えてイノベーティブな事業をやろう」という旗印の下で進められた社内コンペを経て採用されたにもかかわらず、各論になった途端に組織の縦割りや人員不足といった現実問題を抱えた各部署に軒並み受入れを断られ続けた。

各部署における各論の下では、企画部門がいう「錦の御旗」をいくら振りかざしたところで意味をなさない。なんでこんなに頑迷固陋なんだろうかと思って、新規事業断念まで口に出したら、「上層部に説明がつかないから断念はするな」と企画部門担当者からは言われる。

―――総論と各論が噛み合っていない会社そのものに嫌気もさした。

そんな経緯もあって本書を読んでみたのだが、本書のキーワードとも言える「三階建て組織」に、うちの会社はなっていない、うちの会社には「三階」がない、というのがわかった。

 御社の新規事業がうまくいかない、企業発イノベーションが「継続的に」創出できない理由——それは「組織の構造に問題がある」からだ。より具体的に言うとイノベーションを担う事業部とコアビジネスを担う事業部の「適切な階層分け」がなされていないからだ。つまり、(中略)組織が「PLの改善のみが至上命令である1階建て組織」の状態にとどまっていると、新たなビジネスに対しても、既存事業のPL軸のみで評価が行われ、イノベーションへの活力が奪われてしまい、新たなビジネスの種が摘み取られてしまうのだ。
 これを打開し、多くの新規事業をより早く生み出すには、(中略)組織そのものを大きく3つの階層に分けて、それぞれ適したKPIや評価基準を導入するべきである。(p. 5)

 この「階層に分ける」アイデアは、以前からその原型が存在する。かのP・F・ドラッカーも1964年に刊行された『イノベーションと企業家精神』のなかで、「イノベーションの仕事を既存の事業と分離して組織しなければならない」と語っている。(p. 6)

うちの会社は非営利なので、評価軸はPLではないが、それでも本書で展開されている議論の大半はうちのような組織にも該当するように思った。事業化に向けて悪戦苦闘する過程で、僕は何度も、「なんで既存事業部にくっ付けないと新規事業が行えないのか?」とか、「なんでうちのCDO(首席デジタル担当官)は新規事業実施の推進役を果たさないのか?」とか言って嘆いた。

守秘義務もあるので内容詳述まではここではしないし、今後も文章にして公にすることはないと思う。でも、そうやって既存事業の部門長をやっていた人が出世の階段を昇りつめていったり、本来やるべきことをやってくれていない人がそのポジションに留まって、メディア上に登場してもっともらしいことを語っている姿を見ると、その裏で泣いてる人もいるんだよと言いたい気持ちも抑えるのが難しい時がある。

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