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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上下巻 [読書日記]

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

プロジェクト・ヘイル・メアリー 上

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/12/16
  • メディア: Kindle版
プロジェクト・ヘイル・メアリー 下

プロジェクト・ヘイル・メアリー 下

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2021/12/16
  • メディア: Kindle版
内容紹介
地球上の全生命滅亡まで30年……。全地球規模のプロジェクトが始動した!
グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。
『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。
【コミセン図書室】
3月上旬に僕の任地を訪問された方から薦められたSF作品。『三体』も同時に薦められたのだが、長すぎて手を出すのは勇気も要ったので、上下巻2冊構成の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に先に挑戦することにした。3月22日に帰って来て、自宅近所のコミセン図書室に行ったら、すぐに2冊まとめて借りることができた。

宇宙空間での3Dプリンタ使用シーンが当たり前のように出てくる。CNC切削加工なんかも登場する。必要なものはその場で作る―――その究極の姿が宇宙船の船内外での活動ということになる。

読みながら、映画『オデッセイ(The Martian)』ぽいなと思っていたら、本当に同じ作者だった。ストーリー展開の概略はだいたい理解できたが、個々の場面での活動シーンは想像が難しい箇所が多かった。特に、異星人ロッキーの姿や、宇宙船内での2人の連携作業、「アストロファージ」の採集と培養、そのアストロファージを捕食する「タオメーバー」などは、字面だけからだとイメージがしづらい。

SF小説全般にそう感じることが多いので、やむを得ない感想ではあるが、本作品も映画化してくれたらわかりやすいのにと思った。映画化も進行中だと言うが、公開されたら僕は確実に観に行くだろう。

最後に、意外と思われるかもしれないが、僕が印象に残ったシーンを1つだけ紹介する。それは、主人公グレースの上官にあたるストラットが、無理やりヘイル・メアリー号に乗船させられようとしているグレースを前に語った、彼女の大学時代の専攻が歴史だったと語るシーンである。科学専攻でもない彼女が地球の全人類・全生物の存亡をかけたプロジェクトを担うにあたって、必要な洞察は人類の歴史から得たことを示唆するシーンだ。

「(前略)いまの人は……いまがどんなに恵まれているか、まるでわかっていない。過去は、たいていの人間にとっては情け容赦ない過激なものだった。時代を遡れば遡るほど、過酷なものになっていく」

「産業革命が起こるまでの五万年間、人類の文明はあるひとつのもの、そのひとつだけにかかわるものだった……食料よ。過去に存在したどんな文化も、持てる最大の時間、エネルギー、人力、そして資源を食料につぎこんだ。狩猟、採集、農業、牧畜、貯蔵……すべて食料にかんすることだった。
 ローマ帝国ですら例外ではないわ。皇帝のことやローマ軍のこと、各地を征服したことはみんな知っている。でもローマ人がほんとうに発明したのは、農地と食料や水の輸送手段を確保する非常に効率的なシステムだったのよ」

「産業革命は農業を機械化した。そしてそれ以来、わたしたちはほかのことにエネルギーを注げるようになった。でもそれは過去200年間のことよ。それ以前は、ほとんどの人が人生の大半を自らの手で食料を作る作業に費やしていた」(pp.244-245)

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