『さいはての彼女』 [読書日記]
内容紹介【Kindle Unlimited】
25歳で起業した敏腕若手女性社長の鈴木涼香。猛烈に頑張ったおかげで会社は順調に成長したものの結婚とは縁遠く、絶大な信頼を寄せていた秘書の高見沢さえも会社を去るという。失意のまま出かけた一人旅のチケットは行き先違いで、沖縄で優雅なヴァカンスと決め込んだつもりが、なぜか女満別!? だが、予想外の出逢いが、こわばった涼香の心をほぐしていく。人は何度でも立ち上がれる。再生をテーマにした、珠玉の短篇集。
前回ご紹介した通り、僕は「1ヵ月10冊」の最低ノルマをこなすために、池井戸潤『下町ロケット』の四部作のうち、第二作以降を通しで読むという行動に出た。この流れで行けば、僕のキンドルに入っている過去の池井戸作品でも読んで冊数の荒稼ぎでもしようかとなりそうなところだったが、そこでたまたま、これまた時々読んでいる原田マハの作品が、Kindle Unlimitedに挙がっているのに気付いた。
「さいはて」とあるぐらいだから、たぶん北海道が舞台として出てくる作品だろう。(余談だが、「さいはて(最果て)」といったら、別に九州の最南端だってそうとは言える筈なのに、どうしても北の果てを連想してしまうのはなぜなんだろうか…)
北海道で本の仕事をしている親友との話のネタにでもしようと考え、急遽予定を変更して読んでみることにした。収録されているのは4作品のみで。184頁と比較的薄めのボリュームだが、短編というよりは中編に近い。ちょっと息抜きで読もうとしても、1話読了するにはそれなりの時間が必要となる。収録されたどの作品も主人公は女性だが、最初の3作品(「さいはての彼女」「旅をあきらめた友と、その母への手紙」「冬空のクレーン」)は、恋と仕事に疲れた30代のキャリアウーマンが旅に出るお話。残る「風を止めないで」だけは、前3作と違い、旅に出た夫や娘を見送る50代か40代後半(?)の女性のお話となっている。
こういう作品が50代終盤のオジサン読者のテーストに合っているとはとても言えないけれど、北海道道東地方を訪れたことがある人間にとっては、ちょっと懐かしさもある風景描写であった。
21歳の時と31歳の時、そしていずれも夏、僕は道東を1人で旅したことがある。なんだかまた行ってみたくなってしまった。「ハーレーダビッドソン」というわけにはいかない、女満別から入ってレンタカーでも借りて行くのでもいいから、今の仕事を辞めたら一度ぐらいは夏にまた行ってみたい。(さすがに寒さ嫌いの自分としては、冬は行きたくないが…)
今みたいに、山間地に住んでいて、足元に広がるインドの大平原を垂涎の眼差しで眺めつつ、国境を越えて簡単にはそこに行けないと、その反動で、なんかだだっ広い平原にまっすぐ伸びる道路を走ってみたくなる。日本に帰ったら、そんなことが可能なのは、やっぱり北海道なのかな―――。
もう1つの旅先の舞台は伊豆の修善寺(「旅をあきらめた友と、その母への手紙」)で、ここも行ったことはある。ただ、修善寺とはいっても、修善寺っぽいものが登場するわけではなかったけれど。
そういう意味ではお得な短編集だとは言える。旅に出た気分にはなれるので、現在の閉塞感のある土地で居住する身にはホッと息抜きできる、いい読書だった。
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