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『安倍晋三回顧録』 [読書日記]

安倍晋三 回顧録

安倍晋三 回顧録

  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2023/02/08
  • メディア: Kindle版
知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされる
2022年7月8日、選挙演説中に凶弾に倒れ、非業の死を遂げた安倍元首相の肉声。なぜ、憲政史上最長の政権は実現したのか。第1次政権のあっけない崩壊の後に確信したこと、米中露との駆け引き、政権を倒しに来る霞が関、党内外の反対勢力との暗闘……。乱高下する支持率と対峙し、孤独な戦いの中で、逆風を恐れず、解散して勝負に出る。この繰り返しで形勢を逆転し、回し続けた舞台裏のすべてを自ら総括した歴史的資料。オバマ、トランプ、プーチン、習近平、メルケルら各国要人との秘話も載録。あまりに機微に触れる――として一度は安倍元首相が刊行を見送った、計18回、36時間にわたる未公開インタビューを全て収録。知られざる宰相の「孤独」「決断」「暗闘」が明かされます。
【購入(キンドル)】
好きか嫌いかの二択だったら必ず「嫌い」と答える。歴代総理経験者の中でも最も「嫌い」な部類に入る―――。ブログではあまり政治の話はしてこなかったが、正直言えば、総理時代の安倍氏にはあまりよい印象は持っていない。

それでも読むことにしたのは、メディアで登場する多くのコメンテーターが本書を言及するからである。発刊から間もない時期で、まだ最初の数節しか読んでないような段階であっても、出演していた番組でわざわざ言及した人もいた。僕が朝のウォーキングの最中に聴いている番組のキー局自体が与党寄りなので、そういうコメンテーターを多く集めている傾向がないとはいえないが(それはある意味ここ数年の番組改編で、それまで愛聴していたTBSラジオがつまらなくなったからだともいえる)、2月以降複数のコメンテーターが度々言及していたし、その番組以外の場でも耳にする機会が何度かあった。安倍氏のことをどう思っていようと、一度は彼の言い分を訊いてみるのも悪くはないか―――そんな思いで手に取り、一時帰国の最初の読書の対象とした。

トータルで見たら、読んでおいて損はないと思う。特に、外交に関する回顧には、首脳会談や国際会議に臨む際の準備のプロセスが詳細に語られ、会談相手の各国首脳の人物評価には、意外なところもあった。今もメディアを賑わせているトランプ元大統領も、トランプ氏本人が安倍氏をどう見ていたのかはわからないが、少なくとも安倍氏の方には、「自分とトランプのパイプは特別」との自信が本当にあったのだろう。トランプ氏との付き合い方という点では、今後の為政者の参考になるところが多い。

逆に、森友・加計問題、桜を観る会などの問題、特に森友学園問題に関する語り口は、自殺者まで出ているという事態の受け止め方がその程度なのかとがっかりさせられた。ご本人からすれば「身の潔白は自明」となるのかもしれないが、安倍氏の発言だけ聴いていても、なぜ自明なのかがよくわからない。インタビュアーの突っ込み方も中途半端で、意図的に次の話題に移行したのではないかと思われるところもある。犠牲者まで出ているのだから、哀悼の言葉の1つでもあったらいいのに…。

このあたりは、本書を手に取る読者が最も知りたい箇所だったのではないかと思うが、ここまで「自分は正しい、それを理解できない周囲の連中の方がおかしい」というトーンで安倍節が展開されると、ちょっとどうなのかなという印象にはなる。

「財務省が言うこと聞かない」「官僚が政治の足を引っ張る」「民主党政権時代の法整備に問題があった」など、とかく否を他者に向けるケースが目立つ。そもそも国のリーダーを担った経験者本人が語ったり、ペンを取ったりして書かれた回顧録というものをまともに読んだのはこれが初めてで、他書との比較ができないのだが、安倍氏の口調からどうしても垣間見えてきてしまう「上から目線」「自分じゃなく他の連中が悪い」というトーンは、他のリーダーにも少なからずあるものなのだろうか。

それを差し引いても、読んでおく価値はある回顧録だという点については同意はする。ただ、自分が本当に知りたいと思っているイシューがあるのなら、他者による事実認識も目に通して、三角投影を行った方がよい。

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