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『しあわせの香り~純喫茶トルンカ』 [読書日記]

しあわせの香り 〈新装版〉 純喫茶トルンカ<新装版> (徳間文庫)

しあわせの香り 〈新装版〉 純喫茶トルンカ<新装版> (徳間文庫)

  • 作者: 八木沢里志
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/01/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
あなたにとって、しあわせの香りとはなんですか——。コーヒー香る『純喫茶トルンカ』で繰り広げられる三つのあたたかな再会。二十年間店に通う高齢女性・千代子によみがえる切ない初恋の思い出、看板娘の幼馴染の少年・浩太が胸の奥深くに隠す複雑な本心、人生の岐路に立つイラストレーターの卵・絢子の旅立ち。ままならない今を生きる人たちをやさしく包み込む。大人気シリーズの第二弾!
【MT市立図書館】
年明けの最初の読書は八木沢里志の「純喫茶トルンカ」シリーズの続編。連作中編が3編収録されていて、それぞれの主人公は異なるが、ほぼ同時並行で起こっていた出来事をそれぞれの目線から取り上げているのがちょっと面白い。

元々、トルンカに出入りしている店員や常連さんの目線で描かれている作品群で、登場人物がものすごく限られているため、このシリーズの本編と続編で収録された中編計6編で、ほぼ全員を主人公にして描いてしまった気がする。残っているのは、このトルンカのオーナーである立花とその妻、また常連さんの中では「滝田のじいちゃん」ぐらいしかいない。こうなると、よほどのことがない限り、「純喫茶トルンカ」のシリーズは今後それほど続かないのだろう。(というか、この作家は2015年以降新作を発表していないので、そもそもシリーズもクソもないのだけれど…)

作品を読みながら、美味しいコーヒーが飲みたくなった。前回『純喫茶トルンカ』を読んだ時にも同じようなことを感じた。僕がここ数年でもう一度飲みたいと思った美味しいコーヒーは三鷹駅南側徒歩圏内にあった隠れ家的喫茶店の一杯で、今のところ、これと同等の味のコーヒーにはなかなか出会ったことがない。2010年頃までは仕事帰りによく立ち寄って、ちょっとだけ読書を進めてから家路についたのだが、今はそのエリアは駅前再開発の対象となり、今は大きなビルに建て替わってしまった。「隠れ家」を1つ無くしてしまった、そんな喪失感に駆られたものだ。

こういう、美味しいコーヒーと人とのつながりが両方期待できるお店はほんとうに少なくなってきた。レア感があるだけに、作品の良さもしみじみ感じた。

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