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『WTF経済』 [仕事の小ネタ]

WTF経済 ―絶望または驚異の未来と我々の選択

WTF経済 ―絶望または驚異の未来と我々の選択

  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2019/02/26
  • メディア: 単行本
内容紹介
人工知能、自動運転、オンデマンドサービス、ギグエコノミー、補助拡張された労働者など、最先端のテクノロジーがもたらす予想もできなかった事物によって、ビジネス、政治、そして「職」はどう変わっていくのか、また、人間中心の未来を作っていくために、我々はどんな選択をするべきなのか。出版、カンファレンス事業で、テクノロジーのトレンドを先取りし、「シリコンバレーの予言者」と称される著者が、オープンソース・ソフトウェアを中心にしたテクノロジーの歴史と、それが社会に与えてきた大きな影響を振り返り、そこから学んだ経験をもとに次世代ビジネスの戦略を伝授する。エンジニア、起業家、そしてテクノロジーに関わるすべての読者必読の書。
【購入】
本書は、発刊されたばかりの頃に書店店頭で見かけて、その「WTF」というわけのわからぬタイトㇽと、その著者が僕が最近さんざんお世話になっている出版社の親元だというので、読みたいなと思ったのだけれど、500頁超というその分厚さに怖気づき、すぐに手が出せなかった。ようやく購入したのは発刊から1年近くが経過した昨年1月末で、ちょっと仕事がひと段落ついた後にやった神田での大人買いの中に含まれていた。その時に大人買いした本は4冊あったが、最後まで残ったのが本書だ。

それから1年以上積読状態で放置し、こんな分厚い本を任国には持って行けない、できれば日本にいる間に読み終わりたいと意を決して4月に手に取った。しかし、それ以上に日本に置いて行きたい積読本もあり、また出発までの最後の1週間が自分が想像していた以上にバタバタだったために、とても読み進められなくなってしまった。仕方なく読みかけの状態で携行することにし、移動の機内でも読み、任国に到着して隔離施設に収容されてからも読んだ。そして隔離生活も4日目になり、ようやく読み切った。達成感よりも疲労感の方が大きい。ようやく解放されるという安堵も。

この手の翻訳本でこれだけボリュームがあると、読んでいるうちに本書の論点っていったい何だったのか、今どこにいるのか、だんだんわからなくなってしまった。訳が悪いとか、難解だというわけではないのだが、読み始めて1カ月近くもかけてダラダラ読み進めていた自分自身の姿勢もまずかったと思う。

そんな自分が本書を語るのはおこがましいが、もともと読み手の興味によって刺さるポイントが異なるであろう本だとも思うから、僕が特に関心持った箇所を以下に挙げておく。

1つめは、オープンソース・ソフトウェアに関する序盤の記述である。個人的には、ドミニク・チェン『未来をつくる言葉』で書かれていたことの復習になったかと思う。

2つめは、中盤に展開された「仕事を作り出すのは顧客」とか、ドラッカーの「事業の目的として有効な定義は、顧客を創出することだ」といった記述。ここは、アルゴリズムに支配された株主資本主義への批判という文脈で出てきているが、この辺りを読みながら、以前読んだマーティン・フォード『テクノロジーが雇用の75%を奪う』でも同じような議論がされていたなと思い出した。(著者はマーティン・フォードの著書を引用しておられる箇所もある。)

3つめは、どこがどうというわけではないが、全体を通じて著者は、やはりテクノロジーがこれから向かう先として、「気候変動対策」を念頭に置いておられるのを強く感じた。まあこれも、似たような論点をつい最近読んだブルーノ・ラトゥール『地球に降り立つ』でも見たように記憶している。

そして、最後に、まあこの点がこれからの僕自身の仕事には最も役立つと思われるのだが、今の教育を、次の大きな価値創造の領域に向けた新しい動きに対して永続的な学習を人々が進めるのを支援する必要性を強調している点を挙げたい。本書の表紙にかかっている販促タスキには、次のような引用がある。

職探しにも多くの苦労があり多くの原因がある。だれでも自分でできる解決策があるとすれば、それは学ぶ力だ。これは、絶えず変わり続ける世界に子供たちが適応するために、ぜひ教えねばならない不可欠の基本的な技能でもある。すぐに陳腐化する個々の技能よりも、幅広い一般教育と学習への愛着のほうが重要かもしれない。

ことあたりは、教育学者から言われると始めから問題解決型学習の賛辞のように思えて素直に聞けないところが僕にはあるが、テクノロジー・エバンジェリストからそう言われると、「そうだよなぁ」と受け入れやすい。

また、これから僕が関わる仕事に関しても、著者が指摘する次のような学びの普遍性は常に意識しておきたい。
人々は基盤が必要だ――正しい質問をして新しい知識を吸収するのに十分なだけの知識がいるのだ。

人々はお互いから学ぶ。

人々は実践を通じて学ぶのがいちばんいい。本当の問題を解決し、必要な知識をオンデマンドで吸収するのだ。

人々は自分のやっていることにあまりに引き込まれ、仕事で必要だからというだけでなく、自分の余暇にもやりたくなるときに最もよく学習する。
(pp.438-439)

特に、この学びの重要性の指摘の部分は、ソフトウェアではなく、ハードウェアも用いたものづくりの文脈で述べられているため腑に落ちる。全体の再読はちょっと腰が引けるが、すくなくとも第15章あたりは、僕は何度か読み返してみたいと思っている。

ちなみに、本書のタイトルにもなっている「WTF」は、英語でいう"What's the fuck!"(いったい全体どうなってんだ)といった意味のスラングらしい。頭文字だけを組み合わせていてはすぐにわからなかったが、映画なんかでは"What's the fuck!"はよく耳にする表現で、文字に起こすとこんな略語になるんだというのを今回初めて知った。

WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us (English Edition)

WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us (English Edition)

  • 作者: O'Reilly, Tim
  • 出版社/メーカー: Cornerstone Digital
  • 発売日: 2017/10/19
  • メディア: Kindle版


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