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冲方丁『戦の国』 [読書日記]

戦の国 (講談社文庫)

戦の国 (講談社文庫)

  • 作者: 冲方丁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2020/08/12
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
『戦国』―日ノ本が造られた激動の55年を、織田信長、上杉謙信、明智光秀、大谷吉継、小早川秀秋、豊臣秀頼ら六傑の視点から描く、かつてない連作歴史長編。

岐阜県出身の作家の本は、無条件で読みます―――。

さて、今週末の読書は、NHK大河ドラマ『麒麟が来る』の放送再開を前に、景気づけに戦国ものの歴史小説を1冊。桶狭間の合戦から大坂夏の陣までの間の出来事を、6人の登場人物の視点から描いた連作短編である。しかも、各短編は、これまでに講談社がこの時代の出来事に絡んだ人物を主人公に仕立て、別々の歴史小説作家が描くというアンソロジー『決戦!』シリーズで、過去に冲方丁自身が執筆担当した作品だけで再構成されている。

 「覇舞踊」(織田信長)――『決戦!桶狭間』(2016年)
 「五宝の矛」(上杉謙信)――『決戦!川中島』(2016年)
 「純白き鬼札」(明智光秀)――『決戦!本能寺』(2015年)
 「燃ゆる病葉」(大谷吉継)――『決戦!関ケ原2』(2017年)
 「真紅の米」(小早川秀秋)――『決戦!関ケ原』(2014年)
 「黄金児」(豊臣秀頼)――『決戦!大坂城』(2015年)

『決戦!』シリーズは、本能寺、関ケ原、大坂城あたりまでの初期の3作品は読んでいて、その中でも冲方丁による小早川秀秋や豊臣秀頼の描き方の面白さにブログで言及していた。今回の連作を読んでいて、特にこの2編については既視感があったので、調べてみたらそういうことだったという次第。

時節柄明智光秀についても言及するが、「純白き鬼札」における、信長襲撃に至る動機の解釈は面白かった。そういう見方もあるかと唸らされた。残念ながら、『決戦!本能寺』を読んだ時には、他の収録作品の方に目が行ってしまい、「純白き鬼札」の解釈についてはブログでも全く言及していなかったが。

こういうのを読むと、2016年以降に出た『決戦!』シリーズ後期3作も読んでみたくなるし、シリーズで冲方丁同様に頻繁に起用されていた、伊東潤、木下昌輝、葉室麟、天野純希あたりで、同様の連作短編集を講談社は出してくる可能性はある。見つけたら借りて読んでみようかと思っている。

ただ、『決戦!』シリーズの収録作品を書く段階で、著者がどの程度こういう「横串」を意識していたのかどうかはよくわからない。各作品の登場人物をこうして並べてみると、上杉謙信や大谷吉継、小早川秀秋あたりを主人公にするというのは意外なチョイスだと思える。桶狭間で織田信長がとった戦法を横串にして後世に語り継がれ、たびたび試みられる戦法として描かれているが、大谷吉継や小早川秀秋あたりがそうした戦法をとったという書きぶりにはやっぱりなっていないし、ちょっとそれで横串に刺すには苦しさもあるなと感じた。

また、伊東潤あたりの作風は読みやすくて僕には好きだが、冲方丁の作品は当時の語彙がそのまま使われていたり、漢詩や戯曲あたりからの引用が拡張高く用いられたりしていて、ちょっと肩に力が入りすぎているのではないかと感じる。とっつきやすい作風ではないは、僕にとっては。

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