『決戦!本能寺』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)
天正10年6月2日(1582年6月21日)。戦国のいちばん長い夜―本能寺の変。天下人となる目前の織田信長を、討った男、守った男。その生き様には、人間の変わることのない野心と業が滲み出る。名手七人による決戦!第3弾。
『決戦!関ヶ原』、『決戦!大坂城』に続く、「決戦!」シリーズ第三弾である。その時々の出来事を当時を生きた様々な人の視点から描くという興味深い試みだ。正直言うと、関ヶ原や大坂城については、7人と言わず、もっと多くの作家に参加してもらい、もっと多面的に描いて欲しいなと思ったものだ。シリーズが続くなら、そんな試みも考えてみて欲しいと思う。ちなみに、本能寺の次は川中島の合戦だそうだ。
今回収録されているのは、次の7作品だ。顔ぶれは前回の『決戦!大阪城』とほとんど変わらない。
「覇王の血」(伊東潤)―織田信房
「焔の首級」(矢野隆)―森乱丸
「宗室の器」(天野純希)―島井宗室
「水魚の心」(宮本昌孝)―徳川家康
「幽斎の悪采」(木下昌輝)―細川幽斎
「鷹、翔ける」(葉室麟)―斎藤利三
「純白き鬼札」(冲方丁)―明智光秀
伊東潤「覇王の血」については、織田信長の庶子で武田家を頼っていた五男信房を取りあげたもの。「織田信房」なんて知らなかったので、驚きの人選であった。こういうのも本能寺の変の解釈としてはありなんだと思う。ただ、著者の伊東さんは以前徳川家康陰謀説に立って長編作品を発表されていたので、それとも異なる解釈の作品を描かれるというのはちょっと意外だった。いや、戸惑ったという方が正確だ。
これに限らないが、当時いろいろな人が信長謀殺を狙っていたというのでは、いくら競作とはいえ作品間のつじつまが合わないところも出てくる気がする。せめて、企画編集側で1つの仮説を立てて、それを軸に各作家さんに書いてもらうことはできなかったのだろうか。関ヶ原や大坂城と違い、本能寺は真の首謀者が誰なのかが今もはっきりしていない。だからといって、こんなに異なる解釈w横並びで見せられては読者も戸惑うのではないか。
逆に、信長の首を狙っていたけど他の人に先を越された人の話ってのもあったら面白かったかもしれないが…。
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