SSブログ

『羆嵐』 [読書日記]

羆嵐(新潮文庫)

羆嵐(新潮文庫)

  • 作者: 吉村昭
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/03/01
  • メディア: Kindle版

内容紹介
北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音……。自然の猛威の前で、なす術のない人間たちと、ただ一人沈着に羆と対決する老練な猟師の姿を浮彫りにする、ドキュメンタリー長編。
【MT市立図書館】
読了の順番は前後するけれど、妻の名前で借りた本は早めに返却した方がいいと思うので、先に書いておく。

日本における史上最悪の獣害といわれる「三毛別羆事件」を扱ったドキュメンタリー小説。昨年の海外駐在時代、テレビとは無縁の生活を送っていた僕の癒しはYouTubeであった。その中の1つに、北海道の廃道・酷道・廃墟探索をテーマで動画配信されている方のサイトがあり、そこで昨年、三毛別羆事件の舞台を車で走るというものがあった。

小学生時代によく学校の体育館や公民館で開かれていた教育映画の上映会で、夜囲炉裏を囲んでいたところをクマに襲われるシーンがあったと記憶している。いきなり壁板をぶち破って入って来るクマの姿が強烈だったので、三毛別の動画を見た時、もしかしたらこの羆事件絡みの映画だったのかなとも思った。でも、調べてみるとやはりわからない。

別に調べたからといってその映画がまた見てみたいと思ったわけではないのだけれど、小学生時代まではよく開かれていた映画上映会も、今はどうなっちゃったのかなと少し寂しい気持ちには駆られる。

三毛別の件は自分の中ではそれでおわっていたのだけれど、先週たまたま妻と2人で市立図書館を訪ねた際、僕は図書館カードを携行しておらず借りる気はなかったのだけれど、貸出図書の返却ラックにたまたま『羆嵐』の表紙を見かけた。単なる偶然だったのだが、これも何かの縁かもしれないと思い、妻の図書館カードで借りることにした。

続きを読む


nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

『マンガでわかるディジタル回路』 [仕事の小ネタ]

マンガでわかるディジタル回路

マンガでわかるディジタル回路

  • 出版社/メーカー: オーム社
  • 発売日: 2017/07/14
  • メディア: Kindle版
内容紹介
半導体技術に必要なディジタル回路を「マンガでわかる」シリーズで学ぼう!本書は、マンガを使ってディジタル回路について解説した入門書です。ディジタル回路とは離散値をとるディジタル信号を扱う電子回路のことですが、通常はHハ(イレベル)とL(ローレベル)、あるいは1と0の2つの信号レベルを扱います。2つの信号だけと一見単純そうに見えますが、この2つの信号を組み合わせて論理ゲートなどいろいろ組み合わせて複雑な回路を作るため、理論を苦手とする人も多くいます。本書では論理演算などの基本的な回路をマンガで直感的に理解できるように解説しています。さらに、組み合わせ回路や順序回路も理論を解説するにとどまらず、設計まで踏み込んで解説しているため、大変実践的な内容となっています。
【MT市立図書館】
ブログなどでは2024年の新年の抱負は「読書」以外のことを公表していないのだが、今年は今月から半年間、デジタルものづくりの人材養成プログラムを受講することにしている。主催は米国の財団で、グローバルセッションは1月24日スタートだが、それに先立って今週は4日間のオリエンテーションが行われ、6カ月間をものづくりに捧げる「覚悟」を僕たちに問うてくる。

使用言語は当然英語。しかも時差の関係で日本からオンライン受講となると開始は日本時間の23時。オリエンテーションは1時間だけだから午前零時で終了するが、グローバルセッションに至っては午前2時まで行われる。生活スタイル自体を、これまでの超朝型から、それとは真逆の超夜型に変えないといけない。

6カ月のプログラムの中には、僕も多少のたしなみのあるモジュールもあれば、まったく初心者というモジュールもある。特に、電子回路製作はこれまでずっと避けてきたテーマで、しかも予めスケジュールを確認すると、電子回路はなんと1週間でクリアしなければならない。普通の人なら1週間に15時間程度の時間投入で済む課題だが、僕の場合は倍以上、35時間は必要だと覚悟している。

続きを読む


nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:

『変な家』 [読書日記]

変な家

変な家

  • 作者: 雨穴
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2021/07/21
  • メディア: Kindle版
内容紹介
謎の覆面作家・雨穴デビュー作!! 「読み出したら止まらない」と大反響、売れ続けて60万部突破、映画化2024年春公開決定。YouTubeで1200万回以上再生のバズ動画、あの「【不動産ミステリー】変な家」にはさらなる続きがあった!! 謎の空間、二重扉、窓のない子供部屋——間取りの謎をたどった先に見た、「事実」とは!? 知人が購入を検討している都内の中古一軒家。開放的で明るい内装の、ごくありふれた物件に思えたが、間取り図に「謎の空間」が存在していた。知り合いの設計士にその間取り図を見せると、この家は、そこかしこに「奇妙な違和感」が存在すると言う。間取りの謎をたどった先に見たものとは……。不可解な間取りの真相は!? 突如消えた「元住人」は一体何者!? 本書で全ての謎が解き明かされる!
【娘が先輩から借りた本】
妻が友人からもらったという『変な家2』に続き、娘が職場の先輩から借りたという『変な家』もお金を払わずに読むことができた。

ジャンル的にはミステリー小説なので、内容を紹介すればするほどネタ晴らしになってしまいそうだ。だから今日も短めで行かせていただきたい。

『変な家2』がノンフィクションではないとわかった瞬間、作品としての興味は半減してしまったのだが、なにせ去年のベストセラーだから、早々に読めたことには感謝したい。また、映画化もされるそうだけれど、なにぶんホラー映画が苦手で心臓が弱い僕は、こういうのは観ないにこしたことはない。

集中すれば2時間程度で読了することは可能だと思う。ただ、若干恨み節を述べるとすると、後半の種明かしのあたりを読んでいる時に横から妻に何度も話しかけられて、集中して読めなかった。何が何だかわからなくなって、だけど読むペースだけはなるべく落とさぬようにしていたので、はっきり言ってオチが何だったのか自分でもよくわからかった。読了したことは間違いないのだが、話が理解できたかどうかは別の話。一応読了したことにはしておくが、読み直す見込みはほとんどないと思う。

これから読む方へのアドバイスは、終盤の種明かしの部分に来たら、周囲の雑音はシャットアウトしていないと、話がわからなくなりそうなので要注意である。


nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:

『八月の御所グラウンド』 [読書日記]

八月の御所グラウンド

八月の御所グラウンド

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2023/08/03
  • メディア: 単行本
内容紹介
女子全国高校駅伝――都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。謎の草野球大会――借金のカタに、早朝の御所G(グラウンド)でたまひで杯に参加する羽目になった大学生。京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは---?今度のマキメは、じんわり優しく、少し切ない。青春の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る感動作2篇
【コミセン図書室】
万城目学作品を読むのは久しぶりだ。ちょっと調べてみたら、『鴨川ホルモー』『ホルモー六景』を読んだ2010年1月以来で、実に14年間も読んでいない。

ここまで間を空けると、何を読んでも新鮮に感じる。笑いの要素も込めながら、でも京都にまつわる歴史の一面をぶっこんでくる。ああなるほど、そういう展開か―――読み進めるうちに展開の予想もついてしまうが、それでいて、終わり方がまあまあ心地よい。

どちらも中編。特に本題ともなった「八月の御所グラウンド」は長い。それでも、スラスラ読めてしまうから読み終えるのに時間はさほどかからない。1~2時間の空き時間の穴埋めに、読める作品としてはなかなかおススメ。

これ以上はご勘弁を。これ、語れば語るほどネタ晴らしになってしまいそうなので。

nice!(8)  コメント(0) 
共通テーマ:

『サイエンスコミュニケーションのはじめかた』 [仕事の小ネタ]

科学を伝え、社会とつなぐ サイエンスコミュニケーションのはじめかた

科学を伝え、社会とつなぐ サイエンスコミュニケーションのはじめかた

  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2017/09/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
国立科学博物館は、2006年より、社会と科学をつなぐ人材であるサイエンスコミュニケータの養成に取り組んできました。本書は、その10年以上にわたるノウハウを集約させた、サイエンスコミュニケーションを始めたいと考えている方のためのテキストです。博物館関係者だけでなく、研究機関やメディア、企業など、さまざまな分野の第一線で活躍されている方の考え方やノウハウがコンパクトにまとまっており、関心のある方が最初に手に取る一冊として最適な内容となっています。また、すでに実践をされている方にとっても、自身と異なる視点を得ることができる内容です。
【MT市立図書館】
半年ほど前に「サイエンスコミュニケーション」という言葉を知り、もう少し理解を深めたいと思って市立図書館の蔵書をあさった。狙っていた近刊はなかったけれど、代わりに借りたのが独立行政法人国立科学博物館編のこの1冊だった。この国立科学博物館では、「国立科学博物館サイエンスコミュニケータ養成実践講座」という事業を行っていて、受講修了者は「サイエンスコミュニケータ」として認定されるのだそうだ。本書はその講座のエッセンスをまとめた一種のテキストということになる。

言葉自体を知ったのは冒頭述べた通り最近のことなのだが、実はこれに近いことを昨年末まで赴任していたブータンのファブラボでやりたかった。本書を読みながら、自分が目指していたのってまさにこのサイエンスコミュニケーションだと今さらながら思ったのだが、僕自身は文系出身だし、科学に関する知見がほとんどない。配属先が「科学技術」を冠に抱く工科大学だったので、地元小中高生向けにサイエンスコミュニケーションをやるなら工科大学の学生を動員すればいいと僕は考えていた。

しかし、肝腎なことを僕は忘れていた。彼らは自分が小中高生だった時代に理科実験や科学絡みの探求学習をほとんどやっていない。そんな彼らに理科実験や探求学習の組み立てなど期待しても無理だし、そもそも彼らを指導している教員をうまく巻き込まないと、イメージしたようなコミュニケーションはとてもできない。(このあたりの反省はnoteの方で書いているので、ここでは詳述しないでおきたい。)

続きを読む


nice!(6)  コメント(0) 
共通テーマ:

『オッサンの壁』 [持続可能な開発]

オッサンの壁 (講談社現代新書)

オッサンの壁 (講談社現代新書)

  • 作者: 佐藤千矢子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2022/04/13
  • メディア: Kindle版

内容紹介
日本一の「オッサン村」ーー永田町の非常識、政治メディア の実態。全国紙初の女性政治部長が克明に記す「男社会」のリアル。なぜ、永田町と政治メディアにオッサンが多いのか?幾多の「壁」に直面してきた政治記者が男性優位主義の本丸で考えた、日本社会への処方箋。
【MT市立図書館】
昨年8月、斎藤幸平『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』のレビューをブログで書いた際、「本書の中で著者が引用した文献のいくつかは今一度チェックして、次に読みたい本のリストには上げておきたい」と結んだ。それに基づき、著者の引用文献をメモしておき、帰国後に市立図書館で探して借りた最初の文献が本日ご紹介する『オッサンの壁』だ。

日本のジェンダー主流化の取組みは相当遅れていると言われているが、それを毎日新聞社の政治記者として大物代議士やその秘書と接する中で体験した具体的な実態として描いている。加えて、そういう政治家を相手にネタをとって来なければならない記者の労働環境とか、有力女性代議士の主張とかから拾って来て、永田町界隈の政治家やメディア関係者を含むコミュニティ全体でのジェンダー主流化の遅れも知ることができる。

さすが普段から記事を書かれているだけに、読みやすいし、頭にも入って来やすい。SDG5(ジェンダー平等を実現しよう)のうち、特にターゲット5.5「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参加および平等なリーダーシップの機会を確保する」への日本の取組み状況のどこが良くないのか、具体的に突き付けている内容だと思う。永田町界隈の実態がこんな感じだと、女性の政治参加の実現とか女性のリーダーの台頭とか、そんなに簡単には望めないだろう。


nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:

『変な家2』 [読書日記]

変な家2 ~11の間取り図~

変な家2 ~11の間取り図~

  • 作者: 雨穴
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2023/12/15
  • メディア: Kindle版
内容紹介
あなたは、この「11の間取り」の謎が解けますか?前作に続き、フリーライターの筆者と設計士・栗原のコンビが不可解な間取りの謎に挑む。「行先のない廊下」「闇をはぐくむ家」「林の中の水車小屋」「ネズミ捕りの家」「そこにあった事故物件」「再生の館」「おじさんの家」「部屋をつなぐ糸電話」「殺人現場へ向かう足音」「逃げられないアパート」「一度だけ現れた部屋」、後編「栗原の推理」———すべての謎が一つにつながったとき、きっとあなたは戦慄する!
【人からもらう】
2023年の単行本フィクション部門で第1位と第2位を占めた雨穴という作家のミステリー小説最新作。妻が友人からもらってきた本で、妻が読み始める前に先に読んでしまった。400頁以上あるが、これもその気になれば3時間少々で読了することができる。

フリーのジャーナリストが調査して集めた情報で怪しい間取りの謎を解き明かすというものだったので、最初のうちはノンフィクションだとばかり思っていた。それが、ケースが揃っていくにつれて、なんかある落としどころに向かって無理やりピースを持ってきている感じがどうしても拭えなくなり、終盤に栗原の推理が始まる時点で、いくらなんでもその推理は断定的すぎるのではないかと思えてきた。その時点でこれはフィクションだと気付いているんだから僕も世話ない。

まあ、面白くてページをめくる手が止まらなかったのだから許すけど。

うちももう子どもたちが全員成人しているからいいけど、この著者のシリーズはベストセラーだし、中高生どころか、下手したら小学生でも手にしかねない。そう考えた時に、この真相はほんとうにこれで良かったのだろうかと首は傾げたくなる。

続編は妻が人からもらってきたが、実は第1巻は娘が友人から借りて今読んでいるところだ。そのうち読む機会もあるだろう。

nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:

『ルミネッセンス』 [読書日記]

ルミネッセンス

ルミネッセンス

  • 作者: 窪 美澄
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2023/07/20
  • メディア: Kindle版

内容紹介
低層の団地群を抱くその町は寂れていた。商店街にはシャッターが目立ち、若者は都会に去り、昔からある池には幽霊が出るという。その土地で人びとが交わすどこか歪な睦み。母の介護にやって来た男はバーで出会った少年に惹かれ、文房具店の女は一人の客のためだけに店を開ける……。終着点は見えている。だから、輝きに焦がれた。瞬く間に燃え尽きてもいいから。直木賞作家のダークサイドで染め上げられた連作短編集。
【コミセン図書室】
なんだか、僕は窪美澄という作家と相性悪いんですかね…。

2014年に『雨のなまえ』の寸評をした際も、「あまり感想を書く気になれない短編集」と短いコメントを残している。それ以来、窪美澄作品を遠ざけていて一度も読んだことがなかったが、『夜に星を放つ』で2022年の直木賞を受賞しているし、2月にはうちの街で講演会も予定されていて、何の気なしに申し込んでしまったので、その前に最新作でも読んでおこうかと手に取った。

結果的には『雨のなまえ』の再来。この作家さんはわりと地元だし、世代も近いので登場人物とか舞台設定とかには惹かれるところも共感するところもある。作品数もそこそこあるのでもっと読んでみたいという気持ちはあるものの、落胆することこれで二度目だ。ここまで嫌悪感を抱く作品に当たってしまう作家というのは僕にとっては初めてで、借りた本も期限までキープせずにとっとと返却したいという思いに駆られた。

読者のそういう反応も織り込み済みで描かれているのだろうか。そうだとしたらそれもスゴイと思うけれど…。本連作短編に登場する中年男性の主人公それぞれについて、置かれている境遇とか、抱いている閉塞感とか、なんか自分自身とも通じるところがあって、僕自身の内面がえぐり出されているような感覚も覚えた。それが怖いもの見たさにつながったと言えなくもないし、読んでみて抱かされた嫌悪感にもつながったように思う。そういうところを狙っている作家さんなのだろうか。

新米読者が抵抗感なく入っていける窪作品、誰かお薦めいただけないですかね(苦笑)。講演会に来る観客が、窪作品にどのような感想を述べるのか、聴いてみるのも一興だと思う。

nice!(7)  コメント(0) 
共通テーマ:

『老いては「好き」にしたがえ!』 [読書日記]

老いては「好き」にしたがえ! (幻冬舎新書)

老いては「好き」にしたがえ! (幻冬舎新書)

  • 作者: 片岡鶴太郎
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2023/07/26
  • メディア: Kindle版
内容紹介
人生を充実させるコツは、心の赴くままに行動すること――。モノマネでブレイクして以降、役者をベースに、ボクシング、絵画、ヨガの世界でも活躍する著者。還暦を機に離婚した現在は、「60代は体が元気に動く最後の時間。漫然と過ごすのはもったいない」と終活には目もくれず、自分のしたいことだけに情熱を注ぐ。常に挑戦をしてきた経験から、「何かを始めるのに年齢やセンスは関係ない」と断言。やりたいことの具体的な見つけ方から、自身も苦しんだ「男の更年期」の乗り越え方まで、老いに負けない極意がここに!
【コミセン図書室】
新年最初の土曜日、ようやく業務再開した近所のコミュニティセンター図書室に出かけた。今後の貸出はバーコード管理するということで、そのバーコードを貼付する作業のために、4カ月近く閉鎖されていたそうだ。なんにせよ、コミセン図書室が新刊を借りるにはいちばんいいので、ここが利用できるようになったのは大きい。さっそく、新着本の棚にあった中から4冊ピックアップして借りることにした。(新しい利用者カード発行手続の際に、司書のシニアボランティアの方が、僕が申込書に記入した個人情報を読み上げながら入力していたので、他の利用者にまる聞こえになっていたのは気分悪かったが。)

冒頭の内容紹介でも書かれている、「60代は体が元気に動く最後の時間。漫然と過ごすのはもったいない」という記述に惹かれ、はずしてもダメージの少ない新書だからというので手に取った。3時間弱で読了した。

著者の始めたことがどれも自分にはあまりフィットせず、正直言えば著者がそうしているから自分もそうせねばとはほとんど思わなかった。片岡鶴太郎の足跡と今を描いたライフヒストリーだと割り切れば、それなりに読める本だと思うが、ここまで徹底してやりたいことを突き詰めるには時間とおカネが必要だし、いい人的ネットワークも必要だと思う。(そして、そういう良質の人的ネットワークを利用して何かをやろうとすれば、それなりにおカネもまたかかる。)自分が好きなことに没頭したいからといって、還暦とともに妻と別れるなんて選択も僕にはとてもムリだし、1日一食も、朝型だか夜型だかわからない深夜の時間帯で起きて3時間のヨガから1日を始めるライフスタイルなんてのも、とてもムリだ。

「やりたいこと」の事例はともかくとして、メタで見れば著者の主張には首肯できるところはある。60代を漫然と過ごしたいとは思わないが、60代にやりたいことのリストの中身の見直しはして、「やるべきではないこと」は思い切って捨てる覚悟も必要だと改めて思った。逆に、「やるべきこと」にもっと投入できる時間を増やすべきだというのもそうだと思う。

個人のライフスタイルの紹介だと割り切って読むには軽く読める1冊。自分がどうあるべきかは自分で考えるしかない。

nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

『きみと暮らせば』 [読書日記]

きみと暮らせば〈新装版〉 (徳間文庫)

きみと暮らせば〈新装版〉 (徳間文庫)

  • 作者: 八木沢里志
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2023/05/12
  • メディア: Kindle版
内容紹介
だから今日も、うちに帰ろう。
猫の肉球、ポトフ、あいまい弁当。幸せのにおいがつまった、兄妹物語。
十年前、陽一の母とユカリの父が結婚し、二人は兄妹になったが、五年前に両親は他界。中三のユカリは義母のレシピ帳を参考に料理し、陽一は仕事で生活費を稼ぎ、支えあいながらの二人暮らし。ある日、庭先に猫が現れる。二人は猫を飼い主らしき人へ届けに行くのだが――。のんびり屋の兄と、しっかり者の妹が織りなす、陽の光差すような、猫もまどろむほのぼのあったかストーリー。
【MT市立図書館】
八木沢里志の連ちゃんです。多作な作家ではないため、本作品を読み切ることで、全作品を制覇してしまったことになる。また、1編100頁近くある長めの「中編」作品を読んできた後で、1編300頁ある長編作品を読み切るのはかなりハードな作業で、続けざまに作品を読み進めるとちょっと疲れも感じざるを得なかった。(著者には大変申し訳ない気持ちです。)

ただ、この登場人物の背景設定で、しかもこのタイトルなら、オチはある程度予想がついてしまうものだが、その予想を見事に外してくれたので、その点については著者に感謝したい。

ひょっとしたら「きみ」の対象はこの迷い猫だったのかもしれない。確かに、場面場面ではこの猫「種田さん」は登場してくるが、そのわりには作品を通じて種田さんがものすごく重要な役割を果たすわけでもなかったように思えた。

書き進めるうちにどんどんネタばらしになってきそうだし、オジサンの読書対象としてはちょっと違う気もするので、今日はこれくらいにしておく。ここ2、3週間、読書に関するリハビリのつもりで読みやすい小説を選んで読むようにしてきた。おかげでかなり読書スピードは上がって来たと思うので、ここらへんからもう少し他ジャンルの読み物にも手を出していきたいと考えている。

そういう意味では、ありがとう八木沢里志。
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ: