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2023年国政選挙の足音 [ブータン]

新政党DTT、近く発足
Druk Thuendrel Tshogpa, a new party in the offing
Kelzang Choden記者、BBS、2022年4月10日(日)
http://www.bbs.bt/news/?p=167740
【抄訳】
278273130_537354464729219_1028113884500367269_n.jpg2023年の国政選挙に、新たな政党が参入する見込み。Druk Thuendrel Tshogpaは、ブータン選挙管理委員会への政党登録の正式手続きに入っており、今月中に登録完了の見込み。

党関係者によると、擁立候補者の約90%を確定済。党設立趣意書も完成し、全県のコーディネーターも決まり、2,500人以上の選挙人の支持を取付済だという。

来年の国政選挙に向けた動きがチラホラ報じられるようになってきた。BBSでは報じられていないが、新政党DTTの党首は僕の長期滞在しているホテルのオーナーの旦那なので、政権構想についてはこれまでも耳にする機会があった。BBSが新党参入を報じた翌朝、朝食をご一緒した。ちょっと時期尚早だと思っているが、新党立上げの噂が人々の話題にも上るようになり、メディアの取材要請をかなり受けていた模様。

なお、BBSは「今月末」と報じているが、党首によると、今月後半は暦の上ではあまりよろしくない日が続くため、正式な新党発足は来月だとのこと。メディアの取材も、日が宜しくない今月後半ではなく、早めに受けたのだそうだ。物事を行うのに良い日と良くない日を暦で確認するというのはちょっと新鮮。

以前、「辞めるのにも理由がある」という記事の中でも紹介したことがあるが、彼はトブゲイ首相の国民民主党(PDP)政権時代の野党DPTのティンプー北部選挙区選出の国会議員で、2016年8月に米ハーバード大学ケネディスクール留学のため、任期途中で議員辞職したというので話題になった人物である。

議員辞職の件は多くの市民が今も覚えていて、その語られ方には否定的なニュアンスがこもっていることが多い。でも、ご本人には言い分もあったようで、留学の可能性込みで議員擁立の話も受けられていたそうだし、DPTの選挙戦略上、そういう候補者であっても必要だったのかもしれない。実際、留学で形成されたケネディスクールコネクションは全世界に広がっており、それを政権運営にも生かせる可能性を秘めた方だと思う。

また、近くで見ていて強く感心するのは、読書家であること。1日1冊ペースである。「ハーバード・ビジネス・レビュー」でいい論文が載っていたら、朝食の場で紹介し、内容要約してくれたりする。時に、「あの本読んだか?」と訊かれたりしたこともある。こちらの読書量が問われる。よく名前が挙がるのは、彼がケネディスクール時代に教わったロナルド・ハイフェッツ教授『最前線のリーダーシップ(Leadership on the Line)』で、僕も10年以上前にたまたま日本語訳を読んでいたので、読書していてよかったと思えることが多かった。ハイフェッツ教授の提唱される「Adaptive Leadership」をたびたび言及され、この1年拝見していて、地方訪問してこのリーダーシップの普及のための研修をずっと主宰しておられた。
https://sanchai-documents.blog.ss-blog.jp/2008-03-16
https://sanchai-documents.blog.ss-blog.jp/2008-03-19

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もう1つは、読書家であるだけでなく、勉強家であること。座右に三年日記のような冊子をお持ちでたびたびそれに目を通している姿を見かけるので、日記付けてるのかと尋ねたところ、「シャショップ語の学習帳」だと仰っていた。東部遊説で住民に話しかける時に、現地で普通に使われている言葉をあやつれることは必要不可欠で、これも次の国政選挙の準備だなと思いながら見ていた。

3つめは、エンジニア出身だったトブゲイ前首相は別としても、新党党首もデジタルファブリケーションには造詣があること。彼は政権構想検討のために、米国から帰国した2019年以降、シンクタンクを設立しているが、その協力者の中に、MITビッツ&アトムズセンターのニール・ガーシェンフェルド教授も入っている。実際、米国留学中にニール教授との接点があったらしい。普段の僕との会話の中でも、「ファブラボ」が時々話題に上ることがあり、僕からもかなりの進講をさせていただいた。当然、彼は拙著『Speaking Up!』にも目を通されている。以前、東京でお目にかかる機会があり、その時に謹呈したからだ。

ジェラルド・カーティス教授が『代議士の誕生』の執筆準備として行われたような参与観察は、僕に与えられた業務の肩幅ではとてもできないけれど、今後この新政党の活動についての続報があれば、過去に見た党首の動きや言葉を振り返ってみて、「そういうことか」と腑に落ちることもあるだろう。

何よりも、僕自身、勉強しなきゃ、本を読まなきゃ、時事問題にアンテナ張ってなきゃと、常にプレッシャーをかけ続けて下さったダショーには感謝しかない。

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